前編(1) 季節はもう冬間近。空に曇りが多くなり、北風が吹いている。 真っ黒なマフラーと真っ黒なワンピース。そして真っ黒な靴。女の子なのに真っ黒なランドセル。 鼻の頭まで隠す髪も、麗しい程漆黒だ。 「今日はみんなに、転校生を紹介します。入って」 窓の向こうの曇り空よりどんよりとした気持ちは、皆同じだろう。 そんな空気がマンネリ化している教室に、冷たい風が入り込む。 教室の中に少女が入って来る。教師の隣に立った黒ずくめの少女が、目の見えないその表情でニッコリ微笑む。 「初めまして。黒河妖子っす。以後、お見知り置きを」 薄いピンク色の唇が、微笑する。真っ白な頬は、時期に降り注ぐ雪よりも冷たそうだった。 *--- 「ひぃぃっ!もっ…いやぁっ!」 絶叫がホールに響く。大きな洋館の奥の、銀色の扉の向こう。二十歳そこそこの少女が、身をよじっている。 彼女の腕は後ろ手に縛られ、股間には麻縄をまたがされている。どんなに爪先立ちになっても、縄から逃れることはできない。 当然というべきか、全裸である。その尻に、鞭が跳ぶ。 「きゃあぁん!」 「さっさと歩け」 真っ赤な髪を首元でくくり、ピッタリとしたフォーマルな服を着た青年は、眼鏡を軽くあげる。 「もう…いやぁ…許し…ヒィッ!」 再び鞭で打たれ、その痛みから逃げるように脚が前に進む。 だが、股間に来る縄からの痛みに、再び悲鳴を上げることになった。 「アヒィッ…い…痛い…」 涙でボロボロになっている少女の声に重なるように、扉が開いた。 「進んでます~?」 「これは妖子様…」 青年…怪が、妖子の出現に気付き一旦腕を止める。 「申し訳ありません。ご帰宅なさったとは知らず…」 「いいんすよ。怪にはその仕事、任せてますし。それより…お客様は明日の夜様子を見に来るらしいから…もう少し感度を上げておいてくれます?」 「ハイ。妖子様」 ノホホンと、妖子が微笑んだ。いつもの如く目を隠した前髪が揺れ、学校からのままのワンピースが幼さを強調している。 だが彼女はこの館の主人であり、この怪を筆頭として三人の部下を持っている。 まだ中学にも上がっていないこの少女が何故…と思うのは当然の事である。 だがその真実を知るものは、この館に住む妖子を含めた四人だけなのである。今は… 「さて…お嬢さんお疲れみたいっすね?」 「ぁ…あ…助け…てぇ…」 今にも倒れてしまいそうな少女を見つめ、妖子はため息をつく。 「一時間程休憩させて上げなさいな。その間…怪、相手してくれます?」 「しかし…良いのですか?まだ半端で…」 鞭を持ったまま困惑する怪の側に妖子は来る。そしておもむろに頬に触れる。 「怪が嫌なら…魔御にでも頼むんすけど?」 「是非私にッ!」 身を乗り出す怪の表情があまりに必死だった為、妖子はクスクス笑う。 「彼女を休ませたら部屋にいらっしゃい」 「ぁ…はぃ…」 思わずむきになったことに、怪の方も恥ずかしげに頬を赤らめた。 少女の体が、床に降ろされた。 次頁 妖子 |
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