第一話

 夜行列車が、暗い田舎の駅に入っていく。
 逢魔が時のプラットホームには、両親、親戚や友人らに見送られて上京する若
者達が並んでいる。
 俺と俺の仲間は夜行列車の窓から外を窺い、その中から獲物を探す。
 夜冷えの厳しいこの季節、どの子も真新しいコートに身を包んでいる。
 コートの裾からいやらしいほどほっそりと伸びる脚は、まるで俺たちとは住ん
でいる世界が違う生き物のように思える。
 ろくでもない世界に生きてきた俺たちは、すっかり岩男のような大きな身体に
なってしまっていた。
 筋肉は固く、それを包む皮膚には無数の傷跡が刻まれたまま。
 それらが消える予感は全くない。
 俺たちからすれば、駅のホームにたたずむ少女らはどの子も花を咲かせたこと
もない小枝ほどに華奢に見えてしまう。
 血や脂、泥埃、糞尿にまみれて生きてきた俺たちと違い、どの子にも若葉のよ
うな清々しさが感じられる。
 女の子の髪はあまりにさらさらと夜風に揺れている。

「なぁ、あの子にしようぜ」

 仲間の一人が囁く。

「どの子だよ?」
「あの髪の長い子だ。
 周りの大人がみっともなく泣き喚いてる中にいるだろ」
「ったく、どいつもこいつも泣いてやがるからなぁ」

 もう一人の仲間が舌打ちする。
 確かに彼が言うように、見送りの人だかりは馬鹿みたいに泣き出している。
 何度も見ている光景だが、夜行列車の姿を目にすると奴らは途端に泣き出して
しまう。 まるで夜行列車が売り払われる子供を乗せていく悪魔の馬車に思えな
くもない。
 廃れるばかりの糞田舎から糞田舎へと走り続け、泣き喚く親の元から子供を引
き剥がしていく夜行列車とならば、俺は陽気に口笛を吹きたい心境だ。

「ほら、あの子だ」
「あの子か……お前、あのタイプ好きだよなぁ」

 運悪く見初められた女の子は、すらっとしたスタイルをしていて、それでいて
なかなか胸はあった。
 髪は薄染めの茶で、長い髪の先は猫っ毛らしく遊んでいた。
 小顔でありながら目は大きく、異性だけでなく同性にも可愛がられるようなタ
イプに見えたが、どことなく自信のなさそうな影があり、華奢な体躯と相俟って
保護欲をくすぐられる子だ。

「どうせ経験もないだろうぜ」

 男の保護欲など征服欲の変容でしかない。
 俺が守ってあげなくては――などと妙な正義感を燃やしつつ、その子が少しで
も逆らったら頭蓋が陥没するほどに殴りつけるのだから手に負えない。
 女の子を見初めた男がその典型で、俺たち三人の中でもとりわけ巨大な体格を
しているのに、ささやかな女の反抗を許せぬ心の小ささ。
 俺は巨漢野郎のそんなところが好きだった。
 女の子が未経験であろうことには同感だったが、そんなことよりも俺はその子
の小さなお尻やおとなしくくびれた腰回りが美しく見えた。

「あぁいう子の挿入感はたまんねぇんだよな」

 巨漢は下卑た笑いを漏らす。
 少し声が大きいぞ、と叱るように俺ともう一人の仲間は黙ったままだった。
 手淫を覚えるよりも先に尻の穴を姦通される環境に生きてきた俺たちは、また
同じように野郎の尻穴で何度も達してきた。
 まれに女の穴を味わえることもあったが、死にかけの廃棄女ばかりで、肉は冷
たくて固く、女体に幻滅させられるばかりで、野郎の肛門を裂傷が治らぬうちか
ら何度も突き上げてやったほうが何倍も気持ちがよかった。
 そんな環境を脱した俺たちの中には、そのまま男色に走る者も多かった。
 屈強な男の尻穴に慣れてしまったために、生きた娼婦の女穴では締まりが緩す
ぎて達せなかったのだ。
 ならば娼婦の女穴を締め上げてみせようぞと意気込み、行為の間に首を絞めて
殺してしまったという話しを耳にした時には同情するしかなかった。
 俺たちの仲間の誰かが娑婆に出てから子供を作ったという話をとんと聞かない。

 俺たち三人は夜行列車から獲物の女の子をねっりと視姦していた。
 巨漢の言うとおり、この子は期待できそうだなと俺は目を細めた。
 どれだけ大切に育てられてきたかを示すような大騒ぎで見送られ、ようやく女
の子が夜行列車に乗り込んできた。

―――
――

 しばらくは女の子の出方を見守った。
 なにせ女の子が寝台車両の個室に引き籠もってしまうことも考えられた。
 上京少年少女らは、旅行客などと違ってラウンジ車両には顔を出さないことも
多い。
 最悪、食堂車両にすら現れず、その際にはトイレに出てきた時に声を掛けるし
かないのだが、そういうタイプは顔見知りの激しい小便臭い糞ガキに思えてしま
うので、俺としては興醒めだった。

 が、俺の予想に反して女の子はあっさりとラウンジ車両に現れた。
 荷物を部屋に置いた後のようで、コートを脱ぎ、長旅に適したゆるやかな服装
だった。
 女の子は人気のないテーブルに着くと、少しくらい車窓からの景色を眺めたく
らいで、すぐに持参した文庫本に目を落とした。
 夜行列車はすでにとっぷりと暗い夜の中を走り始めていたのだから、それも仕
方の無いことだ。

 俺たち三人は目配せし合い、簡単に役割分担を決める。
 ほぼ即決で女の子に接触するのは俺が担当することになり、二人は俺を残して
寝台車両の方へと去って行った。
 俺は二人が完全に消え去ってから、女の子にさり気なく近づいていった。

「こんにちは」

 暗闇を走る夜行列車にはおよそ不似合いな挨拶をして、俺は女の子に微笑みか
けた。


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