中編/惠 快楽出張



Shyrock作










第1話


◇◇◇◇◇

<登場人物>

花塚 惠(31才)
独身。東京在住。一流商社のキャリアウーマン。
抜群のスタイルとくっきりとした目元が、女優の『神○うの』によく似ている。
この度、新商品の販売に伴って、レクチャーのため広島支店に赴くことになった。

◇◇◇◇◇


 会議が終わった後も、惠は支店長たちから熱心なもてなしを受け、断りきれず、つい酒の量が進んでしまった。ホテルまでの帰り道は会社が用意してくれたタクシーには乗らず歩いて帰ることにした。酔いのせいか少し顔が火照るので、夜の凛とした冷気にさらされたかった。

「あぁ、少し飲みすぎちゃったかなぁ・・・」

 繁華街からいつしか八丁堀のビル街へと歩いていた。
 もう少し行けば今日宿泊のホテルが見えてくるはずだ。

 しかし惠の足取りは重かった。
 顔が火照るだけではなく、身体全体が何故かだるいのだ。酒のせいだろうか、それとも、久々に長時間列車に乗った疲れからだろうか。

「ほんとマジでだるいよ~。早く風呂でほぐさなきゃ。」


 惠はホテルに戻るとすぐにバスタブの湯のコックをひねった。
 湯を張っている間に、冷蔵庫を開けてミネラルウォーターをぐいっと飲んだ。酒を飲んだ後は水が一番だ。

 部屋の電気を消した。そして窓のカーテンを開けて外の景色を眺めた。部屋は14階なので夜景もまずまずと言える。さすがに政令指定都市の広島市だけあって窓から見える灯りも賑やかだ。

「ふ~む、いい眺めだなぁ。ここに彼氏がいたらなおいいんだけどなぁ。あはは。」

 惠には今付き合っている彼氏がいる。今日、1、2通のメールは交したがまだ声は聞いていない。

「寝る前に電話しよう~っと。ん?もうお湯が張れたかな?」

 風呂を覗くともう湯はほぼ張れている。
 惠はバッグを開けて着替えの下着を取り出した。黒のキャミソール、黒のブラジャー、そして黒のTバックのセットだ。明日着る洋服が黒っぽいので合うだろう。
 着替えの下着を一旦ベッドに置き、着ていたジャケットをクローゼットのハンガーにかけた。

「出張用なのにちょっとセクシー過ぎたかな?でも私、黒のTバック好きなんだもの~。それにあの人も黒のT大好きだって言ってたしぃ。うっしっしぃ~。あ、でも、今日は関係ないか。あははははは~。こう言うのって場違いって言うのかな?」

 惠は後で着替える黒の下着を見て、ひとりつぶやいていた。


   風呂はバスタブとトイレとが一体になったユニット型だ。いささか狭いが、ビジネスなら贅沢も言えない。
 バスタブに身体を沈めると、潤沢に張った湯が溢れ出る。少し熱いめだが、疲れた身体にはちょうど良い。

「ふぅ~、気持ちいい~・・・」

 惠は明日のスケジュールを考えていた。午前中打合せを行って、昼には解放される。

「安芸の宮島に行こうかなぁ~?まだ行ったことないし。それとも早く新幹線に乗って帰ろうかな?」

 入浴にたっぷりと時間を掛けた惠は、その甲斐あって、酔いも冷めて少し気分がよくなっていた。
 しかし、身体のだるさがいっこうに抜けない。

「あぁ、腰がだるい・・・どうしたんだろう・・・生理でもないのになぁ・・・」

 惠は室内に置いてあったサービスプログラムを開いた。

『ボディ・リフレッシュ
不調個所を刺激することにより血行を促進し、お客様の抱えている様々なストレスや日常生活での疲れ(肩こり、腰痛など)を、改善へと導きます。 ゆったりとしたベッドにて、心地よい音楽を聴いていただきながら、お好みの力加減にて施術を行います。』

  「あぁ、あった、あった。これだわ・・・」

 プログラムの一番下に、マッサージサービスの記載があった。
 惠はフロントへ電話をかけた。

「もしもし・・・」
「はい、フロントでございます。」



第2話


 電話に出たのは女性のホテリヤであった。

「あのぅ・・・マッサージをお願いしたいんだけど。」
「マッサージでございますか?はい、すぐに手配させていただきます。15分ほどお待ちいただくことになりますが、よろしゅうございますか?」

 まだ歳は若いようだが、丁寧で落ち着いた口調が惠に好印象を与えた。

「15分ね。分かったわ。じゃあ、お願いね。」

(ガチャン・・・)

