ファンタジー官能小説『セクスカリバー』

Shyrock 作



<第45章「脱走」目次>

第45章「脱走」 第1話
第45章「脱走」 第2話
第45章「脱走」 第3話
第45章「脱走」 第4話
第45章「脱走」 第5話
第45章「脱走」 第6話
第45章「脱走」 第7話
第45章「脱走」 第8話
第45章「脱走」 第9話
第45章「脱走」 第10話
第45章「脱走」 第11話
第45章「脱走」 第12話

『セクスカリバー世界地図』




<仲間>

シャム 勇者 HP 1460/1460 MP 100/100
イヴ 神官 HP 1130/1130 MP 1340/1340
キュー ワルキューレ HP1300/1300 M840/840
マリア 聖女 HP 940/940 MP 1460/1460
チルチル 街少女 HP 910/910 MP 100/100
ウチャギーナ 風の魔導師 HP 990/990 MP 1410/1410
リョマ 竜騎士 HP 1560/1560 MP 0/0
エンポリオ アーチャー HP 1150/1150 MP 0/0
エリカ ウンディーネ女王 HP 950/950 MP 1450/1450
シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 1530/1530 MP 0/0
ドルジ 騎馬戦士 HP 1380/1380 MP 0/0
モエモエ 竜魔導師 HP 1010/1010 MP 1350/1350
ルシウス 光の魔導師 HP 1090/1090 MP 1300/130

<逃亡中>
アリサ 猫耳 HP 1200/1200 MP 0/0

<ムーンサルト城>
ユマ 姫騎士 HP 1220/1220 MP 0/0
メグメグ 司令官 HP 1350/1350 MP 0/0

<ジャノバ城>
ジュリアーノ 国王 HP 1400/1400 MP 0/0

⚔⚔⚔



第45章「脱走」 第1話

 大のパン好きを自認するシャルルは、水晶玉に映った包装紙『Panetteria Z』が、ポルケにある有名なパン屋のものだとすぐに言い当てた。

シャルル「あそこはかなり有名なパン屋だよ。クロワッサンが特に美味いんだ。だけど船では行けない場所なので行ったのは数えるほどしかないんだ」

 彼の話だと、『Panetteria Z』は、ポルケにある有名なパン屋だという。つまり、占ってもらった頃、アリサはポルケにいたことになる。
 他の情報も含めて整理してみると、アリサの次のような経路をたどったことになる。

~アリサの足どり~ ムーンサルト ➡ ピエトラブル ➡ ポルケ ・・・ 野宿またはタデミオール村宿泊・・・ カミルナ(ポルケ以降は推定)

イヴ「水晶に映った時点では、アリサちゃんはポルケにいた。その後の足取りはポルケに行ってみないと分からないけど、おそらくジン将軍はセンペルテのいるカミルナに行くつもりだわ」
キュー「でもポルケからカミルナまでいくら急いでも3日はかかるはずだから、途中、どこかの町か村に寄るはずだわ。あるいは野宿するかも知れないわ」
ドルジ「あいにくあの一帯はあまり拓けてなくて、町や村があまりありません。森林の伐採を生業としているタデミオール村があるぐらいです」
シャム「よし、とにかくポルケに急ごう! 港町のポリュラスまでは旅の樹木を使って早道しよう!」

⚔⚔⚔

 ここはカミルナ。街の喧騒から離れた林の中にひっそりと一軒家の書斎で、書に親しむ美形の紳士がいた。
 名前はセルペンテ。
 メイドが淹れた熱い紅茶をたしなむ。

セルペンテ「ジン将軍はまだ来ぬか?」
ニンファ「将軍の到着は明日の予定でございます」
セルペンテ「明日だったか。どんな奴隷を連れてくるのやら」
ニンファ「手紙には、ネコミミの美しい娘を連れて行くと書いてありましたが。セルペンテ様は人間以外の女にも興味がおありなのですね? 魔物の女がお嫌いなのに」
セルペンテ「魔物の女が嫌いというわけではない。おまえは知らなかったか、私の体質を? 魔物の女の血を基準とすると、人間の女の血は4倍の効果……そしてネコミミの女の血は8倍の効果があるのだ」
ニンファ「効果とはセルペンテ様の寿命を永らえさせる妙薬ということですね?」
セルペンテ「そうだ。私の寿命は、若い女の血をどれだけ多く飲むかで決まるだ」
ニンファ「私は魔物の端くれなので、セルペンテ様に捧げる機会はなさそうですね。しかし必要とあればいつでもお申しつけください」
セルペンテ「配下の女の血を飲むほど、落ちぶれてはいないぞ。はははは」
ニンファ「大変失礼を申しました」

 ニンファは丁重に詫びた。

セルペンテ「しかし、この街に来てからあまり目立たないようにと思い、夜な夜な女を物色することは避けていたので、いささかパワーが落ちたようだ。はははは。ネコミミの血を飲んで活力を取り戻し、これを境にまた街を徘徊するかな」
ニンファ「ほどほどにされるのが安全かと思います。といいますのも、勇者チームが各地にいる我らの同胞を駆逐していっておりますし、リッチもまた一大勢力を気付き、虎視眈々と我らを倒そうと狙っています」
セルペンテ「おまえをメイドとして置いておくのはもったいないなあ。これからも目付け役を頼んだぞ」
ニンファ「とてもありがたいお言葉です。大変光栄に思います」

⚔⚔⚔

 ジン将軍に最終目的地まで連れて行かれたら、おそらく生きては帰れないだろう。
 具体的な行先を聞かされていたわけではないが、アリサは直感でそう思った。
 機会をみて途中で脱走しなければならない。
 しかしジン将軍と2人の用心棒に昼夜見張られていては、逃げることは至難の業といってよいだろう。

 ありさは考えた。
 幸い用心棒の2人は知恵者ではなさそうだし、大して腕が立つわけでもなさそうだ。
 もし拘束が解けたら、2人まとめて倒すことは容易だろう。
 彼らが油断したところを狙い、逃走する方法を思い浮かべた。
 就寝時はジン将軍は別室というのも都合がよい。
 アリサがいる部屋には、アリサの他に用心棒のパオロとエリオが見張り番としているだけだ。
 便所に行くときは、どちらか1人を起こし同行することになっている。
 その時が機会かもしれない。

 もうひとつ方法がある。彼ら二人を懐柔して、味方につけてしまう方法である。
 これがうまく行くと、先の案よりも無難に事は運ぶだろう。
 問題は彼らを懐柔できるかどうかだ。
 彼ら用心棒は金で動いている。
 だけど現在のアリサは無一文だ。
 どうすれば彼らを味方に付けることができるだろうか。
 そんなことを考えると、アリサは益々目が冴え眠れなくなっていた。

 何度も寝返りをうってゴソゴソしていたので、それに気づいたパオロが声をかけてきた。

パオロ「眠れねえのか?」
アリサ「うん……」
パオロ「さっきは風呂場で酷いことをしちまってすまなかったなあ。痛くねえか? アソコ」
アリサ「うん、大丈夫。ねえ、おじさんんんん?」
パオロ「なんだ?」

 アリサを強姦したことを悔いているようで、パオロは殊勝に謝ってきた。



第45章「脱走」 第2話

アリサ「おじさん、おトイレに行きたいのおおおお」
パオロ「うん、分かった」

 便所から出たアリサが廊下でパオロに尋ねた。

アリサ「おじさん、名前はパオロさんだったねええええ?」
パオロ「ほう、俺の名前を覚えてくれていたか? 意外じゃねえか」
アリサ「パオロさん、私の勘だけど、たぶんもうすぐお別れだと思うの。数日間だけどお世話になりましたああああ」
パオロ「どうしてまもなく別れると思うんだ?」
アリサ「直感。当たってるよねええええ?」
パオロ「詳しくは知らねえが、あんたを連れてカミルナの貴族の屋敷に行くつもりらしい」
アリサ「カミルナ? 貴族の屋敷……? 私はそこに売られるの……?」
パオロ「ジン将軍が詳しく教えてくれねえから、分かんねえな」

 パオロは言葉を濁した。本当に知らないのか、それとも本当は知っているのにあえて明言を避けたのか……アリサには分からなかった。
 
アリサ「ねえねえ、おじさんって家族はいるのおおおお?」
パオロ「何だよ、藪から棒に。ムーンサルトにおふくろが住んでいるよ。兄と弟は魔物との戦いで死んじまったので、家族で残っているのはおふくろだけだよ」
アリサ「お気の毒に……魔物に二度も攻められたからねええええ」
パオロ「ムーンサルトのことよく知ってるなあ。国では復興が始まったらしいけど、俺はこのとおり無法者だから国には雇ってもらえねえし、おふくろにも会えねえのさ」

