第4話 零れ出す乳肉~くねる腰肉 「うふぅっ……はあぁ、あなた……上手ね」 素顔ならそこそこの美人な女が、鼻に掛った声を漏らした。 突き出した男の手のひらが、はだけさせた胸の膨らみを丹念に揉みあげている。 下から上へと持ち上げては、柔らかく餅を捏ねるようにマッサージし、時には指先を垂直に立てて、乳肉に鋭角な刺激も与える。 「はうぅ、そ、そこぉ……気持ちいい……」 女が顔を仰け反らしていた。 胸の中に溜まったアルコールの匂いを吐き出しながら、バストをグイグイと男の方に押し付けて来る。 揉み込んでいた指先が深く沈み込み、ふくよかな乳肉に包まれて消えた。 (違う……こんな感触じゃなかった。もっとこう……しっとりして、滑らかで……) だが、どうしたというのだろう? あれだけ触れたかった女の乳房なのに、男の方は様子が変である。 初めて触ったあの時の、感極まった悦びの表情は当に消えている。 次第に熱を帯びてくる女の吐息に対して、ただ淡々と器械的な愛撫をしているのにすぎないのだ。 「ひゃ、くはぁ……すごい、おっぱいだけでぇ……ふぅ、こんなにぃ、感じてぇ」 高架のホームに電車が停まったのだろう。 数人の乗客が降りて来た。 男性が5人。女性が3人。 その全員が階段の途中で足を止めた。 知り合いでもないのに互いに顔を見合わせ、男達は好奇に満ちた視線をぶつけてくる。 口に手を当てた女達が、何やら囁き合い侮蔑の表情を投げ掛けてくる。 しかし、彼女は気にしない。 商売道具のバストを余すことなく曝け出し、男の指使いに本気で悶えているのだ。 股間の奥に潜ませた女の秘部も疼くのだろう。 太腿どうしを捩り合せながら、性感の高まりを極限にまで引き上げようとしている。 「はあぁっ、あはっ……ふぅっ、くふっ……」 女の吐き出す呼吸が短く途切れた。 エクスタシーが近いことを示すように、眉間にしわを寄せ、茶色に染めた髪を激しく振り乱している。 「おぉ、お願い……乳首もぉ、乳首を抓ってぇっ!」 まるで男を求める痴女のように、女が懇願する。 男の愛撫をサポートするように、彼女自身もバストに両手を這わせた。 引き伸ばされて、縮まされて、自在に蠢く乳肉に指先を突き挿している。 荒々しく掴むと、ユサユサと揺すった。 「ひぃ、くぅっ! そうよぉ、乳首ぃ……いいぃっ!」 甲高い声で女が鳴いた。 500円玉をひと回り大きくした乳輪ごと、その先端の蕾が引き伸ばされていた。 数多の男に吸わせて愛してもらった乳首を、男が摘まんでいた。 指の腹と背中でグリグリと擦らせて、女が背筋まで湾曲させる。 「ふん、こんなところで見せつけちゃって。あさましい女ね」 同業らしい女性の冷たい声が聞こえた。 その他にも、ヒソヒソと呟き合うような囁きに、クスクスとした嘲笑いの声も。 当初居合わせたギャラリーに加え、後続の電車から降り立った乗客たちが、こぞって新たな観客として追加されていた。 寂しさが当たり前の西出入り口階段が、異様な熱気に支配されていた。 (参ったな、こんなに大勢集まっているなんて……) 俄かに信じ難いが、男にとっては女の乳房と戯れるのが目的ではないのだ。 指先から指の付け根に至るまで、その肌と筋肉に覚え込ませた乳房の感触を探し求めているのである。 「やぁ、うふぅっ……あたい、もぅ……おっぱいだけでぇ」 女の息がますます荒くなっていた。 同じ愛撫されるならこの部分もと、フリーなままの片手がドレスの裾を捲った。 鎖骨の辺りまで押し上げられたブラジャーと同色、同デザインの紫色をしたパンティーまで露わにさせる。 