Simpson 作

『Twin's Story 3 "Mint Chocolate Time"』

《1 海》

 海棠家の夕餉。夕方だというのに外ではまだやかましく蝉が鳴いている。
 「ねえ、今度の休みに海に行っていい?」マユミが両親に向かって言った。横でケンジは黙ってトマトに箸を伸ばした。
 「誰と?」母親が聞き返した。
 「ケニー。」
 「ケニーくん?あんたら付き合ってんの?」
 「別にそういう訳じゃないけど。」
 「お父さん、どう思う?」母親は豆腐に醤油をかけていた父親に話を振った。
 「付き合ってもいないオトコと二人で海。父親としては賛成しかねるが・・・。」
 「じゃああたし、ケニーとつき合うことにする。それならいいんでしょ?」
 「いや、そういうことじゃなくてだな、」
 「大丈夫だよ、ケニーなら。」
父親は醤油差しを手に持ったまま言った。「つき合っていようといまいと、お前の身に何かあったらどうするんだ。お前に手を出さないという確証がない以上、うんとは言えんな。」父親は少し考えて、醤油差しをテーブルに戻しながら言った。「そうだ、ケンジ、お前もいっしょに行け。」
 「そうね、それがいいわ。」母親も言った。
 「お前がついていれば、ケニーも劣情の波に呑み込まれることはないだろう。」
 「いや、ケニーはそんなやつじゃないから。」ケンジが言った。
 「もしも、ってこともあるじゃない。ね、ケンジ、いっしょに行ってあげて。」
 「えー、ケン兄もいっしょなのー。」マユミは残念そうに言った。
 「ま、しかたないな。めんどくさいけど見張っといてやるか、マユを。」ケンジはコップの水を飲み干した。
 「3人でいってらっしゃい、マユミ。ケンジお兄ちゃんが一緒なら安心だわ。」

 夕食後、二人はケンジの部屋でチョコレートタイムを愉しんでいた。
 「大成功。」マユミが嬉しそうに言った。
 「まったくうちの親は単純だ。」
 「悩んだ甲斐があったね。ケン兄と二人で海に行く、なんて言えないもんね。」
 「確かに。高校生の兄妹が二人で海、というシチュエーションは、ちょっと理解しづらいだろうからな。」
 チョコレートを口に入れたマユミは目を閉じて小さく深呼吸した。
 「このチョコ、何だかすーっとする。」
 「ミント入りなんだ。ケニーの父ちゃんの手作り。まだ試供品段階なんだと。」
 「ケニーにもらったんだ。」
 「そう。」ケンジもその爽やかな味と香りのチョコレートをつまんだ。「夏をイメージしたチョコなんだってさ。早ければ来週にでも製品化されるってケニー、言ってた。」
 「確かに爽やかで、夏って感じがするね。」

 海へ向かう電車の中。
 「何でわいが悪モンにならなあかんの?」
 「悪い悪い。ああでも言わなきゃうちの親が賛成してくれなくて。」
 「わいがマーユを襲わんように、ケンジがついて来る、ってことなんやな?」
 「そうだ。」
 「ほんま、何もわかってへんな、お前んとこの両親。」
 「俺がずっとお前のそばにいて、オオカミケニーから守ってやるからな、マユ。」
 「嬉しい、ケン兄。」
 「何言うてんねん。劣情の波に呑み込まれるんは、ケンジやないか。ほんまに・・・・。」