 アリサはきっぱりと言い切った。

アリサ「ムーンサルトの兵士になれるよ。お母さんにも会えるよおおおお」

 にわかには信じがたく反発するパオロ。

パオロ「何を惚けたことを言ってやがる。俺が兵士になれるわけねえよ」
アリサ「剣は使えるうううう?」
パオロ「もちろんだ」
アリサ「国から採用通知があったら、ムーンサルトの兵士として国のためにがんばれるうううう?」
パオロ「当り前じゃねえか」
アリサ「じゃあ契約しようよおおおお!」
パオロ「何を契約するんだ?」
アリサ「あなたはジン将軍に捕らわれている私を今夜中にここから逃がすこと。それが成功したら、私があなたをムーンサルトの兵士にしてあげるうううう」
パオロ「おまえ、頭だいじょうぶか? どこかで打ったんじゃねえのか?」
アリサ「私の目を見てええええ」

 パオロはアリサの瞳をじっと見つめた。
 エメラルドのような瞳に吸いこまれそうになるパオロ。

パオロ「よし、分かった。おまえに賭けてみよう。おまえを無事にここから脱出させたら、俺をムーンサルトの兵士にしてくれるんだな。もし嘘だったら……その時は分かっているだろうな」
アリサ「その時は私を殺せばいいよおおおお」
パオロ「だけどこれだけは教えてくれないか。どうしてネコミミのおまえが、俺をムーンサルトの兵士にできるんだ? 訳が分からないのだが……」
アリサ「それはなった時に分かるわ。私に任せて」

 アリサとの約束を100%信じたわけではなかったが、パオロはアリサに賭けてみようと思った。
 国に帰って兵士として復興事業に携わり、身内でただひとり生き残った母を安心させることが彼の望みだから。

⚔⚔⚔
 
 シャムたちはアリサを探してポルケに来ていた。
 水晶玉に映ったパン屋の包装紙をもとに『Panetteria Z』を訪れてみたが、アリサの情報を得ることはできなかった。 水晶玉に映ったパン屋の包装紙をもとに『Panetteria Z』を訪れてみたが、アリサの情報を得ることはできなかった。アリサ以外の者が購入のためやって来た可能性も否定できない。
 パン屋の包装紙が写り込んでいたわけだから、その日アリサがパン屋からそれほど遠くない場所にいたことが考えられる。
 
ウチャギーナ「水晶玉に映った場所が廃墟のような場所だと、パンティスキーさんが言ってたのを覚えている?」
マリア「もちろん覚えていますよ! パン屋『Panetteria Z』でパンを買って廃墟で食べたとしたら、その二か所はそう遠くないはずです。近くの廃墟を探してみませんか?」
シャム「うん、そうしよう」

 シャムたちは手分けして、周辺の店舗や家主をしらみ潰しに調査したところ、ジン将軍たちが滞在していたとおぼしき建物がすぐに見つかった。
“滞在”というと聞こえが良いが、ジン将軍たちが行なった行為はあきらかに“不法侵入”にあたる。
 他人が侵入し一晩過ごした形跡があり、翌日、家主が見つけ地元の騎兵隊警察部がやってきてちょっとした騒ぎになっていた。
 地元の人の話では、昨日午前中に、3人の男性と1人の女性が北に向かったという。
 北にはタデミオール村がある。半日歩けばたどり着くという。

イヴ「ジン将軍たちは野宿ではなくタデミオール村に泊まるつもりだわ。そして村からカミルナに向かうつもりだわ。私たちも急がなくては」
シャルル「そりゃそうなんだけど、ちょっとだけ休ませてくれ~。足が引きつって……」
エリカ「見たくない光景ですわ。体力自慢のシャルルの情けない姿なんて」
リョマ「エリカさん、まあ、そう言わないで、少しだけ休憩していきましょうよ。皆、疲れています」
エンポリオ「アリサは絶対大丈夫さ! あの子は強い星の下に生まれた子! 心配するなって、さあ、メシだ、メシだ!」
シャム「よし、腹ごしらえをしよう!」



第45章「脱走」 第3話

 話は前日夜更けにさかのぼる。
 アリサが捕らえられている部屋には用心棒のパオロとエリオがいるので、隣のジン将軍は高いびきをかいて眠っている。
 明日カミルナの貴族の屋敷に連行されそうなので、脱出するなら今夜をおいてないだろう。
 アリサは今夜に賭けることにした。
 幸いパオロとは条件が合致し、脱走を協力する約束を取り交わすことができた。
 課題はもう1人の用心棒エリオをうまくかわすことだ。

 脱出時、彼に見つかり騒がれると、ジン将軍までが起きてきて厄介なことになる。ジン将軍は一応騎士の端くれなので、それなりに腕が立つ。
 アリサが万全であれば恐れるほどの敵ではないが、拘束され十分な食事を与えられず、しかも長期移動がつづいているため身体がかなり衰弱している。
 脱出時できる限り余計な敵との戦闘を避けたかった。

 アリサたちの部屋は2階にある。アリサ1人だけなら窓から飛び降りることなど容易いが、同行のパオロが怪我をする可能性がある。それに部屋の窓から飛び降りると、当然部屋にいるエリオが騒ぎ出す。そんな理由から、部屋の窓から脱出策はあきらめざるを得なかった。
 次に考えたのが、宿屋のフロントから堂々と出る方法。ただし夜中に外出するのはいかにも不自然だし、ジン将軍が宿屋の主人と通じている可能性も考えられる。よって、フロント強硬突破策も却下。
 3番目の案は、1階の風呂場の窓から脱出する方法。便所に行きたいとパオロに嘘の申し出をし、便所にはいかずそのまま1階の風呂場に向かう。ただし運悪く他の客が入浴していて風呂場に入れないことが想定されるが、その場合は仕方がないのでフロント強硬突破策を決行する。

 脱走を行うにあたって、アリサは1つだけ気がかりなことがあった。それはパオロとエリオの関係だ。パオロがエリオに声掛けしないでアリサの脱走に協力した場合、パオロはエリオを裏切ることにはならないか、という点であった。
 事前に確かめてみたところ、2人は別に友人関係ではなく、ならず者の親方に雇われた際、偶然顔見知りになっただけなので、今回なんら躊躇いはないという。たとえ声掛けしてもエリオはおそらく断るだろうし、その場合、脱走の計画が漏洩してしまい、アリサとパオロは処罰を受けるか下手すれば処刑されてしまうだろう。まさに命運を賭けた脱出劇ということになる。

 エリオが部屋を出て行った隙を見つけて、パオロがアリサに話しかけてきた。

パオロ「これ、手に入れたんだが、食うか?」

 パオロがアリサに一切れのチーズを差し出した。

アリサ「くれるの? 食べるうううう」
パオロ「移動中、十分な飯も与えずすまなかったな。何しろジン将軍がやたらとケチで」
アリサ「うん、仕方ないよ。無事に逃げられたら、たらふく食べたいなああああ」
パオロ「そうだな。いっぱい食べような」
アリサ「パオロさん、ありがとう。今回の作戦が成功すればいいけど、もし失敗してもパオロさんは絶対に逃げきってねええええ」
パオロ「そんな悲しいことを言うなよ。俺は絶対におまえを逃がしてやるよ。この命に代えてもな」
アリサ「くすん……パオロさん、いい人だね。ならず者とは思えないよおおおお」
パオロ「その一言は余計だよ。がはははは~」
アリサ「だよね。あはははは~」

⚔⚔⚔

 こちらはポルケの小さな食堂。
 シャムたちはアリサのことが気がかりで、会話も弾むことなく、もくもくと食事をしていた。
 そのため、隣の客の会話がいやがおうでも耳に入ってくる。
 時には耳寄りな情報が飛び込んでくることもある。

客A「2日前、赤ら顔の不細工なおやじが、すごくかわいい女の子を連れて歩いてたんだ」
客B「不細工なおやじがかわいい女の子を連れて?……それって、不倫か、売春じゃないのか?」
客A「いやいや、違うんだ。実はな、女の子はネコミミの愛くるしい娘だったんだけどね、両手に布を掛けてあったけど、あれって明らかに縛られていたみたいなんだ。気になって後姿をずっと見ていたんだ」
客B「騎兵隊警察部が犯人を連行していたんじゃないのか?」
客A「あの服装はポルケ騎兵隊の制服じゃないよ」

シャム(アリサだ!!)

