第1話

 陽だまりの匂いのするふかふかのベッドの中で、いいなはそっとネグリジェの裾をたくし上げた。どうせびっしょり濡らしてしまうのはわかりきっていたから。下着を濡らしてしまうのは仕方ないとしても、被害は最小限に食い止めたい。

 それから、ふと思い立って、新しいタオルをお尻の下に敷いた。久しぶりの上天気、せっかく干したシーツをあまり濡らしたくはない。

 そんなことまで考えるのだったら、ベッドでオナニーなんてしなければよさそうなものだが、どうやらそれとこれとは話が別のようだった。

 そして、枕の下に隠しておいた一冊の本を取り出す。これで、準備完了だ。

 栞代わりに挟んであるのは、一枚の写真だ。さっき出来上がったばかりの、ほやほやの一枚。その中で満面の笑顔で映っているのは、もちろん末の妹のこころだ。

 壁いっぱいに貼られたこころの写真。もちろん全部いいなが写したものだ。この写真も、いずれは最大限引き伸ばされて壁を飾ることになるだろう。

 いいなは、ベッドに転がって、本を枕の上に置いた。単行本とはいえソフトカバーだし、それほど重いものでもないのだけれど、いいなはうつ伏せになって枕を台代わりにして読む方が好きだった。

 読みかけの本。いいなは、このところ毎晩この小説を読み続けていた。

 手にとったきっかけは、ほんの偶然だった。いつものように図書館にやってきた新刊本の山の中で、たまたまいちばん上に積まれていたというだけのこと。けれど、何の気なしに、それほど利用者が多いともいえない図書館の司書業務の空いた時間に読み始めてみたその内容は、たちまちいいなを虜にしていた。

 両親の残した博物館で働く三人姉妹。主人公は、その長女だった。どうしたってその境遇は、いいな自身のそれと重なる。

 そして、長女が誰よりも大切に思っている、末の妹。そしてまた末妹もまた、長女を誰よりも慕っているのだった。

 いつか目覚めていく禁断の恋。同性で、しかも相手は実の妹なのだ。けれど、いくら抑えこもうとしても、人の心を完全に封じきることなどできるはずがない。長女の中で、妹への慕情は日々募るばかりだった。

 まるで、自分のことが書かれているようだと、いいなは思った。可愛いこころ。愛しいこころ。どんなにいとおしいと思っても、血の繋がった妹で、しかも女同士なのだ。しょせん彼女にできることは、精一杯全身全霊を傾けてこころを守り育てることしかないのだ。

 小さな末の妹と、妹と同じ名前の小さな図書館。それを大事に守っていくことが、自分に課せられた使命なのだと、いいなはいつも思っていた。

 いいなは、何度も読み返した本のページをゆっくりとめくった。もう、暗記するほど読んでしまった。どのページに何が書いてあったか、もはやほとんどソラで言えるほどだ。いいなは、いちばん好きな部分――そう、姉と妹との秘めた想いが初めて通じ合う、夢にまで見たあのシーン――を開く。

 毎晩のように読み直しているものだから、すっかり開き癖がついて探さなくてもそのページが一発で開いた。

 姉と妹は、ついに互いの心と心を通わせる。切ないほどに、求め合う心。狂おしいほどに、求め合う体。

 読み進めるうちに、いつか小説中の姉の姿はいいな自身に、そして妹の姿は愛しいこころに、それぞれいいなの中で姿を変えていく。

 望んでも、望んでも、望み得ぬもの。どれほど恋しくても、どれほど愛しくても、決してこの腕に抱きしめることを許されぬもの。

 いいなは、せめて物語の中でこころと結ばれる夢をみたかった。

「……んっ……」

 思わず声が洩れて、初めていいなは、本に夢中になっている間に股間を濡らしていることに気付く。

「…………」

 荒い息の中で、本を枕で支えて片手でページを押さえながら、いいなは右手を自らの股間に伸ばしていくのだ。

「あっ……んっ……」

 指先が触れた時、既に洪水のように溢れた蜜が下着を濡らしているのがわかった。真夏のチョコレートのように蕩けた秘肉に触れるだけで、目の前が霞んでくるような気がする。荒くなる呼吸、朧に霞む視界。文字を追うのも難しいほどだったが、小説の内容はもうほとんど暗記するほどに頭の中に入っている。何も困ることはない。

