官能小説『貴方の想い出を追いかけて』



竜馬


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第二章十三


 その夜、どうやって二人に解放されたのか、力尽きた私には記憶が薄れて思い出すことができません。ただ一つ憶えていたのは「お姉さん、明日もまた遊ぼうよ。あそこの公園で待ってたら声を掛けるからさ」と言いながら無精ヒゲの男性が笑っている顔だけでした。

   忘れたい… 私の生い立ち、拓ちゃんの過去と綾子の存在… 何もかも忘れてしまいたい。 そればかりを考えていた私は仕事帰りの夕方、知らないうちに公園の薄暗い片隅に立っていました。  

「思ったとおり来てくれたんだね、お姉さん」  

 そう言って私を囲んだのは昨日の二人の男性でした。  

 私が待ち合わせの場所にいたのが余程嬉しかったのか、二人は上機嫌で私を誘い出していきます。行き先は勿論、昨日のビルの空き部屋です。  

 抵抗をみせない私の態度に、二人は安心しきったように衣服を取り去っていく中、私は「これでいい…これで…」と、自分に言い聞かせ続けていました。  

 そして昨日同様、ソファーに私を押し倒した二人は交互に太股の合間に腰を割り込ませ、幾度も突き刺しては若いエネルギーを放流させてきます。それが何度繰り返されたでしょうか。何度犯されても夢の中、妄想の出来事としか認識できなかった私、でも突然、現実に引き戻された恐ろしさに抵抗をみせたのです。  

 それは、重なっていた身体を反転させられた私が男性の上になり騎乗位で硬い肉棒を受け入れたそこへ、もう一人の男性がお尻を曝した私のアナルの中心をまさぐり始めてきたからなのです。  

「あっ?! だ、だめぇ!! そこは!!」  

 と、抵抗をみせる私のお尻に指を押し込もうとしている男性が確信したように言うのです。  

「思ったとおりだ。このお姉さんはケツの穴も経験済みだったみたいだぜ。見ろよ、俺の指がするすると中に埋もれて簡単に入っていったぜ」
「へへっ、やはりそうか。昨日、知らずに尻を触ったら変に身体を引く付かせてみせたからそうじゃないかと思ったんだよ」  

 二人が言うように、私はお尻を触られてしまった瞬間、自分でも知らない内に小さな反応を見せてしまっていたようです。例え幻想の世界のお話しであってもそこだけは感じる女性だと知られたくはありませんでした。それはお尻が感じる恥かしさだけではありません。

  「はぁあぁぁ、イヤっ!! そこは、そこは拓ちゃんの!!」  

 お尻だけは一生拓ちゃんに捧げたままにしておこう。そう決心していた私は誰にも感づかれないように気をつけていましたが、その願いは儚く散っていきました。

   私に残されていた拓ちゃんとの二人の想い出… それさえも消滅していく寂しさに襲われた私は自分自身を恨まざるをえません。そして、切ない私の心は不安定な積み木が壊れるように無残な音をたてて崩れていくのでした。  


第二章十四


 改めて、自分の無謀さを呪わずにはいられません。  

 身も知らずの男性に誘われ身体を許したことは、私は悪い女になる覚悟を決め、今までの過去を葬り去るつもりでいたのですが、それは余にも悲しい結末を迎えることになりそうです。

 哀しいことに男性のペニスをお尻に感じたとき、忘れるはずの過去が、悲しい想い出として何度も回想されていくと、私は何度も拓ちゃんの姿を思い出しては謝り続けていくのでした。

 でも、想い出を忘れたいだけではなかったような気もします。私は、危険な場面になるときっと拓ちゃんが助けに来てくれる、絶対に。と、正常に考えればあり得ない話しを心のどこかで信じていたからです。 …どこまで愚かな私なのでしょう。

   逃げなければ… と、今更思ったところで私の下半身の前と後ろの密部にはそれぞれ二人の逞しい肉棒が差し込まれ、まるで出口の扉に鍵をかけられたように体内の奥に固定されたモノは私を逃さないように監禁しているようでした。

 それでも隙をみて腰を振って逃れようと試みましたがそれは逆効果でした。逆に私の神経は、逃げようと腰をくねらせ、体内の奥で二人のペニスを擦りつけたことでその存在を把握し、そして官能という思考を働かせてしまったようです。

 お腹の中、それと同時に子宮が急激に熱く火照り始める気味悪さに襲われた私は、前と後ろで蠢く二本の性器を疼きとしてとらえてしまいました。  

「んんっ!! んんんんんっ!!!! んん、んんぁぁぁ、むむぅぅぅ!!」

 前と後ろを交互に擦られる感触。

   私は必死に耐え忍び、ぎゅっと下唇を噛み締めながら成るべく平素を保とうと精一杯努力してみました。でも、昨日は夢の出来事としか受け取れなかった重なり合いが、今は淫楽という淫らな行為が私を現実へと引き戻し「これも夢、夢なのよ…」と自分に言い聞かせる私を悩ませ、そして興奮を煽ってくるのです。

