第19話「救出」
「警察だ! おとなしくしろ! 貴様たちを強制猥褻と監禁罪の容疑で逮捕する!」
三好をはじめ会員たちは狼狽えるばかりで抵抗する者もなく、次々に手錠を掛けられていく。
ケンジに三発殴られてうずくまっていた安野はケンジに頭を下げて懇願した。
「ケンジ、頼むからここは大目に見てくれよ。この人たちはそんなに悪いやつらじゃないんだよ。日本の経済界にとって重要な人たちなんだよ。こんなことで逮捕されたらキャリアに傷がつくし終わっちゃうよ。なあ、頼むからここはひとつ穏便にすませてくれよ」
「うぜえ」
「そうだ! そこにいる三好って野郎が一番悪いのさ! あの男が今回のことを企てて俺達をそそのかしたんだよ!」
「うぜえって言ってるだろう? そんなことは警察でほざけ」
「ケンジ……おまえには情ってものがないのか?」
「こんな俺でも情の欠片ぐらいは持っているぜ。だがな、おまえのようなやつにかける情なんて持ち合わせていねえよ。さあ、大人しくがん首揃えて豚箱に行きやがれ!」
「くそ! これだけ頼んでいるのに冷たい野郎だ!」
「やかましい!」
ケンジはもう一発鉄拳を振るおうとしたが、刑事部長がそれを制した。
「長谷部、やめろ」
「はい……」
三好や安野など関係者は一人残らず警察へと連行されていった。
ケンジと制服の警官がビリヤード台に拘束されている静の救出にとりかかった。
「うわ~~~! それにしてもすごい格好で縛られてるなあ~!」
「……」
急激な環境の変化と改めて認識する恐怖のショックからも冷めやらず、静の意識はまだ混濁していた。
しかし初めて聞くケンジの声に突然我を取り戻し、激しい羞恥に襲われた。
「私、何て格好しているの! 恥ずかしい! 早く縄を解いて!」
「はいはい、カワイコちゃん、もう大丈夫だよ~」
ケンジは静の拘束を解きながらも、しっかりと静の秘所に目を配り担当刑事の役得を楽しんでいた。
「あなたってアキコの彼氏のケンジさんだよね?」
「そうだよ~。俺を知ってるんだ」
「アキコから写真見せてもらってたから。助けてくれてありがとう」
「なんのなんの~、これは俺の職務だからね。ギャハハハハハ~!」
「なんかすごい笑い方……」
「そんなに格好いい?」
「褒めてないもん」
「ショボン……」
縄を解かれた静であったが、長時間による拘束で手足が痺れて動けない。
ケンジは着ていたジャケットを脱ぎ、静に着せてやった。
「ありがとう……」
ケンジが下を向くと薄っすらと翳る若草が妙に悩ましく見えた。
閉じようとしても脚が痺れているためうまく閉じられないのだ。
女性は開けっ広げの破廉恥な姿よりも、恥らう仕草の方がつややかに見えるものだ、とケンジは思った。
緊張感を振り払うようにケンジは言い放った。
「静ちゃんってアソコの毛が薄いんだねえ。ほとんど生えてないと言った方がいいかもね」
「いやぁぁぁぁぁん! 見ないでよぉぉぉぉぉ!」
「見てない見てない、割れ目ちゃんなんて絶対に見てないもんね~」
「見てるじゃん」
「静~~~! だいじょうぶ!?」
そのとき警察の許可を受けたアキコが飛ぶように入ってきた。
「アキコ~~~~~!」
「静、心配したよ! 無事でよかった~!」
「……」
アキコは笑みを浮かべて静に語りかけたが、静は悲しそうにうつむいてしまった。
ケンジが眉をひそめてアキコに首を横に振った。
静の身に何があったのか、ケンジの表情で状況を察知したアキコはやさしく静に語りかけた。
「静、かわいそうに……辛い目に遭ったんだね……でも生きててよかったよ」
「うん……」
静は悲しそうにうなずいた。
動揺を隠し切れないのは当然だろう。
アキコがすぐに手立てを講じてくれたことに静は感謝をした。
「アキコ、ありがとう……アキコがいなかったら私今頃どうなっていたか……助けてくれてありがとう」
「何を言ってるよ。水くさい。静から相談を受けてたときからずっと気になっていたの。なにか悪い予感がして……」
「そうだったんだぁ」
ケンジからジャケットを借りて上半身を覆っていた静であったが、いまだ下半身が丸裸なのをアキコは気にかけ、自身が首に巻いていたマフラーを取り外し静の腰を包んでやった。
「アキコ、ありがとぅ……」
まもなく静はアキコとケンジに付き添われ救急車で病院へ向かった。
◇◇◇
すぐに身体的外傷の検査、性感染症の検査、妊娠の検査等が行われた。
その結果、膣に僅かな裂傷がみられたが、幸いにも妊娠はしていなかった。
身体がかなり衰弱していたことから一晩点滴を受け、翌日警察に出頭し事情聴取を受けることになった。
病院にはアキコが付き添いで宿泊することになり、ケンジは警察に戻ると深夜までかかって供述調書をまとめあげた。