「あっ……あんっ……はぁっ……」

 声を出すのを我慢しようとしても、無駄なことだった。指先が秘肉に触れ、柔らかく膨らんだ肉芽にそっとあてがわれているだけで、いいなの中に溢れる思いは甘い喘ぎを出さずにはいられない。

 姉妹三人だけで住むには広すぎる家。多少声を出したところで、妹たちに聞こえる気遣いはないとわかってはいても、それでもいいなは声を殺そうとせずにはいられない。

 それは、いいなをそんな行為にかりたてるものが妹への禁じられた想いだからだろうか。

「あぁっ……んっ……あんっ……」



第2話

 指の動きは止まらない。止めることができない。指先は次第に深くいいな自身の淫唇を抉り、禁じられた快楽への扉を開ける。

 少し控えなくてはいけないと、昼間になるといいなはいつも思うのだ。近頃では、図書館の仕事をしている時でさえ、こころの姿を見るだけで下着を濡らしてしまっている自分がいる。

 一所懸命に見習い司書として働く妹の健気な姿を見ながら邪な欲望に秘部を濡らしている自分の姿に深い罪悪感をすら覚えながら、いいなは夜毎の淫らな一人遊びをやめることができないのだ。

「あっ……あぁっ……あんっ……こころん……」

 妹の名前を口に出してしまったなら、もう後戻りはできなかった。

 小説の内容をなぞるように、登場人物の想いを重ねるように、いいなの指は決して尽きることのない歓びの泉をかきたてる。決して果てることのない悦びの泉を掘り尽くす。

「あぁっ……あぁっ……こころんっ……こころんっ……!」

 いいなの指が、いつか溢れ出る蜜の中でくちゅくちゅと甘い音をたてる。そんな音でさえ、いいなの官能を刺激する。

 もう、文字を追う事などできはしない。溢れてくる快感が、快感だけがいいなの中に満ちてくる。

「こころっ……」

 その名前をよぶたびに、いいなの心の中で何かが弾けて全身に伝わっていくような気がした。

「あっ……あぁっ……あぁぁっ! ……こころっ……こころんっ! ……きてっ……きてぇーっ! ……」

 自ら蠢かせる指に、こころの指を、可愛い唇を想いながら、いいなは手馴れたエクスタシーの渦の中に自分を追い込んでいった。

 

「……はぁ……」

 いいなは、ベッドに横たわったまま心地よい脱力感に身を任せていた。

「……こころん……」

 もう一度、そっとその名を口にしてみる。禁じられた想いが再び形をなして、いいなの胸の奥に決して消えることのない情熱の炎を掻きたてるのだ。

 その時、寝室のドアを叩く音がした。まだ収まりきらないいいなの鼓動にかき消されてしまいそうなほど弱々しいノック。

 けれど、それに続いてドアの向こうから聞こえてきたか細い声は、いいなの耳に突き刺さるほど激しく響いた。

「……お姉ちゃん……いいなお姉ちゃん……」

 こころの声! ……しかも、いいなを呼んでいる声。いいなは、慌ててベッドから跳ね起きた。

 大急ぎでドアのところに飛んでいこうとして、いいなはハタと自分の姿に気がついた。今の今まで自慰に耽り、まだ股間を濡らしたまま、こんな姿をこころの、愛する妹の前に曝すわけにはいかない。

 まず、いいなはベッドに敷いたタオルを片付けた。備えあれば憂いなし、そういう気遣いが役に立つことだってあるのだ。それから、慌ててティッシュで股間の愛液を拭う。

「……お姉ちゃん……もう、寝ちゃった?」

 下着を穿き換えている時間まではなさそうだった。いいなは自分の姿を見下ろしてみる。……あまり濃く生えてはいないし、ネグリジェも濃い目のピンクだから透けるようなことはないだろう。それ以上こころを待たせるわけにもいかない。いいなは今度こそドアまで走っていって扉を開けた。

「……どうしたの、こころん?」

 息が乱れているのを気づかれずに済んだだろうか。頬が紅いのを悟られはしなかったろうか。いいなは胸をドキドキさせながら末の妹を迎え入れた。

「……お姉ちゃん……」

 こころは、いいなを見上げて掠れた声で言った。

 その瞬間、いいなは胸を締め付けられるような思いに襲われて、小さな妹を抱きしめたいという衝動を必死に堪えた。すぐさま姉としての表情をその面差しに浮かべ、こころの前に膝をついて目の高さを合わせる。

