時代SM連載小説
『牢獄の美姉弟』
~捕われの志乃と菊乃助の屈辱の日々~
作者:縄吉及びShyrock(リレー小説)





第16話「決行の夜」

 紅い夕陽に照らされ引き締まった菊乃助の裸身が悩ましく光っている。磔柱のまわりに松明が焚かれた。西の山に陽が沈みあたりが薄暗くなった頃、観衆も少しずつ帰路につき始めた。
 いつの間にか椿屋の前の黒山の人だかりは消えあたりは沈み返ってきた。
 磔柱の周りに十数人の見張りの男たちがいるだけになった。七、八人残っていた野次馬達もいつしか姿を消していた。
 もうあたりは真っ暗になった。
 椿屋の正面が見渡せる数軒離れた宿屋の屋根の上に黒装束を身に着けた志乃が身を伏せていた。志乃一人で救い出すには見張りが手薄になるのを待つしかなかった。しかし、今だ十数人のみはりが磔柱のまわりをうろうろしているのだ。
 志乃は待った。あたりはかなり冷えてきた。全裸の菊乃助にはかなりきびしいものであろう。志乃はすぐにでも出て行って救い出してやりたいと思うのだがお里に言われた「手薄になるのを待つのです」という言葉がそれを止めていた。二人とも捕まってはいられないのだ。二人には江戸に密書を届ける大事な使命があるのだ。
 どれほど時間が経ったであろうか。椿屋の中から一人の男が飛び出してきて「おい、みんな、夜は長い、夜食の用意ができたぜ、一旦中に入って腹ごしらえだ」と見張りの男達に呼びかけた。
「そうか、じゃあ、慎太と安、お前達二人は残れ、後の者は腹ごしらえだ」と辰蔵は男達を引き連れ椿屋の中へと姿消していった。
 なんと見張りは二人だけになったのだ。志乃は急なことにあわてた。今やらなければそれだけが慎重さを欠かせた。これが相手の策略とは志乃は気づいていなかった。
 志乃は屋根越しに椿屋の脇の路地まで近寄った。
 しかし見張りが手薄どころか数十人の男達が身構えていたのだ。
 そうとも知らず、志乃が路地から飛び出し見張りの男一人を一撃で気絶させた。

「あっ、出た」ともう一人の見張りの男が声をあげた。志乃はその男に向かって走り一刀のもとに切り捨てた。
「菊乃助、助けに来たわよ」と志乃が磔柱に駆け寄った時「残念だが、そうはいかないぜ。ヒッヒッヒ」と数十人の男達が飛び出してきて志乃を取り囲んだ。
「あっ、計られたか」と志乃は身構えた。
「おいおい、お嬢さん、戦う気かい、怪我するぜ、あきらめて刀を捨てな」と辰蔵が言った。
「卑怯者、寄るな」
「ヒッヒッヒッヒ、なかなか気が強いお嬢さんだな、おい、かまわねぇ、ひっ捕えろ」と辰蔵が叫んだ。
 
 数人の男が志乃に飛び掛った。しかし、志乃の刀が舞った。その男達はギャーと悲鳴をあげ地面を転げまわった。

「この女、甘くみていりゃいい気になって、野郎ども手加減しないで捕まえろ、殺すんじゃないぞ、生け捕りだ」と辰蔵が声を荒立てた。

 しかし、剣道指南役の娘だけに手こずっている。
 その時、「おい、女、これを見ろ、弟の大事なものがなくなってもいいのか」という辰蔵の声にハッとして志乃は振り向いた。
 辰蔵の刀が菊乃助の男根の根元に押し付けられていたのだ。

「ヒッヒッヒ、小僧が女になってしまうぜ、いいのか、黙って刀を捨てるんだ、早くしろ」と辰蔵が叫んだ。
「卑怯者、うっ・・・・」
「そうだよ、卑怯者で悪かったな、刀を捨てろ、捨てるんだ」

 志乃は唇を嚙み締め躊躇している。

「おい、早くしろ、切り落としてもいいのか」
「ま、待って下さい・・・・」と志乃は刀を捨てた。
「よし、女を縛り上げろ」と辰蔵がやったとばかりに声をあげた。



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