
第51話「恥虐のこぶ縄渡り(2)」
ありさはおそるおそる足を前に進めた。だけど足枷代わりのダンベルがずっしりと重く、その足取りは牛歩のごとく遅い。
張られたロープがポリエチレン製のため滑りがよく、麻縄のようなチクチクした痛みはなかった。
ダンベルで歩幅が制限されているのでゆっくり、ヨチヨチした足取りでしか進めないありさ。ロープがありさの花裂の粘膜を擦り、腰が震えた。
最初のこぶが目の前に迫って来た。ありさは最初これなら簡単に乗り越えられると思っていた。
縄が花裂の粘膜に与える刺激は、ありさの身体の奥を熱くさせはしたが、声を上げるほどの強いものではなかったからだ。
だがこぶの存在はそんな生温いものではなかった。こぶが花裂の前の部分にあたると、ありさは思わず「アアッ」と声を出した。先程車内で、膣の入り口の粘膜をさんざん刺激されていたありさのクリトリスは本人も気づかないうちに固く勃起していた。
そのクリトリスにこぶが押し当てられて、ありさの全身に電流が走ったように身体が震えた。
これほどの刺激が生じるとは思っていなかったありさは、こぶをクリトリスに押し当てた格好のまま動けなくなってしまった。
ピシッという音が轟き、ありさの尻が熱くなった。
顔をしかめるありさ。
殿井が布団たたきを打ったのだ。
殿井がありさの横に来て、布団叩きの柄で乳房を小突きながら不満を漏らした。
「まだこぶは一個目じゃねえか。なんで立ち止まってる? 先に進むまでケツ叩き続けるからな」
ありさは足を進めようとしたがこぶの刺激でなかなか足を出せない。
殿井が容赦なくもう一回、今度は強めに布団たたきで尻を打った。
いくらショーツを穿いていても、尻を打たれる痛みと屈辱に、ありさは顔を歪めた。
ありさは唇を噛みしめて、こぶの刺激とダンベルの重さに耐えて、全身で大きく前に一歩踏み出した。
ロープの結び目のこぶが股間の花裂を通り過ぎて行く時、ありさは視界が真っ白になった。
まずクリトリスがゴリゴリと擦り上げられ、膣の入り口にこぶがねじ込まれ、離れて行く時に尻の穴が擦られた。
つまり、はからずも三所責め(みところぜめ)に遭ったようなものだ。
ありさの口から切ない声が漏れて、殿井たちを刺激する。
両足がガクガクと震えありさの腰がわずかに落ちた。
するとロープがさらにきつく粘膜に食い込み、ありさは否応なく身体を真っすぐに立て直さざるを得ない。
崎野がありさの横に寄り添い、右手でありさの後頭部を優しく撫でながらささやいた。
「いい子だ、よくできた。さあ、残りはたった九個だよ。その調子でがんばってみようか」
ありさが視線を前方に向けると、ずらりと並んだ結び目のこぶが見えた。
崎野のいう「たった」九個の結び目のこぶは、ありさには永遠に続く憂悶のいばらの道のように見えていた。
二個目のこぶの前でもありさはまた立ち止まった。
ヨガで鍛えているありさなので足首の重さはどうにか乗り越えられても、性器の敏感な箇所に与えられる刺激には、慣れるということがなかった。
むしろ歩を進めるごとで刺激は強く鋭くなっていく。
ありさは珍しく泣くような口調で訴えた。
「ああ、これ、ダメ……刺激が強すぎて……もうダメ」
殿井が残忍な笑みを浮かべて、ありさの目の前に布団たたきを見せつけて言った。
「泣き言を言えば許してもらえると思ってるのか? そんなわけねえよね。ほら、歩け」
殿井に布団たたきで尻を叩かれて、ありさは「ひぃ~……」と悲痛な声をあげながらこぶを乗り越えた。
三個目のこぶを超えた辺りから、ありさの蕩けるような切ない声が、泣き声に近くなっていた。
無論殿井はおかまいなしに布団たたきでありさを前方に追い立てる。
六個目のこぶの前で、殿井が立ち止まり衣葡に手招きをした。
衣葡がやって来ると、殿井は持っていた布団たたきを衣葡に持たせた。
「ありさが止まったら、ケツを叩いて催促しろ」
「そんなことできないわ! できるわけないじゃないの!」
「断るのか? 俺が叩くより、友達のおまえが叩く方が、少しは痛みがマシだと思ったのだが……それならいい、ありさのケツを叩きまくってやるから」
「待ってください。私が叩きます。私に貸してください」
「だけど、撫でるように叩いたり手加減をしていると、おまえにきつい罰を与えるから覚悟しろ」
「分かったわ」
「ありさちゃん、許してね……」
衣葡はおそるおそる布団たたきをありさの尻に打ちつけた。
ペシャリという弱々しい音がする。
殿井が衣葡のそばに来て叩き方を教えた。
「あんまり大きく構えなくていい。手首を素早くひねる感じで」
そこから先、ありさを追い立てる布団たたきは衣葡が握った。
次第にコツがつかめて来た衣葡の尻叩きはピシャリと鋭い音を立てるようになった。
その姿は、一見、BDSM界におけるミストレスのような立ち居振る舞いだが、衣葡には加虐性欲など微塵もなかった。
衣葡の布団たたきで追い立てられて、やっと十個全てのこぶを渡り切ったありさは、衣葡にダンベルを外してもらいロープから解放されると、そのままフローリングに崩れ落ちた。木質系の床材のさらっとして冷ややかな感触が肌に伝わってきたが、その時ありさは意識が朦朧としていた。