 顔色が赤いのは、こころの方だった。熱でもあるのかもしれない。息もなんだか荒いようだ。

「こころん? どこか痛いの? 熱があるの? まあ、どうしましょう!」

 いいなは、こころのおでこに額をくっつけた。熱はないようだ。ちょっと熱いような気はするけれど、病気というほどのことはない。

「……お姉ちゃん……」

 こころはいいなの胸に体を預けた。熱があるような真っ赤な顔になったのは、今度はいいなの方だった。

 そして、こころの口から漏れた言葉は、いいなの理性を宇宙の彼方まで吹き飛ばすに十分だった。

「……熱い……体が熱いの……」

 こころは、潤んだ瞳を姉に向けた。それがどんな効果を発揮するか、決して本人は自覚してはいない。けれど体の中のどこかで、本能が無意識に媚態としてのそれをいいなに向けさせる。

「ここが……熱くなっちゃって……切ないの、お姉ちゃん……」

 そうしてこころは、裾の短いベビードールをちょっと持ち上げた。

 そこにのぞいた可愛いピンクの下着に、大きな染みができているのが、ちらりと見ただけでもはっきりとわかった。

「こころんっ! ……」

 いいなは、小さな妹の体を抱きしめていた。他に人のいるはずのない廊下に思わず視線を投げ、大事な宝物を隠すかのように部屋の中に引き込む。



第3話

 抱き上げたこころを、ベッドに横にする。薄いネグリジェから浮かび上がる微妙な曲線がいいなの瞳に焼き付いていくようだった。

「……お姉ちゃん……いいなお姉ちゃん……」

 切なく乱れる息の中で、こころは姉の名を呼んだ。

「大丈夫よ、こころん……今、楽にしてあげるから……」

 いいなは、こころの薄いネグリジェを捲り上げ、ほのかに熱を帯びたかのような華奢な体をむき出しにさせた。荒い呼吸に上下する胸の、ささやかな、けれどまぎれもなく大人への一歩を踏み出している膨らみを間近に目にして、いいなは胸を締め付けられるような想いがした。いつのまにかこんなにも大人になりかけている、幼いとばかり思っていた小さな妹。

 その体に、その胸に、その艶やかな黒髪にさえ、いつか他の男の手が触れると想像しただけでいいなは心が痛むのを感じた。いつまでも自分だけのものだと思っていた小さな妹。

 誰にも渡さない。――いいなは、自らも寝巻きを脱いで裸身を曝しながら、そう思った。こころを、両親の忘れ形見のこの小さな妹を守ることができるのは、慈しむことができるのは、愛することができるのは、ただ自分だけ――

 熟れて丸みを帯びた体をこころのそれと重ねながら、いいなは心の昂ぶりがまた体をも熱くするのを感じていた。

 あまりにも華奢な、強く握ったなら折れてしまいそうな手首を掴み、こころの体をベッドの上に広げる。

 重ねた唇から伝わるこころの熱い息が、いいなの胸を焦がした。こころの舌の、こころの唇の、甘い感触が体を溶かす気がした。

「お姉ちゃん……」

 長いキスの後で濡れた薄桃の唇からこぼれた彼女を呼ぶ声が、いいなの体を溶かす。

 細い首筋から、薄い胸板へ、いいなの唇が降りていった。

「あっ……あぁっ……お姉ちゃんっ……」

 こころの切ない声が、いいなの耳を蕩かせていく。もっと、その声が聞きたかった。もっともっと、こころの体の熱い昂ぶりを感じたかった。

 可愛らしく膨らんだ薄い胸に、いいなはキスをした。その胸に二つ、ぽつんとまるで虫に食われた痕か何かのように浮き出している小さな乳首。そこに向けてゆっくりと、こころの鼓動を探るように頭を動かしていく。

 もっともっとこころが小さかった頃、ぐっすりと眠っているこころが息をしているのかどうか、つい不安になって、本当に息をしているか、心臓は動いているかと確かめずにはいられなかった、そんな夜のことをいいなは思い出していた。