 よく晴れていた。ビーチにはたくさんの水着姿の人がいた。海の家、スイカ売り、アイスクリームや焼きトウモロコシの屋台。まさに夏真っ盛りの海辺の風景だった。
 「どうだ、ケニー、お前好みのオトコやオンナがいるか?」
 「最近の水着はセクシーさが足りんな。例えば、」ケネスは一人の20代ぐらいの女性に視線を投げた。「あの姉さんなんか、スタイル抜群やねんけど、せっかくのビキニにパレオ巻いてはる。今しか人に見せられへんのに、もったいないと思えへんか?ケンジ。」
 「確かにな。」
 「それから、あの兄さん。」ケネスは別の場所で彼女とおぼしき女性といっしょに歩いている若い男に目を移した。「わい好みの筋肉質のカラダやねんけど、膝までの丈のだぶだぶのサーフパンツやろ?ほんまもったいないわ。」
 「だけど、今のメンズの水着はみんなあんなもんだぜ。お前みたいなぎりぎりのローライズ競パン穿いているやつはなかなかいない。」
 「カナダやアメリカのオトコはあんなもん穿けへんねん。夏の海っちゅうたら、もう露出してなんぼや。体型に関係なくオトコもオンナもちっちゃい水着着る者の方が圧倒的に多いで。」
 「そうなんだ。でもな、見る方としては、体型にも気遣って欲しいものがあるな。」
 「見る方としてはな。」ケネスは笑った。「そういうケンジもなかなかきわどい水着やんか。日本人離れしてるで。」
 ケネスもケンジも極端に丈の短いピッタリしたビキニの水着を穿いている。
 「わいはともかく、ケンジもそういうシュミがあんのんか?」
 「動きやすいから好きなのと、荷物が少なくて済むのと、」
 「何やの、その理由。」
 「一番の理由は、マユが選んでくれたからだ。」
 「へえ、マーユは好きなオトコにそういうパンツ穿いてもらいたいんやな。」
 「そうらしいぞ。」
 「ま、ケンジほどのガタイなら、そういうパンツの方が似合うな、確かに。わいもちょっとムラムラするわ。」
 「ケニー、おまえここで俺を押し倒すんじゃないぞ。」
 「隙を見せたらアブナイで。」
 ケンジとケネスは笑い合った。
 「楽しそうね。」二人の背後で声がした。ケンジとケネスはいっしょに振り向いた。
 「マユっ!」ケンジが大声を上げた。
 ヒュッ!ケネスが短く口笛を吹いた。「マーユ!!ええな、ええな、ええな、その水着、イけてるわ。」
 マユミが水着に着替えて二人の所にやってきたのだった。「あらためて見ると、マーユ、巨乳やな。あ、すんまへん、下品な言葉使こてしもた。」
 「いいの、ケニー。ケン兄もおっぱい大きい方が好きなんだよ。」
 「オトコはみんなそんなもんや。それにそのちっちゃなビキニ!!最高やな、な、ケンジ、ん?どないしたん、ケンジ。」
 「い、いや、ちょっと鼻血が・・・・・。」ケンジはティッシュを丸めて鼻に詰め込んでいる最中だった。
 「はあ?!」ケネスは思い切り呆れた。「お、お前マーユの裸、いやっちゅうほど見てきたんやろ?なんで今さら興奮せなあかんの?」
 「こ、こんな明るいところで、しかもこんなぎりぎりの水着姿見せられたんじゃ、誰だって興奮するに決まってるだろ!」顔を真っ赤にしたケンジはムキになって反論した。
 「うれしい。まだケン兄を興奮させられるカラダなんだ、あたし。」

 マユミは一人で焼きトウモロコシと飲み物を買いに行った。
 「ところで、」ケンジが言った。「ケニー、おまえのそのでかい荷物は何なんだ?」
 「これか?これはお前らのためにわいがわざわざ持ってきてやったボートや。」
 「ボート?」
 「大人二人乗りのゴムボートや。」
 「なんでそれが俺たちのためなんだよ。」
 「ケンジ、お前マーユの水着姿見てるだけでは満足せえへんやろ?そのうちきっとお前らは我慢できんようになるはずや。」
 「そ、そんなこと・・・・。」
 「いいや、間違いなく、なる。そやけど、人目があったら思う存分愛し合うことはできへん。そこでこのゴムボートが必要や、ってことやんか、鈍いやっちゃな。」
 「ケニー・・・・。お前本当に俺たちのことを思ってくれてるんだな。」
 「思とる。それに加えてケンジ、お前の習性もよー解っとる。」
 「習性って・・・。」
 「納得したら手伝うてや。」
 ケネスは足踏み空気ポンプでそのゴムボートに空気を入れ始めた。
 「こ、これは思った以上にハードな作業・・・」ケンジは汗だくになりながらその作業を続けた。「おい、ケニー、交代してくれ。」「よっしゃ。」
 そうして二人は小一時間かかってようやくその二人乗りゴムボートを完成させたのだった。ケネスはへとへとになって砂浜に大の字になった。「あ~しんど。」
 「お疲れさま、ケニー。はい、トウモロコシ食べて。」
 「おおきに、ありがとう。」ケネスはマユミから焼きトウモロコシを受け取ると貪るように頬張った。
 「ケン兄も、はい。」
 「ありがとう、マユ。」