 15分と言うことは、マッサージ師はおそらく近所で待機しているのだろう。
 マッサージ師は男性だろうか?それとも女性?
 できれば女性の方がいい、惠は思った。
 それなりに名前の通ったホテルだし妙な間違いはないにしても、やはり個室に男性と二人きりになると言うのは緊張もあるし、不安がまったくないとは言い切れない。

「あれこれ考えたって仕方がないか。男か女かどっちかが来るんだし~。考え過ぎ~、考え過ぎ~。あははははは~」

 微かな不安が頭をかすめたものの、惠はすぐに思い直した。
 両手を上に伸ばし背中からベッドに寝転んだ。
 分厚いクッションが華奢な惠を跳ね返し小さくバウンドした。
 弾みでバスローブの裾がまくれあがり、太股があらわになった。
 カモシカを髣髴させるようなよく引締まった美脚は社内でも評判で、社員食堂で惠がテーブルの端に座っていると、つい見惚れる男性社員も少なくなかった。
 それもそのはず、惠はアマチュアながらモデルの依頼もあり、まれに撮影会へも顔を覗かせていた。

   惠はマッサージ師が来るまでの間、有線放送から流れる音楽を聴き時を過ごしていた。
 ポップスを少し聴いたあと、チャンネルをクラシックに合わせてみた。
 聴き慣れたとても美しいメロディが流れてきた。

「あ、ショパンのノクターン2番だわ・・・」

 惠はしばし甘美な旋律に耳を傾けていた。きら星のように輝くコーダの美しさは特に惠のお気に入りの部分であった。

「あぁ、うっとりするぅ・・・」


(ピンポン~)

 その時、玄関の方で来訪者を告げるチャイムが鳴った。

「あっ、マッサージ師さんだわ。は~~~い!ちょっと待ってね~!」

 惠は急ぎ足で玄関口まで行き、念のためドアスコープから外を覗いた。
 男性が立っている。歳は30代半ば位だろうか。

「は~い」 「おじゃまします。ボディリフレッシュにまいりました。」
「はい、ちょっと待ってね。すぐに開けますから。」

(ガチャッ)

 ドアを開けると男性はペコリとお辞儀をした。
 背が高くかなり痩せている。
 栗色の髪を長く伸ばし、驚くほどの美形であったため、惠は面くらってしまい思わず言葉を詰まらせてしまった。

「あのぅ・・・」
「はい・・・?」
「入らせていただいていいですか?」
「あ、ごめんなさい。どうぞどうぞ。」

 惠は男性を中へ案内した。
 広めを借りたつもりでも、ホテルのシングルルームはやはり狭い。
 椅子も1つしかないため、椅子は男性に与え、惠自身はベッドに腰を掛けることにした。

「三谷です。どうぞよろしく。」
「花塚です。こちらこそよろしくお願いします。」
「どちらから来られたのですか?」
「東京からです。」
「お仕事で?」
「はい、今日明日仕事で。」
「それはお疲れでしょう。で、どんな症状ですか?」



第3話


 自ら名前を名乗ってきた潔い態度には好感が持てる。
 惠もつい仕事と同じように挨拶を返してしまっていた。
 三谷と名乗るマッサージ師は物静かな口調で早速惠の症状を聞いてきた。

「腰がすごくだるいんです。それと、肩も凝ってるんです。」
「そうですか。分かりました。では、先ずバスローブを脱いで、バスタオルを身体に巻きつけた姿になってもらえますか。」
「は、はい。」

 三谷の目前で着替えるわけにも行かず、惠は風呂場に行きバスローブを脱ぎ下着姿になって、バスタオルで胸と腰を覆った。

(これでいいかなあ?)

   鏡の中を覗き込み自分を確かめる。

「なんか緊張するなあ・・・」

 惠はそっとつぶやいた。

 バスタオルを巻きつけた惠はベッドへと戻った。
 ベッドの傍らには三谷が行儀よく椅子に座って待ってくれている。

「お待たせしました。じゃあ、お願いします。」

 惠は自らの緊張を解きほぐすかのように、わざと明るい声で三谷に語りかけた。

「じゃあ、ベッドにうつむけに寝てもらえますか。」
「はい。」

 惠は枕に肘を乗せ、三谷の指示どおり仰向けに寝転んだ。

「では始めます。先ず部屋を少し暗くして、音楽を流します。」

「はい・・・」  音楽はいいとして、部屋の灯りを暗くすることにはかすかな抵抗があった。
 だが断るわけにも行かず、惠は三谷に任せることにした。

 しばらくすると部屋が薄暗くなり、川のせせらぎのような音が聴こえてきた。

「水の音は人にリラックスを与えてくれます。部屋を暗くするとさらに効果が上がります。」
「そうなんですか・・・」

「では今からマッサージをします。」
「はい・・・」

 三谷が最初に触れた箇所は首筋であった。

  「はじめに、緊張を和らげるマッサージを行います。」
「はい・・・」

 三谷の指は温かだった。
 そして華奢な感じがした。

 首筋に指が宛がわれ、軽い指圧が始まった。

  (あぁ、気持ちいい・・・)

