第10話 濃紺の生地は白く染められて


「ダメ! 抜いて! 中に出しちゃ、ダメェッ!」

甲高くて、切羽詰まった声が響き渡る。
取り囲む木々の壁にこだまして、治彦の背中にも雨のように降り落ちてくる。

「えっ! なんだ……?」

治彦は智花の顔を……

「キャ! だ、誰か……?」

智花は治彦の顔を……

競い合うように、丸くさせた瞳で交わし合っていた。
同時に、うろたえるお互いの唇を取りあえず確認し合う。

「ぐぅ、はあぁ……」

そして、治彦は身体を浮かせた。
触れるだけで暴発しそうな己の息子を抜き出すと、とろりと溶かされた柔肉の肌を眺めた。

「ごめんね、治彦……はふぅ、くふぅっ! 智花ぁ、お豆だけでぇ……くぅ、イク、イ……クゥッッ!!」

セックスの絶頂は共にと、声を交わし合ったのに……

足を抱かせていた智花の片腕が、彼女の股間に乗せられていた。
スラリとした指先が、薄い翳りをかき分け、亀裂の先端に息衝く真珠色の突起をつまみあげていた。

寝そべらせた全身をバネのように跳ねさせて、女の絶頂を披露させる。
ペニスの気配が消えた秘孔の、口の方だけをチラチラと覗かせながら、エクスタシーの電流に花弁のすべてを痙攣させる。

「智花、ごめんな……俺も、はあぁぁ……」

お互いの恥部を深く結合させて、男女の体液をミックスさせようと想い合ったのに……

膝立ちのまま身を起こした治彦が、背中の筋に悪寒を走らせた。
上ずる声を呻かせて、体液に濡らされた己のペニスに手を当てる。
硬くてはち切れそうなエラを、つぶすようにしごいた。

どぴゅぅ、ぴゅぅっ……ぴゅっ、ぴゅっ……

白い液が迸る。
ふくらみの頂点に達した亀頭を突き破り、沸騰する体液は森の匂いがする宙に舞った。

「かけて……好きなだけ、智花の身体に……」

その精液が落下する前にと。
パートナーの少女は、その身を投げ出した。
折り曲げていた腰をほどくと、降り注ぐ滴のすべてを受け止めるかのように。

「ブルマに、俺の……」

「あぁ、染みついちゃう……智花が穿いたブルマが、治彦の精液を飲みこんじゃうぅっ」

白い斑点が、紺色の生地に吸いこまれていく。
女体が弾んで、跳ねて、いつしか少女の花弁を包み直した股布に男の匂いが植えつけられる。
ちょっぴり土手高な恥丘をそのままに型取りさせたところにも、満遍なくたっぷりと……

「許して……でも、イケナイことだから……」

甲高くて、切羽詰まった声は、物悲しい音色に塗り替えられていた。
吹き寄せる緩やかな風に乗せられて、それは治彦と智花の耳に届けられる。

「もしかして……なの……?」

智花が寝そべったまま呼びかけた。
返事が返されそうな植え込みを目で追いかけながら、聞き取れないささやきを漏らした。

「おい、待てよ」

治彦も呼びかけた。
ガサガサと草むらを踏みこむ音が流れて、全裸の少年は片手で股間を隠したまま足を踏み出そうとして……

「行かないで……あたしを置いて、行かないで……」

智花に呼び止められていた。
遠ざかる人の気配を鼓膜にだけ追尾させながら、治彦は振り返る。

「あたしの……知っている人だから。彼女……」

ぼそっとつぶやき、智花は身体を起こした。
シワまみれの制服の上で足を立たせると、生い茂る木立ちのすき間に目を向けた。

「これから気まずくならないのか?」

「とっても気まずいと思う。だけど……」

「だけど?」

「うふふっ、その前に……どうして隠してるのよ。アソコ……?」

物憂げに沈ませていた瞳が、きらりと輝いた。
遠い視線は引き戻され、智花は治彦の股間を……

「バ、バカ……恥ずかしいだろう」

茶目っ気たっぷりの眼差しで覗きこまれていた。

「どうして? さっきまでここで、あたしとエッチしたくせに。だったらあたしが……」

「おい、なにやってんだよ?」

その智花が、自分の腰に手を当てた。
どこで覚えたのか?
ゆるゆると下半身をくねらせながら、穿かせていたブルマを脱ぎ下ろしていく。

「こういう脱ぎ方って、セクシーでしょ? あっ、治彦のオチ〇チン、元気になってる」

女の子の部分をすべて露わにさせて、智花は指さして笑った。
パンティーとは明らかに違う濃紺な布切れ。
それを膝小僧のところに引っかけたまま、ムクムクと起き上がる治彦のペニスを。
瞬く間に気力を取り戻し、押さえの手のひらを跳ね除けようとする様に、ますます目を輝かせながら。

「まさかだけど、もう一回ってこと……ないよな?」

「そのまさかかも。智花のオマ〇コって、育ち盛りだから」

禁句の単語もさらりと言ってのけて、智花は乱れたシーツを整えていく。
そして勃起ペニスを覗かせたまま立ち尽くす治彦に、手招きをする。

「マングリ返しって、足とか腕とか、とっても疲れるのよね。それに息苦しいし……だから、次はこのポーズでつながろうかな」

そんな智花は、いつになく吹っ切れていた。
ハシタナイセックス用語までなにげなく口にすると、腰をしゃがませた。
呼び寄せられる治彦の前で、むき出しにさせたばかりのヒップを突き出す。
四つん這いの姿勢を取ってみせる。

「ブルマもいいけど、智花の丸裸なお尻だって……」

「お尻って……ケツの穴でやっていいのか?」

「ケ、ケツの穴?! バカ、バカ……どうして、そっちでつながらないといけないのよ! 後ろから……もう、治彦のバカ!」

期待をもたされて腰を屈めた治彦に、『バカ』の単語が降りかかる。
ピチピチブルマの輪郭を刻んだヒップが、谷間を隠すようにキュッとすぼめられる。

「なんだよ、オマ〇コならそう言えばいいのに」

ぼそりと愚痴ってみせて、治彦は己のペニスを撫でた。
雄々しく勃起した我が息子に『射精の膣出しは禁止だ』と、そっとささやき、白い斑点に汚された魅惑の布切れにこっそりとこすり当てた。





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