第1話

(あなたとはこれっきりね……)

 そんな切ない一言がメールの結びに記されていた。

「あ~あ、また振られちゃった。オレってどうしていつも振られてしまうんだろうなあ?すぐにのぼせ上がってガツガツしちゃうのがいけないのかなあ?」

 吾郎はそう言いながら珍しいことにじっと鏡を覗き込んだ。
 男が鏡を覗くのは、よほどのお洒落男子じゃない限り、髪を梳かすときと髭を剃るときぐらいのものだろう。

「オレってそんなに悪い男じゃないと思うんだけどな~。どうしてこううまく行かないんだろう……。女の子には優しいつもりだし、う~ん、やっぱり口下手だからかな~」

 板垣吾郎……すでに二十七歳になるが、いまだに女性と付き合って長続きしたためしがない。
 ある程度は進展するのだが、ほとんどが二、三か月で壊れてしまう。

 いったい何が原因なんだろうか、と考えてみるのだがよく分からない。
 自分の欠点と言うものは、案外自分では見つけにくいものなのかも知れない。
 狭いワンルームマンションで、ひとり愚痴ったり、ため息をついている自分が情けなく思えてくる吾郎であった。

「チェッ……つまらねえや。今日はせっかくの休みだと言うのにデートの予定も無しか。振られたからしょうがないんだけど……。遠出する気はしないから近所の商店街でもぶらついてみようかな」

 吾郎はやりかけていたスマホゲームのアプリを閉じ、無地のTシャツとスキニージーンズ姿で散歩にでかけた。
 梅雨の合間の僅かな晴れ間、雨が続き少し気が滅入っていたが、散歩をすれば少しは気持ちも晴れるだろう。

「胸にポッカリ穴が開いた感じだな。あ~あ、失恋するってなんかわびしいなあ……」

 会社など吾郎の身辺にこれと言った女性がいなかったため、吾郎は出会いサイトを利用し『下手な鉄砲も数打ちゃ当たる』と張り切ってメールを出しまくった。
 その甲斐あってついに条件ぴったりの恋人も現われた。
 恋はうまく実るかに思われたが、連日残業ばかりでデートにも誘えない状態が続いた。
 当然相手はそんな吾郎の事情など知るはずもなく「熱意がない人」と考え、まもなく破局が訪れた。

 車社会の到来による大型店舗の郊外化が、商店街を衰退化させた最大の要因と言われているが、吾郎が暮らす地域の商店街は人通りも多く活気に溢れていた。
 魚屋の親父の威勢のいい掛け声、気さくに呼びかける八百屋の兄貴の親しみやすさ、時として街の喧噪は元気をくれる。
 何か買うわけでもなく、ただブラブラと歩いているだけで楽しい商店街っていいものだ、と吾郎は思った。
 先を急ぐ男がゆっくりと歩いている吾郎を速足で追い抜いていく。
 アーケードも途切れたのでぼちぼち戻ろうかと思った頃、どこからか吾郎を呼び止める女性の声が聞こえてきた。

「ちょっと、そこのお方……」

 吾郎が振り向くと、三十歳前後の神秘的な雰囲気の女性が彼を見つめていた。
 頭には紫色のヴェールをかぶっていて占い師のような風貌だ。

「え?オレ、ですか……?」
「はい、あなたですよ」
「オレに何か用ですか?」
「あなたには幸運が訪れます」
「えっ?」

 見知らぬ占い師風の女性からの突然の言葉に吾郎は唖然とした。
 女性の机を見ると『夢と現 真実と虚偽 チル占星術』と書かれた布が垂れ下がっていた。

「もう一度言います。あなたには良縁が待っています」
「な、なんだって?オレに良縁だって?」
「あなたはまだ未婚ですね。あなたには素晴らしい結婚相手が見つかります」
「そ、そんなこと急に言われても……どうしてオレにそんなことを?」
「私は占星術師のチルといいます」
「そりゃ嬉しいけど……にわかには信じられないな~」
「それは無理もないことです。だけどこれは真実なのです」
「真実…ですか?」

