官能小説『美人上司 結花 28歳』(03)

著作 優




第3話 松井結花28歳販売主任

卒業後大手和菓子メーカーに就職して2年目になる。
勤務地は百貨店の地下売り場だ。
新入社員はすべて販売を経験させられる。
勤務地は直営の専門店だったり今村のように百貨店だったりする。
いつものように休憩時間は喫煙室で過ごす。
松井結花主任が喫煙者だからだ。
彼女は昨年までは和菓子売り場を担当していたが今年からは2階の洋品雑貨売り場に移動した。
新人社員だった今村を教育してくれたのは彼女だった。
和菓子メーカーの先輩は売り場のお局様で意地悪だった。
彼女が中心の飲みの会に参加しない今村への虐めは凄惨を極めた。
そんな今村を見て手を差し伸べてくれたのが松井主任だ。
ねちねちと続く説教の間に入って「今村君。ショーケースが曇っているわ。」と指示を出す。
ベテランのメーカー従業員より百貨店本社の主任の方が立場は上だ。
そして年上のお局様に「若手を育てるのは大事な事だけどお客様の目のある売り場では止めなさい。」と言い放ったのだ。
松井結花さんは28歳結婚2年目の美人販売社員だ。
結婚と同時に販売主任に任命されたそうだ。
この時彼女は入社3年目で異例の抜擢だと噂されている。
広瀬アリス似のハーフ顔で身長も170cmの今村と同じくらいだ。
食品売り場にいる時は白のユニフォームで気付かなったが洋品雑貨売り場のスーツ姿は見事なフォルムだ。
高身長で目立たないがその胸も下半身も豊満だ。
スーツの絞られだウエストにも変なしわがないから見事にくびれているのだろう。
遠くから眺め夢想するだけで楽しい。
今や今村の頭の中での女性は松井結花以外にはいない。
セフレの二人との時間も松井結花を抱いている自分に置き換えている。
探偵の時はホテルの部屋で二人きりになるチャンスに恵まれていた。
女を簡単に手に入れていたから苦労して口説き落とす術を知らないのだ。
だが惚れた相手の近くにいたいと思うのは男の常だ。
休憩時間だけでは満足できず終業時間の後社員出口で彼女を待ち受ける。
ぴったりしたくるぶしの見えるデニムパンツにざっくりした半袖のTシャツ姿の彼女が現れる。
仕事中のキリッとしたスーツ姿しか知らない今村はその若やいだ姿を見た時彼女もまだ20代のミセスだと再認識する。
目的がある訳ではないが後ろを追従する。
勿論後ろ姿を盗撮しながらの尾行だ。
ぴったりしたデニムパンツは尻の豊満さを隠せない。
見事な巨尻は歩く度に左右の山が交互に盛り上がりその肉感を表す。
この尾行は彼女が自宅に入るまで続く。
帰ってからは録画を編集し巨尻の動きをアップにしスロー再生で楽しむ。
昼間は休憩室で笑顔で同僚と話す彼女に見とれる。
休憩時間が終ると凛とした表情に戻り背筋をたてて売り場へと戻っていく。
夜の尾行は週2回くらいのペースで続ける。
3ヶ月もすると刺激に慣れてしまう。
彼女の休憩室でのテーブルは決まっているので隣のテーブルで待ち受ける。
「あれ?松井主任ご無沙汰です。地下の今村です。」
偶然を装って挨拶する。
「ああ、和菓子売り場の子ね。元気にやってる?」
「はい。お陰様でだいぶ慣れました。しかし主任はスーツ姿がよくお似合いですね。地下におられた時の白ユニホームとえらい違いですよ。」
「ありがとう。でもこのスーツ百貨店側からの支給品でもう一つ気に入っていないのよ。」
「いや、上背もあってスタイルもいいからかっこいいですよ。」
このように松井結花の間近で会話を楽しむのは月に1~2度だけと決めている。
尾行がバレた時に偶然を装うためだ。
休憩室で出会う偶然が度重なればその時の偶然の理由を見透かされる可能性があるからだ。
4年間の探偵生活で学んだマニュアルだ。
この日のアフター5もぴったりと彼女をマークする。
何度も言うが下心がある訳ではない。
いわば今村の趣味のようなものだ。
