Simpson 作

『Twin's Story 4 "White Chocolate Time"』

《1 誕生日》

 うつ伏せになったマユミの背後から覆い被さり、ケンジは彼女の豊かな乳房を背中から回した手で強く揉みしだきながら、腰を激しく前後に動かしていた。「マ、マユっ!マユっ!お、俺もう、イ、イくっ・・・・。」
 「ケン兄、ケン兄!あ、あたしもっ!あ、ああああ・・・・。」
 ケンジはその手でマユミの乳房を握りしめ、マユミの上で身体を硬直させた。「イくっ!」
 びゅるるっ!びゅくっ、びゅくっ!びゅくびゅくびゅく・・・・。「あああああん!」マユミも顎を突き出して喘ぎ続けた。
 はあはあはあはあ・・・・・二人はその動悸が収まるのを静かに待った。しばらくしてケンジは両腕をベッドについて伸ばし、マユミの身体から自分の胸を遠ざけた。
 「ケン兄、もうちょっとくっついてて・・・・。」
 「え?でも、重いだろ?」
 「いいの。ケン兄の身体の重さと温かさが心地いいの。」
 ケンジは再びゆっくりと身体をマユミの背中に乗せた。そして過度に体重がかからないように、ベッドに肘をつき、マユミの身体を包みこむようにして重なった。
 「ケン兄、あたしね、」
 「うん?」
 「ケン兄があたしの中に入っている時が、一番幸せ。」
 「そ、そうなのか?」
 「うん。何だかとっても満ち足りた気持ちになるから。」
 「俺もだ、マユ。お前の中はとても心地いい・・・・。」
 二人はそのまま長い時間じっとして、お互いの鼓動を聞き合った。
 ケンジ自身がマユミから抜け、彼はマユミの身体を抱いて横向きにした。軽いキスをしてケンジはマユミの目を見つめた。「明日は俺たちの誕生日だな、マユ。」
 「そうだね。ケン兄、プレゼントは何がいい?」
 「お前こそ、何がいいんだ?」
 海棠家のこの双子の兄妹は誕生日の12月1日が近づくと、二人で街に出てお互いのプレゼントをそれぞれがリクエストに従って買い合うことが慣習になっていた。
 「去年は二人とも腕時計だったよね。」
 「そうだったな。」
 「でも、付き合ってることがみんなにばれるのが怖くて、わざと違うタイプのにしたよね。」
 「今思えば、おそろいにしとけばよかったな。」
 「あたしもそう思う。」
 ケンジはマユミの髪を撫でた。「あれから俺たち、何度も同じ時間をいっしょに過ごしたよな。」
 「そうだね。何度もつながって一つになったね。もう一年以上になるんだね。」
 「マユ、」
 「何?」
 ケンジは身体を起こした。「お前、俺とこういう関係になって、本当に良かったって思う?」
 「どうしたの?急に。」
 「いや・・・・。」
 「今のあたし、ケン兄以外に考えられないもん。ケン兄と一緒にいると最高に幸せって感じるし、とっても心が癒されるんだよ。ケン兄がお兄ちゃんでなくても、出会ってたら絶対コクってた。だから、ケン兄と兄妹でいつも一緒に暮らせるってことが、もうすっごく幸運なことだって思ってる。」
 「そうか。」ケンジは少し瞳を潤ませて安心したように笑った。「明日が楽しみだな、マユ。」
 「うんっ!」マユミも笑顔を弾けさせた。

 明くる日は朝から寒かったがよく晴れていた。今年の二人の誕生日は土曜日だった。ケンジはマユミと出かけるために部屋で身支度をしていた。その時机の上に置いていたケータイのメール着信音が鳴った。ケンジはそれを手に取ると、開いてディスプレイを見た。「ケニーからだ。」
 「なになに、『今夜、お前たちのバースデーパーティをやるよってに、夕方うちに来い。』相変わらず強引だな。」ケンジは笑いながらケータイを持ったまま部屋を出て、マユミの部屋をノックした。
 「マユ、入っていいか?」
 「いいよー。」
 ケンジがドアを開けると、マユミは着替え中で、下着だけの姿だった。「うわっ!」ケンジはあわててドアを閉めた。「な、何だよ、着替えしてるんなら、そう言えよ。」
 「なに遠慮してるの?あたし平気だよ。ケン兄に見られるの。」マユミが部屋の中から言った。「ねえ、入ってきてよ、ケン兄。」
 「お、お前なあ・・・・。」ケンジは再びドアを開け、顔を赤くして目を伏せながらマユミの部屋に入った。 
 ショートパンツを穿いて、白いピーコートを広げながらマユミは言った。「どうしたの?」
 「ああ、ケニーからメールで、今夜俺たちのバースデーパーティやってくれるって。」
 「ほんとに?すごい!嬉しい!」マユミは飛び跳ねた。
 「じゃあ、行くって返事するけど。」
 「うん。いいよ。もちろん。」
 ケンジはその場でケネスに電話を掛けた。
 「よう、ケニー。」
 「ケンジ、マーユも一緒に来てくれるんやろ?」
 「いいのか、」
 「わいな、この日のために一週間も前から準備しとってん。来えへん、なんて言われようもんなら暴れ出すで。」
 「悪いな。じゃあ、遠慮なくお邪魔する。って、確かおまえんち、最近引っ越したって言ってなかったか?」
 「そやねん。やっと本格的な店が完成したんや。なに、前の店のすぐ向かいやから距離的にはそんなに変わらへん。」
 「何だかすごいのができてたな。そう言えば。工事中、何度か見たけど。」
 「親父はわいを跡継ぎにすること、もう決めてんねん。何代も続くこと想定して設計してあるんやで。」
 「おまえ、やっぱり跡継ぎになる気なんだな。」
 「なるで。任しとき。」ケネスは威勢よく言った。
 「何度も言うけど偉いよな、おまえ。」
 「別に褒められることやないって。ああ、それからな、二人とも今夜はうちに泊まり。」
 「え?」
 「最高のおもてなしを用意してあるんや。な、ええやろ?」
 「たぶん、大丈夫だと思う。マユ一人だと反対されるけど、俺がいっしょなら両親も許してくれるだろ。」
 「いや、逆にアブナイやろ。ほんま、何にもわかってへんな、お前んちの両親。」
 「何がアブナイだ。」
 「ほな、待ってるからな。」
 「ありがとう、ケニー。」
 電話を切ってケンジはマユミに目を向けた。「というわけだから。」
 「うん。」

