後編(9) 最終回

針の刺さった部分から血もポタポタ落ちるが、同じようにせき止められた鈴口から先走りが溢れていた。

針は味わわせるようにゆっくり沈み、鬼人は腕を思いきりばたつかせそれを防ごうとするが、そうすると今度は首が絞まって目を白黒させる。
勿論その間も針からの激痛は体中を蝕む、気が触れそうなほどの激痛は快感にかわる。

こうなれば脚ででも防げるかもとでも思ったのか、脚を上げようとするが、腿に刺された針が筋肉を刺激して少し上げるだけでクラクラしそうな痛みが脊椎の辺りまで響く。
結局針先が肉を貫き終わるまで、鬼人は悶え続けることしか出来なかった。

「ヒッ…ぎぃぃい…」

限界が近い。これまでは気絶ができた。だが今回は気絶すると首が絞まってさらに苦しくなる。
意識を保っていれば針からのチリチリとした痛みと射精を強制中断される苦しみに気が遠くなる。
今は本当に意識があるのか、それとも気を失って苦しみながらそんな夢を見ているのか、それすら解らなくなってきている。

そんな様子がわかったのか、妖子がそっと鬼人の髪を撫でた。

「あと二本頑張ったら…楽にしてあげる…」

もはや声を出せば悲鳴になる。
プレイの域を越えた拷問にすら見えるのに、それでも鬼人は感じているし、妖子はそれを受け入れようと必死に堪える鬼人を愛おしんでいる。
端から見てもそれがわかるほど、二人の表情は恍惚としていた。

妖子の白くて細い指が、次の針を持つ。それを視線で追う鬼人の呼吸音ばかりが部屋に響いた。


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朝、妖子は床に散らばった針を綺麗に拭い、ケースに戻していた。
側には子猫のように丸まって眠る鬼人がいる。
ベッドを嫌う鬼人は、妖子に飼われ出してからずっと愛用しているタオルに体を包み、大きめのクッションの上に眠るのが習慣だ。
体が痛くならないものかと思うが、本人がこれがいいというので放っといてやっていた。

針は全て使用した。
パンパンになったペニスに二本目の針を刺した頃には、鬼人は泡を噴いてぐったりと沈んでいて、首が絞まるのに立てずにいて。

死なせるつもりはなかったのであっさりおろしてやった。
あれからすぐ腕の鎖を外してやったのに、目を覚ましもしない。
体を拭いてやると、気持ち良さげに擦り寄ってきたのが可愛くて。

寝かし付けた後に片付けを始めたわけである。
ちなみにペニスのリングは外してやっていない。目を覚ましたら、主を放っておいて先に眠った甘えん坊の子猫を叱りながら虐める為に。

「…逃げるもんか。絶対」
そう呟いた後、すぐに唇を噛み締める。

「…アスラ…ねぇアスラ…あんたは今…どうしてる…?」

聞きたい言葉が溢れてきたから、上手く言葉にできない。




傷はもう癒えた?

今も星が好き?

元気にしている?




大切な人は…できた?




一筋流れた涙は、手の甲に落ちて…消えた。





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