《2 ボートで》

 「さてと、」食べ終わったケンジが立ち上がった。「それじゃあケニー、俺たち、ボートで沖に出るから。」
 「おお、もうムラムラきたんか。ケンジ。」
 「ばかっ!」
 「ほな、気いつけて。」
 ケンジはマユミをボートに乗せ、海に押し出した。そして自分もボートに乗り込み、マユミと向かい合って座った。そして海の中にいる人混みをかき分けながら、小さなオールを使ってボートを沖へと進ませた。
 「ケン兄、気持ちいいね。」
 「そうだな。」
 二人の素肌を爽やかな風がまつわりつきながら吹きすぎた。

 かなり沖に出た。もう浜にいる人たちも遠くに小さく見えているだけだった。
 「マユ、横になりなよ。」
 「え~。ケン兄ったら・・・・。もう我慢できないの?」
 「い、いや、そうじゃなくて、この炎天下じゃ、お前、その肌が焼けてしまうよ。俺が紫外線から守ってやるよ。」
 マユミはケンジに言われたとおりにボートに仰向けになった。ケンジはマユミに覆い被さるようにその逞しい身体を重ねた。「ケン兄。」マユミは思わずケンジの背中に腕を回した。「マ、マユ、もう少し待ってくれよ・・・。」
 ケンジの心臓は次第にその鼓動を速くし始めた。重なったケンジの身体からそのことを察知したマユミは言った。「ねえねえ、ケン兄、下になってよ。」
 「え?」
 「いいから。」
 今度はケンジがボートの底に仰向けになった。マユミはいきなりケンジの小さな水着を下に降ろした。「あっ!」
 「じっとしててね、ケン兄。」
 しかしケンジは慌てて自分の股間を両手で押さえた。
 「もう!なんで邪魔するの?」
 「だ、だって、は、恥ずかしいじゃないか。」
 「だから、なんで恥ずかしいんだよ。ケン兄、夜にいっぱいもっと恥ずかしいことしてるじゃん。」
 「夜はいいんだ。でも、こ、こんなに眩しい光の中で見られるのって、やっぱり・・・・。」
 「いいから手をどかすのっ!」マユミはケンジの手を振りほどいた。ケンジのペニスはすでに大きく怒張し、脈打っている。ケンジは振りほどかれた両手で自分の顔を覆って、情けない声を上げた。「マユー。」
 「ケン兄ったら女のコみたい。」くすっと笑った後、マユミはケンジのペニスをゆっくりと口に咥え込んだ。
 「ううっ!」
 しばらく舌で愛撫を続けた後、マユミは口を離して言った。「だいぶ上手になったでしょ?」
 ケンジは手で顔を隠したまま無言で大きく頷いた。
 「イってもいいからね、あたしの口に。」
 「い、いや、だめだ、それは・・・。」とっさにケンジが顔から手を離し、首を持ち上げて主張した。「イくときは外で、うああっ!」マユミは例によってそんなケンジの言葉を無視して彼の腰に手を回すと、再びペニスを咥え込み、大きく出し入れし始めた。
 「あああああ、マ、マユ・・・・・。」
 マユミの唾液と自分で分泌する液で濡れきったペニスはさらに大きさを増し、ビクビクと脈動し始めた。
 「だ、だめだっ!も、もうイく、イくっ!」ケンジは大きく身体を仰け反らせた。「ぐうっ!」その拍子にボートが大きく傾き、マユミの口がケンジから外れてしまった。「きゃっ!」そして次の瞬間、いきり立ったケンジのペニスから勢いよく精液が飛び出した。
 びゅびゅっ!
 それはケンジの頭上高く放たれ、弧を描いて海に落ちていった。