 「じゃあ、これ、私とお父さんからの誕生日プレゼント。」母親が封筒に入った現金を二人にそれぞれ渡した。「いつものようにこれで好きなもの、買い合ってね。」
 「わかった。よし、行こうか、マユ。」ケンジはマユミに笑顔を向けた。
 「うん、ケン兄。」マユミも元気に言った。
 母親が怪訝な顔で言った。「あんたたち、仲良過ぎじゃない?」
 「何だよ、いいだろ、ケンカするより。」
 「そりゃそうだけど・・・・。何だか手でもつないで歩きそうな勢い・・・・。」
 「何か問題でも?」
 「普通、高校生の兄妹って、もっとこう、表面上よそよそしくするもんじゃないの?」
 「いいじゃない。兄妹いがみ合ったらきつい、っていつも言うの、ママじゃん。」マユミが言った。
 「そりゃそうだけど・・・・。」
 「ああ、それから、」ドアを開けかけたケンジが振り返って言った。「今日はケニーんちに泊まるから。」
 「えっ?」
 「バースデーパーティやってくれるんだって。」マユミが言った。
 「だからマユも俺も。」
 「・・・まあ、ケニーくんのことだから心配ないとは思うけど、もしも、ってこともあるから・・・。」
 「いいじゃない、ママ。」
 「ケンジがいっしょだからいいか。ちゃんとマユミのこと見ててね。」
 「わかってるって。」ケンジが胸張って応えた。「俺がマユの貞操を守る。」
 「大げさよっ!」母親が言った。
 「夕方出かけるから。」
 「ちゃんと行儀良くするのよ。」
 何も知らない母親は、二人を送り出して玄関のドアを閉めた。

 冬枯れの街路樹の下を、ケンジはマユミと並んで歩いていた。「今日は隣の街まで行ってみるか、マユ。」
 「どうして?」
 「この近くだと、誰かに見られるかもしれないじゃないか。」
 「見られたらまずいの?」
 「お前と手もつなげないよ。」
 「そっか、そうだね。」マユミはケンジの腕に自分の腕をからませた。
 「こっ、こらっ!だからここじゃだめだって。」ケンジは赤面してマユミの腕をほどきながらなだめた。「にしても、」
 「何?ケン兄。」
 「お前、寒くないのか?そんな短いショートパンツ穿いて。」
 「ちゃんとタイツ穿いてるから。それに、このコートすっごく暖かいんだよ。」マユミは丈の短い白いピーコートを羽織っていた。ケンジはマユミの下半身に視線を投げてぽつりと言った。「お前の脚・・・、きれいだ。」
 「やだー、ケン兄のエッチ。」

 電車に30分ほど揺られて二人が降りた駅は、顔見知りと会う可能性が少ないとケンジがふんだ街の中心にあった。
 「さて、マユ、何がいい?」
 「あたしね、この日がきたらケン兄にねだろうと思っていたモノがあるんだ。」マユミはケンジの手をとって言った。ケンジもマユミの温かい手を握り返した。
 「へえ、何だ?それ。」
 「おそろいのショーツ。」
 「ええっ?!」
 「しかも、Tバック。」
 「てぃ、Tバック?!」ケンジはまた赤面した。「な、なんでそんな・・・・。」
 「ペアでケン兄と同じ下着を穿いていたいもん。」
 「そ、そんなの売ってるのかなあ・・・。」
 二人はいくつかのデパートの下着売り場を訪ねた。「なかなかないもんだね。」
 「なあ、マユ、違うのにしないか?」
 「いやっ。あたし決めてたんだから。」
 4軒目の売り場にそれはあった。
 「これこれ、こういうのだよ。」マユミははしゃいだ。「メンズとレディスが同梱。どっちもTバック。しかも、」
 ケンジはマユミの背後にこそこそ隠れるようにして言った。「しかも、何だよ。」
 「メンズが白で、レディスが黒。もう理想的じゃん。」
 「な、なんで理想的なんだよ。」
 「だって、ケン兄あたしの白いショーツ穿くの好きでしょ?」
 「こっ、こらっ!声が大きい。」
 「あたしはケン兄の黒いTシャツが大好き。」
 「な、なるほど・・・。」
 「わかってくれた?」
 「わ、わかったから、早くレジに・・・。お、俺、こっちで待ってていいかな?」
 「だめ。」
 「ええっ?」
 「だって、これ、ケン兄のあたしへのプレゼントだよ。ケン兄が買ってくれるの。」
 「そ、そんな・・・・。」
 ケンジはマユミに促されてしぶしぶその箱をレジに持っていった。そしておどおどしながらそのペアの下着セットをそっと差し出した。若い女性店員はケンジの顔を見てにこやかに言った。「プレゼントですか?」
 「は、はい。」
 「あちらの方への?」店員はケンジの背後に離れて立っているマユミに目を向けて言った。
 「そ、そうです。」
 それからその若い店員は事務的にキーをたたいて、ケンジからお金を受け取り、しかるべきおつりを渡すと、最後にまたにっと笑って言った。「どうもありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。」