「かなり凝ってますね。」
「やはりそうですか。」
「はい、かなり硬いです。」

 首筋に指圧が施された後、次に上腕部へと移った。
 気持ちがよくて、疲れがす~っと引いていくように感じられた。
 指圧はあくまで緩めだが、ツボを心得ている者が行うと力など要らないのかも知れない、と惠は思った。

 指は背中へと移動した。
 背中から脇にかけて、外から内に、内から外へと円を描くように手のひら全体を使って軽く撫でられた。

(うわぁ・・・すごく気持ちいい~・・・)

 同じ動作が2分ほど繰り返された頃、全身の力が抜けていき、眠っていた何かがかすかに目を覚まし始めていた。
 ただ今の惠にはそれが疲労回復の兆しであると言う認識しかなかった。

(あぁ・・・でも何かへん・・・身体が熱くなっていく感じ・・・)


 指は背骨の両側へと移動し始めていた。

「いかがですか?この辺りに腰のツボがあるんですよ。」
「うううっ、そこ、すごくいいですぅ・・・」
「この辺りに指圧を加えると腰の疲れが取れると言うだけではなく、他にも効果があるんです。」
「うっ、うっ、どんな効果があるのかしら?」



第4話


「はい、実は子宮の働きを促進させる効果があるんです。」
「え・・・?子宮の働きを・・・?」
「はい。」

 そう言われれば確かに、背骨の両側に潜む腰のツボを指圧されることで、刺激が下半身に伝わり、下半身自体がだんだん熱くなっていくような感じがする、と惠は思った。
 だが、惠としてはその感覚を言葉にするにはためらいがあった。

「いかがですか?」
「は、はい・・・気持ちいいです・・・」
「そうですか。」


 背骨の両側へのマッサージが終わると、指圧は足先へと移った。
 三谷は惠の足首を持って、足指の間に指を一本ずついれて入念にマッサージを施した。

「あぁ~・・・」
「いいですか?」
「はい・・・すごくいいですぅ・・・」

 次に、指圧は土踏まずへと移った。
 三谷は土踏まずを中心に足裏を親指で入念に指圧しながら、ふくらはぎを膝裏まで揉み始めた。

「い、いたっ・・・」
「痛いですか?」
「ええ、でも、痛いけど気持ちよさも入り混じって・・・」

 同じ動作が10分ほど続いた。
 初めのうちは、時折顔をしかめていた惠であったが、身体がほぐれていくに連れ、次第にうっとりとした表情へと変わっていった。
 惠は身体が癒されていく快感とともに、別の快感が芽生え始めていることをすでに気づいていた。

「どうしたのですか?顔が少し紅いようですが?」
「え?そうですか・・・?身体が温もってきたからじゃないかしら・・・?」
「もしかして、感じてきたとか?」
「そっ、そんなことぉ・・・」
「感じてきたとしても全然恥ずかしいことじゃないですよ。」
「いやだわぁ・・・感じてないですよ。あはは・・・」

 惠は本心を見抜かれまいと、懸命に嘘をついた。

 女性はバストやヴァギナといった超敏感ポイントでは、性感が容易に高まるものだが、手足などのパーツ部はなかなか高まらない。
 ところが、そんな高まらない遅い先端部分をゆっくりと揉みほぐし性感を先に高めることが、実は、より激しい性感を求めるための隠し技であったが、当然、惠がそれに気づくはずもなかった。
 また、遠い先端部分から指圧を行うことはまことしやかであり、相手に安心感を与える効果もあった。

 三谷は足指と同様に、腕や手の指も一本ずつ丁寧にほぐした後、付け根から二の腕まで爪をやさしくあてて撫で上げていった。

「あぁ・・・」

 撫で下ろす時は、腕の裏側や側面を指使いを変えて刺激した。
 三谷はその延長で、意外な行動に移った。
 突然、揉んでいた指を自分の口に咥え、一本ずつしゃぶり始めたのだ。
 これには惠も驚き、思わず声を荒げてしまった。

「きゃっ!いやっ!そんなこと!」
「驚かせてすみません。でも、だいじょうぶですよ。これも指圧の一環ですので。」

 三谷はそういうと、悪びれることなく、再度惠の指を口に咥えた。
(ちゅっ・・・ちゅっ・・・)