尾行でその人の側面や場合によっては裏側まで知る事が出来る。
それが楽しくて高額ではあったが探偵機器は全て揃えた。
例えばこの百貨店の総務部長が女装クラブへ入って行くところを見たり美人の受付嬢が人事課長とラブホに入る瞬間をキャッチした時などは心がときめく。
それらはすべて写真やビデオに撮り戦利品としてファイルされる。
その映像を見て相手を征服した気になって楽しいのだ。
明らかに異常なのだがその異常さにストーカー達は気付いていない。
今村も彼らと同類なのだがそのレベルが違う。
彼女の尾行は4カ月になるがその裏側は勿論、側面さえ知る事が出来ないのだ。
「完全無欠の人間などいる訳がない。」これが今村の持論だ。
この日の彼女は梅田に向かう。
居酒屋で男と落ち合う。
男子トイレで見つからない様にポケットにライター型盗聴器を差し込む。
会話の内容から夫だと判る。
その注文内容から飲みと食事の両目的だと知る。
今村はターゲット以外の周りにも気を配る。
探偵のマニュアルの一つだ。
と、松井夫婦から目を離さない女がいる事に気付く。
20代の人妻風の女だ。
二人がレジで精算を済ませ店外に出た途端彼女も後を追う。
こういう時の為のQRコード支払いで大急ぎで外に出る。
はるか向こうに松井夫婦が見える。
見失わなくて安堵し尾行を続ける。
女は明らかに尾行の素人だ。
あの距離ならターゲットが振り返ったら気付かれるだろう。
そして松井夫婦が帰宅の為地下鉄の構内に入ったところで尾行を諦める。
もちろん今村はこの女の後をつける。
人気のない場所で話しかける。
「ストーカーは犯罪ですよ。」
びっくりして逃げ出す。
ヒールとスニーカーでは勝負にならない。
10mほど先で手首を掴む。
「すみません。見逃して下さい。あの男が悪いんです。」
今村の事を刑事だと思っている様だ。
「なぜストーカーしているか正直に話せば見逃してやるが嘘だと判ったら容赦しないからな。」
近くのファミレスに入る。
内容はこうだ。
松井が飲酒運転で彼女の夫の車にぶつけたところから話は始まる。
「会社での立場もあるんで警察に届けず示談にして欲しい。示談金として200万円払うから。」
と言い出したのだ。もちろん車両の修理も松井って男がする約束だ。
その旨、念書と詫び状を書いて貰って別れたそうだ。
抜かりなく免許証も写メにとってある。
被害者の方も行政処分中の無免許でこの話は渡りに船だった。
が、それを知った松井が示談金の支払いを拒否する。
「その念書、見せてもらえるかな。」
「はい。でも現物は自宅に置いていますので写メを見て下さい。」と言ってスマホを見せる。
「どうしても約束を守らせたくて会社の陰で待ち受けていたところ同僚と一緒だったので一人になるまで尾行した訳です。」
「でも奥さんと二人になったところで話せばよかったのに。」
「彼から妻にも内緒にしてくれって言われていたから。」
本当に人のいい奥さんだと笑ってしまう。
その笑顔を見て少し緊張が取れたのだろう。
「もう諦めました。うちの主人も無免許がバレたら間違いなく取り消しになります。長距離のトラックドライバーなんです。
職を失うより泣き寝入りする方を選びます。でも車の修理代10万円だけは欲しかったなぁ。」
今村はその念書、詫び状、免許書の写メを10万円で買い取る。
翌日、探偵社の後輩三田村に松井の調査を頼む。
「探偵社の料金は高いから暇なときに探ってよ。少しならお礼も出来るから。」
「丁度今、事案がないので明日からやるよ。」
住所と顔写真を渡す。



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イラスト提供:みんちりえ様





















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