 「あんな恥ずかしい思いをしたのは生まれて初めてだ・・・。」
 「ありがとうね、ケン兄。」マユミはまたケンジの腕に自分の腕をからませた。
 「よしっ。今度は俺の番。」
 「何がいいの?ケン兄。」
 「俺も決めてるんだ。買って欲しいモノ。」
 「何?何?」
 「行こうぜ、マユ。」
 ケンジはマユミと腕を組み、寄り添って歩いた。
 「あたし、冬って好き。」
 「どうして?」
 「こうして好きな人とくっついて歩けるじゃん。」
 「お前いつでもくっつくだろ。夏だろうと春だろうと。」そう言いながらケンジは、左手でマユミの身体を抱き寄せ、お互いにぴったり身体をくっつけ合って歩いた。
 やがて二人は街の中にある一軒のアクセサリーの店の前に立った。
 「ここだ。」
 「わあ、お洒落な店だね。ケン兄、いつの間に?」
 「結構前に。何となく入ってみて、見つけたんだ。まだあればいいけど・・。」ケンジはそう言ってマユミを連れて店の中に入っていった。
 「えーと・・・・。」ガラスのショーケースの中をのぞき込みながらケンジはゆっくりと歩いた。「確かこのあたりに・・・。あった!」
 「え?どれどれ?」マユミがケンジの指さすガラスの奥に目をやった。
 「これください。」ケンジが威勢よく言った。
 それはペアのペンダントだった。銀の鎖の先に、一つは弓をつがえたケイロン、もう一つは矢、それぞれ小さな白いガラス玉が散りばめられている。よく見ると、所々に少し大きな碧いガラス玉がはめ込んである。
 「きれい・・・。」
 「だろ?」
 「これって、ひょっとして射手座がデザイン?」
 「その通り。この二つを重ねると、ちゃんと射手座の星の並びになるんだ。」
 「すごいすごい!ケン兄って意外とロマンチスト。」
 「何だよ『意外と』って。」
 「ごめんごめん、『思った通り』ロマンチスト。」
 「プレゼントですか?」若い男性店員が二人に話しかけた。
 「はい。そうです。」マユミが屈託なく応えた。
 「お二人、おそろいでつけられるんですね?」
 「はい。そうです。」
 「恋人同士でいらっしゃいますか?」
 「はいっ。そうです。」
 「しばらくお待ち下さいね。」
 「はいっ。」
 店員がその二つのペンダントとマユミに渡されたお金を持って店の奥に消えた。
 「マユー。」
 「なあに?」
 「お前、なんだよ、そのテンション。」
 「だって、めっちゃ嬉しいんだもん。」マユミはその場で飛び跳ねた。
 「『めっちゃ』?お前ケニーの言い回しが移ってるぞ。」
 「ほんとだー。」
 「お待ちどおさまでした。」店員が丁寧にラッピングされたペンダントを持ってやって来た。

二人は店を出た。店の前でケンジは焦ったように包みを開け、ケイロンの矢の方をマユミに手渡した。マユミは満面の笑顔でそれを受け取った。「ケン兄、つけて。」そうしてケンジにそれを渡し直すと後ろを向いた。ケンジはマユミの首に鎖を回した。つけ終わったケンジは同じようにマユミに背を向けた。「俺も。」
 
 通りの角にある喫茶店で、ケンジは椅子を引いてマユミを座らせた後、テーブルの向かいに自分も腰掛けた。
 「こうやって向かい合ってると、」ケンジが穏やかに言った。「本当に恋人同士みたいだな、マユ。」
 「恋人同士じゃん。」
 「恋人同士って言うのか?俺たち。その前に兄妹だろ。」
 「でも、やってることは恋人同士じゃん。」
 「ま、そりゃそうだけど・・・。」ケンジはメニューに目を通しながら言った。「マユ、ごめん、ちょっとプレゼント奮発しすぎちゃって、あんまりお金が残ってないんだ。サンドイッチセットでいいか?」
 「うん。いいよ。」
 結局、二人が母親からもらった小遣いを合わせても、ペアのショーツとペンダントを買ったことで大赤字になっていたのだった。
 「あたしたちも、もう18になったんだね。」
 「そうだな。」
 「ケン兄ってさ、東京の大学に行くんでしょ?」
 「あ、ああ。」
 「そこで、水泳の技術に磨きをかけて、将来はどうするの?」
 「俺、まだあんまりしっかり考えてないんだ。大学へも学校推薦で行くわけだし。」
 「どうしたの?急に寂しそうに・・・・。」
 「だって、お前と離れてしまうんだぞ、これが寂しくなくて何なんだ。」
 「あたし、我慢する。」マユミはケンジの目を見つめた。「ケン兄といつも会えなくても我慢する。だから、」
 「だから?」
 「会った時は、しっかりかわいがってね。」
 「もちろんだ。マユ。俺にはお前しかいない。」
 「うん。わかってる。」
 ケンジとマユミは、それからさして会話もせず、運ばれたサンドイッチを口にした。

