第23話 つながり合う二人


「わたし、こんなおいしいカレーを食べたのって初めて♪」

「そうだろ。やっぱ、ホテルのカレーは最高だよな……はははっ」

美桜と翔吾は小さなテーブルに向かい合い、煌びやかな夜景を背景にカレースプーンを動かした。
きっと高価なカツカレーである。
一サジすくうたびにほっぺたに手を当てて、落ちていないか?
そんなジェスチャー付きで、愛する人どうしの食事を堪能する。

(そう言えば、サキコってお腹とか空かないの? こっちの世界にはね、こんなにおいしそうな食べ物だってたくさんあるんだから)

美桜はカレーソースをたっぷりと浸けたカツを口に入れた。
真っ直ぐにダブルベッドを見つめながらも、なんとなく視線の一部をこちらへと向ける人形に自慢をする。

(最後の晩餐……そうよね。わたしと翔吾にとっては、これがラストの……でもね、サキコ……)

「翔くん、これからもよろしくね。絶品カツカレーで、わたしと翔吾の幸せな明日にかんぱ~い♪」

カチンと涼やかな音色が響いた。
美桜は氷の浮いたガラスのコップを手にすると、置いたままにされている翔吾のコップに当てた。

一方的に話しかられて、翔吾が目を白黒させながらうなずいた。
カレーの浸みたご飯とカツとを、頬張るように口に放り込んだそのタイミングである。
「モグ、ムシャ……か、カンパイ」と、乗り遅れた声を急いで吐いた。