 感じてはいけない… お尻なんかで… そう考える事事態が今の私の恥かしい姿を証明していくことになろうとは思ってもいませんでした。


第二章十五


 四つん這いの私を軸に、男性らのピストン運動が繰り返されると私の身体が勝手に反応をみせ始めたのです。

「あっ… ぁぁ… んはぁ……… ぁぁ…… ぁぁ……」
「凄いよお姉さん。前も後ろもペニスに熱いとろとろの汁が絡んできて凄く気持ちよくなってくるよ。最高だよお姉さん。ほら、遠慮しないで腰を振って気持ちいい声を出してごらんよ」

 そう誘われるともう限界です。

  「はぁぁ… あぁぁ… あっ、あっ、あぁぁ、い、い、いやぁ! 止めてぇ!」

   悲しいことに私は、同時二穴責めで絶頂を迎えてしまうのでした。

   壊れた心を修正する能力を私が持ち合わせているはずもありません。

   いけないことだと理解しつつも、今、私の存在を認めてくれるのは彼ら以外に見当たりません。だから、抱かれる事によって私の価値が見出せるかも… 
と、そんなふしだらことすら考えるようになってしまいました。

 特に薄暗い夕方になると、何かに縋りたい気持ちを抑えることが出来ず、求めるものが今はあの場所しかないと思いながら明くる日も公園へ向って歩いている自分が惨めでなりません。

 そして辿り着いた公園。

   驚いた事に私を待っていたのは四人の男性でした。

  「実はこいつらにお姉さんの話をしたらさ、是非、お姉さんに会ってみたいって言うからさ連れてきたんだ。いいだろ? 今日は四人で楽しもうよ」

 紹介された長い茶髪の男性二人。笑顔と言うよりはニヤけた顔が印象深い男性らの目的は私の身体だとわかります。

「よ、四人に…」

 私は、筋肉質の若い男性四人と重なり合っている淫らな姿を想像し、不安に駆られた私が後ずさりすると、もう一人の男性が腰を掴みそのまま何時もの道を誘導して行こうとします。

   公園を出たら真直ぐに伸びた歩道が、彼らの楽園である空き部屋のビルまで私を導いているようでした。

 そうよ… 私はもう後戻りができないんだわ…

   と、彼らに連れられて一歩踏み出したその時でした。私は、いきなり腕を掴まれると強引に公園へと引き戻されてしまったのです。


第二章十六


 だ、誰?

   暗闇の中、私の腕を掴んでいるのが男性であると分りましたが、その人が誰なのかまったく分かりませんでしたが、残念なことにその人が拓ちゃんでないことだけは何となく雰囲気でわかっていました。

 当然、私を奪われた四人の男性らが黙っているわけもありません。

  「お、おい、てめぇ何を勝手に彼女を連れて行くんだよ!!」

 公園の入口に入った場所で追いかけて来た男性らに囲まれると、私を連れ去った男性が立ち止まって若い彼らを睨んでいます。

「ちっ、てっきりこいつらは君のお友達かと思っていたらとんだ勘違いだったようだ」

 私を連れ去った男性が後悔を滲ませそう呟きました。

「なっ、なんだとお前?! 友達だろうがお前には関係ねえだろうよ!」

 じりじりと若い男の子達が近寄ってきます。でも、その間も男性は私の腕を離れないようにしっかりと掴んでいてくれるのです。

「関係あるんだよ! 彼女は俺の大切なお客さんなんだからな!」

 お客? 怒りを露にする男性の外灯に照らされた顔を見上げて驚きました。私の腕を掴んで離さない男性は、以前、私が失言で怒らせてしまったダンサーだったからです。

 でも、どうして私を…  

 私が疑問に思っている間に、今にも殴り合いの喧嘩が始まってしまいそうな雰囲気になっていました。

「お客? お姉さんがお客さんだって? ははっ、いつお姉さんがあんたらの舞台を見ていたと言うんだよ。笑わせるぜ!」
「お前は何を言ってるんだ? 彼女は毎日、そこのベンチに腰掛けて俺達の稽古を見守っていてくれていたんだよ! いいか! 彼女はお客さんでもあり俺達のパートナーでもあるんだよ!」

 うそっ?…… 私が木陰から毎日眺めていたことを、この人知っていたんだ。見ていてくれていたんだ… それに… それに私がダンサーのパートナー?