 どびゅっ!どびゅっ!
 大きく放物線を描いて、ケンジの精液が幾筋も海に向かって放出された。
 「すごい!ケン兄、すごい勢いだね。」ケンジの足下にちょこんと正座したマユミが感嘆の声で言った。
 勢いが弱まった残りの精液は、ケンジの胸に、それでも大量にまつわりついた。ケンジは大きく肩で息をしていた。
 「こんな勢いであたしの中に発射されてたんだー。すごいすごい!」
 その時、ケンジの頭の方向から声がした。「ほんま、溜まってたみたいやな、ケンジ。」
 「ケニー!」マユミが叫んだ。ケンジも起き上がって振り向いた。ケネスは二人の乗ったボートの縁に手を掛けた。「えらい勢いで飛んできたで、ケンジ。」
 「お、お前、ここで何やってんだ?」
 「一人でのんびり遠泳や。あの島をぐるっと回って帰ってこう、思てる。」
 ケネスが指さす方向に小さな島があった。木が生い茂り、どうやら無人島のようだった。
 「ほな、ごゆっくり。」ケネスは再び海に入り、ゆっくりした平泳ぎでその島を目指して離れていった。
 豪快に晴れ上がっていた空に、雲が発生し始めた。そしてしばらくすると、ボートの二人の紫外線を大きな雲の塊が遮った。
 「助かった。これでマユの肌が守られる。」
 「気にしなくてもいいのに・・・。」
 二人は横になって抱き合った。ケンジは水着を穿き直した。「ようし、マユ、こんどは俺の番だぞ。」
 ケンジはマユミにキスをした。そして豊かなバストを覆っていたブラに手を掛け、下から指を差し入れてマユミの乳首をつまんだ。「ああっ・・・。」マユミは身をよじらせた。
 そのままブラをずり上げ、二つの乳房を露わにしたケンジは、片方ずつその柔らかな膨らみを口に含んで愛撫した。「ああん・・・、ケン兄・・。」
 やがてケンジは左手をマユミのビキニの中に差し入れ、大切な谷間に指をゆっくりと挿入した。「んっ!」マユミが固く目を閉じて身体をびくんと震わせた。ケンジは指で谷間を刺激しながらマユミの白いビキニをゆっくりと脱がせた。そして人差し指と中指をそろえてマユミの正面からそれまでよりも深く、中に入り込ませ、二つの指先を細かく動かしながら、内壁をさすり続けた。
 「ああああ!ケン兄、ケン兄っ!」マユミは身をよじらせながら喘いだ。ビキニが脚にとどまり、ぴったりと合わされた両太股はいつしかぬるぬるになり、ケンジの指の動きを助けた。
 ケンジは右手で乳首をつまんで刺激し、左手の動きを加速させた。「ああああ!ケン兄!ケン兄!あたし、あたしっ!イっちゃう・・・。」
 マユミの身体が痙攣し始めた。ケンジはとっさに唇でマユミの口を塞いだ。「んんっ!」ビクン!マユミの身体がひときわ大きく脈打った。ケンジに口を塞がれたまま、苦しそうにマユミは呻き続けた。「んんんーっ!んっ、んっ!」 はあっ!ケンジがマユミから口を離したとたん、マユミは大きなため息をついた。
 「どうだった?マユ。」
 「す、すごい。ケン兄の指でイかせるテクニック、ますますグレードアップしてるよ・・・。」
 マユミはまだ大きく肩で息をしている。
 「俺もいろいろ研究してるんだ。」
 「AVビデオで?」
 「ま、まあな。」
 マユミは水着を穿き直した。そして二人はまた抱き合った。抱き合ったままいつしかケンジとマユミはボートの上でうとうとと眠り始めた。


