溝口満子は、個人タクシーの運転手である。
 42歳。独身で結婚歴はない。

 小柄で童顔のおかげで、20代の半ば、もしくは後半でも通る。
 中年の酔客からは「お姉さん」と呼ばれるのが常だ。
 容姿端麗で、ナンパは日常茶飯事。追われると逃げたくなるもので、たいていは、やんわりと受け流す。左手の薬指のリングは、そのための小道具だった。

 休みの日はスポーツジムに通い、しっかりと汗を流す。時々は全身エステにも通う。
 仕事のある日も、エアロバイクで1時間ほどは体を動かす。
 そのせいで、お尻のラインはとても40代とは思えないほどにぷりっとしている。ちなみに、顔や体をいじった経験はない。あくまでナチュラルである。

 決して実入りが良いとはいえないが、満子は個人タクシーの運転手を天職だと思っていた。なぜなら、好みの男性客を誘惑できるから。

 20代の容姿を持つ満子の誘惑をはねのける男性は少数派である。

 最近のマイブームは年下の男の子。うぶな男の子が感じているのを見ると、こちらまでヌレヌレになってしまう。それに、若いと、起ち具合が違う。
 満子は、精液が大好きな痴女なのだ。
 喉に粘つくあの感触。鼻に突き抜ける生々しいニオイ……。考えただけでもゾクゾクする。

 ダッシュボードの中には、コンドームの他、ローションやローターなどが収納されている。そして助手席には、勃起薬が混ぜてある緑茶の水筒が常備されていた。もちろん、好みの男性客に飲ませるためである。

 薬のせいでムラムラとしてきた頃を見計らい、こちらからそれとなく誘惑する。男性客は下半身の疼きに勝てず、満子の誘惑に乗ってくる。中には、パートナーに義理立てして頑なに拒否する男もいるのだが……。



 午後8時過ぎに、満子はタクシーに乗って町に出かけた。しばらく幹線道路を流した。だが、客は1人も拾えなかった。
 仕方なく駅前へと向かう。
 タクシー乗り場があるのだが、個人営業の満子は、直接乗り付けることはできない。だから少し離れた所にタクシーを停めた。 

 人通りは少なく、今夜の実入りは期待できそうにない。
 満子は、ラジオの歌番組を聴きながら時間を潰した。

 午後10時を回った頃、窓がコンコンと叩かれた。振り返ると、小柄な少年が車内を覗き込んでいる。
 満子はドアを開けた。色白の、気の弱そうな少年だ。手提げバッグを持っている。たぶん、塾の帰りだろう。
「こんばんは」と満子は優しげに声を掛けた。少年は後部座席に乗り込んで「……こんばんは」と小さな声で挨拶を返した。

 満子は心拍が高くなるのを覚えた。タイプである。どストライクである。

「どちらまでですか?」満子が聞くと、少年は、4キロほど離れた住宅地を告げた。
 タクシーが走り出す。

 満子は、ルームミラーをチラチラと見た。顔立ちは整っている。ハンサムだが、どこか抜けている感じもあった。

 少年は、鞄からゲーム機を取り出した。満子の視線に気づくことなくゲームをプレイしはじめる。
 表情は暗い。ゲームが楽しい、という雰囲気は全くなかった。単純に暇つぶしでプレイしている、という感じだ。
 満子は舌なめずりをしながら、話しかける機会を窺った。

 信号で止まったとき、満子は「塾の帰り?」と尋ねてみた。

 一瞬の間を置いて少年は「……はい」と小さく答えた。「自転車、とられちゃって……
「あらら」

 満子は、助手席の水筒に手を伸ばした。紙コップに勃起薬入りのお茶を注いで、少年に手渡す。分量的に、若干多いかもしれないが、死にはしないだろう。

「災難でしたね~。お茶をどうぞ。サービスです」

「……ありがとうございます」少年は律儀に礼を言って紙コップを受け取った。
 信号が青に変わり、満子はアクセルを踏んだ。

 5分ほどすると、少年はソワソワとし始めた。

「どうかした?」

「い、いえ。なんでもないです……」とは言うものの、少年の顔は真っ赤だ。腰をモゾモゾとさせている。
「トイレかな?」
 少年は、言いずらそうに「……はい」と答えた。

 満子は、タクシーを近くの公園へと走らせた。路肩に停車する。ドアを開けると少年は「すみません」とタクシーから降りて、ぎこちない歩き方で公衆トイレへと向かった。

 辺りにひとけはない。満子は上着を脱いだ。ぴっちぴちのブラウスにノーブラである。少し動いただけで、乳首が布地に擦れて「……あんっ」全身に快感が走った。

 満子は少年の後を追って、トイレへと近づく。
 少年は個室に入っているようだ。
 ノックしようかと思ったが、ドアノブに手を掛けた。鍵はかかっていなかった。

「あっ」少年が振り返る。少年は、股間を手で押さえていた。
 満子は素早く個室の中に入った。後ろ手に鍵を掛けた。

「え、あ、あの……」
「どうしたの? 大丈夫?」
 満子は胸の膨らみを、少年の肩先に押しつけた。少年はびくっと震えた。
「見せて……」少年の耳元にささやきかける。

