第10話 先輩、お尻の穴って気持ちいいですか?
太陽の日差しが柔らかく射し込む寝室で、全裸の女性二人が向かい合い、見つめ合っている。
「綺麗です、先輩の身体。女子大生してた頃と一緒で、ううん、あの頃より女子力アップしてます」
「サンキュー、綾音。でも、あなたもよ。あの頃はもっと子供っぽい身体だったのに、いつのまにか大人の女ね。これも毎晩、吉貴さんの精液を浴びているからかしら。ふふふ」
「先輩、いやらしいです。そんな言い方……」
綾音の顔が真っ赤に染まる。
慌てて右手を伸ばすと、ベッドサイドに飾ってある写真立てを裏返しにした。
「あっ、リビングだけじゃなかったのね。吉貴さんは、こんな所にもいたんだ。ふ~ん、私も結婚したら参考にしないと」
今日の美和は、どこまでもマイペースだった。
消え入りそうな表情のまま立ち尽くす綾音をよそに、右足と左足を微妙にずらせて脚線美を強調する姿勢を取り続けている。
さりげなくベッドに視線を向けたまま、曝け出された胸と股間といった女の象徴を隠そうともしない。
「あのぉ、先輩。これから何を?」
次第に女の匂いに染まり始めた寝室に、ちょっぴり不満を持った綾音が声を掛けた。
微かに残されたシーツの乱れを追う美和に、複雑なモノを感じたのだ。
「あ、そうだったわね。綾音と吉貴さんの愛の巣を見てたら、ついぼぉーっとしちゃって。ごめんね」
美和はルージュの引かれた唇から舌を覗かせると、マイペースに緩んだ頬を引き締める。
そして、脱力させるように肩の筋肉を緩めた。
客室乗務員のメイクを残したまま、男を惑わせる女の顔へと変貌させる。
(どうしちゃったの、先輩? 女どうしとか言ってたのに、とってもエッチな感じがする)
綾音は棒立ち姿勢のまま、思わず身を固めていた。
人妻らしい丸みを帯びた肢体をガードするように、両手を胸と股間へと這わせる。
けれども、彼女のそんなポーズを気にすることなく、美和は前屈みになりながら両腕を伸ばしていた。
ベッドの縁を利用して両手を突くと、高々とヒップを掲げたのである。
「な、なにを?! 先輩……」
沁みひとつない成熟した女のヒップが、綾音の目の前に突き出されていた。
わけが分からない。
ただバクバクとした心臓の鼓動が耳元で鳴り響くなか、綾音は二つに割れたバレーボールのような尻肉に見入っていた。
「綾音、驚かせちゃってごめんね。でもこれが、私がアナタにアドバイスできる最後の方法なの」
「これが最後のアドバイス……」
綾音は唐突に始まった美和の痴態を見つめたまま、彼女言葉を復唱した。
こっそりと股間に当てた右手を背後に回して、自分自身の盛り上がった尻肉を撫でてみる。
「綾音、私のお尻が見えてるでしょ? 遠慮せずにもっと近付いて、好きなように触っていいから」
「あ、あぁ……はい、先輩」
まるで花の香りに誘われた蜜蜂のように、綾音は上ずった声で返事をすると、一歩二歩と足裏を滑らせた。
自分のヒップに這わせていた右手を肘の関節が伸び切るほど一直線にして、ゆらゆらと左右に揺れる豊満なヒップに触れさせる。
少し汗ばんで、吸い付くようなもち肌に自分の手のひらを合わせると、手首の方から圧力をかけて押していく。
触るというより、張り詰めた尻肉の弾力を感じてみたくて、5本の指を拡げたままグッと沈めた。
「ねえ、綾音。触ってみてどんな感じかな? 私のお尻って」
「はい……すごい弾力です。柔らかくてぷにぷにして、先輩のお尻って気持ちいいです」
「ふふふ、そんなに気持ちいいの。だったらもっと触らせてあげる。今度は、割れ目を拡げて指をその中へ入れなさい」
「でも、先輩。そこは……?」
美和の誘いに綾音の指が止まった。
手形が残るほど手のひらを押し当てたまま、次のステージに進もうとする好奇心を彼女の良心が引き留めようとする。
「大丈夫よ綾音。清潔にしてるから安心して。あなたの指を汚したりしないから」
「違います、そういう問題じゃなくて……」
綾音は、楕円形をした肉の塊に刻まれた黒い谷間に目を落としていた。
その奥に居座って、射し込む太陽の光を拒絶するように潜む器官を透視でもするように。
アナル。そこは性器ではなく、汚れたモノを排泄する器官。
そして、人目に晒すことに最も羞恥を覚える処。
(なのに、どうして先輩は、お尻の穴をわたしに? 覗かれるだけで、とっても恥ずかしい処なのに。指まで入れて構わないって。でも、どうしよう?)
綾音は躊躇していた。
手のひらを弾力のある肉感に触れさせながら、彼女の心は拳ひとつ分を内側に寄せる勇気を見付けられずにいた。
女子大の頃から同棲し、姉として慕ってきた美和の恥部を覗き見る罪悪感に目眩まで起こし掛けていた。
「あのね、綾音。あなたと吉貴さんの夫婦を本物にするには、これしか方法がないの。アナルセックスって言葉、知っているでしょ?」
「はい。お尻の穴でその……結ばれる行為ですよね。したことはないけど」
「そう、そのアナルセックスをあなたにはして欲しいのよ。今夜、吉貴さんと」
「……?!」
声を失った綾音が息だけを呑み込んで、美和はその気配を背中越しに感じた。
そして、可愛い後輩の驚きを当然のものとして受け止めながら、彼女は右手だけで身体を支えると、左手を自分のヒップに触れさせる。
戸惑う綾音の右手を探り当てると手首を掴み、尻肉の狭間へと誘った。
強張って逃げようとする指先を無理やりにでも誘惑して、ひっそりと息づく菊座に辿り着かせていた。
「分かる? 綾音。この部分であなたは吉貴さんと繋がるの。彼のオチ○チンを受け入れてセックスするのよ。さあ、お尻の穴に指を挿入してみせて。自分の指を吉貴さんのオチ○チンだと思って」
「は、はい、先輩」
綾音は擦れた声で返事をすると、人差し指だけをピンと伸ばした。
円錐状の小ジワの中心で息づくアナルに狙いを定めると、瞬きを封印して指先を埋めた。
呼吸も止めて、ジワジワと指の付け根までを挿入させる。
「はあぁ……そうよ、綾音。それでいいの、ふうぅぅっ……」
「わたし、先輩のお尻の中に指を入れて……熱い。中がとっても熱くて、でも指が絞め付けられて気持ちいい……です」
さっきまで渦巻いていた綾音の迷いは消え去っていた。
まるで男にでもなったような気分で、彼女の指は生まれての初めての触感を堪能し続けていた。
(これがお尻の穴の感触?! これが先輩の内臓の肌触り?! この穴でわたしも、吉貴のオチ○チンを?! でも入るの本当に? 人差し指だけでも、こんなに狭いのに?)
「心配しなくたって入るわよ、綾音。んんっ、んはあっ……私、何度もアナルセックスを経験してるから。だいじょうぶ、全然痛くないから。あぁ、はぁぁ、気持ちいい」
綾音の指が肛門の壁を擦りあげ、美和が腰を揺すって身悶えていた。
もっと快感を得ようと自分の方からお尻を突き出しては、彼女の方からおねだりしてみせる。
そして途切れそうな甘い声で、綾音に語りかけていた。
自分の身体を標本に例えて、アナルセックスのレッスンでもするように。
つづく
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