 シャムは思わず隣の客に話しかけた。

シャム「そのネコミミの女の子ってどんな服を着ていた?」

 突然隣客から話しかけられて面食らっている。

客A「あんた、誰だね?」
シャム「おいらはシャムっていうんだ。そのネコミミの女の子は、おいらたちの仲間かもしれないんだ。すまないけど、詳しく聞かせてくれないか? あんたたちの食事代はおいらが奢らせてもらうから、頼む!」
客A[ええっ! 奢ってくれるの!? 嬉しいな~、じゃあ見たことを全部話すね」
シャム「うん、教えてくれ! その女の子、赤いケープと赤いミニスカートを身に着けてなかったか?」
客A[うん! 上下とも赤だった! 気の毒なぐらい沈んだ表情をしていたのを覚えているよ」
イヴ「その女の子と男はどちらに向かいましたか?」
客A「うん、あの方向はタデミオール村だね。間違いない。村までかなり距離はあるけど一本道だからね」
イヴ「2人連れだったのですね」
客A「2人連れなんだけね……でも少し遅れて、ガラの悪そうな男を従えていたのを覚えている。あれはどう見てもごろつきだね。だから余計に奇妙だなって思って。ところで、あの子が仲間って、あんたたちどんな団体なのかな? よかったら教えてくれる?」
シャム「うん、まあそんなそこらの旅人と言ったところかな?」
客A「話したくなさそうだし、これ以上聞くのはやめておくよ。奢ってくれるんだから、感謝しないとね」
イヴ「どういたしまして」
客A[旅人さんたち、よい旅がつづくよう祈っているよ。気を付けてね。ご馳走様でした~」
客B[俺何も情報提供していないけど、ごちそうさま!」



第45章「脱走」 第4話

 容貌や身なりから考えて、隣の客が語っていた女性はアリサに間違いないだろう。
 そしてアリサを連行していた男性はおそらくジン将軍であろう。そして従者は新たに雇った用心棒だろう。
 彼らは2日前にこのポルケを出て、タデミオール村に向かったという。
 2日前であれば、すでにタデミオール村を出発しているかもしれない。
 今から彼らの足取りを追いかけても、後手を踏むだけかもしれない。

リョマ「ジンたちがまだタデミオール村に滞在していればよいのですが、すでに村を出発しているかもしれません。もしかしたら最終目的地のカミルナに到着しているかもしれません」
キュー「村に長く滞在する理由は考えにくいから、カミルナに向かったと考えるのが妥当じゃないかしら」
イヴ「そうとも言い切れないわ。カミルナにいるセルペンテとの約束の日が少し先であれば、タデミオール村で待機するかもしれないわ」
ルシウス「どちらも考えられるね」
シャム「どちらも考えられるなら、2班に分けたらいいのでは?」
エリカ「冴えていますね。名案ですわ」

 シャム班はタデミオール村へ、シャルル班はカミルナ町へ、分かれて行動することに決まった。食堂を出た彼らは早速それぞれの目的地へと向かった。

⚔⚔⚔

 日付が変わる頃、決行する時間がやってきた。

アリサ「あのぉ……お便所ぉぉぉぉ……」
パオロ「分かった、着いてこい。エリオ、トイレに連れて行くぜ」
エリオ「うん、分かった」

 もちろん行先は便所ではなく、1階の風呂場だ。
 幸い風呂場に他の宿泊客の姿はなかった。
 それもそのはず、電気のないこの世界では、入浴するのは決まって朝であった。
 夜に入浴すると、追い剥ぎにあう危険性があるからだ。
 ローソクは貴重品なので,通常、夜に明かりを灯すことは金持ちにしかできないのだ。

 月明りを頼りに、そっと風呂場の窓を開けるアリサ。
 窓から外の様子をうかがった。幸い人の気配はない。
 アリサが周囲を確認して、静かに窓から外に出る。
 1階なのでほとんど段差はなく容易なことだ。
 パオロがつづく。アリサほど身軽ではないが、無難に道路に降り立った。
 
アリサ「さあ、いくよおおおお」
パオロ「よし、成功だ。行こう」

 街道を南に向かえばポルケに戻る。東に向かえば未知の町カミルナへと通じている。
 街道以外だと、山間部、森、林であり、追手が来る確率は下がるが、魔物や山賊と遭遇する危険性をはらんでいる。
 アリサたちはポルケへの道を選択した。

 アリサたちは逃亡しやすいように、荷物を持たず軽装で宿屋から脱出した。
 ただしパオロだけは短剣を準備している。
 体力が落ちているとはいえ、アリサのスピードは素晴らしい。とてもパオロが追いつけない。

パオロ「あんためちゃくちゃ足が速いんだな! もうちょっとスピードを緩めてくれよ。追いつかないよ」
アリサ「うん、分かったああああ」

 村の中心地と言っても建物と建物の間隔はまばらで、すべて灯りが消えている。
 アリサたちが南に向かって走り、辻にある教会に差しかかった時、数人の人影が現れた。

アリサ「誰なの? あんたたちいいいい」
男A「おやおや、かわいい娘さんがおっさんと駆け落ちかな?」
パオロ「急いでいるんだ! どきやがれ!」
男B「威勢がいいじゃねえか。こんな遅くにどこに行くつもりかな?」
男A「悪いが通せねえな」
パオロ「何だと貴様ら! どういうつもりだ!」
男A「実は、ジンという人から、用心棒とネコミミが脱走を画策しているようなので見張るように頼まれていたんだよ」
アリサ「まさかああああ……」

 アリサたちがこっそりと逃亡の打ち合わせをしているのを、事前に察知したエリオがジン将軍に通報し、ジン将軍が前もって地元のヤクザを雇ったのであった。

パオロ「そういうことか。ならば仕方がねえ。アリサさんよ、ここを突破するぜ!」
アリサ「うん、分かったわああああ」

 アリサが戦闘の構えを見せ、パオロも短刀を構えた。

男A「俺たちとやり合おうっていうのか? 怪我をしても知らねえぜ、ネコミミちゃんとおっさんよ! おい、やっちまえ!」

 男たちはアリサたちの前に4人、背後に2人いる。
 アリサひとりであれば容易に突破ができただろう。
 しかしパオロを置いてひとりで逃げるわけにはいかない。

 短剣で襲ってきた男をアリサはかわし、首筋に手刀を見舞う。
 うめき声をあげ地面に伏すヤクザ者。
 パオロは敵と火花を散らしている。互角の様相だ。

 ここで戦っていても埒が明かない。
 もしかしたらジン将軍とエリオが追いかけてくるかもしれない。

アリサ「パオロさん、逃げるよおおおお!」
パオロ「分かった!」

 アリサが走り出し、その背後をパオロがつづく。

男A「俺たちから逃げられると思っているのか!?」

 ボスらしき男が、長剣を振り下ろす。
 刃がパオロの背中に命中した。

パオロ「ぎゃあ~~~~!」
アリサ「パオロさんんんん!」

 手下が短剣でアリサを狙って突き込んできた。
 あっさりかわして蹴りを見舞うアリサ。
 手下は腹を押さえて、もがいている。



第45章「脱走」 第5話

アリサ「パオロさん、しっかりしてええええ!」
男C「2人ともくたばっちまえ!」

 パオロのそばで跪いていたアリサは蹴りを繰り出す余裕がなく、パンチを繰り出す。
 しかし体力が落ちているうえに、武器の“はやぶさの爪”を奪われたので、威力がない。
 その点キックなら多少は効果が期待できる。
 アリサはすくっと立ち上がると男の顔面にハイキックを見舞った。顔を押さえうめきながらその場に倒れるヤクザ者。
 3人倒したので、残りは3人だ。

男A「ネコミミちゃん、見かけに寄らずつえ~じゃねえか。だけど俺の剣を躱せるかな?」

 ヤクザ者のボスらしき男が、真っ向からロングソードで突きを入れてきた。
 アリサは咄嗟にジャンプし、ヤクザ者の真上に舞い上がる。

男A「嘘だろう!? 人間がそんな高く飛べるなんて!」
アリサ「だから私は人間じゃないって。さっき私をネコミミと呼んでいたじゃないのおおおお!」

 アリサの爪先が男の頭上に命中した。

男A「うげっ……!」

 くぐもった声を洩らしその場に崩れてしまった。

男B「こりゃやばいぞ! おい、逃げるぞ!」
アリサ「逃げるのはいいけど、怪我をした仲間を放っていくの? せめて連れて行ってあげなさいよ。追いかけたりしないからああああ」
男B「くそ、覚えてやがれ!」

