第8話  一足早いクリスマスプレゼント その1



       12月 23日 日曜日 午後11時   二宮 佐緒梨


「今夜は『マッチ売りの少女の部屋』をご利用くださいまして、誠にありがとうございます。
気が向きましたら、またのご来店をお待ちしております♪♪」

わたしは閉じていくドアに向かって頭を下げていた。
そして、それを見届けると壁に寄り掛かって肩で荒い息を繰り返した。

今夜は、さっきのお客さんで10人目だったかな? 12人目だったかな?
もう、数える気にもなれない。

午後7時頃から始めて、今は11時すぎ。
さすがに限界。身体もクタクタ。
そろそろ店じまいして欲しい。

いくら、あそこをお見せして色んな物で刺激されるだけといったって、辛いよ。
佐緒梨は、4時間以上、強制的にオナニーさせられているのと同じなんだから。

今夜だって何回イッちゃったんだろう。
だいたい、ふたりにひとりのペースだから、5回、6回……って……もういや!
そんなの数えたくなんかないよ。

でも、さっきのおじさんはしつこかったなぁ。
2回も時間を延長して、指と舌とおまけにピンクローターまで……
ほとんどフルコースって感じで……

それでなくても佐緒梨。
身体の芯が熱くて疼いているのに、あそこをネチネチ責められて大きくイッちゃって、その後、気づかれないようにもう一回、小さくイッちゃったんだから。
いったい、お義母さんにいくら払ったのかしら?
もっと大切な人を愛してあげればいいのに……

♪♪……♪♪……

「あ、メールだ……」

わたしは、部屋の隅っこに置いてあるバッグからスマホを取り出すと、画面を覗いた。

『佐緒梨、住田が来ているの。
いつもの感じでいいから、相手してあげて……』

住田……

読み終えた途端、目の前が暗くなってくる。
あの殺気だった恐ろしい目が脳裡に浮かんで、毛穴という毛穴から冷たい汗が滲み出してくる。

「そんなぁ……今からなんて……」

でも、泣き言なんて言ってられない。
あの男の機嫌を損ねたら、どんな恐ろしいことをされるか……
それに、そろそろ決めないといけないのかも……そのために佐緒梨は……

微かに聞こえる、足を引きずったようなだらしない靴の音。

わたしは、腰に巻き付いたロングスカートを解くと、自分の液で汚れたあそこを急いで清めた。
そして、ブラジャーも取り去り全裸のまま部屋の中央に立つ。

やがてドアが嫌な音を立てながらひらいて、サリーの前に住田という男が立っていた。

「い、いらっしゃいませ。住田様。お待ちしておりました……」

「よぉ、元気にしてたか? 佐緒梨」

男は、馴れ馴れしい態度でわたしの名前を呼んだ。
服を全て脱ぎ去った生まれたままの姿の佐緒梨を見ても、眉ひとつ動かさない。

中肉中背。平凡な身体付きだけど、猛禽類のような鋭い目付きにパンチパーマ。
細くて三角形のような銀縁メガネに、着崩した高級ブランドスーツ。

どこからどう見ても、刑事ドラマに悪役で登場する怖い人。
実際、わたしたち女の人を、金を稼ぐための道具のようにしか考えていない最低の人間だけど……

「住田様、今夜はどうされます?」

わたしは、さり気なく両腕を前で交差させながら大切な処を隠していた。
そして、そのまま上目遣いに住田の顔色を窺った。

「おぅ、そうだな……んんッ! なんだぁっ!
……あのハバァッ! ベッドを入れておけと言っておいただろうがッ!」

突然、住田が唾を飛ばしながら喚いた。

「ひ、ひいぃッ!」

「こんな硬い床の上で、女が抱けるわけないだろうがぁッ!」

ドンッ!

こんどは、握り締めた拳で、穴が開くくらいの勢いで壁を殴りつけた。

「あ、ああ……?!」

わたしの顔から血の気が引いていく。
あまりにもの恐怖に心臓が凍りつきそうになる。

ベッド……? それって、なんのこと?
お義母さん。佐緒梨、なにも聞いていないよ。

「仕方ない。佐緒梨、まずはいつものようにおしゃぶりからだ!」

「は、はい。住田……様」

わたしは苛立つ男の前に慌ててひざまづくと、ズボンのファスナーを引き、指をそっと差し入れた。
震えそうになるわたしを叱りつけながら、下着の中に潜む肉の棒を優しく包むと慎重に引き出していく。

「そうだ。俺様のち○ぽはデリケートだからな、丁寧に扱ってくれよ」

男の言葉に曖昧にうなづきながら、鼻先にぶら下がっている赤黒い肉の棒に右手の指を添える。
そして、根元を黒々とした繁みに覆われた部分までその指をスライドさせると、左手の指で丸く膨らんだ先端部分を持ち上げた。

「し、失礼……します……」

くちびるをひらくと、前歯を当てないように注意しながら喉の奥まで頬張った。
生暖かい肉の棒に舌を絡めながら、余計な空気が入らないようにくちびるをすぼめた。

「んんむぅ、ちゅぷっ、ちゅぷっ……」

男の身体から勢いよく血液が流れ込んでくる。
生暖かかった肉の棒がどんどん熱くなって、硬い凶器に変身する。

忘れるわけがない。
佐緒梨の大切なバージンを奪ったモノなのに……
佐緒梨のくちびるを口の中を今まで何度も苛められたのに……

でも佐緒梨は……

「んんんぷぅ、れろっ、れろっ……どぉぅ……ですかぁ? ちゅっぱっ、きもぉちいいですかぁ?」

頭を前後させながら舐め続けている。
ビクンッビクンッ! って、ほっぺたのお肉を内から撫でられながら、おいしそうな顔を作って頬張っている。

そうよ。この棒は、口元をベチャベチャにして舐めてるアイスキャンディなの。
熱くて火傷しそうで、いつまで経っても消滅してくれないけど、こうして舌とくちびるを使えば白いミルクが溢れてくるの。

でも、どうしてかな?
舐めていると、哀しくなって気持ち悪くなって、ものすごく惨めになってくるの。

だから佐緒梨。早く出しちゃおうよ。
本当はわたし。アイスキャンディ苦手だから。
ううん、大っ嫌いだから……


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