《3 無人島》

 「ん?」最初に目を覚ましたのはケンジだった。
 「どうしたの?」目を擦りながらマユミも起き上がった。「あれ、島に着いてる。」
 「よし、上陸だ、マユ。」
 「うん。」
 その小さな島はこんもりとした森でできていた。周りは黒い岩場があったり砂浜があったりした。砂浜からは元いたビーチが見える。
 「それほどビーチからは遠くないみたいだ。」
 マユミが言った。「ケン兄、あたし喉渇いた。」
 「俺もだ。なんか持ってくるんだったなあ、飲み物・・・。」ケンジは少し考えた後言った。「よし、探検だ。森に入ってみよう。マユはここにいな。」
 「いや。いっしょに行く。」
 「お前の嫌いな蛇やらトカゲやらがいるぞ、きっと。」
 「あたしの好きなケン兄といっしょだもん。平気だよ。」
 「マユ・・・」にっこり笑うマユミを見てきゅんとなったケンジは、思わず彼女の身体を抱きしめた。「マユっ!」

 森の中は足場が悪かった。ケンジはマユミの手をとって慎重に先を歩いた。島の中心部に行くにつれて、少し険しい岩場になっていた。「ん?」ケンジは立ち止まった。
 「どうしたの?」
 「水の音がする。」
 「本当?」
 「こっちだ、マユ。」
 ケンジはマユミの手を引いて、その音のする方に足を進めた。

 「ううむ・・・・。」見上げる程の高さに小さな小さな滝があった。滝というより、ちょろちょろと落ちてくる水の一筋と言った方がよかった。「マユはここにいな。」
 ケンジは注意深くその滝を目指して、岩場を登り始めた。何とかたどり着くと、その水を口で受け止めた。
 「どう?ケン兄。飲めそう?」
 「大丈夫そうだ。というか、なかなかうまい。でも・・・・。」
 「でも?」
 「この水をお前に飲ませてやりたいけど・・・・。」
 「あたしそんなとこまで登れないよ。」
 「そうなんだよな。どうしたもんかな、何かコップ代わりになるもの、ないかな・・・。」ケンジは辺りを見回した。
 「ケン兄、」
 「ん?」
 「あたしに口移しで飲ませてよ。」
 「ええっ!」ケンジは赤くなった。「くっ、くっ、口移しっ?!」
 「もう我慢できないー、早くー、ケン兄ー、水飲ませてよー。」マユミは甘えた声を出して、わざとだだをこねて見せた。
 「よしっ!」ケンジは一度水を口に含み、ガラガラガラ・・・ペッ! うがいをした。そしてもう一度水を口に含み、グジュグジュグジュッ・・・、ペッ!うがいをした。
 「・・・・ケン兄、何してんの?」
 「い、いや、これがエチケットってもんだろ。」ケンジは赤くなったまま言った。マユミはそんなケンジをひときわ愛おしく感じた。
 「よしっ!いくぞ、マユっ。」
 「いや、そんなに気合い入れなくてもいいから・・・。」
 ケンジはほっぺたを膨らませられるだけ膨らませて、水を口に含んだ。そして急いで岩場を降りた。
 「ん、ん、ん、」ケンジはマユミの肩に手を置いた。マユミがツバメの雛のように口を突き出し、大きく開いた。ケンジは唇をすぼめて、マユミの口に中の水を注ぎ込んだ。マユミは喉を鳴らしてその水を飲んだ。口から溢れた水を手で拭って、マユミは微笑みながら言った。「お代わり。」
 「よしっ!」ケンジは再び岩場を昇り、水を口にいっぱいに含んで、ほっぺたをリスのように膨らませて降りてきた。「ん、ん、」そして今度はマユミの両頬に手をあてがって唇をすぼめ、水を彼女の口の中に注ぎ込んだ。
 マユミは喉を鳴らしてその水を味わった。「ありがとう、ケン兄。ほんとにとっても美味しい水だね。」
 マユミがそう言い終わった瞬間、ケンジはいきなりまた自分の口で彼女のそれを塞いだ。「んんんっ!」マユミは呻いた。ケンジは一生懸命になってマユミの唇や舌を吸い、背中に回した腕で強く抱きしめながら自分の舌を彼女の口の中に差し込んだ。
 やっと口を離したケンジが言った。「マ、マユ・・・・、お、俺・・・・。」ケンジがもじもじし始めた。両手で股間を押さえてますます赤くなっている。
 「ふふっ、ケン兄口移しで興奮したんだね。」マユミはケンジの手を取った。小さな水着の中でケンジのペニスが大きくなっていることが一目でわかった。