 舌先でそっと、その小さな乳首をくすぐる。

「ひゃっ……はぁっ……」

 こころは、可憐な叫び声をあげていいなのためらいがちな愛撫に応えた。いいなは、そんなこころの反応を一つ一つ確かめるように小さな妹の体に触れていく。

「あぁっ……お姉ちゃん……いいなお姉ちゃん……」

「……こうすると、気持ちいい?」

 いいなは、そっと指でこころの微かにくびれ始めたウェストを、膨らみつつある腰周りをなぞりながら、言った。

「うん……気持ちいい……とっても、気持ちいいよぉ……」

 恥ずかしそうに、けれどはっきりと答えたこころのそんな言葉が、いいなに勇気をくれた。次第に大胆に、そして激しく、いいなの指はこころの硬く閉じられた秘唇に向けて幼い肌を辿っていく。

「あぁぁっ……お姉ちゃんっ……そこっ……そこっ……へんだよぉっ……!」

 いいなの指先がそっとこころの花びらを捉えたとき、こころは切ない感覚の虜になって身をよじる。今さらいいなに後戻りなどできるはずもない。

「大丈夫……大丈夫よ、こころん……お姉ちゃんに任せて……」

 ゆっくりと、ゆっくりと、強張った肉を解すように、いいなの指がこころの初めての悦びを開いていく。いいなは、幼い淫裂の片隅に小さな、ほんの小さな肉芽の存在を探り当てた。それが幼いながらも健気に膨らんで、まるでいいなの愛撫を待ちわびているように震えているのを知ったとき、いいなの心を深い感動が満たしていった。

「あぁぁぁっ! ……お姉ちゃんっ……いいなお姉ちゃんっ……!」

 初めての花芯への接触に、こころは悲鳴にも近い叫び声を上げた。その声に耳を突き刺されるように感じながら、いいなはさらに深い快感を妹に教えるべく唇を胸から腹へ、そして股間へと撫で降ろしていく。

 姉の唇がどこを目指しているかを悟ったとき、こころは少女らしい羞恥心に襲われて幼い股を閉じようとしていた。

「……だ、だめっ……お姉ちゃんっ……そんなとこ、汚いよぉっ……!」

 もちろんいいなが、そんな言葉に耳を貸すはずなどなかった。

「……こころんの体に、汚いところなんてないわ……」

 いいなの唇が、ついにこころの秘唇を捉える。こころの中から溢れるような淡い愛液を音をたてて啜りながら、いいなはそっとこころの内側に向けて舌を伸ばしていた。

「あぁぁんっ……お姉ちゃんっ……あぁぁっ……へんっ……あぁっ……熱いっ……体が熱いのっ……へんになっちゃうよぉーっ!」

「へんじゃない……へんじゃないのよ、こころん……これは、体が大人に変わっていくしるしなの……」

 いいなは、こころを慰めながらその蜜を味わい、さらに深くまで舌を絡め、幼い肉芽を嬲り、転がしていく。



第4話

 初めての感覚に戸惑いながら、こころはいいなの愛撫を精一杯受けとめ、そこから生まれる幼い快感に全身を預けていった。

「……あぁぁっ……お姉ちゃんっ……いいなお姉ちゃんっ……! ……こころっ……こころ……あぁっ……熱いよぉっ……!」

 こころの小さな体が、体の中から溢れ出てくる大きなうねりの中に呑み込まれていくように震えて、そしていいなは、こころの中から零れ出る淡い蜜液を啜り、その体の中の余分な熱を吸い出そうとするように一心に吸っていくのだった。

 

「お姉ちゃん……」

 こころは、自らも荒い息に薄い胸を上下させながら、大きな瞳を潤ませて気遣うようにいいなを見上げた。

「お姉ちゃんも……苦しいの?」

「え? ……」

「お姉ちゃん……いいなお姉ちゃんも、顔、赤いよ? ……やっぱり苦しいの? ……さっきの、こころみたいに?」

「こ、こころん……」

 いいなは、胸が詰まって何も答えることができなかった。初めて知った大きな性の快感に戸惑い、混乱しているだろうに、この小さな妹はそれでも姉の身を気遣っているのだ。

「……今度は、こころが、お姉ちゃんに……してあげるね」

「こころん……いいの、いいのよ、そんな……」

 いいなの口ばかりの拒絶など、意味をもつはずもなかった。そんな事を言いながら、まるで愛撫を催促するように腕を広げ、脚を開いているのでは、とうにその気になっているこころにとってやりかえた行為を止める理由になどなるはずもなかった。