 だけどボスらしき男は急所に当たったようですでに息が絶えていた。
 怪我を負った仲間を連れて、2人の男は闇間に消えて行った。

アリサ「パオロさん、しっかりしてええええ」
パオロ「ううっ……俺はもう無理だ……腹をやられちまったから……うぐぐぐ……」
アリサ「ああ、こんな時ヒール魔法が使えたらいいのになあ。薬草もないし困ったなあ……」
パオロ「俺のことは放っておいて、おまえだけでも早く逃げろ……ジン将軍が来ないうちに……」
アリサ「ムーンサルトの兵士になるのが夢じゃなかったの? こんな所で死んじゃだめだよ……どこかの民家で手当てしてもらおうよ……」
パオロ「うっ……ムーンサルト……兵士になりたかったなあ……ありがとう、アリサさん……つかの間の夢を見させてもらったよ……ううう……」
アリサ「しっかりして、パオロさん! 死んじゃだめだよおおおお!」

 何度も名を呼んだがパオロは応じず、すでに事切れていた。

アリサ「パオロさん、ムーンサルトの兵士になってほしかったよ。ユマに頼めば絶対に兵士になれたのに……パオロさん、どうして死んじゃったのよおおおお……」

 アリサは道の上で泣きじゃくった。だけど田舎町の深夜ということもあって誰一人現れなかった。
 今のアリサにはパオロの遺体をどうすることもできない。スコップもシャベルもないので埋葬もできない。
 うかうかしているとパオロが心配していたように、ジン将軍が現れるかもしれない。
 
 やむなくアリサはパオロの遺体を道から逸れた樹木の繁みに運ぶことにした。
 埋葬や荼毘に付すこともできない不甲斐なさに、アリサは心の中でパオロに詫び黙とうを捧げた。
 アリサは疲労困憊していた。

アリサ「ああ、喉が渇いたああああ……」

 キョロキョロと周囲を探してみた。
 近辺には渓流がなく一般の河川すらないことを、アリサはすでに知っていた。
 それはネコミミのアリサが、人間よりも耳が数倍優れているからに他なかった。
 また、耳以上に優れているのが鼻であった。
 彼女の嗅覚は人間の20倍以上鋭く、においで環境や相手、獲物の情報を細かく嗅ぎ分けるることができた。
 早速その身体能力が発揮された。

アリサ「水の匂いがする。かなり近いいいい……」

 ふたたび周囲を見回した。
 水の匂いはすぐ近くの家の庭から匂ってくる。
 他人の庭に入ってはいけない。分かってはいても喉の渇きには逆らえなかった。
 こっそりと庭に入った。
 ふと見ると幅が1メートルほどの木箱があり、その木箱の付近に水が入った皿が置いてある。

アリサ「あっ、水だああああ」

 一目散に、木箱に近寄り水を飲む。
 皿に入った水なのでわずかだが喉の渇きは少しだけ癒された。
 その時、木箱の中から「ウ~グルルルル」という低い唸り声が聴こえてきた。

アリサ「いけない! 犬だわああああ!」

(ウ~……ワンワンッ!)

 木箱は、実は犬小屋だったのだ。
 犬小屋から飛び出したのは、黒くて黄褐色のロットワイラーという大型犬であった。
 筋肉質で忠誠心が強く警戒心も強いので、番犬向きの犬といえる。
 すぐにかかってこないが、今にもアリサに飛びつきそうな気配である。
 水を飲んで怒っているのか、あるいは怪しい人物と思われたのか、とにかく危機である。
 アリサとしても疲労し衰弱した今の状態で、番犬と戦闘なんてまっぴらだ。

アリサ「水を飲んでごめんね。すごく喉が渇いていたの。許してええええ」

 謝ってみたが、犬の怒りは収まりそうもない。

(ニャァ)

 その時、ネコの鳴き声がした。

アリサ「……??」

 アリサのそばに黒ネコが現れた。

(ニャァ~)

 黒ネコが番犬に何か話しかけている。
 アリサには意味が分からなかった。

(ク~ン……)

 番犬が急に大人しくなり目が優しくなった。甘えたような声に変化した。
 もしかしたらここの飼い猫が飼い犬に説得してくれたのか。
 アリサが唖然としていると、今度は黒ネコがアリサに話しかけてきた。
 その言語は信じられないことに“ネコミミ語”であった。

黒ネコ「ネコミミのおじょうさん、もう大丈夫だよ。この人は怪しくないから吠えないで、と伝えたからもう大丈夫だよ」
アリサ「ありがとう! あなた、ネコミミ語を話せるの? どうしてええええ?」
黒ネコ「以前の主人がネコミミだったので自然に覚えたんだ。ところで僕はオスネコのオリバー。君は見たところメスネコミミのようだね?」
アリサ「あはは、メスっていうか、私は女だよ、名前はアリサ。番犬君をなだめてくれてほんと助かったわああああ」
オリバー「僕と彼は家族みたいなものだからね。ところで外で何か賑やかに暴れていたね。怪我していない?」
アリサ「見てたの? 恥ずかしいなあ。かすり傷程度だから心配しないでええええ」
オリバー「刃物を持った物騒な人間の男たちを素手で撃退するって、君は相当な女の子だね」
アリサ「でも、連れの人を助けられなかったので、私まだまだダメだよおおおお……」
オリバー「訳ありのようだけど、事情は聞かないでおくね。それよりおなか空いていないかい?」
アリサ「実はずっと食べてなくて、おなかがペコぺコなの」
オリバー「じゃあ、これあげるよ」

 アリサは『ネコマンマ』をゲットした!
 アリサはオリバーからもらった『ネコマンマ』を早速食べた!
 アリサのHPが全回復した! さらにアリサのHPポイントが50アップした!



第45章「脱走」 第6話

アリサ「ごちそうさま! おかげで元気が出たわ。このご飯すごく美味しいね、こんなの初めて。これって何いいいい?」
オリバー「口に合ってよかった。何でもカツオを燻製にして加工したものらしくて、白米に振りかけて食べるのがネコ好みの食べ方なんだって。ここの主人が貿易商やってて遠く国でもらってきたんだって。その国ではネコの大好物らしいけど、その国のネコ幸せだよな~」
アリサ「そんな大事なものを、見ず知らずの私なんかに食べさせてくれただ。ありがとう、オリバー、恩にきるよおおおお」

 そうこうしていると、遠くの方から聞こえてくる足音があった。

オリバー「あっ、いけない、誰かやって来た! アリサ、隠れて! さっきの連中の仲間かもしれないよ!」
アリサ「どこに隠れたらいいのおおおお!?」
オリバー「ガス、犬小屋から出ておいで。犬小屋をアリサに貸してあげて!」

 番犬のロットワイラーの名前はガスというらしい。
 ガスが犬小屋から勢いよく飛び出すと、入口付近でちょこんと“おすわり”をした。

オリバー「アリサ、早く犬小屋に入って!」

 オリバーに促されて、急いで犬小屋に潜り込むアリサ。
 大型犬といってもガスの体高が70センチメートル程度なので、アリサとしてはかなり天井が低く感じられた。
 だけど贅沢は言ってられない。

 犬小屋付近に現れたのは、ジン将軍、エリオ、そして先程逃げた男たち2人だった。

男C「あの小娘がまさかあんなに強いとは……兄貴が素手でやられちまうなんて信じられねえよ……少し甘く見てたのが失敗だった……」
ジン将軍「で、アリサはどっちに逃げたのだ?」
男D「それが……すみません……兄貴がやられたのを見て、びびっちまって……」
ジン将軍「ばかやろう! 小娘も追わずに逃げたというのか!」

 ジン将軍は2人のヤクザ者に鉄拳を振るった。
 打たれて地面にうずくまる2人。口から血を流している。

エリオ「ジン将軍、こいつらの不甲斐なさを咎めるより、今はアリサを探す方が先決ですぜ」
ジン将軍「それもそうだな。アリサを探し出して、セルペンテ伯爵様のところに連れて行かなければ、約束を反故にしたことになる。下手をすれば私だけではなくおまえも叱責されるかもしれないぞ」
エリオ「そんな殺生な……それは勘弁してくださいよ……」
ジン将軍「とにかく早くアリサを見つけなければ」
エリオ「それにしてもどこへ逃げたんだろう?」
ジン将軍「こんな夜更けだ。そう遠くには行っていないだろう。住宅に逃げ込んだとは考えにくいから、木の陰とか、家の庭かもしれない」

 キョロキョロと辺りを見回す2人。
 犬小屋の前で休んでいるガスに、ジン将軍の視線が止まった。

ジン将軍「ん? あの犬、どうして犬小屋で寝ないで外で寝てるんだ?」
エリオ「色々なタイプの犬がいるんじゃないですか?」

 ガスの隣にオリバーもいるのだが、暗闇でしかも黒ネコということもあってジン将軍は気付かなかった。
 ジン将軍は何を思ったのか、犬のガスに声をかけた。

ジン将軍「ワンちゃんよ、この辺でネコミミの女の子を見かけなかったか?」

 当然返事をするはずがない。
 それどころかガスは唸り声をあげた。

(ウ~ッ……グルルル~……)