 吾郎は狐につままれたような表情で占星術師を見ていると、彼女はおもむろに小さな石を取り出した。

「これは『真実石』といいます。これを持っていると理想の女性が向こうからやって来ます。これをあなたに差し上げます」

 吾郎は小さな石を手の取り、じっと見つめた。
 どう見ても何の変哲もないふつうの石のようにしか見えない。

「これってただの石ころじゃないの?これを持っていたらマジで彼女ができるのですか?」

 占星術師は慈愛に満ちた微笑を浮かべ小さくうなずいた。
 吾郎は言った。

「あ、分かった!彼女ってもしかしたら、あなたのことではありませんか?」
「あはははは~~~まさか。違いますよ」
「オレのことを気に入ったとかじゃないのですか?」
「まあ、何とおめでたい方なんでしょう。違います、違います。私ではありません。別の方ですわ」
「なんだ、違うのかあ、あなただったらよかったのに、はっはっは~」
「まあ」

「ところで、代金はいくらですか?」
「お代は要りませんわ。もし次に占いをさせていただくことがあれば、その時にでもいただきます」

 占星術師は品の良い微笑をたたえた。
 吾郎はペコリとお辞儀をして占星術師の元を立ち去った。



第2話

 見知らぬ占星術師から『真実石』と言う石ころを受け取ったものの、「理想の女性が現れる」と言う占星術師の託宣はにわかには信じられなかった。

(こんな石ころを持ってるだけで彼女ができるなんて……そんなうまい話があるはずないよな……)

 吾郎は一瞬石ころを捨てようと思った。
 ところが……

(あ、でも、あの人オレを占ってくれてせっかくくれたんだし、しばらくは持っておこうかな)

 捨てるのを思いとどまった。
 吾郎はてのひらの小さな石ころをもう一度見つめた。

(口下手なオレだから街でナンパしたって失敗するのは目に見えているし、友達に紹介してもらうのも限界があるし……占い師が言うようにオレって本当に彼女ができるんだろうか?よく分からない石ころをもらって、彼女ができるまでじっと待つと言ってもいつまで待てばいいのやら……。ふうむ、やっぱり手っ取り早く出会いサイトで探そうかな。それはそうと、今夜は何となく晩飯を作るのが面倒だし、弁当を買って帰って野球でも見るとするか)

 普段は自炊をする吾郎だが、たまには気分転換に弁当を買うことがある。
 吾郎はアーケードに戻り弁当屋へと向かった。
 商店街にある弁当屋は結構いい米を使ってる。

(新潟のコシヒカリを使ってるって言ってたなあ。え~と、今日はシャケ弁当にしようかな?)

 近頃他にも名の通った銘柄米が出回っているが、新潟を故郷に持つ吾郎にとっては米はやっぱりコシヒカリなのだ。
 などと弁当の種類を思案していると、突然前方で自転車の転倒する音がした。

「きゃっ!」
「気をつけろよ!ったくもう~!」

 遊び人風の男が若い女性が運転する自転車にぶつかったようで、自転車の方が横倒しになり若い女性が地面に倒れていた。
 男は何事もなかったかのように素知らぬ顔で煙草をふかしながらその場を立ち去っていった。
 女性は脚をくじいたのか、なかなか立ち上がれそうにない。
 通行人は女性を気の毒そうに見てはいるが、誰も手を貸そうとしない。

 見るに見兼ねた吾郎は女性のそばに歩み寄って手を差し伸べた。

「だいじょうぶですか?」
「ありがとうございます……ちょっと脚が痛いけど大丈夫だと思います」

 女性は吾郎の差し出した手を握り、ゆっくりと立ち上がった。
 あまりに突然のことで吾郎は女性の顔をゆっくりと見る余裕などなかったが、立ち上がった女性の顔がやっと目に入った。

(うぉ~、こりゃあすげえ美人じゃん!)

「怪我は無い?」
「ありがとうございます。たぶん大丈夫だと思います」
「それにしてもさっきの男は酷いね」
「いいえ、余所見していた私がいけなかったんです」

 女性が歩き出そうとした時、突然、痛みが走ったのか思わずうずくまってしまった。

「ううっ……」

 短いプリーツスカートから覗く膝の辺りから赤い血が滲んでいるのが見えた。

「うわぁ、血が出てるじゃないか。お医者さんに行かないと」
「ええ、でも大丈夫です。骨は折れていないと思うし」
「でも早めに消毒しておかなきゃ。オレのマンションすぐそこだし、応急措置してあげるからおいでよ」
「え?いいんですか。ありがとうございます。それじゃお言葉に甘えさせてもらいます」
「うん、急ごう」

