生まれながらの真正マゾヒストとして生まれた雪は、成人するまでの間、欲求不満の日々を過ごしていた。
恋人には振られ、親に趣味がバレては怒鳴られ、田舎なので相手を探そうにも見つからず……胸の内にSMへの衝動を抑えていた。
そんな彼女も、三ヶ月前に成人を迎えると、急いで上京し、人生で初めての主人という物を作った。
それが町田カップルである。
SNSで『#カップル奴隷募集』のタグをつけて投稿していた町田カップルへ、雪から連絡したのだ。
町田カップルは、とある大企業の社長である町田と、元劇団女優のミカの二人組だった。
町田は太った小汚い男だが、ミカはそれに似合わないほどの美人であった。
黒髪ストレートロングで、ジャンルで言えば清楚系。体は少々肉付きがなかったが、その欠点をなかった事にする程の整った美貌があった。目は大きくパッチリとしていて、唇は魅力的なピンク色。そして、笑うとキツネの様に目つきが細くなる。
雪も決して醜い女ではなく普遍的ではあるが、ミカと比べると、どうしても劣るところがあるだろう。腹回りにもだらしなく肉がついているし、唇や歯が大きい。雪がどう努力しても、ミカの顔立ちには近づく事すら出来ないだろう。
なぜそんなミカが町田と付き合っているのかと言うと、醜い男が好きな訳でも、金にがめつい女だから、という訳でもない。
二人には共通点があった。強烈なSM趣味である。これが運命的に二人を結び付けたのだ。その運命に、雪も巻き込まれたのかもしれない。
町田カップルと出会ってから、雪は二週間に一度、同じホテルの同じVIPルームに呼び出されていた。
今夜も雪は、その扉を開き――。
「ねえ。遅かったね」
――早々、そんな不機嫌なミカの声が聞こえてくる。
雪は震えた。約束通り、五分でやってきたはずなのに。焦りが雫となって額に現れる。
町田カップルは、ダブルベッドの上に座っていた。
ミカは横すわりで、町田はそんなミカの肩に手を回してあぐらをかいていた。ふたりとも、高圧的な視線を雪へ向けている。
町田は、左腕についた腕時計を見ながら言った。
「いつもより一分遅れてるじゃないか」
雪はその言葉を聞くなり、心の中に湧いた焦燥感が全身を汗ばませた。靴を脱いで部屋へ上がると、すぐさま土下座する。
「申し訳ありません。時間管理には気をつけていたのですが……」
「そんな言い訳はいいから、なんで遅刻したのか言ってみなさいよ」
ミカのその言葉に、雪は困ってしまった。
「えっと、それはその……」
どうして自分は遅刻してしまったのか、自分でも分からない。時計を読み間違えたのか? 途中、躓いてしまったからか?
そう考えている間に、ミカは問い詰めてくる。
「淫らな貴方は、ここへ向かっている途中に発情してしまったんでしょう?」
その言葉に、雪は自分の言うべきことを理解した。
「は……はい! そうです。雪はお仕置きされるのが大好きな雌豚なので、途中でおまんこを濡らしていました。いやらしくて、申し訳ありません」
ほぼほぼ、ミカの言葉をよりいやらしくリメイクしただけだが、彼女はそれで満足している。
町田が雪へ命令した。
「それじゃあ、お仕置きをするから”正装”で、床の上で仰向けになれよ」
正装とは言うが、その言葉はただの全裸を示す物だ。家畜が服を着るのはおかしい事だからと、三人の間でその言葉を使う事になった。
「わかりました……」
雪は顔を赤らめながら立ち上がると、ジャケットを脱ぎ、下に着ていたワンピースも下ろす……。ワンピースの下には、ブラジャーもパンティーもつけていなかった為、スムーズに全裸になれた。
「命令通り、ノーブラノーパンで偉いじゃないの。体に落書きも入ってるし、ちゃんとお風呂に入ってないのね」
雪の背中には、赤いペンで大きく『淫乱女』という文字が書かれてあった。これは、わざと落ちやすいペンで書かれた物である。ちゃんと雪が風呂に入っていないか、確認する為に。
「はは。匂いがここにも届くぞ」
町田は笑った。