「あぁ・・・・・・」
(ちゅっ・・・ちゅっ・・・)

「あぁぁ・・・いやぁ・・・」
(ちゅっ・・・ちゅっ・・・)

「いかがですか?満更でもないでしょう?」
「・・・・・・」

 まるで愛撫とも取れる指へのマッサージは終了した。
 その頃、ショーツの中はぐっしょりと湿ってしまっていた。

「では次にローションを使ってマッサージをしましょう。」

 三谷はそうつぶやくと、惠の肩や膝といった丸みの有る部分にはローションを塗り始めた。



第5話


(な~んか性感マッサージみたい・・・いや、でも、そんなことはあり得ないわ。ここはちゃんとしたホテルなんだし、まさか、そんな変なマッサージ師を呼ぶことはないはずだわ・・・変なことをしたらホテルの信用問題になるんだもの・・・)

 惠はふとマッサージ師が指に施した意外な技に、いささかの疑念を抱いた。
 だが、メジャーなホテルがそんないかがわしいマッサージ師を呼ぶはずは無い、と一笑に付してしまった。

 三谷は惠にロ-ションを塗り込めた後、五本の指先を立て、わざと爪の表面を肌に当てながら、じんわりと開いたり閉じたりする。
 これだけの動きで、女性はくすぐったいような新快感を得られ、惠の性感はじんわりと高まり始めていた。

(あぁぁ・・・やだわぁ・・・なんか感じてくるわ・・・)

 実は愛撫のハイテクニックに、女性の肌に触れる際、指先や手のひらだけだけではなく、爪と手の甲をうまく織り交ぜる技があることを、素人女性の惠が知るはずもなかった。
 ところが、三谷にまったく不自然さがなく、流れるように指圧が加えられていったため、惠はその心地よさに自然と和んでいった。

 三谷のローションを使ったマッサージは1区切り終わり、惠は仰向けになるよう促された。
 惠はバスタオルが肌蹴ないよう指で押えながら、ゆっくりと仰向けになった。
 部屋が明るければ、三谷と目を合わせ少し罰が悪いところだが、幸い部屋の照明が落とされていたため、仰向けになることに惠にためらいはなかった。

(次はどこをマッサージされるんだろう・・・何か恥ずかしいなぁ・・・)

 三谷が惠の横に寄り添うように近づいて来た。
 惠の心拍が高まる。

   三谷が次に宛がった箇所は臍の辺りであった。

(うわぁ・・・ドキドキするわぁ・・・)

 親指から小指まで、五本の指を巧みに小さく円状に動かしながら、手は移動した。
 三谷は下腹部に手のひらを当て軽くバイブをかけながら、五本の指の腹部分が、臍・脇腹・あばら骨下に当たるように調節しながら、それぞれ独立した動きがなされた。

(あぁぁ~、これは効くわぁ~・・・)

 三谷はしばらく同じ指圧を続けた後、いよいよバストへと移動させた。
 バスタオルの下はブラジャーなしの素肌なので、三谷はおそらく指で乳房の形状を感じ取るだろう、などと惠はふと想像してしまい、恥ずかしさに顔を染めた。

 バストへの指圧は下から揉みあげるように手のひらを裾野にあて、乳首周辺や脇のラインなどに小刻みなタッチで施された。
 指圧とは言っても、愛撫とほとんど差別がつかないくらいだったが、それはさして長い時間ではなかった。

 次に指は脇腹と腰のほうへ移った。
 三谷は5本の指をそろえて、指の腹を肌に軽く当て、下から上へとハケで払うようにさっと愛撫した。

 しかも三谷の指は単調ではない。
 場所によって、速度に強弱がつけられ、いく通りもの刺激となって惠の性感を目覚めさせていく。

(あっ、あっ、あっ・・・・・・やだわぁ~・・・感じちゃうわぁ・・・あぁん・・・・・・)

「どうですか?気持ちいいですか?」
「あぁ・・・すごくいいです・・・」
「だいぶ解れてきたようですね。それじゃ、すみませんがもう一度うつ伏せになってもらえますか?」
「はい・・・」

惠は言われるままに、再度、うつ伏せになった。

「次は太股とお尻を指圧します。」
「は、はい・・・」

うつぶせに寝た惠の太股が今までとは打って変わって豪快に揉み解された。
5本の指は内股から徐々に股間へと移動していく。
惠の胸の鼓動が同時に高まっていった。



第6話


「かなり凝っているようですねぇ。」
「い、いたぁ~・・・分かりますかぁ?」
「はい、すごく硬いですね。それじゃ、とっておきの技を使いますか。」
「とっておきの技?」
「はい、少しディープな技ですが、我慢してくださいね。」
「・・・!?」