 吾郎は自転車を押してやり、女性をともにマンションへと戻った。

 部屋は七階建ての五階だった。
 吾郎は部屋に戻ると、すぐに救急箱を探した。
 滅多に使わないからどこに直したか憶えていない。

「部屋が散らかっててごめんね。ソファに座って待ってて。すぐに救急箱が見つかると思うので」
「本当にすみません。ご迷惑を掛けてしまって」

 女性はペコリとお辞儀をしてソファに腰を掛けた。

「あった、あった、これだ。さあ、早く手当てをしなくちゃ」

 救急箱を取り出した吾郎がソファに座っている女性の方を振り向いたとき、女性の太腿が目に入り一瞬ドキッとした。
 スカートが短いため、美しい太腿がかなり上まで露出しているのだ。
 しかもパンストは着用しておらず、生脚なのでやけに眩しい。

(うわぁ、こりゃ目に毒だあ)

 心拍数が上がっているのが自分でも分かる。
 女性は吾郎の心を察知したのか、照れ臭そうに脚をピタリと揃えてしまった。
 吾郎の視線を敏感に感じ取ったのだろうか。勘のいい女性のようだ。

 吾郎は滅菌ガーゼに消毒薬を浸しそっと傷口につけてやった。
 女性は少し沁みたのか小さく「うっ」と呻いた。
 至近距離にいるせいか女性特有の甘い香りが吾郎の鼻孔をくすぐる。
 おそらくシャンプーの残り香なのだろうが、吾郎はひとときの心地よさに包まれた。

「まだ少し血が滲んでくるね。しばらくガーゼを当てておいた方がいいよ。ところで君は何て名前?オレは吾郎です」
「あ……お世話になっているのに、私、先に名乗らなくて……ごめんなさいね。私、惠って言います」
「惠さんって言うんだ。いい名前だね」
「ありがとう」

 惠はにこりと微笑んだ。

(笑顔も可愛いなあ)

 吾郎は当てていたガーゼを新しいものに取り換えた。
 久しぶりに女性と部屋で過ごすひととき。
 まるで恋人と過ごす時間が蘇ったかのような、吾郎はそんな錯覚に陥った。

(それにしても、美しい人だなあ。脚もめちゃきれいだし。何かゾクゾクしてくる……)

 治療をする手は膝頭の辺りを触れていたが、吾郎の気持ちはスカートのずっと奥の方へと駆り立てられていた。
 惠が少し脚の向きを変えるだけで、パンティが見えるかも知れない、そんな不埒な期待感。
 吾郎の心にふつふつとよこしまな劣情が沸き起こっていた。



第3話

 消毒をしているうちにようやく出血が止まった。
 吾郎はガーゼ付き絆創膏を取り出し惠の膝頭にペタリと貼ってやった。

「これで大丈夫。絆創膏が目立って恥ずかしいだろうけど、しばらく我慢してね」
「ありがとうございました」

 惠が伸ばした脚を元に戻すとき、ほんの一瞬スカートの奥が見えてしまった。

(うわっ!見ちゃった。パンティは白だった!うっほ~堪らないなあ~)

 胸の鼓動が早くなった。
 だけど惠は吾郎の動揺をよそに、丁重に礼を述べた。

「本当に助かりました。見ず知らずの私に怪我の治療までしてくださって、何とお礼を言えばいいのか」
「お礼だなんて。怪我をした人を見過ごすわけにはいかないよ」
「吾郎さんって優しい人なんですね」
「いやあ、そんなこと~」

 吾郎は照れながらも、何気に視線は惠の胸元に止まっている。
 胸の谷間がカットソーからほんの少しだけ覗いている。

(何と!刺激的な光景~!)

