第8話 強気
午後6時、結花にLINE
「相手の方が『示談金の200万円は少ないのじゃないか?』て言いだして誓約書にサインしてくれません。今説得しているんですが『示談金が適正かどうか裁判所に判断して貰いましょう。』とも言うんで困っています。どっちにしてもそっちへ行くのは遅くなりそうです。」
30分後
「相手の方も少し冷静になって自分の言い分が無理筋だと気付いたようです。今別室で奥さんと相談しているようです。どんな要求が出ても結花さんに迷惑が及ぶような結論は出しません。安心してお待ちください。」
「あー遅くなっちゃった。もうお腹ペコペコだよ。」息せき切って玄関のドアを開ける。
「ご飯の用意できてるわよ。お礼の意味もあっていいお肉を奮発したわ。」
すき焼き鍋に火をつける。
「チューハイでしょ。用意しておいたわ。で、相手の方納得してくれたの?」
「うん、大丈夫だ。詳しい話は乾杯の後だ。」
あの時と同じ焼酎のロックをすすめる。
「ちょっと苦労したけれどこの通りだよ。」誓約書を見せる。
「あ〜ありがとう。これで終わったのね。」
「後、僕が示談金立て替えているの忘れないでね。」
立ち上がって隣りの部屋に消えた。
「ごめんなさい。70万しか用意出来なかったの。」
侘びながら封筒を差し出す。
「えっ70万だけ?・・・・・・・」
あえてだけという言葉を使う。
「ごめんなさい。残りのお金は来月でお願い出来ないかしら?駄目だとおっしゃるなら明日お支払させていただきます。」
結花の今村に対する会話が敬語に変化する。
親から借金迄してしかもこんなに遅く迄奮闘してくれた相手に対する感謝の念と約束通り払えなかった詫びる気持ちが結花に無言の圧をかけているのだ。
「それでいいよ。結花さんが喜んでくれるなら俺それでいい。だから今夜は飲みに付き合ってよね。」
「いいわよ。でも主人がお客様の接待を終えて11:30には帰って来るわ。だから今村さんも11時には帰ってね。」
(嘘だ。旦那は別府のはずだ。でも初めて俺のことさん付けで呼んでくれたな。)
「じゃ急がなければ。」
いきなり抱きしめて唇を合わせる。
「駄目よ。」と言いながらも自ら舌を絡めてくる。
少し抵抗したが先日、杭を打った状態迄10分くらいで辿り着く。
すなわち下着姿で男のディープキスを受けている状態だ。
そしてあの時と同じようにズボンのベルトを外す。
夜ごと結花の妄想に出てくる現物を握らされても逃げない。
短時間ではあったが欲求不満の肉体に火がつく。
先日は拒否されたブラのホックも簡単に許す。
また新たな占領地を得た事になる。
凄い乳首勃起だ。
これを見た時人妻洋子に教えられた攻めを思い出す。
手のひらで転がす愛撫だ。
「いい事、これは乳首が完全勃起した時に有効なやり方よ。」
結花は初めて受ける愛撫で乳首からの快感が体内に送り込まれているのを感じる。
乳首で感じているのではなく、全身で感じているのだ。
「気持いい~」思わず小声で呻いてしまう。
ブラを外す時も乳首への愛撫を始めた時も結花から拒否の言葉はない。
普段の結花からは考えられない。
もしかしたらあまりの快感に思考能力を失っているのかもしれない。
実際この時の結花は肉欲に支配され思考の入る余地をなくしていた。
今村は試しにショーツのゴムに指をかけてみた。
なんの抵抗もせずむしろ尻を浮かして協力したのだ。
もう今までのような15分だとか40分だとかのペースは不要だ。
前技も愛撫も手抜きして一気にハメる。
とにかく全領土を占領して全ての杭を抜いてしまうのが先だ。
挿入して終わりではなく逝かせて完了なのだ。
結花の思考能力が回復する迄に全て完了させてしまいたい。
いつものスローセックスからは考えられない性急さだ。
正常位の高速ピストンで攻めまくる。
この荒々しい攻めが偶然半年間レスだった女にマッチする。
しかも膣壁を捲り上げる様なカリ高にガチガチの剛直だ。
結花にとっては共に初めての経験だ。
それに思考が停止している分肉体の感受性は倍増している。
歓喜の泣き声をあげ全身が震える。
あまりの気持ち良さに黒目が瞼の裏へ消える。
あの凛とした美人上司松井主任を征服した瞬間だった。
満足して一旦矛先を納める。
寝室を調べながら一回りしたところで女のうめき声で振り返る。
「私、失神した様ね。恥ずかしいわ。」
思考力が戻ったのであろう。
恥かしそうにタオルケットで裸身を隠す。
「結花、良かったよ。ありがとう。それに凄かったよ。食いちぎられるかと思った。フフフ。」
タオルケットの上から抱いてキス。
先程のディープキスからは考えられないほどの軽いキスだ。
呼び捨てにされた事で征服されたことを実感する。
ここから今村の至福の時間が始まる。
先程は征服し肉体関係の烙印を押すために先を急いだ。
そんな手抜きの性交に失神するほど感じてくれた上質の女体を堪能する積りだ。
タオルケットに手をかける。
「えっ・・・」
前を固く閉じたまま握り締めている。
ここ迄来て抵抗されたのは初めてだ。
