第10話“小野原の血液型”

 彼は覗き込むように私を見つめ「奥さん、入れるよ」とささやくと、ゆっくりと熱い肉棒を入れてきた。
 彼は腰を動かしながら乳房を掴む。
 肉棒がグイグイと奥に食い込むに従って胸への圧力が強くなる。

「胸・・・もう少し優しくして・・・」
「あ、ごめん・・・」

 先端が子宮口に達すると、思わず歓喜の声がこぼれる。
 彼もだんだん良くなってきたようで「奥さん、すごくいい」と声を震わせ腰のピッチが速くなる。
 彼は正常位で散々突きまくった後、今度は私をうつ伏せにさせて背後から激しく攻め立てた。
 肉棒が出入りする度に「ジュボジュボ」と独特のいやらしい音が漏れ、おびただしく濡れているのが分かる。

 彼が「奥さん、奥さん」と繰り返す度に浮気への後ろめたさを煽り立てられたが、一方心のどこかで背徳感に酔いしれている自分がいることも事実であった。
 身体中のパーツ全てが躍動し、皮肉にも夫では味わえなかった充実感が私を支配した。
 気持ちが激しく昂ぶり、ついには生まれて初めて絶頂を経験することになった。
 その時、目から涙が溢れて止まらなかった。
 私が達した後も彼は休むことなく腰を動かし続け、私より少し遅れて果ててしまった。

 彼に抱かれてまどろんでいると、再び上から彼が唇を重ねてきた。
 私は舌を絡めて彼に応えた。
 彼の肉棒はまたたく間に大きくなり、すぐに私の中にインサートしてきた。
 今度は、腰を持ち上げて大きく回したり、深く入れたり浅く入れたり、お尻の穴を愛撫したり、私が興奮し始めると動きを止めて焦らしてみたり・・・
 イキそうになってもなかなかイカせてくれないので、恥ずかしいけどとうとう自分からせがんでしまった。
 彼は、「奥さん、これからもずっと俺と付き合ってくれるんだったらイカせてあげる」などと高飛車に出、私はとにかくイカせて欲しくてたまらなかったので、「言うこと聞くからイかせて」とお願いをしてしまった。
 そのあと彼はリズミカルに腰を動かし私は2回絶頂を迎えた。

 彼が帰った後、ベッドのシーツを触ってみるとあちこち濡れているのが分かった。
 私は直ぐに洗濯済みのシーツと取り替えたが、罪意識まで拭いきれるものではなかった。



 夫はいつもと同じ時間に帰宅した。
 夫と結婚して5年になるが、夜の営みのときコンドームを使用したことは一度もなかった。それでも子供はできなかったが特に病院へ検査に行くことはなかった。
 不妊に関して私が病院に行かなかったことには実は深い理由がある。
 思い出したくもない出来事だが、高校生の頃、一学年上の先輩にクラブの部室でレイプされたことがあった。
 その時、不幸にも子供が出来てしまい墮ろしたことで、子宮を傷つけられてもう子供ができないものと諦めてしまっていた。
 夫と結婚する時、その事実を話すべきかをすごく悩んだが、結局話せないまま結婚に踏み切ってしまった。

 小野原の出現により私の日々の生活が大きく変わってしまった。
 夫が仕事に行っている時は、ほとんど毎日のように、彼は私の身体を求めるようになった。
 そして私もまた彼に溺れていった。

 妊娠しない身体と私自身思い込んでいたので、彼が私の中で果てるのを私は拒むことはなかった。
 しかし神様のいたずらか、その後生理が止まってしまい、産婦人科に行ってみると「おめでたです」と医師に告げられたのだった。
 私は産むか産むまいか悩みぬいた。
 今度堕ろすと本当に不妊の身体になってしまう可能性が高かったからだ。
 私は小野原の血液型が運良く夫と同じだったこともあり、悩んだあげく結局産むことにした。



 今は実家に帰っている。
 出産予定は今年の10月。
 小野原には「夫の子」と言ってあるが、産まれてきた子供の顔が小野原に似ていたらどうしようか・・・。
 そう考えると墮ろした方がよかったのかも知れないが、私とすればとにかく産みたかった。

 夫の子なのか・・・それとも小野原との間の子なのか・・・
 たとえどちらの子であっても、今私のおなかの中に1人の生命が宿ったことは事実だ。
 せっかくこの世に生を受けたのだから、生命の誕生を心から祝福してあげたい。
 今日も大きなおなかを擦りながら小野原と電話でお話をしてしまった。
 こんな私って変かしら?

 完


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