第15話 クレジットカードの使い途

「旦那よ、あやさんをたっぷりとゴチになったぜ。エへへ、アソコの締まりまるでタコツボじゃん。名器の奥さんをもってあんた幸せ者だな~。がはははは~、幸せは独り占めしちゃダメだよ」

 笠原はだらしなく萎えた自身のものをティッシュペーパーで拭きながら、おどけた仕草で俊介の顔を覗き込んだ。

「んぐぐぐっ!」

 俊介はやり場のない怒りに肩を震わせ笠原を睨みつける。

「そう怒るなって。あんたっだって百合と楽しんだんだからお相子じゃねぇのか?そうそう、百合の具合はどうだった?体位一種だけで早々とイッちまうぐらいだから、結構合ってたんじゃねぇのか?がはははは~!」

◇◇◇

 その後あやと俊介は笠原たちの性の奴隷と化し、休む間も与えられず性行為を強要された。
 その行為は通常のセックスだけにとどまらず、レズビアン、3人プレイ、俊介を交えての4人プレイ、はたまた道具を使った変態プレイとありとあらゆる方法であやたちを責め苛んだ。
 あやがロープなどの拘束具で緊縛されることはなかったが、俊介への警戒心は依然強く食事と用便時以外ロープが解かれることはなかった。
 ただし近傍の別荘地から離れているところから声が漏れる惧れがなく、俊介の口枷ガムテープは外された。
 あやたちへの凌辱は深夜まで及んだが、午前二時頃、さすがの笠原たちにも疲労の色が見え、笠原と百合が交互に休息をとることとなった。
 あやたちも仮眠は許されたものの、寝室に行くことは許されず、全裸に毛布に包まってソファで休むよう指示があった。

 次の朝が訪れた。
 午前7時に起床した四人はあやと百合は朝食の準備にかかり、笠原はテレビをつけすぐにニュースにかじりついた。
 銀座の宝石店に強盗が入り犯人は貴金属一億円相当を盗み現在逃走中のため、警察は強盗事件として捜査中であると報じている。

「ふふっ、俺たちを探してやがるぜ。まさかあんたたちの別荘に来てるなんて、神様でも絶対に分かるはずがねぇぜ」
「日本の警察を甘く見ちゃダメだよ。遅かれ早かれ捕まるぞ」
「ふん、余計なお世話だ。ガムテープ外してやったら碌なことしか言わねぇな」
「朝食ができました……」
「おお、腹が減ったぞ!さあ食うぞ!」

 朝食が終わると再び笠原はあやのエプロンをむしり取り全裸にすると後方から犯し始めた。
 俊介は拘束された不自由な身ながら笠原への反抗を考えたが、失敗して自分だけではなくあやがさらにひどい仕打ちを受けることを惧れ実行には移し切れなかった。
 惨めな光景を目にし口惜しくても、ただただ歯を食いしばるしか方法がなかった。

 そんな時俊介はふと窓辺を見つめた。
 笠原の指示でクーラーをつけ窓もカーテンも閉じ外部とは遮断していたが、カーテンの隙間から夏の陽射しが入り、フローリングに反射した陽射しが眩しく俊介の目を射った。

(あっ……そうだ……)

 次の瞬間、俊介にある方法がひらめいた。
 しかし、もし失敗したら彼らに何をされるか分からない。
 危険も伴うが、愛妻がなぶられているのにいつまでも手をこまねいている訳には行かない。
 俊介はごくりと喉を鳴らした。

「あの……腹が痛いんだ。トイレに行かせてくれ……」
「ん?腹が痛いのか?仕方ねぇな、さあ行こうぜ」

 俊介がトイレに向かおうとすると後から笠原が着いてきた。

「心配しなくても逃げたりしないよ」
「あんたが奥さんを置いて逃げるヤツじゃねぇことは分かってるさ。だけど念には念を入れねぇとな。さあ行こうか」

 トイレは廊下の一番奥にある。
 二人は重い空気の中トイレへと向かう。
 トイレの前まで辿り着くと一時的ではあるが縄から解放された俊介は痺れた自身の腕を擦った。

「旦那の携帯は俺が預かってるからどこにも連絡できねぇけど、トイレの中で妙なことをするなよ。まあトイレ内に武器になるようなものは何もなかったけどな」
「分かってるさ。あんたたちに逆らったりしないよ」
「分かってるならそれでいい」

 俊介はトイレに入ってドアを閉めた。
 トイレは入ってすぐ左側に自動手洗い機があり、正面に洋式便器が設置されている。
 さらにその奥には小さな窓があるが、プライバシー保護フィルムが取り付けられているため外からは見えないようになっている。

 俊介は急いでポケットから財布を取り出すと、その中からクレジットカードを引き抜いた。
 そして静かに窓を開けると太陽に向かってカードをかざした。
 カードは太陽光に反射してきらきらと輝いている。
 反射光を放っているのは銀色の鳥などが虹色に光るあのホログラムであった。

 俊介はホログラムに指をあてがい、短い間隔で三回、長い間隔で三回、太陽光を反射させた。
 それは光を利用したモールス信号『SOS』であった。
 繰り返し繰り返しモールス信号を発した。
 大学時代に山岳部に所属していた俊介は、山で遭難した場合に備えてモールス信号『SOS』を習得していた。
 俊介が放った光を記号に置き換えると『・・・---・・・』であり、文字にすれば『ツツツツーツーツーツツツ』となる。
 しかしいくらモールス信号を放ったとしても、誰も気づいてくれなければ何の意味もない。
 俊介は誰か気づいてくれることを祈った。

「お~い、まだか!?早くしろよ~」

 その時ドアの向こうから催促が飛んできた。



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