 二人はビーチの見える浜に戻り、抱き合って再び熱いキスシーンを繰り広げた。マユミの身体も次第に熱くなってきた。ケンジはマユミの唇を舐め、その舌を口の中に差し込んだ。マユミはそのケンジの舌を吸い込み、自分の舌を絡ませた。
 空がにわかにかき曇り、ぽつぽつと大きな雨粒が落ち始めた。ゴロゴロと雷鳴も轟き始めた。
 「あ・・・。」
 「雨だ。」
 ザザーッ!すぐにそれは土砂降りになった。辺りは激しい水しぶきで白く煙った。
 「気持ちいいね、ケン兄。」
 「そうだな。マユ、このまま・・・。」
 「うん。ケン兄、横になって。」マユミがケンジの耳元で囁いた。ケンジは黙って頷いた。
 砂に仰向けになったケンジにマユミは激しい雨に打たれながら覆い被さった。そしてまた二人は貪るようにキスをした。マユミは自分でブラを取り去り、自分の身体を滑らせながらケンジの水着に唇を這わせた。「あ・・・。」そしてゆっくりとその小さなビキニを脱がせた。中で窮屈そうに収まっていた彼のペニスが一気に解放され、跳ね上がった。マユミは静かにそれを口に含んだ。「ううっ・・・・。マ、マユ、お、俺にも・・・・。」
 ケンジの意図を察したマユミは身体を回転させ、ペニスを咥えたままケンジの顔に自分の秘部をそっとあてがった。ケンジはマユミのビキニを脱がせ、秘部に舌を這わせた。「あ、ああっ・・・。」マユミがペニスから口を離し小さく叫んだ。ケンジの舌先が彼女のクリトリスと谷間を行き来する度に、マユミは身体を震わせて喘いだ。そしてまたケンジのペニスを咥えた。「むぐ・・・。」そして彼女は頭を前後に動かし、ケンジのペニスを自分の口に出し入れした。「ん、んんっ!」ケンジは豊かに潤ったマユミの秘部を舌と唇で刺激しながら呻いた。
 ピカッ!稲妻が空に走り、次の瞬間、耳をつんざくばかりの雷鳴が鳴り響いた。ケンジはマユミの身体をきつく抱きしめた。ずぶ濡れになりながら二人はお互いのものを口を使って愛おしみ、身体が熱くなるのに合わせてその動きを次第に速く、激しくし始めた。
 「んんんーっ!」ケンジが呻く。「む・・んんっ、んんんーっ!」マユミも呻く。ザアザアと降りしきる雨・・・・。雷の音・・・・。次の瞬間、二人の身体が大きくビクンと跳ね上がった。
 びゅるるっ!びゅくっ!びゅくっ!ケンジが勢いよく射精を始めた。マユミは今度は口を離さなかった。「んんんんんーっ!んっ!んっ!」ケンジは呻き続ける。口の中にたたきつけられるように放出され続けるケンジの熱い精を、マユミは目を閉じ、味わった。そして射精の反射が収まると、彼女は口を離してそれを一気に呑み込んだ。
 二人の身体を容赦なく雨が打ち付け続けた。自分の身体から身を離したマユミをケンジは強く抱きしめた。そうして彼女の口を自らの口で塞ぎ、唇、舌を舐めた。
 口を離したケンジは、大声で言った。「マユ、マユ、ごめん、ごめんマユ、俺、が、我慢できずに・・・。」
 「やっとケン兄の、飲めた。あたし嬉しい。」
 「こんなつもりじゃなかったんだ、マユ、マユ、ごめん。」
 「もう、いいかげんにしてよ、ケン兄。あたしそんなにヤワじゃないからね。」
 「マユ・・・。」
 「もうそろそろいいじゃん。これもエッチの発展形だよ。」
 「でも、すっごい罪悪感がある。」
 「だから平気だってば。」
 「もうしないから・・・。」
 「あたしがお願いしたら、またちょうだい。」
 「お、お願い・・・・するのか?」
 「ケン兄が口移しで飲ませてくれる水と同じ。乾いたらまたお願いするから。」
 「マユー。」またケンジが情けない声を出した。