 「『18時きっかりに来い。』だってさ。」帰りの電車の中で、ケンジが自分のケータイのディスプレイを見ながら言った。
 「余裕だね。帰って着替えを準備しても十分間に合いそう。」
 「そうだな。」


《2 Chocolate House》

 ケネスの家はケンジの家から歩いて10分ほどの、その町一番の繁華街の中にあった。今までのビルの一画の店から移転して新たに開店したケネスの父親アルバート・シンプソンの店「Simpson's Chocolate House(シンプソンのチョコハウス)」は、10台ほどの客用駐車場を持つ大きな建物に生まれ変わっていた。旧店舗の頃から常連客は多く、女子中高校生や主婦の間では「シンチョコ」と呼ばれ、親しまれていた。
 「おお!すごいな。」ケンジは店の前で驚嘆の声を上げた。
 「わあ!きれい!まるで童話の世界だね。」
 ロッジ風の三角屋根の建物は広いガラス窓で覆われ、辺りが暗くなった今、店内の明るく暖かな灯りがその空間だけファンタジックな雰囲気を醸し出していた。駐車場は満車で、オープンしたての店内には、たくさんの客がいるようだった。店の一画にはいくつかのテーブルが並べられていて、その一つに二人の男女が向かい合ってカップを持ったまま談笑している。そこは前の店にもあった喫茶スペースに違いなかった。
 「テーブルが増えて広くなってるみたいだね。」
 「そうだな。これからまた時々、ここでコーヒー飲みながらチョコレートタイムができるな、マユ。」
 「素敵だね。」
 「見れば見るほど日本離れしてるよな。この店。」
 「周りから全然浮いてるよね。」
 二人は肩を抱き合い、その店を観察していた。
 「あれ?」
 「どうしたの?」
 「雪だ。」
 「ほんとだー。」
 音もなく静かに降り出した雪が、二人の肩や髪に落ちてきた。ケンジとマユミは寄り添ったまましばらく空を見上げて白い息を吐きながらお互いの温もりを感じ合っていた。店の外にディスプレイされたクリスマスのイルミネーションの点滅する光が、二人の顔をちかちかと照らした。
 「マーユ、ケンジ!」店のドアが開いてケネスが外に出てきた。
 「ケニー。」マユミが言った。
 「何そんなとこに突っ立ってんのや。しかもしっかりくっつき合って・・・。風邪ひくで。早よ中へ。」
 「ありがとう。」二人は店内に案内された。
 店内に一歩踏み込んだとたん、チョコレートの甘い香りが二人を包みこんだ。
 「もー、最高に幸せ。」マユミがため息交じりに言った。「一生ここにいたい気分。」
 店内には制服を着た女子中高校生や若いカップル、主婦や子ども連れの客で大層賑わっていた。
 「流行ってるな、ここ。」
 「おかげさんで。ま、今日新装オープンしたばかりやからな。」
 その時、店の奥からブロンドの髪の背の高い外国人が三人に近づいてきた。「いらしゃイ。ケンジ、マユミ。」
 「あ、アルバートさん。」ケンジが恐縮して言った。「今日はどうもありがとうございます。僕たちを招待していただいて。」
 「お店、こんなに忙しい時にごめんなさい。」マユミがぺこりと頭を下げた。
 「気にしないデ。もう用意はできてまース。ケニー、早く連れていってあげなさーイ。」
 「わかった。ほな行こか。」
 ケネスは二人を店の奥に案内した。狭い廊下を進み、突き当たりのドアを開けると、店の裏に出た。そこにはもう一軒の二階建てのやはりロッジ風の家が建っていた。
 「え?」マユミが立ち止まった。
 「お前んち、二軒もあるのか?」
 「いや、この離れはな、わいの部屋なんや。」
 「お前の?部屋?だと?」ケンジが驚いて叫んだ。
 「正確にはわいの部屋はこの二階。一階は家族団らんのスペースや。」
 「すごい・・・お金持ち・・・・。」マユミが呟いた。
 その建物を左に回り込むと、北西に向いた壁に玄関があった。ケネスに促されてそののドアを開けたケンジたちは感嘆の声を上げた。「な!」「すごーい!」
 広々としたスペースにふかふかの絨毯。大きなソファ、広いテーブルにびっしりと広げられた料理。そしておよそ日本の家にあるとは到底思えない暖炉が赤々と燃えている。
 「さ、入った入った。」ケネスが二人の手を引いた。「今夜はあんさんらのバースデーパーティなんやから、遠慮しないな。」
 「すごいな、ほんとに・・・・。」
 「トイレはこの奥、シャワールームはこっちの奥や。」
 「もはや別荘の世界・・・。」
 「ほんで、この階段を上がったとこにわいの部屋があんねん。」
 庭に面した一面ガラス張りの壁の前に、木製の手すり付きの階段がゆるやかな曲線を描いて二階に伸びていた。
 「ほたら二人とも、座り。乾杯しようや。」
 ケネスは三つのグラスにシャンパンを注いだ。
 「え?お酒?」マユミが小さく驚いて言った。
 「お酒やない。アルコール度数はほとんど0に近い、特別製のシャンパンや。」
 「へえ・・・。」
 「二人の18歳の誕生日にかんぱーい!」ケネスが叫んだ。
 しばらく彼らは目の前のごちそうを頬張りながら談笑した。こんなに豪華で満ち足りた誕生日は初めてだ、とマユミは思った。隣に愛する男性、向かいには自分たちの最も信頼できる理解者の男性。自分が生きていること、そしてこの二人に守られているという実感がマユミの心を熱くした。
 「あれ、どうしたんや、マーユ。」
 マユミは滲んだ涙を拭いながら言った。「嬉しいの。あたし、この世でケン兄とケニーの二人に出会えたことが、とっても嬉しいの。」
 「おおげさや、マーユ。」
 コンコン。ドアがノックされた。
 「入ってもええかー?ケネス。」野太い女性の声だった。
 「ええで、お母ちゃん。」
 ドアを開けて入ってきたのは小太りの中年女性。そう、大阪生まれのケネスの母親シヅ子だった。「持って来たで、特製バースデーケーキや!」
 そのケーキがテーブルの中央に据えられた。大きな二段重ね。ホワイトチョコレートとミルクチョコレートが混ざったマーブル模様のクリームででコーティングされ、一段目の周辺にびっしりと赤くて大きな苺。全体にはシュガーパウダーが雪のように振りかけられている。18という数字のろうそくがその頂点に立てられていた。
 「わあ!」マユミが大声を上げた。「もう死んでもいい・・・。」
 「マユミ、チョコレート大好きや言うてたから、ふんだんに使こて作ってあるんやで。」シヅ子が胸を張って言った。「これはおまけや。マユミだけにな。」彼女はウィンクをして背中に隠していた薔薇の花束をマユミに差し出した。
 「ありがとうございます、お母さん。」ケンジが感激して言った。
 「そやけど、マユミ、何度見てもほんまかわいらしいな。うちのケネスのお気に入りやっちゅうのもわかるな。ええシュミしてるで、ケネス。」
 「な、何いうてんねん、お母ちゃん。余計なこと言わんといて。」
 「何やの。あんた言うてたやないの。マーユみたいな女のコと付き合えたら幸せやのになー、って。」
 「あほ!もうええ!早よ出てって!」ケネスは赤くなって叫んだ。
 「わかったわ。そんなやかまし言わんでもええやないの。ほな、ケンジ、マユミ、おめでとうさん。いつまでも仲良うな。」
 シヅ子は言うだけ言って立ち上がり、テーブルを離れドアを開けた。「明日の朝8時まではもう来いへんよってにな。ゆっくりしてってな。」そしてドアを閉めた。
 ケンジとマユミは立ち上がってシヅ子を見送った。
 「ケニー、ホントにありがとう。家族みんなで俺たちの誕生日を祝ってくれて・・・・。」
 「わいも、ケンジとマーユに出会えて、ほんま幸せや。」
 「そう言えばさ、」マユミが言った。「今日ペンダントを買ったアクセサリー屋さんで、占いの紙、もらったんだ。」マユミはバッグをごそごそとあさって、小さな紙を取り出した。
 「占い?」ケネスが聞いた。
 「そ。血液型の。」
 「へえ。」
 「ケネスはAB型だったよね。」
 「そうや。よう覚えてたな。」
 「あのね、AB型、『誠実な気持ちで待てば、必ず願いは叶う。諦めるな。』だって。」
 「わいはいつも誠実やで。大きなお世話やっちゅうねん。」三人は笑った。「で、マーユたちはどやねん。」
 「O型はね、『変化を受け入れ、心を広く持てば、未来は開ける。』」
 「なんやそれ?」
 ケンジが口を開いた。「確かに俺たち、これから周りがいろいろと変化していくんだろうな・・・。」
 「高校卒業も間近やしな、二人とも・・・。」
 三人の間に、少しだけ沈黙が流れた。しかしすぐにマユミが元気よく言った「ケーキ食べよっ!」
 「そやな。ほたら、切り分けるで。」
 「おまえんち、ケーキも作るんだ・・・。」
 「チョコレートケーキ限定やけどな。親父はサークルケーキやらロールケーキやらの一通りのケーキ作る腕、持っとるねん。」
 「さすがだねー。」マユミは心底感心したように言った。
 「でもさ、俺たちの誕生日がこの店の新装開店の日なんて、すごいよな。」
 「素敵な偶然だよね。偶然なんでしょ?ケニー。」
 「ああ、偶然や。十二月一日で切りがええし、クリスマスセールで盛り上がれるしな。」
 「でもさ、そんな超忙しい日に、こうしてもてなしてくれて、本当にありがとう、ケニー。心から感謝するよ。」
 「もうええやんか。さ、食べよやないか。」
 「大きくて食べきれないよー。」
 「一生分はあるな。」ケンジが言った。
 「大げさや、ケンジ。」三人はまた笑った。 