 そもそも男と言う生き物は『チラリズム』に弱い傾向がある。
 全部見えてしまうより、少しだけ見える方が反ってそそられるものだ。
 どこかの心理学者が『チラリズム』には四つのパターンがあると言っていた。

*****

「前かがみのチラリズム」(胸元)
「しゃがんだときのチラリズム」(太もも)
「スカートからのチラリズム」(太もも)
「髪をかきあげたときのチラリズム」(うなじ)

*****

 このうちの「前かがみのチラリズム」と「スカートからのチラリズム」の二つを偶然にも短時間の間に体験してしまったのだ。。
 最近女性とは縁のない吾郎にとって、あまりにも刺激的なシチュエーションだ。
 瞬時に心の性感をくすぐられたとしても不思議なことではないだろう。

(うわぁ……こりゃあまいった。見てはいけないのに、つい目が行ってしまう……)

 吾郎の視線が胸元に止まると、惠が見つめられていることに気が付いたようで、恥ずかしそうに態勢を変えてみせた。
 次の瞬間、吾郎は惠の肩に腕を回した。
 そう、それはほんの一瞬のことだった。

「えっ……?」

 惠はよけようともしないで、はにかみながら俯いている。
 勢いに任せて唇を求める吾郎。
 みるみるうちに顔を真っ赤に染めていく惠。
 引き寄せられるように重なり合うふたりの影。

「オレ、君を一目見たときから好きになったみたい……」
「私も……」
「ほんと?嬉しいなあ」
「……んっ……んん……」

 吾郎が先に唇を開き、惠がそれに倣う。
 ふたりは舌を絡ませ始めた。
 重なり合う唇、漏れる吐息が理性を切り崩していく。

 執拗に惠の唇を求める。
 合間合間に惠の吐息が漏れた。

「んはっ」

 舌を絡ませ、空気を求めるように互いを求め、キスが繰り返され、息を乱す。

 唇を重ねるふたりが舌を絡ませ合えば、それは『結合への暗黙の了解』と言ってよいだろう。
 男と女は言葉にしなくても、感覚で語り合うことができる。
 初めて会った日であってもそれは同じことだ。

 吾郎は抑え切れない欲求に、カットソーの胸の隙間から手を滑り込ませた。
 柔らかくすべらかな肌が指にやさしく触れて心地良い。
 指はさらに探っていきブラジャー越しに乳房に触れる。

「あ……いや……」

 バストトップをまさぐる指は乳首の在処を確かめる。
 布越しではあるが乳首に触れてみると、思いのほか固くなっているのが分かった。

(ああ、いい感触だあ……もう我慢できなくなってきた……)

 一旦唇から離れた吾郎は惠のカットソーをせわしく脱がせに掛かった。
 カットソーに続いて純白のブラジャーのホックを外しにかかる。
 男として期待に胸膨らむ感動の瞬間だ。
 まもなく小ぶりだが弾力性に富んだ乳房がカットソーから飛び出してきた。