カップルと雪の距離は一メートルほどあるのにもかかわらず、饐えた様な匂いが香ってくる。これは周りに迷惑をかけたに違いない。
「じゃあ、さっさと仰向けになりなさい」
「分かりました……」
雪は、二人が座るベッドに近づくと、足をベッドの方へ向け、硬い床の上で仰向けになる。そして、死んだカエルの様に足を大きく広げた。
カップルは立ち上がると、雪へと近づく。そして、雪の両脇へと立った。
「おまんこをこんなに濡らして……このビッチが!」
ミカはそう怒鳴りながら手を大きくふりかざすと、雪の秘部へとビンタをする。
「ああっ」
バチン! という痛そうな音が響くが、それに反して溢れ出た雪の声は甘かった。
「ごめんなさい。おまんこを濡らしてごめんなさい」
人形の様に、そんな言葉を繰り返す。
町田は、雪のガチガチに勃起したクリトリスをつまんで、引っ張った。
「謝っているわりには、随分と興奮している様じゃないか」
「ひ、引っ張らないでください」
「そうは言っても、よろこんでるだろう」
そう言いながら、クリトリスへデコピンを食らわした。
「キャっ」
愛液が溢れ出し、雪の秘部はどんどんと蕩けていった。
「ああ。本当にいやらしい悪い娘ね。お仕置きしてやらないといけないわ」
ミカはそう言うと、ベッドの近くに置いてあった黄色のビニール袋を手に取った。そこには、雪を罰する為の道具が入っている。
「まずはこのいやらしい突起をこらしめないと」
そう言いながら取り出したのは、洗濯バサミである。普通、こういう物は痛みを軽減させる為にバネが外されているのだが、その洗濯バサミは明らかに新品の物だ。
ミカは、その洗濯バサミで雪のクリトリスをつまむ。
「痛い! 痛いです! 早く……外してください!」
「私に指図するって言うの?!」
バチン! と、また雪のおまんこがはたかれた。十分すぎるほど分泌された液が、ミカの手を濡らす。
「ここまでの淫乱に堕ちたくはないわね」
軽蔑する様に呟く。
「新しく買った玩具をためそう。さすがのお前も、あの快感には耐えられないはずだ」
そう言いながら町田が取り出したのは、五センチほどの、ピンク色の皿の様な形の物を二つである。凹んでいる部分には、大量のシリコンの突起がついており、反対側にはスイッチの様な物があった。
「これは乳首にかぶせて使うんだよ。上のボタンを押すと、内側のシリコンブラシが絶え間なく動くんだ」
それを聞くだけで、雪の胸がときめく――感覚としては、乳頭に血が集まっている様だった。
「見ての通り固定する物がないから、すぐに落ちるだろうな。もし五分間、体の上に乗せられたら褒美をやろう。もし失敗したら……分かるよな?」
「は……はい」
雪の視線は、その道具に釘付けになっていた。もしあれを使われたら、私の体はどうなってしまうだろう……という不安で、気持ちは高揚している。
「ミカ、ローションを取ってくれないか」
「ええ、どうぞ」
そう言って、ミカが袋から取り出したのは、パッケージに何も書かれていない謎のローションである。容器が透明なおかげで、ほんのりとピンク色に色づいている事だけが分かった。
「このローションにはな、媚薬が仕込まれているんだ。まともな女ならトラウマになる位気持ちよくなっちまう。まともな女ならな」
町田の念を押して言ったその言葉に、雪は自分の言うべき言葉が口から勝手にこぼれ出る。
「は……はい。私は気持ちいい事が大好きな頭のおかしいマゾ女なので、楽しみです……」
その雪の言葉に、町田とミカは腹を抱えて笑った。
「この子、根っからの雌豚よ。ああ、おかしい」
「お望み通り、その乳首を壊してやろう」
町田は、その道具の内側にたっぷりとローションを注ぐと、一つずつ、雪の乳房のてっぺんに置いた。ひんやりとした感覚に、雪の背筋に悪寒が走った。
町田の声が聞こえる。
「さん……にぃ……」
彼のそのカウントダウンに、雪が固唾を飲んで待っていると――
「ゼロ!」
――いきなり道具のスイッチが押された!