 夜も更けて、戸外では雪が本降りになり始めた。
 ケネスがパジャマのボタンを止めながら言った。「ケンジたちはここで休み。布団、こっちに用意してあるよってにな。二組あるけど、一組で十分やったか?」
 「大きなお世話だ。」
 「暖炉の前で寝るのは最高にええ気持ちやねんで。そやけど、時々薪がはぜて火の粉が飛んでくることがあるよってに、火の前の防火ガラスは動かさんといてな。」
 「わかった。」
 「ほな、わいは二階で寝るから、あとはいつものようによろしくやるんやで。」
 「ほんとに大きなお世話だ。」ケンジが赤くなって言った。
 ケネスが二階に上がってしまうと、ケンジとマユミは暖炉の前に肩を抱き合って座った。
 「ケン兄、あたし、幸せ。」
 「俺もだ、マユ。」
 「ずっとこうしていたい・・・。」
 「マユ・・・・。」
 ケンジはマユミの唇に自分のそれをそっと重ねた。
 「ペンダント、着けてる?」
 「もちろん。」
 「ペアのショーツも?」
 「ああ。シャワーの後、着替えた。」
 「ねえ、見せて、ケン兄の初のTバック姿。」
 「えっ?!」
 「見せてっ!」
 「わ、わかったよ・・・。」
 ケンジは立ち上がり、暖炉の前に立ってパジャマを脱いだ。何度見ても逞しく均整の取れた身体だとマユミは思った。まるでミケランジェロの彫刻のように、無駄のない筋肉がケンジの身体を形作っていた。そして丸くて引き締まったヒップに食い込む白いTバックショーツは、その逞しさをさらに強調し、マユミはため息をついてその恋しい兄の裸体を眺めるのだった。
 「も、もういいだろ。」ケンジは赤くなってまたマユミの横に座り直した。
 「ケン兄・・・・抱いて・・・・。」マユミはケンジの首に手を回した。
 ケンジはマユミの身体をそっと絨毯の上に横たえた。そしてパジャマのボタンを一つずつゆっくりと外しながらキスをし続けた。「ん、んん・・・・。」マユミが小さく呻くのを聞いて、ケンジの身体が熱くなってきた。マユミはブラを着けていなかった。首に下がったペンダントの矢が暖炉の火の光を反射してきらきらと黄金色に輝いた。
 ケンジは白いショーツ姿のままでマユミの乳首に舌を這わせた。首に下がったケイロンの星が同じようにきらきらと輝いた。マユミのパジャマのズボンを脱がせたケンジは、初めて見るマユミの黒いTバックショーツ姿にごくりと唾を飲み込んだ。「マ、マユ・・・・。」
 「なに?」
 「な、なんか今までと違う感じだ・・・・。」
 「あたしも似合う?黒。」
 突然ケンジは息を荒げてマユミの秘部にショーツ越しに鼻と口をこすりつけ始めた。「ああん・・・・。」
 「マユ、マユ、あああ、いい匂いだ・・・・。」
 そしてゆっくりとそのショーツに手をかけ、少しずつ降ろしながら、舌をマユミの谷間に這わせた。「あっ!あああ、ケン兄・・・・。」マユミは身体を仰け反らせて喘ぎ始めた。
 舌と唇でマユミの最も敏感な部分を愛撫していたケンジは、彼女のショーツを脱がせた後、手を伸ばして彼女の乳首を捉えた。「んんっ!」マユミは膝を曲げ、両脚を大きく開いた。ケンジは時間をかけて、彼女の秘部を舐め、吸い、乳首を指で刺激し続けた。
 「ケ、ケン兄、今度はあたしが・・・。」マユミが荒い息のまま促した。ケンジは無言で仰向けになった。そして目を閉じた。マユミはケンジの両脚の間に身体を横たえ、白いショーツ越しにケンジのペニスに舌と唇を這わせ始めた。「う、ううっ・・・・。」ケンジは呻いた。ショーツの膨らみがどんどん大きくなっていく。そして今、ケンジがそうしたように、マユミも彼のショーツをゆっくりと下に降ろし、勢いよく飛び出して跳ね上がったペニスに直に舌を這わせ始めた。「あ、あああ、マ、マユ・・・・。」ケンジも仰け反った。