「すごい、きれいな胸だね」
「見ないで……」
「ん?いやらしい乳首、ビンビンになってるじゃん」
「そんなこと言わないで。恥ずかしいから……」

 しかし吾郎の言うとおりだった。
 すでに充血した乳首が、サクランボのように固く尖らせている。
 二本の指で乳首をいずる吾郎。

「あぁ……はぅっ……」

 くりくりと乳首をいじられる刺激に、惠は唇を噛んで声を抑えた。

「んっ……んんっ……」
「どんどん硬くなってくる……」

 ふいに、唇が触れるほどの耳元で吾郎が囁いた。

「っ……!」

 惠はビクっと肩を竦める。

「感じるの……?」

 吾郎の熱い息が惠の鼓膜を震わせる。

 吾郎はすかさず固くなっている乳首を口を含んだ。
 舌先でなめ廻しながら、ときおり「チュッ」と吸い寄せる。

「あぁ……そんなぁ……」

 惠は甘く切ない声を漏らせた。
 すぐに乳首を勃起させてしまうことと言い、感度はかなりいいようだ。

「惠ちゃんってすごく敏感だね」
「いやぁん、そんなこと……恥かしい……」

 惠にそう囁くと吾郎は再び乳首を吸い始めた。
 舌先は右の乳首を転がし、左手で惠の左胸をやさしく揉みしだいた。

「あぁ、だめぇ……」
「惠ちゃん……すごくかわいい……」

 惠は吾郎の言葉に反応し、頬を緩ませやさしく微笑んだ。

「恋に落ちるって三秒もかからないんだね」
「そんなに早く?」
「オレ、君を見た瞬間好きになってしまったもの」
「私も」

 会話は途切れて吾郎のてのひらは再び左の乳房をまさぐった。

「あぁ、あぁ、いやぁ…あはん……あぁぁぁぁ~……」

 いよいよ気持ちが高ぶってきたようで、惠は突然吾郎の胸に頬をうずめた。



第4話

 まもなくふたりは下穿きだけを残して裸になり、ベッドに滑り込んだ。
 無言の合意。

 ベッドの上で吾郎は惠の身体を見つめながらそっとつぶやいた。

「きれいな身体だね」
「そう?嬉しい……」

 吾郎のてのひらは胸を撫でるとゆっくりと下へ降りて行った。
 臍の辺りから腹部へといとおしむように撫で、やがてパンティの飾りリボンが付いている辺りに差し掛かった。
 吾郎はパンティの上から割れ目を探り当てる。

「あぁ……」

 惠は蚊の鳴くような声を漏らした。
 抑えようとしても抑えきれないのだ。
 パンティの上からの愛撫であっても充分に感じるようだ。
 吾郎は指先に湿り気を感じた。
 パンティ越しでもこれほど湿るのであれば、直接触るとどうなってしまうのだろう、と吾郎は不埒な想像を浮かべた。

 クリトリスの位置におおよその見当を付けた吾郎は、パンティ越しに刺激してみた。

「ん、んぐ、そこはぁ……」

 惠の喘ぎが少し変化する。
 やはりクリトリスは特に感じるようだ。
 しかし吾郎としては湿って来ないクリトリスよりも湿る感触を味わいたかった。
 吾郎はクリトリスを中心に愛撫しながらも、陰唇全体を指先でまさぐった。

 快感が高まっているせいか、惠は陰唇のどの部分も敏感に反応した。
 強く撫でるよりも、くすぐるように緩く撫でる方が感じるようで、惠は両膝を寄せてぷるぷると下半身を震わせた。
 吾郎は惠の反応に愉悦を感じながら、攻め場所や力の強弱に変化を持たせてみた。

 刺激を続けていくうちに、パンティの染みが次第に広がっていった。

「すごい!濡れてきたじゃん」
「いやぁ……恥ずかしい……」

 吾郎はクロッチの中央を人差し指で押してみた。

(グチュッ)

 粘着性のある卑猥な感触が吾郎の指に伝わってくる。
 惠が次第に高まってきているのを見て、吾郎は固くなったクリトリスに力を加えた。
 摩擦で発火させるような勢いで、激しく擦り上げる吾郎。

「きゃっ!そ、そんなぁ~!」

 惠は甲高い喘ぎ声を発し、腰を痙攣させ早くも絶頂に達した。
 吾郎は空かさずクロッチの横合いから指を忍ばせる。
 恥丘に茂る草むらを慈しむように撫で、まもなく深い渓谷へと到達する。
 渓谷は既に湿地帯のごとくぐっしょりと湿り気を帯び吾郎の指を迎え入れた。

(グチュッ……)
「いやぁん……」

 惠は耳を澄ましていないと聞こえないほどの微かな声を漏らした。
 抑えようとしても抑えきれず漏れてしまうのだろう。

「んはぁ……」
「気持ちいい?」
「うん、すごくいい……」

 中指が渓谷内部を掘り下げていく。

「あぁぁぁ~……」

(グジュグジュ……)

「いい感触だね」
「はぁ~ん……」

 吾郎は手を止めパンティをゆっくりとずらし始める。

「あぁ、ダメぇ……」

 白いパンティは惠の身体から離れていく。
 くっきりと縦断する亀裂が吾郎の目に飛び込んできた。

「うわぁ~、惠ちゃんの……」

「ダメ、言葉にしちゃダメ」

 惠はとっさに繁みに手を宛がい隠そうとするが、吾郎はそれを許さない。
 吾郎は羞恥の箇所から惠の手を移動させる。
 しげしげと亀裂を見つめる吾郎。

「うわぁ、可愛い割れ目ちゃん~。すごくきれいなピンク色しているね~」
「いやぁん…そんな恥かしいこと言っちゃダメぇ……」
「そんなことを言ったって、きれいなものはきれいなんだもの」
「んもぅ~」