そして彼女自らが、腰を押し付けてきたのだ。 ほどよく繁らせた陰毛を透け透けなパンティーから覗かせた股間を、男の太腿へと。 可能なら、その付け根に陣取る男の急所の部分に接触させようとして。 「すいません、行為の最中になんですが、お名前の方は?」 「ひぁっ、はあぁ……あぁ、アケミ……アケミって言うの……ふぅ、乳首ぃ、転がされると感じるぅっ」 「では、アケミさん。キリの良いところで退散しますので、出来ればアナタも一緒に」 「んはあぁぁ……キリってぇ、なによぉ? ひあぁっ!」 イクことしか頭にない、彼女ことアケミにとって、男のヒソヒソ声など上の空である。 これから出勤する男が相手の職場のことも、半円を描くように集まったギャラリーの目線も、もはやどうでも良いことである。 「あっ……ンハァァッッ! はぁ、ひぃぃっっ!」 なら、身体に知らせるしかないだろう。 気弱で優柔不断な男だが、女の乳房に触れている間は別人のように振る舞っていた。 度胸を決めて、アケミの双乳を鷲掴みにする。 たわわな膨らみをギュッと絞り上げ、手のひらの根元で乳首を潰した。 尖り切った蕾が扁平になるほどに。 「かはぁっ……あ、ああぁっ……らめぇ……はぁぁ……イクぅっ、イク……イッちゃうぅぅぅっっっ!!」 アケミが吠えた。 男を悦ばせる演技でもない。本心からの快感に全身の筋肉を波打たせて、絶頂の喘ぎを響かせた。 まるで深く愛し合う恋人のように、アケミは男に抱きついていた。 エクスタシーへと導いてくれた男の手を押し退けると、汗ばんだ乳房の肉を密着させる。 100メートル走を全力疾走したような荒い吐息を、男の耳元に吐きかけて、結局愛してもらえなかった女のスリットをグイグイと押し当てたまま。 「それじゃアケミさん、行きますよ」 「はあぁ、ふはぁ……イクってぇ、今イッたところなのにぃ……」 男の囁きに、官能を極めたばかりのアケミが期待した。 酒臭いのに甘ったるい吐息も混ぜて、潤んだ眼差しを男に向けた。 「あ、あぁっ! ち、ちょっとぉ?!」 そのアケミが驚嘆の声をあげた。 抱き合ったばかりの男が、不意に彼女を突き離したのだ。 尚も異性の身体を求めようと彷徨う腕を掴むと、男は階段を駆け降りていく。 意味も分からず戸惑うアケミを、半ば強引に引っ張るようにして。 「おい、ちょっと待てよ!」 ハレンチなショーを披露した即席カップルに、取り巻いていた男のひとりが声を荒げた。 それに呼応するように、数人の男達が情欲した目をぶつけてくる。 観戦するだけだったギャラリーの取り巻きが、半円の形を歪めていたのである。 極平凡なサラリーマンの一部が、下腹に込めた性欲を昂ぶらせていたのである。 間違ったことが起きてからでは遅いのだ。 サラリーマン達にも、アケミにも、そして男自身にとっても。 「もう、アンタのせいで、パンツがびしょびしょぉ。ねぇ、どこかのホテルで……もっといいこと、しましょうよぉ」 驚嘆の声も、戸惑いも、アケミは忘れたように男に身体を寄せた。 どうにか追走を振り切り、人気の消えた夜の路上で、艶やかな女の色気で誘惑しようとする。 「どこかのホテルって……だぁ、ダメですよ。俺達、まだそんな関係では」 けれども、男の方は先祖返りしていた。 濡れた下着を証明しようと、男の手を掴み女の秘部へと誘い込むアケミに、弱々しい声を漏らしていた。 顔をブンブンと真横に振ると、その彼女の手を押し返し、夜の闇へと逃げ込んでいった。 前頁/次頁 |
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