 二階の部屋に上がったケネスは、目が冴えてしかたなかった。彼は部屋のドアを少しだけ開けて耳を澄ませた。階下からケンジとマユミの激しい息づかいとお互いの名を呼び合う声が聞こえてきた。彼はそっと部屋を出て、階段を数段降りた。そして暖炉の前で愛し合っている二人の姿が見える場所まで来ると腰を下ろし、息をひそめてその光景を見つめた。暖炉の火に照らされ、二人の身体が赤く浮かび上がっている。ケンジの逞しい裸体とマユミのなめらかで美しい裸体がからみ合い、お互いの興奮を高め合っている。ケネスの身体がぐんぐんと熱くなっていく。
 窓の外はもうただ真っ白に雪が降りしきっていた。

 ケンジが仰向けに横たわったまま、マユミはその身体に馬乗りになった。
 「ケン兄、入って、あたしに、入ってきて。」
 「マ、マユ、」
 マユミはケンジのペニスを自分の谷間にあてがい、ゆっくりと身体を落としていった。「あ、あああああん!」
 「ううう・・ううっ!マユっ!」ケンジは脱ぎ捨てられたマユミの黒いTバックショーツを手に取ると、口に咥えた。ケンジの息がさらに荒く、激しくなった。そして彼は両腕を伸ばし、マユミの両乳房をつかんだ。
 「イ、イくよ、ケン兄、あたし、もう・・・。」マユミの腰の動きが激しくなってきた。ケンジもそれにリズムを合わせるように腰を上下させた。「う、ううっ!お、俺も、もうすぐ・・・・。」
 「あああああ、ケ、ケン兄、あたし、あたしっ!」マユミが大声を上げ始めた。
 「マユ、マユっ!」ケンジもショーツを咥えたままで叫ぶ。
 「イく、イっちゃうっ!ケン兄、ケン兄ーっ!」「あああああ、イ、いく、イくーっ!マユっ!マユーっ!」
 びゅるるるっ!「ぐうっ!」ケンジが喉の奥で呻いた。同時にマユミの身体がびくびくと痙攣を始めた。
 びゅくっ!びゅくびゅくっ!びゅるっ!びく・・・・びく・・・・・・・びくん・・・・・・・・・びくん・・・・・・。
 はあっはあっはあはあ!二人は大きく肩で息をしていた。それはなかなか収まらなかった。マユミはケンジの身体に覆い被さった。ケンジは腕を彼女の背に回してきつく抱きしめた。そしてそのまま二人は荒い呼吸が収まるのを待ち続けた。