 ビーチを出て、島の反対側まで泳いできた時、ケネスは頭に雨粒が落ちてきたことに気づいた。彼は裏側から島に上陸した。そしてそこで雨が止むのを待つことにした。間もなく雨は本降りになった。その雨の中ケネスは波打ち際を歩いて、ビーチの見える場所を目指した。
 しばらく歩くと遠くにビーチが見えてきた。そして島に流れ着いたケンジとマユミが乗ってきたボートが目に入った。雨に煙ったそのボートの手前で、男女が身体を重ね合っている姿が見えた。彼らはお互いの秘部を口で愛撫し合っていた。ケネスは立ち止まり、その光景を見つめた。ケネスの股間は熱くなり、水着の膨らみを次第に大きくした。彼は我慢できず自分の水着を膝まで降ろすと、右手で大きく怒張したペニスをつかんで扱き始めた。
 やがて二人の身体が同時にビクン、と脈打ち、大きな呻き声が聞こえた。「イくっ!」ケネスが小さく呻いた。
 びゅるるっ!びゅくっ、びゅくっ!びゅくびゅくびゅく・・・・。ケネスの精液は勢いよく飛び、浜の砂に吸い込まれた。
 身体を離したマユミの身体をケンジが強く抱きしめ、荒々しいほどのキスを浴びせ始めた。
 「マーユの口の中に出したんやな・・・・。」
 ケネスは水着を穿き直し、その場に腰を下ろして二人の事後の慈しみ合いを眺め続けた。

 さっきまでの土砂降りが嘘のように、空から雲が追い払われた。眩しい夏の太陽の光が、雨に濡れた森をきらきらと輝かせた。
 ケンジとマユミは髪まで濡れそぼった身体を寄り添わせて波打ち際に座っていた。穏やかな波が二人の脚を優しく撫でている。
 「きれい・・・。」マユミが言った。
 「あっちの海岸からは見えなかっただろうなあ・・・。」
 通り過ぎた雨が、ビーチの方角の空に大きく鮮やかな虹を描いていた。
 「ケン兄と二人だけでこんなものが見られるなんて思ってもいなかった。」
 「そうだな。」
 「何だか日本じゃないみたい。」
 ケンジはマユミの肩に手を置いた「いつき行きたいよな、フロリダとかハワイとか、グアムとか・・・。」
 「行きたい。でも、あたし英語だめだよ、ケン兄もでしょ?」
 「それはわいに任せとき。」不意に背後から声がした。二人はびっくしりて振り向いた。
 「ケニー!」
 「お前、なんでこんなところに?」
 「結構前からいたで。雨が降り出したんで、上陸して雨宿りしとった。」
 「そうか。雨宿りな。」ケンジは微笑んだ。「えっ?!」急に表情を変えたケンジが言った。「ま、まさかケニー、お前さっきの、俺たちの、その、あ、あれを、見てた・・・とか。」
 「ああ。見さしてもろたで。ええもんやなあ、愛し合う二人の姿は実に美しい。」
 「そ・・・・。」ケンジは真っ赤になった。
 「見てたんだー、ケニー。興奮した?」
 「そりゃもう。わいも我慢できずにイってしもた。」
 「一声かけてくれれば・・・・。」ケンジがぽつりと言った。
 「あほ。あの状況で声かけるほど、わい無粋やないで。そやけど、」
 「何だよ。」
 「わいに見られてるってわかってエッチしたら、もっと燃えたかもしれへんで?」
 「そうかも。」マユミが言った。
 「えっ?!マユ、見られるの平気なのか?」
 「何だか、違う意味で燃え上がりそう。きっとケン兄もそう感じるよ。」
 「ほな、今度はわいの見てる前でやってもらおかな。」
 「そ、それは・・・・。」「やってみよ。」ケンジとマユミが同時に言った。ケンジはまた赤くなってうつむいた。
 「ほんまラッキーやったな。こんなきれいな虹が見られるとはな。」
 「まったくだ。」
 「さっきも言ってたんだよ。南国のビーチみたいだって。」
 「ほんで、ハワイとかグアムとかに行きたい、言うてたみたいやな。」
 「そうなんだ。」
 「二人の通訳としてわいが同行してもええか?」
 「大歓迎だ。お前が一緒だったらどこへでも行けるからな。」
 「それに、ハワイに行って、ケンジが劣情の波に呑み込まれてマーユに手え出さんように、わいが見張っとかなあかんもんな。」
 「大きなお世話だ。」
 三人は笑い合った。
 「さて、陽が落ちる前にビーチに戻るとするかな。」
 「そうだね。」
 「ほな、わいはまたこっから泳いで帰るよってに、二人で仲良うボートで戻り。」ケネスはそう言い残して、海に入っていった。
 「マユ、帰ろう。」
 「うん。」
 ケンジはマユミに優しくキスをしてから手を取って先にボートに乗せ、海にゆっくり押し出して自分も乗り込んだ。


