「勝負よ」

 ・・・

 男が、ゆったりとソファに腰を掛けている。

 女が、その足下で熱心にフェラチオしている。

 女は、男を逝かせようと、あらゆる技巧を試み、凝らす。

 女の唇と舌が男根を包み込み、男の性欲を煽るように、淫靡にうごめき、音を立てる。

 そして、女は自ら、男根を喉奥まで迎え入れる。

 「うふんっ・・・、んんっ・・・。んん・・・」

 女の口元から、いっそう艶かしい吐息が漏れる・・・。


 男根は力強く勃起していた。熱く、硬く、大きく。

 女は、その先端から流れ滴る透明な男の液体を飲み込む。

 男は、女がいくら懸命に奉仕しても逝かなかった。

 女が過去に経験した男たちなら、もうとっくに射精してるはずだった。

 だが、この男はいっこうに射精の気配がない。

 女の口内で、男根をいっそう大きく、硬く、力強く漲らせながらも。

 逝って・・・、逝って・・・。私のフェラチオじゃ物足りないの?・・・。お願い、逝って・・・。


 その夜、女は、自分から仕掛けたのだった。

 いつも犯され、嬲られ、逝かされてばかりで悔しい思いがあった。

 女にも意地があったのだ。

 勝負よ・・・。


 女は果敢に男に挑む。

 さらに男根の口への出し入れを激しくする。両手を上げて男の逞しい筋肉に触れ、いぢる。

 口唇に淫猥な音と吐息を立てて。

 「ちゅぽっ、ちゅぷっ、ちゅぷっ・・・。んん・・・。んふんんっ・・・」

 負けないわ・・・。


 「無駄だ」

 「え?」

 ちゅぽうっ・・・と、音を立てて、男根を口から離し、女が男を見上げる。

 男は答えず、無言のまま、女を見下ろす。

 「そんなこと言って。いっぱい出ちゃっても知らないんだから」

 女は、いたずらするように男根、その亀頭を指で弄ぶ。

 男はいたって冷静だ。

 「好きにしろ」

 滅多に見せない男の苦笑い。

 女は真剣になり、男根を含み直す。

 ああ・・・。男らしい・・・。

 いつもこのおちんちんで犯されてるんだわ・・・。私。一方的に・・・。

 でも、今夜は・・・。

 女のフェラチオがより、激しく淫らさを帯びた・・・。


 「立て」

 「まだ、したいの・・・」

 「いいから立て。ベッドへ行くぞ」

 「だって・・・」

 「無駄だ。来い」

 男は、女の腕を掴んでベッドに引き立てて行った。

 男は女を仰向けにベッドに倒すと、女の両の足首を掴み大きく開かせた。

 女の目に、男の恐ろしく冷徹な眼差しと、男の筋肉美が映る。

 「おれが教えてやる」

 男がそう言い、既に充分に濡れている女陰に男根をあてがう。挿入するのだ。

 ペニスを持たない女には、これができない。ただ、犯されるのみ・・・。

 ずるいわ・・・。ずるい・・・。この逞しいおちんちん・・・。


 男は、一気には貫かなかった。

 焦らして、嬲るのだ・・・。

 女陰の中に、逞しく勃起した男根が、静かに、ゆっくりと、だが、力強く、挿入されていく・・・。

 「ああっ・・・!それだめ・・・。逝きそうっ・・・」

 女の上半身が、男の焦らしに、ビクビクと痙攣する。

 入ってくる。入ってくるぅ・・・。

 そんなに焦らして・・・。

 ああ・・・。焦らされる・・・。

 「早く姦って。意地悪しないで・・・。ああ、もう我慢できない・・・」

 女は身を激しくよじって男に乞う。

 負けそう・・・。私、負けそう・・・。負けちゃうぅ・・・。


 男が女陰の中、男根を深々とおさめた。

 「あ・・・、くうぅっ・・・。逝く。逝っちゃう・・・!」

 だが男は、そのまま動かさない。

 女陰の中、男根をおさめたまま、男はその力強さをいっそう漲らせた。

 ベッドの上、女の背が大きく弓なりに反った。

 「ああ・・・、逝きます・・・。逝くうっ・・・!、逝かされるぅ・・・」

 女が征服された。

 男に敗北した瞬間だった。

















作者和巳さんのHP

男と女のハードボイルド・エロティシズム。成人女性向けだが、男性も十分愉しめる。
ヒーロー&ヒロインに固有名詞を与えず、「男」「女」と象徴化している点がクールでありユニーク。


『ただ貴女(あなた)を愛したくて』









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