 ケンジの身体の上に跨がったマユミの姿に、ケネスは神々しささえ感じた。柔らかそうでしなやかな体躯、上気した頬の赤らみ、首筋に光るペンダント、背中と乳房を伝う宝石のような汗、激しい腰の動きとそれに合わせて発せられる愛らしい喘ぎ声・・・・・。ケネスの身体も汗ばむ程に熱くなり、鼓動もこれ以上ないほどに速く打ち続けていた。そして二人の身体がひときわ大きく脈打ったとたん、「くっ!イ、イくっ!」びゅるるっ!びゅくっ!びゅくっ!ケネスは着衣のまま、下着の中で激しく射精を繰り返した。

 雪は音もなく、それでも全てを覆い隠すように空から絶え間なく降り続いていた。


《3 輝く朝》

 静かな朝が訪れた。壁一面のガラス窓からの強烈な光でマユミは目覚めた。横になったままケンジと抱き合い、彼の胸に頬を寄せて眠っていた彼女は、自分の乳房に堅くて温かいものが触れているのに気づいた。
 「朝のいつものケン兄・・・。どんな夢みてるのかなあ・・・。」
 マユミは二人の身体に掛かっていた毛布をめくり、昨夜も幾度となく自分の中に入ってきたそれをそっと両手で包み込んだ。いつも二人で迎える朝と同じようにそれは堅く、大きく天を指していた。マユミはその温かさがとても好きだった。
 ケンジはまだ寝息をたてていた。マユミが愛しそうにそのペニスをさすると、ケンジは「んん・・・」 と小さなうめき声を上げた。そして眠ったまま表情を和らげ、つぶやいた「・・・・マユ・・・。」
 マユミはそっとその先端に唇をあて、ぺろりと舐めた。「ケン兄。咥えちゃうよ。」そう言って彼女はゆっくりとケンジのペニスを咥え込んだ。そして唾液をしたたらせてそれを出し入れし始めた。「ああああ・・・。」ケンジが喘ぎ始めた。「マ・・・ユ・・・・。ん・・・」ケンジは静かに目を開けた。「マユ。」
 マユミは口を離して上目遣いでケンジを見た。「起きた?ケン兄。」
 「な、何してるんだよ・・・。俺、わき上がってきたじゃないか・・・。」
 「あたしの口に出す?それとも繋がりたい?」
 「繋がりたい。」ケンジは即答してマユミの身体を抱きかかえ、キスをした。そしてゆっくりと時間をかけて、唇と舌を味わった。マユミはいつもと同じケンジのその朝の濃厚なキスも大好きだった。
 「チョコレートの匂いが残ってる。」マユミが言った。
 「お前の匂いも俺は大好きだぞ。」ケンジはそう言って、またいつものように舌を首筋からスタートさせて、鎖骨、乳首、腹、へそ、繁みへと移動させ、ゴールへ到達させると、柔らかくクリトリスを舌先で刺激し始めた。「あ、ああああん・・・ケン兄・・・。」マユミは夢見心地で目を閉じ、大きく息をした。
 「いい匂い。マユ・・・。」ケンジは彼女の谷間を舌で押し開き、内側を舐め始めた。「んんっ!あああ・・・。」マユミの中から泉が湧き出し始めた。「ケン兄、あたし、もう・・・・。」
 「入れていい?マユ。」
 「あたしも繋がりたい。ケン兄、きて。」
 新しい太陽の光が二人の身体に差してきた。首に掛かった二人のペンダントがきらきらと輝いた。ケンジはマユミの両脚をゆっくりと開き、ペニスを谷間に触れさせた。「お前の肌が、輝いてる。」ケンジは微笑んだ。マユミも返した。
 「入るよ、マユ。」
 「入れて、ケン兄。早く一つになりたい、あなたと・・・。」
 ケンジは少しずつマユミの中に入っていった。愛しい妹と繋がる瞬間をできるだけ長く楽しむために。
 「ああああ・・・いい、ケン兄、気持ちいい。ずっと奥まできて。」
 ケンジはマユミに入り始めてから、さらにそれを大きくしながら根本まで谷間に埋め込んだ。マユミの中は温かく、いつもと同じように満ち足りた気分でケンジはため息をついた。ケンジのペニスは極太だったが、マユミは深く埋め込まれたそれをそっと柔らかく広く包み込んでいる。ケンジがまたマユミの唇と舌を味わい始めると、ケンジのペニスの根本が強く締め付けられた。「んんっ・・・・。」彼はその時、マユミと自分が一つになって離れなくなったことを実感し、言葉では言い表せないほどの幸福感を感じるのだった。
 起き抜けのマユミの愛撫によってケンジは頂上に近いところにいた。加えてマユミが締め付けたり緩めたりを繰り返すたびに、少しずつそこに登り始めていた。ケンジが口を離すと、マユミは大きく喘ぎ始めた。「ああ・・ケン兄、あたし、あたし・・・。」
 「どうしたんだ?マユ。」
 「イ、イきそう・・・・」
 「お、俺まだ、動いてないよ。」
 「いい、そ、そのままでいい。動かなくても。ああああ・・・・だめ、も、もうイっちゃう・・・。」
 ケンジは再びマユミの口を自分のそれで塞ぎ、背中に腕を回して力を込めた。「んんんんんーっ!」
 ケンジが再び口を離したとき、「イ、イく!イくよ!ケン兄!あたし、イくっ!」がくがくとマユミの身体が震え始めた。そして突然ケンジのペニス全体がぎゅっと締め付けられた。「ああっ!マユっ!」ケンジの腰から腹部にかけて強いしびれが走った。そして次の瞬間。「で、出る!出るっ!」びゅるるっ!「ああああああっ!」びゅるっ!びゅるるっ!「ケン兄ーっ!」びゅくっ!びゅくっ!びゅくっ!「んっ、んっ、んっ!」びゅくびゅくびゅくっ・・・びゅくっ・・・・びゅく・・・・・・びくっ・・・・・びくびく・・・・・。
 「うあああああ・・・・。」ケンジのペニスはマユミに強く拘束されたままだった。そして最後の脈動までそれは続いた。 
 はあはあはあはあ・・・・マユミもケンジも、荒い息をなかなか収めることができないでいた。二人はいつまでも繋がったまま、まぶしい朝の光の中でじっと互いの鼓動を聞き合っていた。

