時代SM連載小説
『牢獄の美姉弟』
~捕われの志乃と菊乃助の屈辱の日々~
作者:縄吉及びShyrock(リレー小説)




第1話「旅立ち」

 沢辺藩七万石の藩主沢辺義信は八年前最愛の奥方に先立たれ、六年前今の奥方と一緒になられた。先の奥方との間に一人のお子様がおられ、今の奥方との間にも五年前男の子が授かった。当然のことのように後継ぎの話が沢辺藩では騒がれだした。そんな昨年、藩主沢辺義信が急に床に伏したのだ。あまりにも急な事に藩主の一番の信頼を受けていた藩指南役末永謙信が不信感をいだき、隠密に探索を続けていた。
 末永は数日前藩主の病は奥方と家老の黒崎大善が仕組んで医者梅安にある薬を盛らせていたことによるものだと確信を得た。奥方と家老の関係には大分前より不信感は抱いていたが、まさかここまでするとは末永も考えていなかった。
 末永は家老の黒崎にそのことを問いただした。

「ご家老、殿に薬を盛らせたことは調べがついています。お認めいただき腹をお切り下さい。私が介添えいたします」

 すると家老の黒崎は、

「なにを血迷ったこと言う、侮辱するのもいい加減にしろ、わしが殿に薬を盛る?……笑わせるな、末永、そこまで言うなら覚悟はできているな、皆の者、この末永をひっ捕らえろ」と家臣に命令し末永は城の地下牢に押し込まれた。
 末永には十八歳になる志乃と十六歳になる菊乃助の二人の子供がいた。末永は数日前、志乃に「私に何かあったら、すぐにこの密書を江戸表に届けてくれ」と話していた。
 志乃は父が牢に入れられたことを知ると、菊乃助に言った。

「菊乃助、父になにかあったらこの密書を江戸表に届けるよう言われていたの、すぐに旅の用意をしなさい。誰にも気づかれないように今晩発ちます、いいですね」
「はい、でも父上は?」
「父上はこの密書になにか重要なことを書かれていたはずです。私達はこれを少しでも早く江戸に届けなければなりません。父上もそれを願っているはずです。菊乃助、どんなことがあろうともこの密書を江戸に届けるのです。いいですね」
「はい、わかりました、すぐ用意いたします」と二人は急いで旅支度を済ませ、裏口から身を隠すようにして街道へと小走りに旅たった。

☯☯☯

 暗闇の中、二人は休むこともせず危険な山越えに入った。山賊がいるとの噂がある山だけに夜は誰も通るものはいなかった。

「菊乃助、足元に気をつけなさい、私から離れないようにね」
「はい、姉上」

 二人は早道という険しい山道を小走りに進んだ。
 その時、前方でガサガサと音がして数人の男達が飛び出してきた。
 志乃は菊乃助を庇うように手を広げ少し後ずさった。

「ヒッヒッヒ、お二人さん、こんな夜中に急いでどこに行く気だい、この山には山賊がいることを知らないわけじゃないだろう、ヒッヒッヒ、その山賊が俺達さ、悪いが身包み剥がせてもらうぜ、触られたくなかったら自分で素っ裸になるんだな、物をいただければそれ以上なにもしないぜ、フッフッフ、どうするかな、脱がしてもらいたいかな、ヒッヒッヒ」
「無礼者、武家娘に裸になれと言うのか、それなら死んだほうがましだ、お金ならあげる、だからここを通して下さい」
「そうはいかねぇな、よく見るといい女じゃねぇか、かまわねぇ二人を素っ裸に剥き上げろ」と兄貴分らしき男が命令した。
「菊乃助、私から離れるんじゃないですよ」と志乃は小太刀を抜いた。志乃は剣術指南役の娘だけあって小太刀の腕前は男勝りの腕であった。
「へい、ねえちゃん、あきらめな」と一人の男が志乃に飛び掛ってきた。
「ギャー」

 男の腕が飛んだ。志乃の小太刀が男の腕を切り落としたのだ。

 それを見た、山賊たちは少し怯んだ。その隙に「菊乃助、今です、走るのです」と志乃が叫んだ。二人は必死に山道を走った。

「菊乃助、そこに隠れなさい」と志乃の指示で二人は大きな岩陰に身を隠した。

 山賊たちはそうとも知らず通り過ぎて行った。

「菊乃助、助かったようね、少しここに隠れていましょう」と志乃は菊乃助の手を握り締めた。

「姉上、殺されるかと思った」
「心配しないで、私がついているから、どこも怪我はない?」
「大丈夫です、姉上」
「シー、声を出さないで」と志乃が菊乃助の耳元で囁いた。あの山賊たちが戻ってきたのだ。
 二人は身を寄せ体を丸くして沈黙を保った。

「なんと足の早いやつらだ、しくじったなぁ、まさかあの二人、ご家老が言っていた指南役の娘達じゃなかったろうな、もしそうなら大目玉食うぜ」などと山賊たちは言いながら通り過ぎて言った。

「菊乃助、聞きました?家老は私達が江戸へ行くと睨んでいたようですね、それで山賊に金をつかませ見張らせていた、この先どんなことがあるかわかりません、気を引き締めていくのです、いいですね」
「はい、姉上」
「じゃあ、先を急ぎましょう」と二人は再び山道を小走りに走った。



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