 吾郎は悪びれることなく亀裂を覗き込みながら指でなぶり始めた。

「あぁぁ~……」

 指先を使って小陰唇を摘んでみたり、広げたりする吾郎。
 小陰唇を広げたままにしてもう一方の指で亀裂をなぞってみると、思わず声を荒げる惠。

「あぁん~!、いや~ん!」

 亀裂の中央やや下に位置するクレーターを探り当てた指は、ゆっくりと進入を開始する。
 第一関節まで埋没した指は肉襞の感触を確かめながら、さらに奥へと進んでいく。
 吾郎の指に反応するようにとめどもなく蜜は溢れ、まるでカリンバのような調べを奏でた。

「いい音がするね」
「はぁ~ん……あぁぁぁ~……」
「気持ちよくなって来た?」
「あん、あん、あん…ああっ、いい、いい……」

 吾郎は惠の耳元で囁きながら、そっと耳にキスをした。

「きゃっ…くすぐったい……」

 亀裂の先端にある豆粒を広げて、キラリと光る珠玉を剥き始める。
 そこに軽くキスをした吾郎は舌を駆使して愛し始める。
 舌の微妙な感触に惠は堪らず声をあげる。
 亀裂から着火した悦楽の炎は、脳天の先端まで一気に走り抜けた。

「ああ、いい、いい、いい、それすごくいいっ!」

 吾郎の舌は繊細な部分を執拗に責める。

「ああ、もうダメ、もうダメ、ああ、いやぁ~!」

 吾郎は体勢を起こし、もう一度惠を抱きしめた。


第5話

 それでも吾郎の左手は相変わらず惠の亀裂に滑り込んだままで、まるでスッポンのように離れない。
 先程から泉のように湧き出ている蜜液は、惠の太股までぐっしょりと濡らしていた。
 惠は喘ぎながら指を伸ばした。
 伸ばした先には吾郎の早くも怒張した肉棒がそびえている。
 惠の指は肉棒を捉えた。
 早く欲しいという無言の催促なのだろうか。

「あぁ……吾郎さん、もうこんなに大きくなってるぅ……」
「惠ちゃん……嫌じゃなければ、その可愛いお口でナメナメしてくれないか」
「う、うん、いいわ……」

 惠の目前に大きく反り返ったモノがそそり立つ。
 大きなモノは惠が両手を添えるとピクリと先端が動いた。

「きゃっ、硬い!」
 
 吾郎の場合、サイズは15センチと平凡だが、どういう訳か硬さが人一倍硬く、惠が驚いたのも無理はなかった。
 惠は小さな口をあんぐりと開けて肉棒を頬張った。
 舌で包み込むように舐めると、まもなく口に含んで上下動させた。
 たちまち吾郎が反応する。

「ううっ、惠ちゃん、すごく気持ちがいい!くはぁ~これは堪らない!」

 お嬢様風で一見大人しそうに見える惠だが、意外にも情熱的な巧みな舌さばきを見せた。
 上品なお嬢様風なのに、ベッドに入れば淫らな娘に変身する。
 男はむしろそんな差異を好むのかも知れない。

「ああ……惠ちゃん、いいよ~、オレ、もうそろそろいきそうだ~」

 吾郎はすでに自我を忘れるほど夢中になってしまっていた。
 惠のフェラチオにすっかりのぼせ上がってしまった吾郎は、早くも発射の兆しを感じたのか惠を強引に押し倒した。

「きゃっ!」

 強引に両脚を開かせ惠の上にかぶさった。
 惠の肩を強く抱きしめ激しいキスの雨。
 吾郎の怒張したモノは惠の亀裂を捉えた。

(グリュッ……)

「あぁっ……はあぁ~~~」

 吾郎は挿入直後、早くも腰を慌ただしく律動させている。

「惠ちゃん……オレ、君のこと好きになってしまったみたい~」
「あぁん、私もぉ~」

 吾郎は上半身を少し上げ、惠の脚を更に大きく割り開き、さらに腰を深く突き入れた。

「ああぁっ、すごい~、あぁん、すごいわ!」
「惠ちゃん!ううっ、すごくいいよ~。あっ、まずいや!スキンつける暇がない!」
「あっ、あっ、あっ……ご、吾郎さぁん、すごくいい!」
「あ、ああっ、うわあっ!いくよ、いくよ!ああ、もういっちゃうよ~!」
「ああっ!私もすごくいい、すごくいい!あああぁ~~~!」