『うふふっ。強くなったのね、美桜。新しい明日のための最後の晩餐、ちょっと格好つけすぎだけどね』

一方的に心の言葉を投げかけて、そんな返事が美桜の胸に届いた。
ゴスロリな少女が口に手を当ててクスクスと笑っている。
そんな光景も、美桜の脳裏に届けられていた。

「さあ、翔くん。お腹も満腹になったし、これでエッチの続きだね」

「おう、そうだな。俺たちの明日のため、美桜、優しく抱いてやるからな」

「もう、翔くんったら。恰好つけすぎよ」

窓際の席を立つなり、翔吾は裸になってみせる。
美桜もまた、緩く結ばせたバスタオルを解いた。
ほんのりと紅い素肌を隠すことなく晒した。

「翔くん、もう一回お姫様抱っこして」

「任せとけって!」

息もピッタリだった。
美桜は翔吾の腕に抱えられて、二人だけのベッドへと向かった。
寝乱れた感のあるシーツの上に、そっと寝かされる。

「あ、煙……」

美桜が天井を指さした。

「美桜、愛してる……むちゅ、ちゅばっ……」

しかし、翔吾は振り返ろうともしない。
美桜の上へと覆い被さると、唇を合わせた。
舌と唾液を揃えて注ぎ入れてくる。

「はむぅ、ちゅにゅ……翔くん、愛してる……」

美桜もまた、翔吾を受け入れていた。
天井を這うようにして広がる煙から目を逸らせた。

「美桜……」

「翔くん……」

二人して呼び合って、間が悪そうに口を噤んだ。
見つめ合わせた目と目を同じ向きに泳がせて、少しの時を開けてから、もう一度唇を動かして……

「優しく……入れてね……」

「優しく……入れてやるからな」

要求し、回答し、美桜と翔吾の声がハーモニーする。
しかし、口を噤んだりしない。
間を稼いだりもしない。

「あぁ、翔くんの……硬くなってる……」

美桜は寝そべったまま足を開いた。
内腿の肌を遠慮がちに擦る男のモノを、彼女自らが招き入れていく。

「美桜のオマ〇コもだ。ヌルヌルのままだぞ」

「い、いやぁ……はあぁ、そんなこと言わないでよ。んんっ、恥ずかしいんだから」

そして翔吾のペニスが、割れ目の壁を上下に撫でた。
発情した女を示すように、濡らした陰唇の中へと潜り込んでくる。

ジュリュ、ジュニュ……

「ふぅ、あぁっ……大丈夫、美桜はぁ……くぅっ、全然平気だからぁ」

翔吾がジワリと腰を押した。
仰向けで、うつ伏せで、美桜と翔吾は身体を重ねたまま、一つに繋がっていく。

「美桜の中……んぐ、きつい……」

処女の軌道は、想像以上に狭いのだろうか?
それとも、一生に一度の経験を差し出す少女の想いがそうさせるのか?
翔吾が顔を歪ませる。

「はぐぅ、がんばって……翔くん……」

好きなだけ顔を苦悶させても構わないのに、美桜の方は微笑んでみせる。
涙目のまま、いじらしいエールまで愛する人に送った。

ずずぅ、ずにゅ、ずりゅぅっ……

「ふぐ、んくふぅっ……翔くんのぉ、翔くんのオチ〇チンがぁ……ひぐ、くぅっ、美桜のオマ〇コにぃ、あぁっ、これで一つに……」

「くはぁ、美桜……美桜ぉっ!」

硬質な肉棒が、膣穴を抉るように進んだ。
身体を裂かれる。
そんな切ない痛みが下半身に渦巻くなか、美桜は想いのままを声にした。
それに感化されたのか、翔吾が絶叫気味に吠えた。

(さようなら、美桜のバージン。翔くんのオチ〇チン君、美桜の初めてをもらってくれてサンキューね)

美桜はシーツを掴んでいた手を離した。
指先までピンとさせたまま、翔吾の背中に乗せた。
熱く汗ばんだ男の息遣いを手のひらでも感じ取り、彼女の方からも腰を浮かせた。



「あぁぁっ! 翔くん……翔くん……」

美桜は仰向けのまま喘いでいた。
翔吾が腰を振るたびに、隠しようもない本気の声を漏らしていた。

「美桜、気持ちいいのか? はぁ、はぁっ……俺のチンポで、オマ〇コ……感じているのか?」

「うん、とっても……はふんっ、オマ〇コ……いいぃっ!」

白くて鼻の粘膜を突き刺す煙は、部屋中に立ち込めていた。
毒々しくも感じる濃色な煙も、四角い天井を埋めるように流れ込んでくる。

「し、翔くん……んんっ、キスして……美桜の口を塞いでぇ」

「あぁ、みっちりと塞いでやる。美桜の口の中も、美桜のオマ〇コも、全部俺のモノで密着させてやる」

「ふむぅっ、ちゅぷっ……むはぁっ……」

翔吾は望んだままに、唇を合わせてくれた。
翔吾は望んだ以上に、反り返った肉棒を深く挿し込み、腰をグラインドさせる。
処女膜の名残を忘れさせるように、頼もしい感触で膣穴を抉ってくれる。

(美桜はセックスしているの。大好きな翔くんと身体を一つにさせて、エッチな思い出を作っているの)

恥部の痛みは、やがて痺れるような甘い刺激へと。
翔吾の腰が波打つように揺らされ、そのリズムに合わせようと、美桜が稚拙な腰使いで応じてみせて。

「ぶはぁ、美桜のオマ〇コ……ゲホッ、ゴホッ……最高に気持ちいい」

「プハァ、ハァ……最高って翔くん……ごほ、ごほ……他の人のアソコも、んふんっ……知ってるってこと?」

『死』へのカウントは、今も続いている。
美桜も、翔吾さえも、それは確かに自覚していた。

けれども、それがどうしたというのか。
口づけをし、膣肉とペニスを結び合わせ、美桜と翔吾は掠れた喉で声を触れ合わせていた。
運命の歯車がどこかでギアを入れ替え、その気配を二人して心のどこかで拾った。
そんなおぼろげな希望も、大切に抱き続け……

「翔くん……出して、ごほっ、げほっ……美桜のオマ〇コに……」








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