 喉が枯れるくらい、低い低い唸り声が止まらない。
 ガスの全身の毛が逆立つ。
 しかもジン将軍に近づいてきた。
 
ジン将軍「やばいぞ……おい、エリオ、逃げるぞ!」

 ガスに吠えられて、恐れをなしたジン将軍たちは、転がるように逃げていった。

⚔⚔⚔

 アリサは、その夜犬小屋に泊めてもらい、翌朝、家の女あるじに事のいきさつを話し、女あるじ、オリバーそしてガスに感謝を伝えた。
 アリサはジン将軍から匿ってくれたお礼に、女あるじに頼みごとを一つ受けたいと申し出た。
 女あるじはかなりの老婆で、しわくちゃな顔に深い笑みを浮かべ、黒ネコのオリバーを膝に抱きながら言った。

女あるじ「では、3日以内に、森の奥の『忘れられた庭』から、『銀色の月草』を1本持ってきておくれ。今夜は満月で、満月の光を浴びた場所にだけ咲くのじゃ」

 アリサはうなづき、オリバーが先導するように尾を振るのを見て森へ向かった。もちろんガスもいっしょに着いてきた。
 2日目の夜、満月の光が細い小道を照らす中、アリサは苔むした石垣に囲まれた小さな庭を見つけた。
 そこには、月明かりにかすかに輝く銀色の草が1本、そっと揺れていた。

 アリサが慎重に月草を摘むと、周りの草木がかすかにささやいたような気がした。
 女あるじの元に戻り、月草を渡すと、彼女は満足そうにうなずいた。

「これで、庭の『眠り』が解けた。おまえの誠実さが、長い呪いを解いてくれたのじゃよ」

 アリサは、単なる草取りが、実は100年続いた魔法の封印を解く儀式だったことを知り、驚きと感謝の思いに包まれた。
 オリバーは満足げに「ニャ~」と鳴き、アリサの足元にすり寄った。



第45章「脱走」 第7話

 庭の『眠り』が解け、ひいてはそれが呪解となり女あるじに貢献したことは嬉しかったが、ひとつだけ疑問が残った。
 どうして女あるじやオリバーたちが自分たちでその儀式を行わず、アリサに依頼してきたのだろうか。
 その答えはすぐにオリバーから語られた。

オリバー「実はね、ここのご主人様や僕が、満月の夜に『忘れられた庭』から『銀色の月草』を持ってきても全然効果がないんだ。この儀式はネコミミしかできないんだ。だからずっとご主人様は、長い年月ネコミミが現れるのを待ち続けていたんだ」
アリサ「でもどうしてネコミミにしかできないのおおおお?」
オリバー「それは僕にも分からないんだ。ネコミミには特殊な力があるのかもしれないね」

 その時、女あるじが現れた。

女あるじ「アリサ、恩にきるよ。本当にありがとう。お礼にこれをあなたにあげるよ」

 1個の指輪がアリサに贈られた。

アリサ「まあ、きれいいいいい! おばあさん、ありがとうううう!」

 アリサは『ともなりの指輪』をゲットした!
 アリサは早速指輪を装着した。
 しかし何の変化も起きない……

アリサ「ん……??」
女あるじ「実は、この指輪は着けただけでは何も起こらないのじゃ」
アリサ「何も起こらないの? スピードが増すとか、パワーアップとか……」
女あるじ「残念だがおまえの能力は何も変わらないのじゃ。しかし……」
アリサ「しかし?」
女あるじ「おまえが仲間とともに戦う時、おまえが念じると仲間1人の戦闘力が2倍に増すのじゃ」
アリサ「え~~~~っ!? 仲間の戦闘力が2倍にマシマシになるのおおおお!?」
女あるじ「どこかの国の食べ物みたいじゃな。そう2倍にアップするのじゃ。ただし」
アリサ「……?」
女あるじ「5回使うとその指輪は壊れてしまうのじゃ。なので、できるだけ強敵と戦うときに使うのが、コツなのじゃ」
アリサ「よく分かった! つよ~い敵と遭遇したとき、使ってみるうううう。でも、おばあさん、どうしてこんなすごい物を持っているの?」
女あるじ「実をいうと、私は昔、ちょっとした魔導師だったんじゃよ。だが身体を壊して今は隠居の身なんじゃ。アリサ、この世界を魔物から救ってくれ、頼むぞ」
アリサ「は~いいいい!」
女あるじ「よい返事じゃ!」

⚔⚔⚔

 夜明け前、ジン将軍とエリオはその後もアリサの捜索をつづけたが、何の手掛かりを得ることもできず、疲労困憊し宿屋に戻っていた。
 そんな折、ジン将軍が宿泊している部屋の窓に黒いカラスが1羽、手紙を携えてやってきた。

エリオ「将軍、カラスが手紙を運んで来ましたぜ」
ジン将軍「よこせ」

 ジン将軍は手紙をもぎ取った。

『ジン将軍へ 約束の日は明日だ。将軍が捕らえたネコミミを必ず連行せよ。時間厳守。 セルペンテより』

 ジン将軍は収拾がつかないほど感情が混乱し、憔悴していた。
 野心を抱くジン将軍は、ユマ姫を裏切り、死霊リッチの元に走った。さらにそのリッチにも見切りをつけ、今度はセルペンテ伯爵に接近し彼と盟約を結んだ。
 手始めとして、セルペンテへの手土産に捕らえたアリサを連行することを約束した。
 ところが連行途中、彼女を取り逃がしてしまうという大失態をやらかしてしまった。

 もし約束どおりアリサを連行しなければ、どんな懲罰が待っているのやら。
 ジン将軍は不安による緊張で身を震わせた。
 この期に及んでは、アリサを取り逃がしてしまったことを丁重に詫びるしかないだろう。
 あるいは……

ジン将軍(いや、いっそのこと、伯爵に会いに行くのをやめようか……?)

 しかしセルペンテを甘く見てはならないだろう。
 もし謝罪に行かなければ、刺客がやってきて彼を葬り去るかもしれない。
 ジン将軍は震えが止まらなかった。
 
 やはりきっちりと訪問して、謝罪を尽くすべきだろう。
 アリサは近日必ず見つけるので、しばらく猶予が欲しいと申し出る。
 セルペンテ伯爵は、きっと寛大なお心で、私を許してくれるだろう……とジン将軍は考えた。

ジン将軍「おい、エリオ、明日カミルナの街に行くぞ。訪問する先はセルペンテ伯爵の屋敷だ。アリサを取り逃がしたことをちゃんと謝って、もう一度この村に戻ってきて捜索を再開することになる」
エリオ「俺もいっしょに伯爵様のお屋敷に行くんですかい?」
ジン将軍「おお、もちろんだ。美味いものをたらふく食べられるぞ」
エリオ「ほほう、それは楽しみだ。よだれが出てきやがったぜ。へへへ」

 深い事情や伯爵のことを知らないエリオは、顔をほころばせた。



第45章「脱走」 第8話

 次の日、ジン将軍とエリオはタデミオール村を出て、東へと進路をとった。行先はセルペンテが待つ緑豊かな街カルミナである。アリサを連行していくつもりが、彼女を取り逃がしたことで一気に暗転。失態を詫びるべくジン将軍にとってはつらい旅路となってしまった。

⚔⚔⚔

 同じ魔界の住人でありながら、蛇鬼一族の長であるセルペンテ伯爵を憎み、彼らの打倒を企てている死霊リッチは遠く離れた無人島キノギノに籠り、着々とその力を蓄えていた。
 キノギノ島は、ダルヌ本島の西側に位置する小島(3つ並ぶ中の最も北側に位置する島)だが、昔から人々が住むことは皆無であった。
 理由は、悪魔が棲む島として人々から忌み嫌われていたためである。ただし、それはあくまで表向きであり、実際は土地が瘦せていて土壌条件が悪く、農作物や草木の大部分がほとんど育たない土地であったことが真の理由だと考えられる。
 もっぱらリッチたち死者は食料を必要としないため、不毛の地であろうがなかろうが全くく影響がなかった。

デスナイト「リッチ様、私が応援に駆け付けたからには、勇者など恐れるに足りません」

 デスナイトもリッチと同様に死者である。
 かつて英雄でありながら、死の間際に悲惨なことや裏切りなどで絶望や復讐心などの強い負の感情を持った結果生まれるとされている。
 英雄であるがゆえに、その身体能力は非常に高く、アンデッドであるがために持つ高い耐性などにより、非常に強力なモンスターといわれている。
 リッチが杖を核とするように、デスナイトも自らの魂を剣や鎧などに持つとされることがあり、その場合肉体が滅びても、核である武器や防具を破壊しなければ復活するとされることがある。なお、その核である武器、防具の破壊は非常に困難で、特別な手段を必要とされることがある。
 デスナイトは黒い甲冑を着込み、髑髏の馬にまたがり、彼もまた甲冑の下は髑髏であった。