 少年は身を堅くさせ、何か言いかけた。満子は両手を少年の股間に伸ばす。少年の手の上に自らの手を重ねた。
「ねえ……見せて……」
 少年は観念したように手をどけた。

 満子は両目を見開いた。未熟な男性器が、ほぼ垂直に佇立していた。サーモンピンクの亀頭は半分ほども包皮に包まれている。尿道からは透明な汁が滴って、ぬめぬめとテカっていた。
 満子は思わず生唾を飲み込んだ。

(大きい……)
 形も、色も、素晴らしかった。触れたい、舐めたい、擦りたい……。

 満子は、少年の足下に跪いた。ブラウスの前をはだける。小柄な割には大きめの乳房が零れ出た。少年の目が、釘付けとなる。満子は右手で乳房を持ち上げ、乳首を指で擦った。

「触りたい?」
 少年は、かすかに頷いた。満子は少年の手を自らの乳房に誘った。
 触り方はぎこちない。しかしそれが満子の官能を刺激する。

 少年は両目を血走らせ、鼻息を荒くさせた。
「名前は?」満子が聞くと「……タカシ」と少年は答えた。

 満子は、タカシの体から雄のニオイが発散されていることに気づいた。もう言葉はいらなかった。
 タカシは両手で、満子のオッパイをまさぐった。

 満子は身を起こした。「タカシくん……しゃぶって……」
 タカシは目を瞑り、口を大きく開けて、満子の胸にかぶりついた。尖った舌が、乳首を刺激する。
 満子は「んふっ……」腰を痙攣させた。
 タカシは勃起したペニスを満子の腰にグリグリと押しつけた。そして「……ああっ……」呻いて、白目を剥いた。

 ドッピュッッッ

 白い粘液が、飛び散った。
 満子はすかさず、タカシのペニスに白い指を絡ませた。素早く身をかがめ、口の中に亀頭を含む。
 タカシの生殖器は、満子の口内でビクンッと跳ねた。ドロッとした体液が放出される。満子は、ペニスを奥まで銜え込み、唇の輪で根元を締め上げ、ギュッと吸い上げた。

「ううう……」タカシは腰を痙攣させた。

 ペニスは引きつけを起こし、そのたびに、ドロッとした精液が噴き出した。

(すごい……まだ出てくる……)

 鼻に抜ける生々しい栗の花の香りに、満子は体奥の疼きを覚えた。
 少年のいのちが、自らの体内へと取り込まれる。
 満子の手は、自然と自らのスリットへと伸びた。洪水のように濡れていた。
 
 射精した(それも大量に)というのに、タカシの生殖器は、まだ力強さを保っている。満子は体を起こし、便器に片足を掛けた。左手でヌレヌレのスリットを押し開く。

「タカシ君は、童貞?」満子が聞くと、タカシはたじろいだような表情となった。目を伏せ、かすかに頷く。

「嬉しい。あたしがタカシ君の初めてなんだ……。いいよ、教えてあげる」右手をペニスに添えて、入口へとあてがった。「ここに……ちょうだい」

 亀頭は、びらびらを押し開いて、ぬめり、と満子の中へと入ってきた。
 タカシは満子に抱きついて、腰をガクガクと震えさせた。

「うっ」タカシが、苦しげに呻いた。満子はタカシの首筋に腕を回した。顔を抱き寄せる。舌で、少年の顔を舐めた。
 タカシは腰を不格好に揺すりはじめた。荒々しい本能の動きだった。

「なかで……なかでいいよ。沢山だして……」満子はタカシの顔を舐め上げながら、悩まし気な声を漏らす。
 タカシはひたすら腰を前後させた。

 ぬちゃ、ぬちゃ……。濡れた肉と肉が擦れあう。

 程なくして、タカシは腰をひときわ突きだし「うううっっ」と全身をブルブルと震えさせた。

 体奥に、生温かな感触がじわっと広がっていく。
 少年がぐったりとなって便器に腰掛けた。満子のスリットから、どろどろの精液が太ももへと滴った。
 満子は指でタカシの精液をすくった。「いっぱいでたね。気持ちよかった?」

 タカシは目を伏せたまま、小さく頷いた。



 満子は、タカシを家まで送った。
 運賃メーターの料金を請求するとタカシは正規の料金以上に支払おうとした。が、満子は受け取らなかった。そんなつもりで誘惑した訳ではないのだ。
 最後に満子はタカシに名刺を渡した。「またしたくなったら、連絡してね」

「……はい」

 結局その日は、1人の客にもありつけなかった。しかし、息子でも通用する少年とエッチできたのだ。
 満子は晴れ晴れとした気持ちで家路へとついた。


おわり







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