第3話 気になる人のモノならなんでも 「おぉ、おはよう~」 朝の挨拶なのに、無視されることをお祈りしてドアを引いた。 寒々しい空気に包まれた人気のない教室を見回して、そうしたら、わたしの胸は薄っぺらいくせに弾んだ。 整然と机と椅子が並んで、無地一色な黒板が教室の前面の壁を覆って、その真上に掛けられた丸いボディをした時計を見上げる。 短針が『6』と『7』の数字の間に挟まって、長針が『6』の数字ピッタリを貫いている。 わたしは急いで窓際の席に向かった。 青白くさえ見える窓からの景色をチラ見すると、肩に掛けていた通学カバンを放り投げるように机の上に置いた。 そして、ここからは慎重な歩様を意識する。 教室に入るなり緩ませていた表情筋を引き締めると、廊下側に面したあの机を目指す。 お昼間になっても日当たりなんて最悪なのに。 だけどその人はとっても素敵だから、クラスメイトのいつも人気者で。 授業と授業の間の短い休み時間も、お弁当を食べてるお昼休みも、それに放課後だって。机の前にも後ろにも両サイドからも、たくさんの笑顔に囲まれて、わたしは…… そう、わたしがその人の元へ会いに出掛けても、身体を差し込む隙間だって存在しない。 「うふふ♪ だけど、今なら独り占め♪」 こんなことをするわたしって、ちょっと怖いなって自分でも思う。 だけど、今更止められないの。 ツルツル、スベスベした机を撫でていた。 長方形で白っぽさを強調させたクリーム色の天板に、その人が教科書とノートを並べて、時々頬杖も突いてたりして。 その姿を思い浮かべるだけで、嬉しくなってきちゃう。 机の下に収まっている椅子も引いた。 楕円形で木目調な背もたれに、両方の手のひらを乗せる。 滑らかな曲線の感触を真っ直ぐに伸ばした指全体に感じ取らせては、細くて華奢なその人の背中を思い描いてわたしは…… 「い、いいよね……」 ガマンできずにしゃがみ込んでいた。 両手を背もたれに預けたまま、四足のパイプに支えられた正方形な座板に顔を寄せる。 瞬時に鼻をヒクヒクさせる。 肺の中がいっぱいになるくらい鼻腔を拡げて、その人がお尻を乗せて座っていた残り香をかき集めるつもりで吸い込んで、グッと胸の中で溜めて味わったつもりになって、ゆっくりと吐き出していく。 「ふぅんん……はあぁぁ……」 それを何度も繰り返してみる。 吸っても吐いても喉が物欲しそうに鳴って、狂おしい何かがわたしの胸を絞めつけてくる。 「チロ、チロ、ネロ、ネロ……」 暴走した心も身体も、止まる気配なんて見えそうにない。 わたしは舌を伸ばしていた。 芳しい鼻呼吸の間、しっかりと溜め込んだ唾液を惜しげもなく舌の刷毛に塗して、舐めていく。 立ったり座ったりして、少し剥げかかった木目調の木肌に、唇を密着させては丹念な舌使いを披露する。 そのお味は、どんな……? 一言でなんて言い表せない。 芳醇なのに淡白で。 どうしようもないほどに心が陶酔しそうで。 脳内の味覚センサーがマヒしそうなほど、退廃的で。 だけど……何のせいかな? 舌先がピリリと痛んだりするの。 左胸のハートがドラムを叩いて歓喜しているのに、空虚な右胸がブスリブスリと鋭いモノに抉られたりするの。 それって良心の呵責かな? ううん。そんな普通の女の子な心は、教室へ入る前にゴミ箱へポイしちゃった。 だったら、どうしてなの? いくらでもハテナマークをぶつける、もう一人のわたし。 そろそろ答えるのにも面倒臭くなって、わたしは立ち上がった。 べっとりと汚れた口元を制服の裾で拭うと…… ふふふっ♪ 知りたい? それはね、わたしが救いようがないくらいにスケベな女の子だから。 その人の面影を、鼻をひっつけて嗅いでみたって、ペロペロと犬のように舌を這わせたって、ムズムズとした下腹部の疼きは収まってなんかくれないの。 もっともっとスリリングな欲求を突き付けてくるの。 わたしは時計を見上げた。 同時に両耳の鼓膜が、溌剌とした掛け声と共にランニングする健全な青春を拾う。 「やだ、急がないと」 スリリングな欲求に相応しく、ちょっぴり心を焦らせてみる。 そして、焦ってるというより、焦らさせた両手をスカートの裾へと運んだ。 背骨が縦に走る背中のラインを、大粒な汗の塊が伝って落ちた。 髪の生え際から次々と補充の汗も沁み出してきて、わたしはスカートヒダの先端を固く握らせた両腕を引き上げていく。 取り合えずだけど、股の下から冷却しようかなと。 そんなデタラメな思い付きを胸に吹き込むと、勿体ぶることなく持ち上げる。 縦長のキュートなオヘソが覗くくらいに。 「はあぁぁ……イヤぁっ……」 そうしたら、早朝の教室に女の子した悲鳴が響き渡っていた。 ちょっとお股がスースーするだけなのに、大げさなのよね。 唇と声帯がタッグを組んで、持ってもいない羞恥心を演出しようとする。 「見えてる? わたしのアソコ……もっと近くで見せてあげるわね」 わたしは引き上げたスカートを掴んだまま、靴裏を滑らせる。 1歩、2歩と微調整するように進んで、長方形な天板の四つある角の内の一つを選んだ。 窓際の陽だまりの席から真っ直ぐな、左上の角っこを。 「やっぱり、これだと全部見えないよね。だったら、これでどうかな?」 閉じていた足を開いていた。 ショーツ、パンツ、パンティー、何も穿いてなんかいない剥き出しの下腹部を露出させた。 前ページ/次ページ |
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