 発射する瞬間、吾郎は肉棒を引き抜き膣外での射精を試みたが、間一髪遅れてしまい惠の中で果ててしまった。
 熱い感触が惠の腹部を貫いた。
 吾郎は挿入したまま惠を抱きしめ、優しく唇を寄せた。

 そしてわずかな時が過ぎ、吾郎は惠の身体からおもむろに萎えたモノを引き抜いた。
 惠の狭い亀裂から白い液体がトロリと零れた。

「すごく良かったよ。でも早くイッちゃてごめんね。惠ちゃんがあまりにもいいから我慢できなくなってしまって……」
「いいの……私もすごく良かったから……」

 吾郎は時が過ぎるのを忘れて、ずっと惠を抱きしめた。
 惠もまたそれに応えた。

「ねえ、吾郎さんって歳はいくつなの?」
「オレは27。惠ちゃんは何歳?」
「私は19歳で学生。吾郎さんはどんな仕事をしてるの?」
「コンピューターグラフィックデザイナーをやっているんだ」
「そうなんだ、凄いなぁ~。あっ、それでパソコンがMacなのね」
「えっ!惠ちゃんってすごく目敏いね!もうそんなところまで見つけてるんだ!」
「だってアップルマークって目立つもの」
「Macのロゴマークは今はリンゴだけど、当初ニュートンがリンゴの木に寄りかかって本を読んでいる絵だったんだ」
「えっ!?そうなの?それは知らなかったわ。どうして現在の絵に変わったの?」
「ジョブズがそのデザインを堅苦しいと感じて、アートディレクターに頼んで現在のリンクだけのデザインに変えたんだよ」
「へ~、そんないきさつがあって今のデザインになったんだ。さすがMac派ね、よく知ってるね」

 吾郎は満足そうにベッドに横たわりながら、惠との会話を楽しんだ。

「喉が渇いたね。水持ってくるね」
「うん」

 吾郎は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しコップに注いだ。
 そして惠に手渡した。
 惠も喉が渇いていたのか、ゴクゴクと一気に水を飲み干してしまった。

 惠が水を飲み干すと、それを待っていたかのように吾郎がはにかみながら惠に囁いた。

「もう1回しようよ」
「うん……」

 惠は微笑みながらうなづいた。
 吾郎は左手を惠の背中に廻し、抱くようにして膝の上に誘った。
 空いている右手は惠の繁みにそっと忍び込む。
 先程の湿りに加え、新たな潤滑油が早くも溢れ出している。

(グチュグチュグチュ……)

 吾郎は指を亀裂に挿し込み強く擦り始めた。

「いやぁ……もっと優しくして……」

 見る見るうちに吾郎のイチブツも元気を取り戻していく。

「惠ちゃん、今度は僕の膝にまたがって……」
「うん……」

 惠は体勢を起こし吾郎の膝に真正面を向いてゆっくりとまたがった。
 股間に硬いものが触れた。




第6話

 対面座位は吾郎の嗜好に合っている。
 乳房と尻がいつでも触れるし、すぐにキスができるのも良い。
 それだけではない。他の体位と比べて一度挿し込むと抜けにくいのが長所と言える。
 さらには、女性が感極まってくるとしっかりとしがみついてきてくれるのも嬉しい。

 吾郎は肉棒に指を添え、ゆっくりと惠の中心部に照準を合わせた。
 惠は静かに目を閉じて、結合の瞬間を待っている。
 肉棒が花弁に触れた。

「あぁ……」

(ズニュッ……グググ……)

 亀裂の中心部に肉棒の五割ほどが挿し込まれた。
 更に奥へ押し込もうとする吾郎。
 思わず惠の唇から甘い吐息が漏れる。
 吾郎は惠の裏腿に手を宛がい力を入れると、一瞬だが惠の身体がふわりと浮遊した。
 吾郎は自身の腰の動きに合わせ惠の下半身をたぐり寄せる。

(ヌッチョン、ヌッチョン、ヌッチョン……)

 粘着性のある水音がして、静かな部屋に響き渡る。

「いい音だね」
「いやぁん、言わないで…恥ずかしいから……」

 惠の吐息の間隔が次第に短くなっていく。

 吾郎の動きがさらに加速する。
 惠は吾郎の背中に廻していた腕を解き、上体を後ろに反らし両手で自らの体重を支え均衡を保った。
 結合部の角度が変わる。
 挿入は少し浅くなったが、肉棒がちょうどGスポットに当たって惠を桃源郷へといざなう。
 惠はうわごとのように何かつぶやこうとしているが、はっきりと聞き取れない。