「お姉ちゃん……お姉ちゃんの……お肌、とってもキレイだね……」

 こころの小さな唇が、いいなの胸に触れる。とうに勃起して大きくなっている乳首が、自分の淫らな想念をあからさまにしているようで、いいなはいい知れぬ羞恥に身を焦がした。

「キスして……いいでしょ?」

 その言葉が終わりもしないうちに、こころの唇がいいなの乳首に触れていた。

「……あぁっ……!」

 突然電流を流されたような感覚が、こころにキスされた乳首を中心に、いいなの全身を一瞬にして駆け抜けた。

「……お姉ちゃん……」

 いいなの激しい反応に、こころは姉もまた気持ちよくなっているのだと勇気付けられている。さっきまで姉にしてもらっていたことと同じことを、いいなにもしてあげたい。それで、自分がさっき感じたとても幸せな気持ちを、とても気持ちいい感覚を、姉にもわけてあげられるのだと、こころは信じた。

「あぁっ……あっ……こころんっ……あぁぁっ!」

 こころの唇が、いいなの乳首を挟んだ。いいなは、こころの姉ではなくて母親だったらよかったのにと、思った。

 母親であったなら、乳首を含ませることに何のためらいもいらなかっただろうに。母親だったなら、いいなを抱きしめることに何のこだわりもいらなかっただろうに。

「あぁっ……こころっ……こころんっ……素敵っ……すてきぃっ……!」

 こころの口づけが乳首に触れるたびに、こころの指が乳房の膨らみをなぞるたびに、いいなの体は切なく震えた。

 いいなの反応にいっそう自身を深めたように、こころの愛撫が力強く、そして大胆になってくる。いつのまにかそんな大人びた愛撫ができるようになったこころの動きに、いいなはますます幸福を味わっていた。熱くなる腰の奥から、溢れるように蜜液が溢れ出すのを感じて、いいなは切なく身をよじった。

 そんないいなの情熱を確かめるように、こころの指が大人びた曲線をなぞるように胸から腰へ降りてくる。その指先が蕩けて熱い淫裂を捉えたとき、いいなは耐えがたい激情の虜となって幼い妹を抱きしめていた。

「あぁぁぁっ! ……こころんっ……あぁぁっ……いぃっ!」

「お姉ちゃん……気持ちいいの? ……」

「あ、あっっ! ……あぁっ! ……いぃっ……いいわっ……」

 その熱さに戸惑うように、こころはそっと姉の股間の入り口付近に指を迷わせる。いいなは、そのぎこちない動きに焦れたようにいいなは腰を振り、尻を浮かすようにこころの手に股間を押し付けていくのだ。

「こころんっ……あぁ、お願いっ……もっとっ……もっと奥までぇっ……!」

「う、うん……お姉ちゃん……」

 いいなの必死の叫びに応えて、こころは精一杯小さな指を姉の貪欲な秘裂の中に押し込んでいた。細い幼い指が、二本、三本と姉の中に吸い込まれるように入っていってしまうのを、こころは呆然と見守りながら、そこに姉の歓びの表情を見出して指の動きを強めていくのだった。

「あぁぁっ! ……あぁっあーっ! ……こころんっ……ああぁぁぁぁぁっ!」

 姉の激しい反応に、こころは少し怯えたようにそこから指を抜いてしまった。壊れていないかどうか確かめるように、そっとその部分に顔を寄せていく。こころは、初めてそれを間近に見て、溢れるほどの蜜液を湛えた秘裂に目を奪われていた。



第5話

「……お姉ちゃん……きれい……」

 口にするという意識さえなしに洩れるそんな言葉を耳にして、いいなは言い知れぬ羞恥に襲われて身を捩った。

「あぁっ……あぁっ……こころっ……こころん……お願い……」

 息を感じるほど間近に見つめられ、いいなは切なく身をよじる。こころは、自分のそれとは全く違う、姉の成熟した淫裂を惚けたように見つめながら、やがて意を決したようにその熱く昂ぶった部分に唇をつけていった。

