第4話

 きょうこは一瞬ためらったが、芳雄の無言の圧力に押され一歩踏み入れた。

「では早速だが脱いでもらおうか」
「……」
「何をしておる。入口で突っ立ったままで。早く入って来なさい」
「はい……」

 きょうこは布団が敷かれている場所まで進むと、芳雄の指示に従いおそるおそる衣服を脱ぎ始めた。
 緊張のせいか身体が小刻みに震えている。

「そんなに怖がらなくてもいい。取って食おうと言う訳じゃないんだから」

 きょうこは思った。

(別に食べられる訳じゃなくても、お義父さんの前で脱ぐことは食べられる以上に恐ろしいこと……)

 きょうこがその日、身に着けていた服装は、白のブラウスと紺色のラップスカートだった。
 質素だが良家の若奥様らしく、シンプルで品のある装いである。
 きょうこはためらいながらブラウスのボタンをひとつひとつ外した。
 やがてほの白い肩先と淡いベージュ色のストラップがチラリと見えた。
 ゾクッとするほどの色香が部屋内に漂う。
 白いブラウスを脱ぎ去ったきょうこは、伏目勝ちにスカートに手をやった。
 淡いベージュ色のキャミソールの下には、同色のブラジャーが透けて見える。
 スカートが畳にずり落ちた。
 芳雄はゴクリと唾を飲み込む。
 視線はしっかりときょうこに注がれ微動だにしない。
 艶めかしい衣擦れの音とともにキャミソールがきょうこの肌から離れた時、芳雄がぽつりと呟いた。

「ふっふっふ、期待にたがわぬいい身体をしているね。後は私が脱がせてあげるよ」

 芳雄の言葉に反発するようにきょうこは言った。

「いいえ、自分で脱ぎますから」

 いくら浮気のお仕置きとは言っても、下着を義父に脱がされるのは辛い。
 自分で脱ぐ方がまだよい。
 しかしきょうこのそんなささやかな願いすらも叶わなかった。

「いや、私が脱がせてやる。それとも何かい?私に触られるのがどうしても嫌だと言うのかい?」
「いいえ……分りました……」

「ふふふ、それじゃ脱がしてやるからこちらに来なさい」

 布団の前でためらうきょうこを促す芳雄。
 きょうこは観念して恐る恐る布団に乗った。
 羽毛布団のふわふわとした感触がなぜかきょうこに足枷を彷彿とさせた。

「さあ、ここに座りなさい」

 きょうこは背筋を伸ばしゆっくりと正座をした。
 
「さて、ブラジャーから脱がしてあげようね。ふっふっふ……」

 芳雄は淫靡な微笑みを浮かべながら背中のホックを外す。
 ブラジャーがずり落ちそうになり、きょうこは思わず両手で胸を覆い隠した。
 きょうこの耳元で芳雄がささやく。

「どうせ全てを見せることになるんだ。さあ、手を除けなさい」

 芳雄はきょうこに諦めて素直に従うよう促した。
 観念したきょうこが悲壮な表情で腕を除けると、おわん型の美しい形をした乳房が現れた。

「ほほう、きれいな胸をしているじゃないか。さて、どんな感触かな?ふっふっふ……」

 芳雄の指が乳房に触れた時、きょうこはおぞましさで鳥肌が立った。
 形の良い乳房は芳雄のねっとりとした指で揉みしだかれていく。

「いいね、とても良い感触だ。このおっぱいなら光治以外の男だって触れたくもなるさ」
「お父様、光治さんの名前は出さないでください……」
「おお、これは悪かった」

 芳雄は形だけ詫びると、すぐにきょうこの首筋に舌を這わせた。

「お父様ぁ……だめです……」

 すでに人妻となり充分に開発されている肉体は、わずかな愛撫であっても容易に反応した。
 おくれ毛の辺りの鋭敏な部分まで愛撫する芳雄の舌使いは実に堂に入ったものだった。
 首筋から耳たぶに至るまで隈なく舌が這いまわる。

「あぁ……そこはだめです……」
「ここがだめなら他はいいのか?」
「そういう意味では……」
「ふふふ……」

 芳雄は首筋を中心に愛撫しているが、乳房を揉む手も休めていない。
 両手でしっかりと揉みほぐし、時折乳首をこね回す。

「いやぁ……お父様ったらぁ……」

 愛撫する箇所が次第に下方へと移動していく。
 芳雄の舌が首筋から背中へと移った。

「あぁ、そこはぁ……」

 きょうこは堪らなくなってビクンと大きく反応する。
 舌を避けようと上体を捻じるが、老獪な舌使いはそれを許さない。
 しっかりと乳房を握っているため、芳雄から逃れられないのだ。
 芳雄は背を屈め、背中から腰へとゆっくりと舌を移動する。

「はぁ……いやぁ……」

 乳房へ愛撫していた手はいつしか腹部へと移行している。
 きょうこの身体を撫で回す手は、ねっとりとまるで蛭が這うようにしつこく嫌らしかった。
 芳雄の指がついにきょうこのショーツに触れた。

「だめです!」

 思わずきょうこは拒絶の言葉を発した。


つづく


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