静 個撮

Shyrock作



第20話「恋の予感?」

 静は治療の甲斐あって、翌朝、顔色も良くなりかなり回復していた。
 しかし事件によって受けた心の傷はあまりにも大きかった。
 心の傷が癒え立ち直るためにはかなりの日数を必要とするだろう。
 アキコは事件の話題は避け、できるだけ明るく振舞った。
 静はそんなアキコの思いやりがとても嬉しかった。

 翌朝、静が退院する直前、ケンジが病室に飛び込んできた。

「おはよ~! 静さぁん~! どうだい容態は? アキコ、看病おつかれ~」

 静は笑顔を作って深々とお辞儀をした。

「今回ケンジさんにはすごくお世話になりましたぁ。お陰さまでかなり元気になりましたぁ。ほんとにありがとうございました」
「ほんと、顔色も良くなったねぇ。よかった、よかったぁ~。ところで朝早くから悪いんだけど、10時から事情聴取させてもらうので、そろそろ支度してもらえますかぁ?」
「そっか~。静、まだ警察に行かなきゃならないんだねえ。もうちょっと静養してからという訳には行かないの?」
「いいよぉ、アキコ。私、支度するからぁ」
「ごめんねぇ。朝の早くから」
「いいんですぅ」

 静は看病をしてくれたアキコと別れ、ケンジが運転するクルマに同乗して署に向かった。

「それにしても静さんは美しかったなぁ~……まるで女神のようだった~」

 ケンジはハンドルを握りながらポツリとつぶやいた。

「えっ?」
「いやぁ、アキコから静さんのことをすごくきれいな子だって聞いていたんだけどね」
「ありがとうございますぅ」
「昨日見てそれが真実だって分かったよぉ~」
「昨日……って、もしかしたら私が裸で縛られてるときのことですかぁ?」
「それ以外ないっしょ」
「いやぁん! そんなこと思い出さないでよぉ~!」
「うわ~~~~~! ごめんごめん!」

 キキキキキキ~~~ッ!
 ケンジは急ブレーキを踏んだ。

「うわっ!」
「きゃぁ~~~!」
「ふぅ~、あぁ、やばかった……もうちょっとで事故るところだった……。静さんを見とれてしまって前方不注意になってた……」
「警察官がそれでは困りますね~、真面目に運転してください」
「はい、すみません、真面目に運転します」
「ところでケンジさん?」
「なんでしょうか?」
「アキコからね、聞いたの」
「何を?」
「ケンジさんのこと」
「なんて言ってたの?」
「静をケンジさんに会わせるのは絶対にダメって言ってたことがあったのぉ」
「どうして?」
「かわいい子には目がないから危ないって」
「そ、そんなぁ、そんなことアキコが言ってたの? ひどい!」
「じゃあ、聞くけどアキコのこと大好き?」
「え? はははぁ、そんなことぉ聞くなよ~」
「どうなのぉ?」
「ギャハハ!(バンバン)」
「笑ってごまかさないでよぉ」
「アキコのことはもちろん好きだけど、静さんのことをもっと好きになってしまったかも」

 キキキキキキ~~~ッ!

「きゃぁ~~~~~~!」
「警察に着きましたぁ。ギャハハ!(バンバン)」







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