全てを曝け出しハメられて逝き顔迄知られているのに羞恥にまみれているのだ。
「俺、結花の尻穴の形迄知っているんだよ。もう恥ずかしがる事はないだろう。」
(わかったよ。それならまたゼロから杭打ちを始めればいいんだ。タオルケットの下は全裸なのだからそう手間はかからないだろう。)
タオルケットの上から抱きしめ唇を合わせる。
「駄目よ。主人が帰ってくるわ。」
先程迄あれだけ燃え上がり鬼逝きしながらもう元のクールな松井主任に戻っている。
逝く時「あ~初めてよ~初めてよ~」ってむせび泣いたのは「こんなに気持ちいいのは初めてよ。」だと思っていたが、もしかしたら「初めての絶頂よ。」という意味だったのかもしれない。
28歳の人妻でありながら性交に関してはまだ成熟していなかった可能性が強い。
それならそれで「セックスの素晴らしさを教えてやろう。俺の好みに調教してやろう。」そう思うのが男の常だ。
しかも広瀬アリス似の美貌にAV女優並みのナイスバディだ。
一応の目的は果たした。
結花と肉体関係を結んだのは事実だ。
先に楽しみを残しながら一時後退する。
「残念だな。こんなになってるのに・・・・」
見せつけながらパンツを探す。
本立ての隙間からマイクロカメラを回収する。
「えっ、えっ、撮ってたの?なんて人なの。カメラをこっちへ渡しなさい。」
ウィンクしながらポケットに仕舞い込む。
「ちょっと待って。消すのよ。すぐに消しなさい。」
「うん。うん。判ったよ。消しておくよ。旦那が帰宅するまでに帰らなくっちゃ。」
そそくさと外に出る。
今村は自然に口元が緩むのを感じながら帰宅の途につく。
翌朝は売り場朝礼が終わるのを待って松井主任に元気よく挨拶。
「おはよう御座います。昨日はありがとうございました。」
階段の踊り場へ大急ぎで移動。
「おかしなあいさつしないで。売り場の子に変に思われるじゃないの。」
開店前で客はいないし店員も開店準備で忙しいのだろう。
階段の踊り場に人気はない。
抱きしめて唇を合わせる。
突き飛ばして売り場の方へ戻っていく。
数分後LINE
「二度としないで。誰かに見られたらどうするつもり?」
その事には触れず返信。
「以前言っていた地下のおじさん社員たちの噂教えるね。」
おじさん「今村君、君2階の松井主任に惚れてるいるだろう。」
俺 「ええ、まあ美人ですし清廉な振る舞いが他の人とは違うように思います。」
おじさん「君は若いからそう思うんだ。俺には判るんだ。あの手のタイプは激しいよ。」
俺 「何故そう思うのですか?」
おじさん「会社であれだけ背筋伸ばして仕事してりやストレス溜まるよな。
俺たちのように一杯飲みながらエロ話に花を咲かせる事も出来ないだろ?
ならその発散先は旦那しかいない訳よ。
ところがあのタイプの女が選ぶ男は草食系のダメ男と相場が決まっているのさ。」
俺 「だから年中欲求不満って事ですか?」
おじさん「そうだよ。見たら判るだろ?あの身のこなし、あの眼つき、
それに男を寄せ付けないあのオーラ。自分の状態が判っているから怖いのさ。」
俺 「それならチャンスじゃん。」
おじさん「そうだよな。でも君じゃ太刀打ちでき ないよ。経験豊かな俺たちだって食い殺されそうな気がするよ。」
他の人達「そうだそうだ。やめとけ。やめとけ。無理。無理。ハハハ」
これが以前の会話だ。ここからは今日の会話だ。
俺 「本当だったよ。信じられない程の好きもんだったよ。」
おじさん「嘘つけ。いかに欲求不満とはいえ君に身体を開くレベルの女じゃないよ。
彼女ほどの女ならどんなイケメンでも望み通りだよ。夢でも見たんだろう。」
俺 「本当だよ。僕だってやるときにはやるんだから。」
おじさん「もしそれが本当だったら高級魚の刺身を1年間無料にしてやるよ。妄想は止めるんだな。」
他の人達「妄想は止めろ。『月とスッポン』ってこの事を言うんだろうね。はったりは良くないよ。ハハハ」
悔しくて悔しくてスマホのハメ撮り見せてやろうかと思ったが結花の立場も考えて我慢したんだ。
それにしても鮮魚売り場のおじさんたちの女を見抜く目の鋭さには驚かされるね。
この一文で結花は震えあがる。
(やっぱりあの時盗撮されてたんだ。そしてあの鬼逝き動画をスマホに落して持ち歩いているのだわ。)
翌朝も洋品雑貨売り場の前で朝礼が終るのを待つ。
「松井主任、おはようございます。最高です!」元気のいい挨拶だ。
また階段の踊り場へ連れて行かれる。
「変なあいさつはしないでって言ってるでしょ。もう朝、売り場に来ないで。」
抱いてキスしようとしたが警戒していたのだろう。とっさに身をかわす。
「君に話しておかなければならない事があるの。今夜会える?」
「気持のよくなる話ならいつでもOKだよ。」
「そうじゃないけど君に諭しておかなければならない事があるのよ。」
「なんだい、説教かい?それならお断りだ。いつおマンコするかの相談以外は会わないよ。」
この強気はハメ撮り映像を持っているが故だと結花は判断してしまう。