 やがて吾郎が仰向けに寝転ぶと、惠を馬上の女騎士のように吾郎の真上にまたがる形になった。
 女騎士は腰を前後にグラインドさせ天井を仰ぐ。
 腰の動きが一段と速さを増して来た。

「ああ、あああっ!ああ、吾郎さん、ああ、やだぁ~、私、いっちゃうかも、あぁん、いっちゃうかも~!」

 惠は顔を上気させ、腰を激しく上下動させた。

「お、俺もすごくいいよ、いいよ~!」
「ああっ!ああっ!ああああ~~~!いっちゃう、いっちゃう、いっちゃう~~~!」
「だ、だめだっ!うはぁ~~~!」

 惠はスカイダイビングで急降下するような心地になり、吾郎は空に向けてミサイルを発射すような感覚に陥った。

「あ、あああっ、惠ちゃん、君が好きだ!大好きだ~!」

 吾郎は無我夢中で叫びながら手を差し伸べたが、腹の上にいるはずの惠の感触がなかった。
 吾郎は慌ててベッドから飛び起きたがやはり惠は見当たらなかった。

「えっ?惠ちゃん……惠ちゃんはどこへ行ったの?」

 きょろきょろと周辺を見廻したが、やはり惠はいない。

 吾郎はふと自分の衣服を見た。
 ちゃんとパジャマを着ているではないか。

(まさか、オレは夢を見ていたのか?)

 吾郎は大きなため息をつき、がっくりと肩を落とした。

(なんだ、今のは夢だったのか……。それにしても生々しい夢だったなあ。惠と言う名前まではっきりと憶えているし……)

(ピンポ~ン)

 ちょうどその時、インターフォンが来客者を知らせた。

(ちぇっ、何だよ、こんな時に全く。どうせセールスか何かじゃないのか……)

 吾郎は不機嫌なまま、インターフォンの受話器を取った。

「悪いけど、今、忙しいので……」

 吾郎は訪問者を確認もしないまま、無愛想に対応してしまった。

「あのぅ、私、このたび隣に引越しをして来ました者なんですが。ご挨拶におじゃましました」

 インターフォンの向うから若い女性の声がした。
 吾郎は早合点してしまった自分を恥じながら、先程とはうってかわって丁重に答えた。

「あっ、失礼しました!すぐに開けますのでお待ちください」

 玄関のドアを開けた瞬間、吾郎は驚きのあまり絶句してしまった。

「……!!」

 それもそのはず、ドアの前に立っていた女性は、夢に出て来た少女『惠』に瓜二つだったのだ。
 しかし、目の前の女性は吾郎の驚きもよそに、丁寧に挨拶をしてきた。

「昨日隣に引っ越しをして来た夢野と言います。今後ともどうぞよろしくお願いします。あのぅ、これ、つまらないものですけど、どうぞ……」

 女性は挨拶品を吾郎に手渡しお辞儀をした。

「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」

 吾郎は女性の顔を穴が開くほど見つめた。
 初対面の吾郎があまりに見つめるので、女性は目のやり場に困り果てているようだ。

「それじゃ失礼します」
「あぁ、どうも」

 女性は挨拶を済ませると、そそくさと玄関先から去っていった。

 吾郎は女性が去った後も、茫然としたままその場に立ち尽くしていた。

(こんなことがあるんだろうか。今の子、夢に出て来た惠ちゃんとそっくりじゃないか。一体どう言うことだ?不思議だなぁ……)

「何をくれたのかな?」

 部屋に戻った吾郎は挨拶品の包装紙を見て腰が抜けそうになった。

「な、何だって!?」

 吾郎は唖然とした表情で包装紙を見つめている。
 それもそのはず、包装紙の上にかかっている熨斗紙(のしがみ)には『夢野 惠』と記されていたのだ。

「あっ、そうだ!」

 吾郎は突然思い立ったように、玄関から飛び出していった。
 向かった先は商店街のはずれだった。

「あそこに占星術師がいるはずだ!きっといるはずだ!」

 吾郎は夢と現実の狭間を急ぎ足でかけていった。
 手にはあの石ころ『真実石』を握りしめながら。



































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