リッチ「地獄界を抜け出してよく来てくれた。礼を言うぞ」
デスナイト「水臭いことをおっしゃらないでください。リッチ様と私とは長い付き合いではありませんか。手始めにムーンサルト城を奪回するとしますか?」
リッチ「いや、あの城はもうよい。たまたまムーンサルトが地上界の中央に位置するため、1本楔(くさび)を打っておこうと思っただけだ。城取りよりも、今気になるのはセルペンテの動きだ」
デスナイト「やつは蛇女メドゥサオールの参謀でしたね? 彼女の実弟だという説もありますが」
リッチ「弟だというのは確かだ。現在なりを潜めているが、虎視眈々と勇者シャムの首を狙っているという。勇者を倒してメドゥサオールとともに一気に地上界征服を画策しているという」
デスナイト「それはまずいですね。やつらが動く前に手を打たなくてはなりません。現在、セルペンテがどこにいるかご存じですか?」
リッチ「カミルナの屋敷にいるようだ」
デスナイト「屋敷ですか? 城ではないのですか? ならば一気に攻め込もうではありませんか?」
リッチ「いやいや、それはまずい」
デスナイト「なぜですか?」
リッチ「一見通常の屋敷に見えるが、周囲に強力な魔界バリアを張り巡らせている。つまり人間は入れるが、私たちは入ろうとすると弾き飛ばされるのだ」
デスナイト「それは厄介ですね。ではセルペンテが外出した隙を狙って急襲するのはいかがですか?」
リッチ「それは可能だだ、やつは地獄界きっての剣の名手だぞ」
デスナイト「侮ってもらっては困りますね。リッチ様は私の腕前をご存じのはず」
リッチ「汝の強さは十分に理解している。では作戦を練るとするか?」

⚔⚔⚔
 
 そのセルペンテは自身への噂など知る由もなく、超大型サイズのベッドで3人の美女たちとくんずほぐれつ絡み合っていた。
 そんな折、セルペンテは大きなくしゃみをした。

セルペンテ「ハ……ハ、ハクション!」
ニンファ「まあ、いけませんわ、くしゃみをすると魂が抜けると言いますわ」
セルペンテ「どうせどこかの誰かが、私のことを噂しているのだろう」
パメラ「誰が伯爵のことを噂しているのかしら」
ダリダ「それより風邪が心配ですわ」
ニンファ「ご心配なく。風邪なら私が全部吸い取ってあげますわ」
セルペンテ「おまえが吸うのは男の精だけではなかったのか?」
ニンファ「アハ、伯爵ったら」

 ニンファは微笑むと、優に1メートルを超える巨大なペニスの亀頭部をパクリと咥えこんだ。
 もっぱらペニスというより、どう見ても1匹の蛇にしか見えないのだが。
 単刀直入にいうと、股間に蛇をぶら下げているようなものであった。
 そんな邪悪で醜怪なセルペンテのペニスだが、メイドたちは恐れるどころか、こぞって彼のペニスを奪い合った。
 なぜならば彼女たちもまたサキュバスという夢魔であったのだ。

パメラ「明日、ジン将軍が伯爵の好物であるネコミミを連れてくるとお聞きしておりますが、どんな娘でしょうね。楽しみですね」
セルペンテ「うん、楽しみだ。何でも勇者の仲間のようなので、たっぷりといたぶってやらねばな」
ダリダ「たっぷりとお仕置きをして、最後は伯爵の蛇……失敬、ペニスで昇天間違いなしですね」
パメラ「ネコミミの愛液は人間の女の数倍栄養価が高いと聞きますが、伯爵がお元気になられるのが大変楽しみですわ」
セルペンテ「さて、おしゃべりはこの辺にして、たっぷりと楽しもうではないか」

 ぬめりのある蛇頭がニンファの陰唇をかき分ける。
 肉壁を擦るとたちまちニンファが艶やかな声を奏でる。

ニンファ「いやぁん……」

 ネコミミや人間の女性との交尾は、セルペンテにとってスタミナ源となり生命の維持に資するが、サキュバスとの交尾はそれらの効果は全くなかった。
 しかし性的な満足を得ることは可能なので、三人のサキュバスと時折情事を愉しむセルペンテであった。



第45章「脱走」 第9話

ニンファ「伯爵って魔界きっての絶倫でしょ? 私たちそんな方のお世話ができて、魔界冥利に尽きますわ」
セルペンテ「絶倫といえば、噂の勇者は短時間内に10連でも20連でも射精が可能と聞く。一度は会ってみたいだろう?」
ニンファ「いいえ、伯爵ほどの立派な砲筒を持つ男性は滅多にお目にかかれないと思いますわ」
セルペンテ「大きさで劣るとは思わぬが、彼は怪我をした仲間女性を性交によって即座に治すという。それは私には真似できぬ芸当じゃ」
ダリダ「うふふ、ちょっと興味あるかも」
セルペンテ「おまえが誘って勇者と縺れているところを私が仕留める。それはよい作戦かもしれぬわ」

 勇者を話題にしながら、セルペンテとメイドたちは4Pに及んだ。
 勇者何するものぞ、というセルペンテのシャムへの強い対抗心の表れかもしれない。

 全員が裸になり、三人から代わる代わるセルペンテにフェラチオを施した。
 1メートルの蛇状の肉柱を、1人あるいは2人から交代で舐めていたら、すぐに射精した。

ニンファ「あは、伯爵は本当に早いですね」

 3人の美女がセルペンテを取り囲んで、実に和やかな雰囲気だ。

ニンファ「でもこうするとすぐ回復するのよ。ほら」

 ニンファが2人に見せつけるように肉柱をこすると、本当にすぐに再勃起した。
 ただ2度目なら取り立てて珍しくもないが、3度目、4度目と繰り返すと、パメラとダリダも驚きの声を上げた。

ニンファ「じゃあまずダリダが入れてもらったら? 長い間、エッチしていないでしょう?」
ダリダ「そういうニンファとパメラだって、屋敷に侵入してきた暴漢以来ご無沙汰じゃないかしら」
ニンファ「人のことはいいから、まずはダリダが先よ」

 というわけで、セルペンテは茶髪ロングヘアのダリダとまず結合を果たした。
 正常位で入れると、早速うっとりしたようにのけ反っていた。

ダリダ「あん、伯爵の蛇が……いいえ、オチンポが硬い……おっきい!」

 セルペンテとしては満足のいくコメントだ。
 しばらく腰を動かすと、ダリダは一度イッた。
 セルペンテもがんばったが、やっぱりやや早漏気味で早くもダリダの中に射精してしまった。

パメラ「え~もう終わったの? あたしも伯爵の精に満たされたいな」

 射精を果たして萎えかけたセルペンテの蛇ペニスを、パメラがしゃぶったり、こすったりしているうちに、あっという間に完全に硬さが回復した。

パメラ「へえ、伯爵、やっぱりすごいわ!」

 3人は一様に驚いた。
 しかしセルペンテの絶倫ぶりは、まだまだほんの序章に過ぎなかった。

パメラ「伯爵、せっかく硬くなったし、蛇ペニスあたしにも入れてください」

 と言って、今度はパメラがつぶやくと仰向けに寝ているセルペンテの腹上に、騎乗位で挑み乗っかった。
 青髪ボブのパメラが、大股を開いてずっぽり蛇ペニスの先端を呑み込み、「おおっ」などと声を上げている。

パメラ「あっあっ、気持ちいい……イきそぉ」

 パメラは1人で腰を動かして、1人でイッてしまった。
 動きが激しくセルペンテは彼女の動きに任せたが、また射精していなかったので、パメラがイッたあと、バックの体勢に変えて、パメラが再びイクのと同時に彼女の中に射精してしまった。

ニンファ「すごいですね伯爵、いったい何回イクのでしょうか?」
セルペンテ「それは私にも分からない。まだまだイケることは確かだ」
ニンファ「まあ、逞しいお方……まだ勃っているじゃないですか」
セルペンテ「何なら続けてしてみるか?」
ニンファ「じゃあ小さくなる前に、今度はあたしと……」