 ケンジのケータイが鳴った。
 「わいや。二人とも起きたか?」
 「ああ。起きてる。」
 「下に降りてもええか?」
 「ごめんな、気を遣わせちゃって。大丈夫。降りてこいよ。」
 「わかった。ほな。」
 すぐにケネスは階下に降りてきた。ケンジとマユミは並んで階段の下に立ち、広い窓から外を眺めていた。「おはようさん。」
 「おはよう。ケニー。」マユミが言った。
 「ゆっくり眠れたか?」
 「ああ。ぐっすり眠れたよ。」
 「ほんまに?」
 「何だよ。」
 「ケンジ、お前マーユを一晩中眠らせんかったんとちゃうやろな。」
 「一晩中はさすがに・・・・。」
 「ちょっとこっち来てくれへんか、ケンジ。」ケネスはケンジの手をとり、入り口のドアのところまで引っ張っていった。「な、何だよ。」
 ケネスは小声で言った。「昨夜わいな、お前らの営み、盗み見してもうた。」
 「えっ?!」
 「ごめん。」ケネスは両手を合わせてケンジを拝んだ。「悪気はなかってんで。そやけど、身体が勝手に、なんちゅうか、こう・・・。」
 「そうか・・・。こっちこそごめんな。なりふり構わずやってたから、お前を刺激しちゃったんだろ?」
 「なりふり構わず・・・まさにそんな感じやったな・・・・。そやけど、わい、くっつき合ったお前ら見るの、二回目やしな。」
 「そうか、夏の無人島が最初だったな。」
 「そやったな、それ入れたら三回目やな。」
 「え?何で三回目なんだよ。」
 「無人島で一回、その夜、民宿でおまえらまた繋がっとったやんか。しかもその時は連続で五回も。」
 そこにマユミがやって来た。「ねえねえ、何こそこそ話してるの?」
 「え?い、いや、何でもない。」
 「隠し事なし。気になるじゃん。」
 ケネスはケンジをちらりと見た。「いいよ。」ケンジが言った。
 「あ、あのな、マーユ、気い悪くせんといてな。あのな、わいな、ふ、二人の、その、なんや、あ、あれを・・・」
 「見てくれてたんでしょ?」マユミが笑顔で言った。
 「えっ?!」ケンジとケネスが同時に叫んだ。
 「知ってたよ。あたし。ケニーが上から見てたの。」
 「ほ、ほんまか?」
 「うん。嬉しかったよ。ケン兄と愛し合うのをケニーに見られてて。夏に民宿で見られてたってわかった時も、とっても嬉しかったしね。」
 「ううむ・・・。」
 「それに、見てる前でやってもらいたい、って言ったのケニーじゃん。」
 「そ、そうやったかいな・・・。」
 その時、ドアの向こうで声がした。
 「朝ご飯持ってきたったでー。」シヅ子の声だった。ケネスはドアを開けた。
 「おはようさん。二人ともええ朝、迎えられたか?」シヅ子は持ってきたトレイをケネスに預けながら笑顔でそう言った。
 「そりゃもう、最高の朝やったみたいやで。」ケネスが言ってケンジにウィンクした。
 「え?!も、もしかしてさっきのも見てたのか?お前。」ケンジが小声で言った。横からマユミがケンジに囁いた。「あたし、知ってたよ。」ケンジは真っ赤になった。
 「ほな、コーヒー取りに来。」シヅ子が言った。
 「わかった、わいが取りに行くわ。」ケネスがドアから出て母親のシヅ子といっしょに本宅に消えた。
 トーストとスクランブルエッグ、それに生野菜が載ったトレイをテーブルに置いて、マユミとケンジは窓際に立った。
 「まぶしいね。」
 「そうだな。辺り一面銀色に輝いてる。」ケンジはマユミの肩にそっと手を乗せた。
 「ケン兄。」
 「何だ?」
 「言い忘れてた。」
 「何を?」
 「お誕生日、おめでとう。」
 ケンジは破顔一笑した。
 「マユも。おめでとう。」
 ケンジはマユミの肩に置いた手を彼女の脇に回して、抱き寄せた。
 「コーヒー持ってきたでー。」ドアの外でケネスの声がした。「今、開ける。」ケンジはマユミから腕を離してドアに急いだ。そしてケネスから3つのカップが乗せられたトレイを受け取った。ケネスは中に入ってドアを閉めた。
 「マーユ、朝日の中で輝いとるわ。」
 ケンジも振り返ってマユミを見た。マユミは二人を見て微笑んでいた。
 「ほんとだ。」
 「きれいやな・・・・。」

 背後からのきらめく、まぶしい光を浴びて、マユミの髪に天使のような黄金色の輪ができていた。









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