 ディープな技と聞き、惠は不安に駆られた。
 だけど三谷はすでに次の行動に取り掛かったようだ。

「舌や唇を使いますが、勘違いしてもらっては困ります。決して愛撫ではありませんので。あくまでマッサージの一環ですので。では、バスタオルを取ります。」
「え?バスタオルを!?いいえ、それは困ります!」

 惠がしゃべり終える前に、三谷はあっさりと惠のシャープなボディに巻かれていたバスタオルを取り外してしまった。
 いくら暗いからと言っても、見知らぬ男の前で全裸は困る。
 惠は抗議しようとしたが、それよりも早く三谷が背中に覆いかぶさってきた。

「いやっ!そんなぁ~!」

 惠は狼狽しているが、対照的に三谷はまったく動じない。ただ次の惠への行動に没頭しようとしている。

 まもなくひんやりとした感触が惠の背中を走った。先ほどのローションを再び滴らせたようだ。
 三谷の手のひらが円を描き、冷たい感触がすっと拡散していく。

   次の瞬間、生暖かく柔らかい感触が背中を捉えた。
 まるで軟体動物のようだ。
 それは三谷の舌だった。

「そ、それはダメですぅ・・・あぁ・・・」

 指とはまた違った舌特有のねっとりとした感触が惠の性感をくすぐる。
 拒んではみたものの、ゾクゾクした感触がたまらなく良い。

(ペチョ・・・ペチョペチョ・・・)

「いやですぅ~・・・あぁぁぁ~~~・・・」


   三谷は、惠の背中、続いて腰へと舌を移動させていく。

「あぁぁぁ~・・・あぁぁぁ~・・・」

 腰がジンジンと痺れてくるようだ。


 惠はまたもや仰向けの態勢をとった。
 唇による愛撫のようなマッサージは表へと移った。
 鎖骨の溝を攻め始めた。
 時間を掛けて入念に舌技が続く。

  「あっ~・・・あぁぁ・・・あぁぁぁ~・・・」

 だんだんととろけていく感じがする、と惠は思った。

(あぁ・・・もうだめぇ・・・拒めないわ・・・すごい気持ちいい・・・)

 舌は惠の耳を捉えた。
 女性の顔の中でも特に敏感な部分である。
 舌をすぼめ、耳の穴を攻めてくる。

「いやぁ、そこはだめぇ、くすぐったい・・・」

 実は耳や鎖骨の溝といった窪み部分には、強い性感がひそんでいることを惠は知らなかった。
 先端を尖らせた舌先を一気に耳穴奥まで進入させ、ピストン運動の要領で出し入れさせて、女性にゾクゾク感を与えたり、舌を一杯に広げて、鎖骨上部の溝をぺろんぺろんと舐め上げたりと、舌は指以上に変幻自在の刺激を与えることができるのだ。
 三谷の次から次へと繰り出すスゴ技の前に、惠の性感はすでに最高レベルへと近づいていた。

(あぁぁっ・・・もうだめだわぁ・・・あぁ、どうしよう・・・ああっ・・・)

 三谷の舌技は続く。
 舌は再び下半身へと移行した。
 惠は仰向けのままで軽く立膝にされ、太股の付け根と骨盤の二箇所を丁寧に舐め上げられた時、ついにたまらなくなって甘い声を漏らしてしまった。
 その頃、亀裂からおびただしい蜜が溢れ出していることを、惠はまだ気づいていなかった。



第7話


「マッサージしにくい場所なので、バスタオル外しちゃいますね。」
「え?いいえ、それは結構です・・・あっ・・・・・・」

 惠が断るよりもいち早く、三谷は腰に巻きつけていたバスタオルを有無もなく取り去ってしまった。

 惠は一糸まとわぬ全裸になってしまった。
 惠はただ戸惑うばかりであった。
 これは本当にマッサージのためなのだろうか、それとも、別の目的で・・・

 考えるいとまもなく、三谷の指が股間に伸びてきた。

「あらら・・・すごく濡れてるじゃないですか?」
「え・・・?」
「うふふ、マッサージされて感じちゃったんですね?」
「いいえ、そんなことは・・・」
「嘘を言ってもダメですよ。身体は正直なんだから。」
「・・・・・・」
「それじゃ僕の奥義を見せてあげます。」
「奥義・・・?」

