(第53話)


 
衣葡




第53話「花裂に食い込むこぶ縄に耐える衣葡(2)」

 楚々とした雰囲気を纏う美女が白く美しい裸体をのけ反らせ、乳房や尻を揺らしている。
 現役の大学生でありながら多くの女性を不当な手段で抱いてきた殿井たちであっても、その光景に思わず唾を飲み込んでしまう。

 絶頂に達したことを受け入れられずにいるのか、衣葡は目を白黒させている。
 半開きになった口からは唾液が垂れていた。
 上品な顔立ちの衣葡には、あまりに不釣り合いで淫猥な表情だ。

「すっげい顔……」
「やばいじゃん……。俺、また勃ってきちゃった」

 ありさが泣きべそをかいている。

「衣葡さん……ごめんね……こんな目に遭わせて……」

 俊介と悠太も、見てはいけないと思いつつ、殿井たちの陰から衣葡の痴態に見入っていた。

(な、なんで……皆に見られているのに、こんなに感じてしまうなんて……)

 衣葡は混乱していた。
 ロープを少し動かされただけでこんなにも簡単に達してしまったことに驚きを隠せなかった。
 これでは責めを受けているのに、まるで快楽を求めてしまったみたいだ。
 この時、衣葡は自身の内に秘めた被虐嗜好性に気付いていなかった。

 衣葡はなんとか正気を取り戻そうとした。
 だけど、快楽の余韻で頭が働かず、膝がガクガクと震えている。
 一歩踏み出すだけでも相当な体力を使った。しかし休んでいる暇はない。

「一分経過」

 富成が淡々とした口調で告げてくる。
 まだ三歩しか歩いていないのに、もう一分を消費してしまった。
 ロープの端から端までは八メートル程度だ。
 歩けばなんということはない距離だが、今の衣葡にはゴールが何キロメートルも離れているように思えてしまう。

 衣葡は足を引きずるようにして、一歩を踏み出した。

 ずりゅ……

「ああああぅっ」

 股間に走る刺激に衣葡は再び屈服してしまいそうになる。
 必死に唇を噛み締めるが快感は強くなっていくようだ。
 絶頂の直後とあって、秘部がより敏感になってしまっている。
 声を我慢することなどできそうになかった。

「あっ……くっ……! んんっ……」

 動画撮影を忘れて衣葡の痴態に釘付けになっている富成に、殿井が催促した。

「おい富成、手が止まっているぞ」
「ああ、うん……」

 慌ててスマホを衣葡に向ける富成。

 全身を駆け巡る快感に悶絶しながらも、衣葡は懸命に足を動かしていく。
 一歩一歩耐えるようにゆっくりと確実に。

「あっ! いいいい……」

 しかし、一歩歩く度に、ロープが容赦なく陰核を刺激していく。
 衣葡の顔が徐々に蕩け出していく。
 汗がどっと噴き出て、髪が額に張り付く。

「んっ……あ……くっ……」

 一歩進む毎に、少しずつペースが落ちていった。
 身体が熱くなり、息遣いが荒くなる。
 足の動きが鈍くなり、太腿が小刻みに震え始めた。

(い……イッちゃいそう……)

 奇しくも、そのタイミングで一つ目のコブが目前に迫っていた。
 思わず尻込みしてしまう。

「だんだん表情がエロくなってきてるじゃねえか。おまえは衣葡とありさ、どっちがエロいと思う?」
「ううむ、どっちもエロいが、しいていうと衣葡かな?」
「俺はありさだな。必死に堪えている表情がそそるぜ」

 こういった話題に、富成は自分から入ってこない。
 殿井たちが話題を振ってみても、然したる答えが返ってこない。
 かといって女性に興味がないわけではなく、ハンモック時もしっかりとありさに性交を果たしている。
 そんな富成だが、指示には忠実でよく働くので、仲間からは重宝がられ可愛がられているといえるだろう。
 総じて彼は根暗な性格だが、世間でいうところの“ネガティブ”とは異なる。
 つまり根暗の最たる特徴である内向的な一面を持ち合わせているが、決して“自分はダメ人間だ”と思考するネガティブ人間とは違うのだ。

 殿井たちが望んでいるのは、衣葡の絶頂する姿だ。
 二十代の美人OLが見せる淫靡な姿に倒錯的な興奮を覚えていた。

 衣葡は潤んだ瞳を閉じると、呼吸を整える。
 できることなら身体の火照りが落ち着くまで待っていたいが、そんなことをしたら時間が足りなくなってしまう。
 覚悟を決めて一歩を踏み出すしかなかった。

(あ、ありさちゃん……。私、がんばるから、あなたも耐えて……)

 衣葡は瞳を閉じたまま、一歩を踏み出した。

 結び目が陰核にぶつかり、強く押し潰される。
 ロープの感触がはっきりと伝わってくる。

「ああああああああぃいいいいい!」

 衣葡は目を見開くと腰から上をビクビクと痙攣させた。
 秘部から愛液が吹き出し、床に大きな水溜りを作っている。
 性の香りが辺りに充満していく。
 衣葡は崩れ落ちそうになったが、なんとか堪える。

 ロープからは、大量の汁が流れ落ちている。
 それでも、衣葡は無我夢中でもう一歩を踏み出した。

「あううううっ」

 全身に伝わる麻薬的な痺れに、全てを忘れて倒れてしまいたい衝動に駆られる。
 しかし、衣葡はすんでのところで踏みとどまっていた。

「あぃいいいい……」

 衣葡は黒髪を揺らしながら、切なげな吐息を漏らす。
 こぶを通り抜けてなお、強すぎる快楽は衣葡の正気を失わせてしまっていた。



前頁/次頁

 
ありさ












表紙
自作小説トップ
トップページ




inserted by FC2 system