 凄く有り難い言葉でした。しかし、私には感情に浸る余裕がありませんでした。

 何故なら、私達の周りを取り囲むように大勢の人が薄暗い闇の中で蠢いているのに気がついたからです。


第二章十七


「喧嘩なら俺達も手伝ってやるぜ!」

 取り囲む大勢を相手に、一人のダンサーが敵うはずもありません。私は恐くて体の震えが止まらなくなりました。 けど、私以上に怯えている人がいることに私は驚いてしまいました。

 怯えながら震えているのが、目の前の男性四人だったからです。  

 私達を取り囲んだのは、若い彼らの仲間ではなくて二十名近いダンサーの皆さんでした。

   その中には、以前ダンサーを怒らせてしまった私に優しい声を掛けてくれたお姉さんもいます。

「ちょっと貴方達! これ以上、舞ちゃんに付きまとったりしたら私が許さないからね!!」

 腕を組んで男性らを睨みつける迫力は凄い威圧がありまた。 しかし… どうしてこの女性が私の名前を知っているのか不思議に思えましたが、それも交えて不思議な事ばかりが続き、整理がつかない私の前でダンサーの皆さんの怒りが四人の男性に迫っていきます。

「どっちだよお前ら?! このまま喧嘩をやるのか、それとも消え去るのかどっちだ!!」

 暗くなった公園に響く怒りの声は、人数でも劣る若い男性らには堪らない恐怖になったことでしょう。そんな男性らは、急いで歩道へ駆け出すと暗闇の中に姿を消して行くのでした。

「二度と舞ちゃんに近寄るんじゃねえぞ!! いいかああ!!」



   まるで嵐が去ったあとの静けさが流れる公園の中に気まずい空気が漂っているのを私は感じずにはいられませんでした。  

 何故私を連れ戻してくれたのか未だに検討もつかない私と、安堵の表情を見せるダンサーの皆さん。でも、ただ一人、私の腕を力強く握り締めている目の前のダンサーだけは怒りを収めきれない様子で、ひしひしとその怒りが私には伝わってきましたが、その怒りが私に向けられていることも気付いていました。

 謝らなければ… そして、助けてもらったお礼を述べなければ… と、思った瞬間でした。

 ぱしぃぃぃぃぃ!!!!

   静かな公園。私の頬を叩く音が一際大きく響いたのでした。


第二章十八


 一瞬、暗い景色が真っ白に変わると同時に私の身体は、宙を舞い、そのあと地面に叩きつけられていました。そして、それから直ぐに叩かれた私の頬に痛みが伝わってくると私はただ唖然としながらその痛みを感じ取っていました。

 私を助けてくださったダンサーの掌、それはそれは大きな掌でした。  

 その掌で私の頬は叩かれてしまったのですから、痛くないはずはありません。私の小さな掌で頬を冷まそうとしても無駄でした。そして「し、しまった! やっちまったよ…」とダンサーの皆さんが心配する中、直ぐにお姉さんが駆けつけて来てくれました。

「龍太郎の、ば、馬鹿!! 身も知らないお嬢さんを叩いたりして怪我でもさせたらどう保証する気なのよ!! まったく短気な男なんだから!! …ねぇ大丈夫? 痛かったでしょ? 怪我していない?」

 優しく介抱してくれるお姉さん。でも龍太郎さんと言う名のダンサーはお姉さんを押しのけて私の腕を掴んできます。

 掴まれる腕が痛い… 叩かれた頬が痛い…

   私は、痛みの答えを探してみましたが直ぐに答えを引出す事はできませんでした。でも、私はその時感じました。暗闇の中、意味もなく歩き続けていた私の中に小さな明りの扉があることに。

 引き千切られるくらいに掴まれた私の腕を力強く引き上げた龍太郎さんが怒鳴りました。

「お前は、何を考えているんだよ?! 何をやってるんだよ!!」
「えっ? …………」
「彼の亡霊でも追いかけているつもりか?! 拓郎? …拓郎くんって言う名だったよな? 自分が惨めになれば彼が! 拓郎くんが助けにくるとでも思ったていたのか?!」
「…… 拓ちゃん? ……どうして拓ちゃんのことを?」

 まさかこの場で拓ちゃんの名前が出るとは想像もしていない私を、龍太郎さんは力強く叱咤してきます。

「そんなに彼に会いたいのか?! 自分を見失うほど彼に会ってみたいのか!それじゃ、俺がついて行ってやる。彼が何処に住んでいるのか知っているんだろ?! 来い!! 俺が一緒に行ってやる!」

 凄い剣幕で私を公園から連れ出すダンサーの龍太郎さん。

   だ、だめぇ… と、両脚で踏ん張ってみても龍太郎さんは本気でした。その気迫に嘘は見当たりません。龍太郎さんは本気で私を拓ちゃんと綾子が住む街へ導こうとしているのです。  


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作者竜馬さんのHP『官能小説は無限なり』

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