「あぁっ……だめっ……だめよ、こころんっ……!」

 いいなは、その瞬間激しい羞恥に駆られていた。けれど、止められるはずなどありはしないのだった。秘裂はこころに向けて押し付けるように開かれている。こころは、まるで顔を洗うために洗面器の水に顔を伏せるように自然に、姉の股間に頭を埋めた。

「あぁぁぁあっぁっ!」

 こころの唇が触れる。そっと伸ばされた舌が肉襞をなぞるように動く。いいなは、こころを思って慰める自分の指に与えられるものに数倍する官能に絶叫していた。

 こころは、もうためらわなかった。姉の激しすぎるとも思える反応は、苦痛ではなく、自分が姉に与えることができた快感の故だと、こころは今やはっきりと知っていたから。

「あぁっ……こころっ……こころんっ……!」

 いいなは、夢にまでみた快感の中で何度も何度も妹の名を呼んだ。あまりに激しすぎる感覚が、昂ぶりすぎた心が、この愉悦の時があとそう長くは続かないだろうことをいいなに教える。けれど、もう後戻りなどできるはずはなかった。

「あぁっ……こころっ……こころんっ……いぃっ……ひぃぃっ……!」

 いいなの声は、もはや言葉にならなかった。こころの小さな舌がもたらす快感は、自分の指で掻きたてるどんな刺激よりも激しく、そして優しくいいなの肉体の全てを覆い尽くすように広がっていく。

「あ、あぁぁっ! ……あぁっっ……! だめっ……だめぇっ……! あぁぁぁっ!」

 もっと、もっとこうしていたかった。ずっとこのままこころの愛撫に身を任せていたかった。けれど、そんな想いとは裏腹にいいなの肉体はもはや限界を迎えようとしていた。

「い、いやぁっ……ま、まだっ……だめぇっ……あぁぁぁっ……! イクっ……イクぅっ……イッちゃうのぉっ……!」

「お姉ちゃん……いいなお姉ちゃんっ……」

 そして、こころもまた、姉の激情をその小さな体に受けとめるように、切ない快感の虜になっていくのだった。

「あぁっ……あぁぁぁあっ! ……あっぁぁぁーっ!」

 そして二人は、固く抱き合ったまま同じ快感の頂点に駆け上っていった。

 固く抱きあいながら、この上ない幸福感に包まれて眠りにつく二人。

 ついに二人は、いつのまにかいいなの部屋に作られた覗き穴から二人の愛の営みを伺っている視線に気付くことはなかった。

 

「うーん……ここまで上手くいくとは思わなかったなぁ……」

 ココロ図書館名物、司書三姉妹の二番目、あるとは内緒でこさえた覗き穴から姉と妹の繰り広げる痴態を余すところなく鑑賞して、そうひとりごちた。

 苦労した甲斐があったというものだ。この数日、こころの夕食にはこっそり手に入れた媚薬を混ぜてきた。幼い肉体がその高揚に耐えきれなくなった時姉のところを訪ねるだろうことはまさに計画通りだった。

 あの姉であれば、こころがそんなしどけない姿で現れれば到底耐えることはできまい。まして、いいなは気付いていないが二人をモデルにした小説を彼女が読むように仕向けたのもまたあるとだったのだ。

 そう、一介の図書館司書とは世を忍ぶ仮の姿、その実体は少女向けライトHノベル作家『桃川こあら』とは他ならぬ彼女のことである。

「ごめんね……今、売れないんだよね、エロがないと……」

 もう一つのペンネーム『姫宮きりん』の名のもとにジュニア小説を書いて密かに家計を助けていたあるとが昨今手を出したもう一つの副業。それが『桃川こあら』だったのだ。

 あるとは、もう一度覗き穴から穏やかに眠る姉と妹の姿を見やった。あの中に入って行きたいという衝動を内に押し殺しながら、見ている間に濡れてしまった下着を替える。

 指が、濡れた秘部に触れた時、そのまませめて自分で慰めたいと思った。……けれど、そんな暇はない。締めきりは目の前に迫っているのだ。

 しょせん、作家というのは孤独な商売なのである。

「さって、お仕事、お仕事……」

 あるとは、ライトエロノベル作家『桃川こあら』になりきるためのカツラをかぶり、書き物机に向かうのだった。


















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