「んんぁああ!」
瞬間、絶叫と共に雪の体は震える。襲い来る快楽の波に、目を白黒させた。道具を胸から落とさない為、必死に上半身に力を入れるも、下半身は陸に出た魚の様に足をジタバタさせ、この快感からどうしても逃げようとしていた。
胸の突起を、いくつものシリコンブラシがくすぐり、グリグリと押しつぶそうとする。媚薬ローションのおかげが、感度もいつもより高い為、三十秒もせず雪は絶頂する。しかし、シリコンブラシは無機質に、絶頂したばかりの乳首をしつこく刺激し、今度は二十秒と立たず絶頂……次第にそのペースは早くなっていく。顔が即座に紅潮していった。体に滲んだ汗が、次第にベッタリとしてきた。
雪は視界を淀ませながらも、カップルの声はちゃんと聞きとる。それもやはり笑い声だった。
「んんん!」
喘ぎに力が入っていくにつれ、声は小さく、意識は薄くなっていく。快楽の海を漂う様で、脳から生暖かい汁が溢れ出る様な心地よさに精神が丸ごと飲み込まれてしまいそうである。
その時、クリトリスにつけられた洗濯バサミが弾かれ、脊椎に電撃が走るかの様な快感が走り――背筋が思わずのけぞって、胸から道具が落ちてしまった。
洗濯バサミを指で弾いたのは、ミカの様である。彼女はキツネの様な顔で笑った。
「キャハハ。誰も体には触らないなんて一言も言ってないのよ。油断した貴方が悪いわ」
「顔が真っ赤だったぞ。あの様子じゃあ、早かれ遅かれだな」
雪は荒く呼吸をしながら、途切れ途切れに罰を切願した。
「申し訳ございません……どうか卑しいこの雪に、罰をお与えください」
「今日はね、ペニバンを用意してて、成功したら二人で犯してあげる予定だったのに。失敗した貴方にセックスなんて、もったいないわ」
「お前はそこで見ているだけだぞ。罰だからな」
そう言いながら、町田カップルはベッドへ上がる。雪が体を起こしてその姿を眺めていると、ミカが遠くから怒鳴った。
「雌豚は豚らしく四つん這いになりなさい!」
「分かりました……」
体を前に倒し、両手を床につく。
豚らしいそのポーズになりながら、ミカは見るだけしかできない惨めさを味わっていた。
しかし、性行為に入る前、町田が念を押して言う。
「オナニーをするのもだめだ。”見るだけ”だぞ」
「分かりました……」
そこから始まる二人の性交は、どちらもサディストゆえなのか、ミカが上になったり町田が上になったり、代わる代わる行われた。
前戯という事なのか、仰向けに倒れる町田の体の上に、頭を反対にしてミカが乗っかるシックスナインから始まる。ミカの頭は雪の方を向いていた為に、彼女が太い肉棒をしゃぶるところを、雪は間近でみる事になった。
頬をすぼめ、掃除機のごとくバキュームしたり、すぐに舌で亀頭のみの刺激に移ったり……その口使いは多様であった。ただ、町田も同じ様に、必死に舐めているのか、ミカも時々肉棒から口を外して、甘い声を口から漏らしたりする。
雪はそれを恍惚な視線で眺める事しかできない。体の疼きを、頑張って意識の外に出そうと、より無心にその姿を見つめた。
次に町田が上に乗っかる。
町田はミカの足を掴み、彼女の陰裂に陰茎を挿入した。町田は勢いよく何回も何回も腰を突き動かし、水音と、肉と肉の衝撃音が響く。
雪の位置からは、町田の分厚い尻に隠れて挿入部はほぼほぼ見えない。見えないからこそ、穴が開くほどそこをじっと見つめた。
しばらくすると、また上下が入れ替わる。
町田の上にミカが騎乗位になって、素早く腰を動かす。今度は、雪からも行為の様子がよく見えた。少し濁り、泡立つ液を纏う男根が、ミカの膣内に隠れては、姿を現したりする。雪の腹部がキュンとときめく感覚があった。
するとまた、挿入部が見えなくなる。
二人は立ちバックの姿勢になっていた。獣の様な町田の声と、同性である雪から見ても魅惑的なかわいいらしいミカの喘ぎ声が響いていた。
淫猥な音がどんどんと素早く響き、ミカの声がどんどんと甲高くなっていく。そろそろフィニッシュが来ると、見ているだけの雪にも分かった。
「ああ! イク!」
そのミカの甲高い声と共に、町田の腰は止まった……。
雪は、ふと意識を自分の体に戻すと、愛液が太ももまで垂れている。割れ目からは、まだクリトリスを掴んでいる洗濯バサミが顔を出していた。
頭と陰部に血が上っているせいか、意識はボーッとしている。
行為が終わった二人はベッドの縁に座り、雪を見下ろす。
「あら、随分と汁が溢れてる様子じゃないの。貴方は本当に我慢できたの?」
「まあ、いいだろう。ここから帰る前に、どうせオナニーショーはやってもらうつもりだったんだ」
そう言いながら町田が取り出したのは、これまたシリコンの……イボイボの突起がついたシートである。
「これにこすりつけて、手を使わずに十回だ」
「それだけ濡れてるならローションもいらないでしょう。洗濯バサミを取ってあげるわ。体を起こしなさい」
「はい……ありがとうございます」
雪が上半身を起こすと、ミカが彼女の股へ手を伸ばし、洗濯バサミを引っ張った!