 今度はニンファが相手だ。
 寝バックでハメてズボズボと挿入すると、「あん、あん」と早くも本気で喘ぎ始めたニンファ。

ニンファ「いっ、イク、イク!」

 かなり感度がいいようだ。
 メイド仲間2人のセックスを見て興奮していたのかも知れない。

セルペンテ「その程度でイッてたら、この技使うとどうなるかな?」

 セルペンテが意味深い言葉をつぶやくと、腰を回し始めた。
 ニンファの中でガチガチの蛇ペニスがまるで竜巻のように回転を始めた。

セルペンテ「秘技スネークスクリュー!」
ニンファ「ひゃあ~~~~~~~~~!!ダメぇえ~~~~~~~~~!」
ダリダ「何ですか? その技……!?」
パメラ「寝バックで蛇ペニスの回転技って……そんなにすごいの? あたしも味わいたい!」

ニンファ「イクイクイク! イクよぉ!」

 寝バックで絶頂。しかしセルペンテは果てることなく、少し趣向を変えてニンファの身体を転がすと、側位で挿入をつづけた。

ニンファ「ちょっと待って! 伯爵、待って! もうイッたから、やめて、またイキソぉ!」

 ニンフォがビクビクと痙攣する。
 なんだか様子がおかしくなってきたのは、この辺からだった。
 最初はニンフォが何回もイカされているのを、パメラもダリダも笑って見ていたが、セルペンテの蛇ペニスが全然小さくならず、しかもなかなか射精しないままなので、ニンフォが半べそになってきたのだ。

ニンフォ「やめて、やめて、伯爵、お願いですから。……あうぅっ、またイク」



第45章「脱走」 第10話

ダリダ「伯爵強烈ですね。全然小さくならないんじゃないですか? ニンフォかわいそうだから、あたし代わりますわ」

 とダリダが申し出た。本当はニンフォが何回も気持ちよくなっているので妬ましくなったようだった。
 引き続きセルペンテが寝バックでハメると、けっこう本気で膣の中で締め付けてきて、自分からも尻を振っていた。

ダリダ「伯爵すごいです! あっ来る来る! あ~っ」

 結局2回イッたところで、今度は青髪ボブのパメラが、ダリダを押しのけるように「じゃあ次はあたし」と割り込んできた。
 セルペンテはパメラを膝に乗せ対面座位でいたすと、「あんあん」とすごい声を上げて、伯爵にしがみつき唇を求めてきた。
 パメラの喘ぎっぷりに触発されたのか、伯爵は早くも9回目の射精を果たした。
 もちろん膣の中にたっぷりと。

パメラ「すごいですわ。伯爵ってやっぱり絶倫です……」

 パメラの言葉は的を得ていた。
 早漏ですぐに射精をしてしまう欠点はあるが、蛇ペニスの回復力は恐ろしく早い。
 
セルペンテ「ゲームをしない? 私を次に射精させてくれた子に、魔法を1つ教えてあげるよ」
ダリダ「まあ、伯爵は超が付くほどすごい剣士で、魔法は使えないと聞いていますが?」
セルペンテ「いつしか私が“地獄剣士”と異名をとるようになってから、人々から魔法は使わないものとされてしまったようだね。滅多に使わないけど、魔法も人並みに使えるんだよ」

 するとニンフォとダリダが、「ねえ伯爵、私たち3人と同時に相手をするのはいかが? で、無事に10回目の射精をさせたら、3人に魔法を教えてくださるのはいかがかしら?」

 ちゃっかりと、そのような提案を行ない、なし崩しにベッドでパメラを押さえつけてしまった。

セルペンテ「なるほど、3人で協力して私を気持ちよくさせるから、魔法の技術を全員にということか」

 押さえつけるといっても、最初は2人がパメラの手を握っている程度だった。
 だが、セルペンテがギンギンの蛇ペニスでパメラの中を何度も突くと、だんだん彼女は逃げ腰になって、それに応じて2人も力を込めてパメラの動きを封じにかかった。

パメラ「やめてやめて、お願いもうイクから! 無理無理!」

 蛇ペニスは快楽度合いが凄すぎて、4、5回絶頂に達する頃には、パメラはほとんど苦痛に耐えるような表情で、半泣きで懇願するようになっていた。

 しかしそれからも、2人の仲間に押さえつけてもらいながら何回も体位を変えて、パメラの髪が汗でべっとりになるまでセルペンテはセックスを続けた。
 しまいにはパメラは子宮を突かれている最中も「あ~、あ~」とうめき声を上げるだけになり、イく時だけ顔を歪ませて「イ、イクッ!」と甲高く叫ぶようになっていた。

 結局、5時間の間に、セルペンテは合計13回射精したが、当の本人よりも、ニンフォ、パメラ、ダリダ、の3人はへとへとになり、まるで真綿のようにぐったりとベッドに横たわっていた。

セルペンテ「ありがとう。3人には感謝する。今から魔法を伝えるから目を閉じなさい」
ニンファ「魔法を……教えるじゃなくて……伝えてくださるのですか?」
セルペンテ「うん、私は魔導師じゃないし、神官でもない。だから“教える”ではなくて“伝える”なんだ」
パメラ「分かったような分からないような……」
ダリダ「はい、目をつむりました」

 セルペンテがパンッと手を叩いた。
 3人の女性は、何の変化も感じなかった。
 セルペンテ「もう目を開けていいよ」

 ニンフォ、パメラ、ダリダは黒魔法『エナジー・インヘイル』を伝授された。
 戦闘時、敵のMPを吸収する力を得た。(獲得したMPは自身のステータスとすることができる。ただし自身の最高値を超えることはできない)

⚔⚔⚔

 タデミオール村に到着したシャムたちは、道具屋、武器屋を中心に、街中を歩き回り、アリサの行方を探したが、これといった情報を得ることができず、食事も兼ねて、食堂で一休みをすることにした。

 不愛想な女店員がメニューを乱暴に置きすぐに消えて行った。

モエモエ「感じ悪ぅ~、不愛想な店ね」
イヴ「この村だとお客さんも少ないだろうし、あまり商売気がないんじゃない」
ルシウス「愛想がよかろうが悪かろうが、別にいいじゃないか。目的はアリサさん探しなんだから」
シャム「そのとおりだ。料理が美味ければそれでよし。何にしようかな~? おいら、リゾットにしようかな? 久しぶりに米料理が食べたくなった」
リョマ「いいですね。私もリゾットをもらいましょうか」

 マリアとウチャギーナもリゾットを希望し、結局4人になった。
 店員を呼ぶ。
 不愛想な女店員がやって来た。4人がリゾットで、3人はビーフシチューを頼んだ。
 女店員がメモを取り、復唱もしないで厨房に消えて行った。

ウチャギーナ「注文の確認もしないで本当に大丈夫かしら」
 
 女店員が厨房に入って間もなく、厨房で女店員と調理人らしき男性の揉めている声が聞こえてきた。
 小さな店なので厨房も近く声が丸聞こえだ。
 店はどうも米を切らせてしまったようで、リゾットの注文を受けた女店員に対し調理人が文句を言っているようだ。



第45章「脱走」 第11話

調理人「今、米が切れているので、米料理の注文を受けないでくれ、と言っただろう!」
女店員「そもそも米を品切れにするってどういうことよ! リゾットはうちの看板メニューじゃないの?」
調理人「仕方がなかったんだよ、昨日店のオーナーが至急米が入り用になったので、分けてくれと言ってきたから、わずかしか残っていなかったけど、今朝入荷するし、まあいいかと思って渡したんだよ」
女店員「ところが今朝になって、穀物店から配送の関係で米が入荷できないと言ってきたってことよね?」
調理人「そういうことだ。オーナ-の頼みだし渡したのは仕方がないだろう?」
女店員「いくらオーナーの頼みだとしても、米を空にするのは拙いんじゃないの? お客さんに悪いと思わないの? あんた」
調理人「そりゃお客さんには悪いと思ってるよ。でも……」
女店員「でももへったくれもないわ。リゾットを注文してくれたお客さん4人に、ちゃんと謝りなさいよ」
調理人「ウェイトレスのあんたが謝ってくれりゃ済む話だろう?」
女店員「冗談じゃないわ! あなたが謝るべきでしょう!」

 二人の口論は一向に収まりそうもない。
 一連の事情を聴いていたイヴが取りなしに入った。

イヴ「ちょっといいですか」
女店員「あ、お客さん、すみませんね、料理が遅れて。もう少し待ってもらえますか」
イヴ「実は、悪いと思いつつも、お二人のお話を聞いちゃったんです」
女店員「あら……」
調理人「お恥ずかしいところをお見せしてしまって、すみません」
イヴ「つまりオーナーさんからの依頼で、残り少ない米を使ってしまい、米がなくなったのでリゾットが作れないと言うことですね?」
調理人「かいつまんで言うと、そういうことです。リゾットがお出しできなくて本当にすみません」
イヴ「リゾットが作れないなら食事の方は他の物でも構わないんだけど、その件はひとまず置いといて」
調理人「はい?」
イヴ「気になるのは、オーナーさんがどうして緊急に米が必要になったのかということなんです」
調理人「実はオーナーはココットという老婆なのですが、そのオーナーが何でもノラネコ? じゃなくて人間だったかな? よくは知らないのですが、何者かを助けたそうなのです。ところがその者がかなり衰弱していて、オーナーは米料理の“ネコマンマ”なる物を作って食べさせたところ、見違えるように元気になったそうです」