 三谷はそうつぶやくと、膣入口を人差し指と中指で探りながら、クリトリスやヴァギナにたっぷりとローションを塗り始めた。

「あぁっ・・・」

 鋭敏な箇所を冷ややかな感触が襲う。
 続いて、三谷はクリトリスの包皮をゆっくりと押し拡げた。

「あっ・・・そこは・・・あぁ・・・いやっ・・・」

 三谷の指先が巧みにうごめく。
 拡げられたクリトリスにも、ローションが塗り込められた。

  「ああっ・・・」

 中指が膣の中へ滑り込んだ。

「もうヌルヌルになってるじゃないですか。」
「いやぁ・・・恥ずかしい・・・」

 滑り込んだ中指が膣上部のGスポットに触れ、指腹でかき出すように刺激された。

「あぁぁぁ~・・・・・・」

 同時に、剥き出しにされたクリトリスへも指による刺激が開始された。
 膣の内外から強い振動が伝わってきて、惠は艶声をあげずにはいられなくなっていた。

「あぁぁぁ~~~・・・だ、だ、だめぇ~~~・・・いやぁ~・・・そんなに擦っちゃぁ・・・あぁ!・・・いやぁ~・・・・・・」

 無意識のうちに爪でシーツをかきむしる惠。
 三谷の指技の前になすすべもなく、絶頂への階段を駆け上がろうとしていた。

「あぁぁぁぁぁ~~~・・・あぁぁぁぁぁぁ~~~・・・いやぁぁぁぁぁ~~~・・・だめぇ~~~~~~・・・・・・」

 指の速度が増して行く。

「ああっ!いやっ!だめっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!」

 膣からはおびただしい愛液が溢れ、シーツにまで滴り落ちている。
 惠は昇り詰めていく自分を抑えることができなくなっていた。

「イキそうになってきましたか?イケばいいんですよ。抑える必要などありませんから。」
「あああっ!!イ、イクっ!!イクッ!!イっちゃぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~~~~!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~!!!!!」

 クリトリスとGスポットへのダブル指攻めで、限界にまで高められた惠は、ついに絶頂に達してしまった。

 惠が夢路をさまよっていると、まもなく三谷が上から乗ってきた。

「いやっ、それはだめっ!」

 惠は抵抗しようとした。
 だが力が入らない。
 女性は絶頂に達した直後は、しばらくまどろみ状態であり、力が入らないのだ。
 三谷はいつズボンを脱いだのか、いつのまにか下半身を覆うものはなくなっていた。
 惠の両足は簡単に拡げられてしまい、三谷が割って入ってきた。



第8話


 絶頂到達が指の愛撫によるものであったとしても、ひとたび桃源の味を知り染めた女性が、さらなる悦楽の波を躱すことは容易ではなかった。

   蜜壷は三谷の指技によって、とろとろに蕩けてしまっている。
 いきり立った肉棒が蜜壷を捉えた。
 クチュッと言う淫猥な音が聞こえた。

「あぁっ・・・・・・」

 喉の奥から少しかすれた声が漏れた。

(グチュッ、グジュジュ~・・・)

 亀頭を挿し込んでしばらく惠の様子を窺っていた三谷は、さらに腰を深く沈めた。
 幹の半分ぐらいが埋没した。

「あぁ、だめっ・・・いやっ・・・あぁ、だめっ・・・ああっ!あぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~・・・・・・!!」

(ズンズンズン!ズンズンズン!)

「あぁ、す、すごい・・・ああっ・・・はふぅ~・・・ああああああっ!!」

(ズンズンズン!ズンズンズン!)

 いつしか惠は海老のように身体を丸くさせられ、その上から三谷が体重をかけるように肉棒を挿し込んできた。
 屈曲位である。
 正常位のバリエーションではあるが、一般的な正常位よりも深く結合できる特徴を持つ。
 三谷は惠に覆い被さるような姿勢になっているが、惠に体重がかかりすぎないように両手でうまくバランスをとっている。
 女性は男性のこういった配慮に気づくことは少ないが、『できる男』は女性の見ていない場面でも、このような細やかな気遣いをごく自然に行っている。
 しかし利発な惠は昂ぶりのさなかであっても、三谷の気遣いをすでに見抜いていた。

(ズンズンズン!ズンズンズン!ズンズンズン!)