「キャア!」
さすがの雪もこれには思わず痛みを感じ、そう叫んでしまった。
「うるっさいわねぇ」
「申し訳ございません……」
耳を塞ぐミカへ、雪は土下座を捧げた。
乱暴な取り方のせいで雪のクリトリスはヒリヒリするし、鬱血していた所に血が勢いよく上って、痺れるようなもどかしい感覚も走る。
「いいから、頭を上げろ。とりあえず、これを股の下に置いて早く初めてもらおうか」
町田はそう言いながら、シリコンのシートを雪へ手渡す。
「了解いたしました」
雪は頭を上げながら、それを両手で丁寧に受け取ると、性器の下にそれを置いた。
「初めてもらおう。十回イクまで、腰の動きを止めるなよ」
「はい……」
雪は体を倒して、シリコンのシートに女陰をしっかりと乗せ……ズリズリと、腰を前後に動かし始めた。
「ああっん! あがっ」
言葉にならない悶絶が喉をかすって出る。雪は肩をはずませながら、一生懸命にクリトリスをシートへこすりつける。
町田カップルの性交を見せられ、十分すぎるほど焦らされていた雪のそこは、非常に敏感になっていた。乾いていたシートも、すぐに雪の愛液をまとってぬめり、雪のクリトリスとぶつかったり、こねたりして刺激する。
すぐに絶頂してしまいそうになった。
「い……イキます! 一回目、イキます」
そう宣言しながら、エクスタシーに達する。
「うあっ」
息をジッと止め、足はガクガクと震え、背筋がピンと伸びた。腹部から脳に走る快楽の霹靂に、体の力がぐったりと抜け、口から舌が出てしまった。
しかし、その雪の姿を見て、ミカは眉間に皺を寄せる。
「さすがにこれは早すぎよ。イッたふりしてるんじゃない?」
それに町田も同調した。
「ああ、そうだな。カウントしないでおこう」
「え……ほ、本当にイきました……」
「口答えするっていうの? 寝言はいいから早く十回イキなさい」
その高圧的なミカの態度に、雪はやはり頷く意外の選択肢はない。
「……はい」
雪は再び、腰をシートへこすりつける様に動かす。
一回絶頂し、感度の上がっていたクリトリスはまた雪を即座に完頂へと導こうとしたが、雪は必死にこらえた。しかし、本能が頭の中で『イきたい』と叫びながら、雪の下腹部をトクンと脈打たせる。
その時、ミカが口を開いた。
「ほら。本当にさっきイッたのなら、感度が上がってるはず。なのに今度はなかなかイカないわ。やっぱり嘘ついてたのよ」
その言葉に、ミカは驚きのあまり何も言えなかったが、腰の動きを早める。
町田カップルはその動きをマジマジと見つめるので、雪は上唇を噛みながら、恥に耐え忍ぶ。
次に口を開いたのは、町田だった。
「本当にミカの話を聞いたらすぐにイこうとしてるな」
そう言われても、雪はさっきからイキたくてイキたくて仕方がなかったのだ。今更ブレーキをかける事も出来ず、また絶頂する。
「に……二回目。イキます!」
その様子を見ていた町田カップルの反応はさすがの雪でも分かった。
「さすがにこれは嘘ね」
「そろそろ一回くらいイッてみろ」
笑いながら話す二人を見て、雪はうなだれる。
それからも雪が何度イこうが、二人は適当な理由をつけ、なかなか認めなかった。もちろん、雪が終わらせてほしいと懇願しても、終わる理由がなく……。
雪のオナニーショーが終わるまで、約二時間もかかった。
雪の愛液は、シリコンシートから溢れるまで分泌されていた。潮も何回も吹き、足元までびちゃびちゃに濡れている。クリトリスは赤く、腫れた様に膨張していた。
何十回、何百回も連続でアクメをした体はもはやまともに力が入らず、床に伏して、自分の分泌液に自分の体を乗せ、脱力していた。
その後頭部には、付箋が一枚、貼り付けられている。
『アタシ達、先にお家に帰りま~す
臭くてかなわないから今日からおフロ入って! ミキ』
*
それからも、雪は町田カップルに呼ばれ続けていた。
次第に雪への命令は過激化し続けている。しかしながら、悪い気などするわけもない。
今は毎日、自慰行為の動画を二人に送り、嘲笑されている。
これからも彼女は、二人の愛を支える奴隷であるだろう。
完