 イヴたちの会話に聞き耳を立てていたシャムが、思わず椅子から落下しそうになった。

シャム「その何者かというのは、ノラネコでも人間でもなくて、ネコミミじゃありませんか!? 頭に耳が生えてる女の子ではありませんか?」
調理人「実は詳しいことは分からないのです。オーナーがあまり話したがらなくて……」
イヴ「実は、その助けてもらった人物が、おそらくわたしたちの仲間のアリサという女の子だと思うのです。そのオーナーさんのおうちを教えていただけませんか?」

 ありさ探しは難航すると思われたが、思わぬことから事態は急転直下、まだ確実とは言えないが、シャムたちにようやく一筋の光明が差した。

イヴ「悪いけど、食事は後から必ずいただくわ。今からオーナーさん宅に行ってきます。お名前を教えてくださる?」
調理師「オーナーは、ココットです」

 シャムたちは取り急ぎ、アリサが保護されたと思われるココット宅へと急いだ。

⚔⚔⚔

 カミルナの街を見下ろす高台に、セルペンテ伯爵の屋敷は静かに佇んでいる。伯爵は魔界随一の剣の達人であり、その姿は優雅な人間の貴族だが、瞳には冷たい蛇の輝きが宿っていた。

 彼に仕える3人のメイド、ニンファ、パメラ、ダリダは、一見すると完璧な美貌の持ち主である。しかし、彼女たちの正体がサキュバスであることを知る者は少ない。パメラは書斎の塵を払いながら、古い魔導書のページをそっと撫でた。ニンファは伯爵の愛剣を磨き、刃に映る自分の微笑みに満足げだった。ダリダは窓辺で街のざわめきに耳を傾け、人々の無意識の欲望をかすかに感じ取っている。

 ある夕暮れ、セルペンテは庭で剣の型を練っていた。3人はそれぞれの場所からその姿を見守り、主君の一挙手一投足に心を奪われた。彼女たちの忠誠は、契約以上のものなのだ。それは、この孤独な蛇の貴族が、彼女たちに与えた「居場所」への、歪んだが純粋な愛に似た感情だった。

 夜の帳が下りると、屋敷には妖しい光が灯り、魔物たちだけが知る優雅で危険な日常が、また静かに繰り返されるのだった。

セルペンテ「明日来るかな? ネコミミを連れてジン将軍が」
パメラ「さあ、どうですかね?」
ニンファ「伯爵は、ジン将軍を信用されているのですか? リッチを裏切った男です。私は信用しておりません」
セルペンテ「ははは、なかなか手厳しいな。約束どおりネコミミを連れてくれば一応信用してやろうと思う。しかし……」
ダリダ「もしも約束をたがえて、連れてこなかった場合はどうされますか?」
セルペンテ「さて、その場合は、どうしようか……?」



第45章「脱走」 第12話

 ジン将軍に誘拐されたアリサがココットという老婆に無事保護されていることが分かり、シャムたちはココット宅に急いだ。
 
シャム「ココットさん、アリサを助けてくれて、ありがとうございました! アリサ、よかったな、よい人に巡り会えて」
アリサ「うん、ジン将軍に捕まってからはずっと地獄だったけど、ある用心棒に助けてもらって、なんとか逃げられたの。でもその用心棒は殺されちゃった。私のせいでええええ……」

 アリサの瞳から、大粒の涙がとめどもなく雨のようにポロポロと落ちた。

イヴ「その用心棒さんはきっとアリサちゃんのことを大切に想っていたのね。だから自分の命を犠牲にしてでもアリサちゃんを助けたんだと思う。でもその用心棒さんはアリサちゃんを助けることができて、きっと満足して亡くなったんだと思うよ」
アリサ「ヤクザな用心棒をやめて真面目なムーンサルトの兵士になりたいと言っていたのに、叶えてあげられなかったのが口惜しいよおおおお……」
マリア「イヴさんのいうとおりだと思いますわ。人は誰でもいつかは死にます。大切な人のために死ねる人ってそんなに多くはいません。その用心棒さんは立派な人だと思いますよ」
ココット「あんたたち、若いけどしっかりしてるのね。アリサちゃんから旅の目的を聞いたけど強い魔物たちを退治しているとか。すごいじゃないか。がんばってな、陰ながら私も応援しているから」
モエモエ「ココットさんって普通のお年寄りじゃないですよね?」
ココット「私はどこにでもいる平凡な老婆じゃよ。昔はちょっとやんちゃをしていたけどね」
モエモエ「やんちゃ……って?」
ココット「あまり言いたくはないんだけどね、実は若い頃、魔法の勉強をしていたんじゃ。で、当時、魔女狩りが流行ってて、案の定私は魔女の容疑をかけられて危うく処刑されかけたんじゃ。飼っていたクロネコも殺されてしまってのう……その時に現れたのがネコミミ剣士じゃったのじゃ。もう遠い昔のことじゃがのう。なので、今でもネコミミには感謝しておるのじゃ」
シャム「なるほど、そんなことがあったから、余計にネコミミのアリサを大切にしてくれたのですね」
ココット「私がもっと若ければ、あんたたちの仲間に入れてもらいたいところじゃが、見てのとおり棺桶に片脚を突っ込んでいるほどの老婆じゃ。しかし、あんたたちより長く生きてきた分、知識だけは豊富じゃ。今から、大切なことをいくつか伝えようと思う。耳の穴を広げてしっかり聞いてくれ」

 シャムたちはココットの次の言葉を、食い入るような表情で見守った。

⚔⚔⚔

 タデミオール村を出たジン将軍とエリオは、セルペンテ伯爵が住むカルミナの街にやってきた。
 アリサを取り逃がすという失態をやらかしたものの、伯爵から日にちと時間厳守と厳命されているため、やむを得ず謝罪と釈明のため、重い気持ちで屋敷の門を叩いたのであった。

セルペンテ「なるほど、経緯はよく分かった……」

 ジン将軍が平身低頭、ひたすら詫びている。
 同行したエリオも同様に深謝している。

ジン将軍「ネコミミを取り逃がしたことは、私の不徳のいたすところでございます。誠に申し訳ございません。この不始末は本来、死をもって償うべきところですが、どうか、どうか今一度、機会をいただけないでしょうか。必ずネコミミを捕らえて、伯爵の前に連れてまいりますので」
セルペンテ「そうか、では、死をもって償ってもらおうか」
ジン将軍「な、なんとっ! なにとぞ、なにとぞ、もう1回機会をいただければ、必ず捕らえてまいりますので、どうかご容赦願います!」
セルペンテ「おまえは最初、ムーンサルトの将軍だった。しかし裏切ってリッチに味方した。さらにリッチを裏切り私に寝返った。今度は、勇者シャムにでもつくつもりか?」
ジン将軍「決してそんなことはいたしません! 生涯伯爵だけにお味方いたします!」
セルペンテ「ネコミミを連れて来ると言って連れて来なかった。出る言葉は言い訳ばかり。私は信用できない男は嫌いなのだ」

 ジン将軍は土のように血の気がなくなっている。
 危機を察したのか、今度は命乞いをし始めた。

 次の瞬間、エリオがよろけながら応接間の扉へと走りだした。

セルペンテ「ニンファ、放て」

 セルペンテの名を受け、メイドのニンファが吹き矢を発射した。
 それはほんの一瞬だった。

エリオ「ぐっ……!」

 エリオの首筋に吹き矢が刺さり、扉の手前で転倒してしまった。
 エリオは二度と起き上がることはなかった。
 何が起きたのか分からないジン将軍は戸惑うばかり。

ジン将軍「エリオに何をしたのだ……?」
ニンファ「あら、ジン将軍には速すぎて見えなかったかしら? 私の吹き矢が」
ジン将軍「あれだけ離れていても吹き矢が命中したと言うのか?」
ニンファ「私にとっては超近距離ですわ。毒が塗ってあるので、用心棒さんはおそらくもう起きることはないかと」
ジン将軍「なんだと!? うっ……」



つづく

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猫耳アリサとオリバーたち


猫耳アリサ


ニンファ、パメラ、ダリダ











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