「あぁ、あぁ、あぁっ!あぁ、あぁ、あぁぁぁぁぁ~・・・・・・」

 いくら男性がかばっても、屈曲位が女性の腰に負担がかかる体位であることには変わりはない。長時間に及ぶと女性の腰に疲労が溜まってしまう。
 三谷はいったん動きを止め、仰向けになっている惠を起こした。
 逆に三谷が仰向けに寝転び、惠を招いた。
 騎乗位への転換である。

   惠はもう拒まなかった。
 三谷に誘導されるがままに、彼の怒張したものがそびえる腹部に乗った。
 
(ズニュッ・・・)

  「あぁっ・・・・・・」

 惠はゆっくりと腰の上下動を開始した。

(ヌッチュ、ヌッチュ、ヌッチュ、ヌッチュ~)

「あぁぁぁ~・・・深く入ってるぅ~・・・あぁぁぁぁぁ~~~・・・」

(ヌッチョ、ヌッチョ、ヌッチョ、ヌッチョ~)

「はぁぁぁぁぁ~~~・・・あぁ~ん~・・・あぁ、あぁ、あぁ・・・あぁぁぁぁぁぁ~・・・・・・」

(ズンズンズン!ズンズンズン!ズンズンズン!)

 惠は腰をなまめかしく揺らし嬌声を奏でる。
 動きもいつしかダイナミックに変わっていた。
 その姿はまるでツービートで舞う踊り子のように見えてくる。

 三谷の動きが急に激しさを増した。
 下からの突き上げは、腹筋を駆使し、捻じ込むような動きに変わっている。
 これには惠もたまらなくなったのか、髪を振り乱し激しく喘いだ。
 身体がガクガクと揺れている。
 惠は感極まったのか、突然身体を前屈させてしまった。
 顔が接近したことで、三谷が惠の唇を奪った。
 接吻・・・
 だが、ふたりの腰の動きはとどまるところを知らない。
 密着しても騎乗位のままで激しく揺れている。
 三谷の腕は惠の背中に回っている。
 キス、キス、キスの雨・・・
 弾け飛ぶ理性・・・
 深い結合・・・ 
 激しいバイブレーション・・・

 そして次第に押し寄せてくる高波・・・



第9話


(ズンズンズン!ズンズンズン!ズンズンズン!)

 騎乗位は女が垂直になる時に最も深く結合する。
 女が前屈すれば、結合は浅くなってしまう。
 だけど、男が自分の膝を少しもたげるだけで深さは十分に確保できる。
 三谷は膝を立て腰を押し出すような姿勢で突きまくった。
 惠は何か言葉を発したようだが、喘ぎ声と混在してすでに呂律が回っていない。

「あぁ~そこっ・・・ふぁ~・・・いい・・・あっ・・・いやっ・・・すご!・・・はふぅ~、あぁぁ~・・・そこぉ~・・・あぁ、いい~・・・はぁ~ん~・・・」

(ズンズンズン、グリュグリュグリュ~・・・ズンズンズン!グリュグリュグリュ~・・・!)

 三谷は肉棒を深く押し込んだあと、引き戻さず、円を描くように回転させている。
 そのため、奥の方で肉と肉とが激しくこすれ合う。

「あ、あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁ~~~~~そこはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~・・・」
「はぁはぁはぁ、ここ、いいの?」
「いい、いい、いい~・・・あぁぁぁぁぁ・・・あぁぁぁぁぁ~~~・・・」

(グリュングリュングリュン・・・グリュングリュングリュン・・・)

「あっ、あっ、あっ、あっ・・・あっ、すごく・・・いい~~~~~~!!」

(グリュングリュングリュン・・・グリュングリュングリュン・・・)

 惠はこの歳になるまで何人かの男性と肌を重ね合わせたが、これほど奥地で快感を与えてくれる男はいなかった。
 奥地で味わう快感は、クリトリスやGスポットとはまったく違う。
『身体の芯』が覚醒していくような不思議な感覚に酔いしれる。
 初めて経験する甘美な旋律とスパイシーな響き・・・

 惠が絶頂への階段を駆け上がるのに、多くの時間を要しなかった。
 高波はついに防波堤を突き破ってしまった。

「あぁ、だめぇ・・・あっ、だめっ! イクっ!イクっ!イクっ! あぁぁぁぁぁ・・・イクぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・・・・!!!!!」


 ベッドに備え付けてある目覚ましが、けたたましく鳴り響いた。

「ううむ・・・・・・・・・」

 惠はゆっくりと眼を覚ました。

「ふぁ~・・・・・・」

 惠の脳裏に昨夜のマッサージ師がぼんやりと浮かんだ。

「あぁ・・・昨夜はすごいことしちゃったぁ・・・・・・まさかあんなことになるなんて・・・・・・」

 よいセックスをした翌朝は、普段とは違う『心地よい疲れ』が残っている。  

「はぁ・・・・・・・・・」

 めくるめく悦楽の昨夜・・・
 歓喜にむせび激しく乱れてしまった・・・
 思い出すだけで顔が赤くなる・・・

 惠はベッドの中でまどろみながら、昨夜のことを回想していた。

「あっ、だめだわ。今日大事な仕事なのに・・・」

 昨夜の余韻を振り切るかのように、惠はベッドから飛び起きた。

「ん?あら、ちゃんとパジャマ着てるじゃん。あはは、案外行儀の良い私。あはははは・・・ん?でも、おかしいなぁ。昨夜エッチの後寝ちゃったと思うんだけど。いつパジャマ着たのかしら。もしかして、あの優しい彼が着せてくれたとか・・・。でも、まさかねえ・・・。まぁ、いいや、起きよっと。」

