「--…あけやしたねぇ」

 除夜の鐘が鳴り終わり、人々の声が念で流れてくる。
 人間の決めたこの区切りはとても盛り上がる行事で、妖子達には関係ないはずなのにすっかりエンジョイしていた。

「おや、今年のお雑煮は白いこと」
「白味噌があったからな。妖子味噌汁好きだし」

 古びた洋館に似合わない唯一の和室に火燵をおき、黒の振袖に身を包んだ妖子ものんびりと雑煮をすすっていた。

「妖子様は和食好きだよね~。僕は苦手~…お刺身は好きだけど」
「妖子様、本日は冷えますので熱燗を」

 めっきり年越しになれた三匹にかこまれ、火燵の魔力(一度入ると中々出られないあれ)に満足そうに息をつく女主人は、結い上げた髪を撫で付ける。
 三匹にねだられて着た黒の着物は、妖子の白い肌を一層引き立たせている。

「やっぱ和服は慣れないなぁ…変じゃないすか?」
「お似合いですよ。当然」
「なんかお人形さんみたいです☆」
「妖子は着こなしうまいからな」

 相変わらずベタ褒めだし。なんて苦笑するが、褒められて悪い気はしない。
 たまには和服もいいかもと、あらわなうなじを撫でた。

「和服は凹凸ねぇほうが綺麗に見えるらしいからな」

 ………凹凸がない?

「あ、知ってる。コルセットと同じで締めるから、胸があると苦しいらしいね」

 ………胸があると?

「谷間が見えるなど品がないからな。それに帯に乗るのも娼婦のようでしまりがない。控えめなほうがいいんだ」

 ………控えめな…………胸?

「…ふ。…ふふふふふふ…」

 妖子から、渇いた笑いが漏れる。そこでようやく、三人は気付いたのである。
 触れてはならぬ話題に触れたこと。

「あっ…」
「妖子、様…ッ?」
「ぇ、えっと…」

 三者三様に後ずさるが、まぁ距離などたいして稼げはせず。

「…三人共、あたしの部屋にいらっしゃい。折角年も明けたんだから…三人まとめて相手、してあげやしょうね」
「めっ、滅相もございませんっ!」
「折角新年なのに、僕らの相手なんてっ!」
「そうそうっ! ゆっくり休めよっ!」

 三人の表情がすっかり青ざめているが、俯く妖子にそれは見えない。

「…さぁて…新年一発目のプレイは…みんなの苦手克服からいきやしょうか? ネェ…お前達」

 白い肌と黒い着物のコントラストに、真っ赤な瞳が微笑んだ。






M・Y様からのご投稿作品は本編が最終となります
長きにわたりご投稿いただき、ありがとうございました




















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