 惠は化粧ポーチからリングレットを取り出し、髪を後で束ねた。
 ふだん滅多にポニーテールにはしない惠だが、洗顔時は例外だ。

 惠は洗面所に行こうとした時、床に何か落ちているのを見つけた。
 それは黒っぽくて皮紐のようなものだった。

「ん?何これ・・・?携帯用のストラップじゃないの・・・」

 それはシンプルなレザー製でメンズライクなものだった。



第10話(最終回)


 もちろん惠のものではない。
 チェックイン以降この部屋に入ったのは自分と昨夜のマッサージ師である三谷だけ。
 たぶん三谷が落としたのだろう。
 惠はしばらくストラップを眺めていた。
 甘い蜜のような昨夜の出来事が瞼に浮かんんできた。
 惠は急に恥ずかしくなってポッと頬を染めた。

 惠は思い返したように手に持っていたストラップをテーブルに置いた。

「さあ、仕事、仕事。その前に朝食に行かなくては。」

 ほぼ身支度も終えたところで、朝食をとることにした。
 朝食は1階のカフェレストランでバイキングだ。
 惠は部屋を出て1階に向かった。
 手には先ほどの携帯用ストラップが握られていた。

 惠はカフェレストランへ行く前にフロントに寄ることにした。
 フロントはチェックアウトの客で賑わっていた。
 そんな中で手の空いている女性のホテリアが、惠の姿を見るとすぐに笑顔で挨拶をしてきた。

「おはようございます。」
「おはようございます。」

 惠は挨拶を返したあと、すぐに用件を告げた。

「あのぅ、これ、昨夜のマッサージ師さんの忘れ物なんです。すみませんが本人に返しておいてもらえませんか?」
「はい?マッサージ師さんの・・・ですか・・・?」

 女性のホテリヤは訝しげな表情に変わった。

「はい、部屋に落ちていたのでたぶんマッサージ師さんの物だと思うんですけど。他に誰も入ってませんし・・・」
「それはおかしいですね・・・」
「え?どういうことですか?」
「はい、確かに当ホテルでは、以前はマッサージサービスをうけたまわっていたのですが、昨年、依頼先がつぶれてしまってからはお受けしていないんです。そんな訳で、昨夜もマッサージ師を呼んではいないはずなんですが・・・」
「ええ~~~!う、うそっ・・・!そんなはずないわ。昨夜、部屋からフロントに電話をして呼んでもらったのよ~。」
「そ、そんなはずはないと思うのですが・・・」
「じゃあ、昨夜来たのは誰なのよ~。」
「そうは申されましても・・・」

 信じられないようなホテリヤの返答に、驚いた惠はつい声がトーンが上がってしまった。
 女性のホテリヤは困り果てている。

「昨夜フロントにいたホテリヤは今いるの?」
「はい、私どもですが・・・」

 ホテリヤ同士が惠には聞こえないように小声で会話を始めた。

「もういいです。」

 フロントとこんな問答をしていても埒が開きそうにない。それに仕事の時間に間に合わなくなってしまうかも知れない。
 惠はフロントに見切りをつけ、カフェレストランへと向かった。

「ったく・・・いったい、どうなってるよ。まるでキツネにつままれたみたい・・・」

 惠は吐き捨てるようにつぶやいた。


 惠は白いコーヒーカップを傾けながら、あることがふと頭をかすめた。

「もしかして・・・・・・もしかして、あれって夢だったとか・・・?」

 もしかしたら疲れていて、夢を見たのかも知れない。
 それならば、ちゃんとパジャマも着ていた理由も分かる。

(でも・・・・・・)

 であれば、携帯のストラップは誰のものなんだろう。
 前の客の忘れ物なら、きっと清掃員が見つけるはずだ。

「間違いないわ・・・・・・彼は来た・・・・・・」

 惠はカフェレストランに向かう途中、身体の奥からネットリとしたものが溢れ出してくる感覚に襲われていた。
 クロッチがべとついて気持ちが悪い。
「部屋に戻って、もう一度パンティ穿き替えなくちゃ・・・」

















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