《4 民宿》

 その夜、三人は民宿の部屋で缶コーヒーを手にポテトチップスをつまんでいた。
 「格安民宿とは言え、あの夕食、しょぼ過ぎやな。」
 「確かに。サラダのマカロニは半分干からびてたし、小魚の佃煮は歯が折れそうだったし。」
 「そんなもんだよ。あたしたち高校生の身分で贅沢言えないよ。」マユミが笑って言った。
 「そや、マーユ、チョコレート食べるか?」ケネスが言った。
 きらん!マユミの目が輝いた。
 「こいつがチョコレートがそこにあるって知ってて、食べないなんて言うわけないだろ。」ケンジが笑いながら言った。
 「持ってきてるの?ケニー。」
 「新発売、ミントチョコレートや。」そう言いながらケネスはマユミに、青く爽やかなデザインのパッケージの箱を手渡した。
 「開けていい?」
 「どーぞ。ご遠慮なく。」ケネスは笑った。
 マユミはその箱を開けて、薄い円盤状のチョコレートをつまみ上げた。「かわいいね。試供品とちょっと違うみたい。」
 「そやったな、二人には試供品食べさしたんやったな。でもな、あれからけっこう手え加えてな、味も香りもアップしてんねんで。」
 「そうなんだー。」マユミはそのチョコレートをつまみ、目の前に持ってきてじっと観察した。「でも、なんで溶けてないの?昼間とっても暑かったのに。」
 「見損なってもろては困ります、マユミはん。わいを誰やと思てるねん。名店「Simpson's Chocolate House」の店主の倅、ケネス・シンプソン坊ちゃんやで?」
 「だから何なんだよ。」
 「クーラーバッグ持参やないか。」ケネスはバッグから小ぶりの携帯用クーラーバッグを取り出して二人に見せびらかした。
 「おお、さすがだな。」
 「準備万端だね、ケニー。」
 「デリケートな品質を守るためなら、手段を選ばん。それがチョコレート専門店のプライドっちゅうもんや。」
 「なるほど、恐れ入りました。」ケンジは畳に手を突いてケネスに向かって土下座した。
 「口に入れてみ、マーユ。」
 「うん。」
 ケネスに促されて、その艶やかなチョコレートを舌に乗せたマユミは、うっとりしたように言った。「ほんとだ、試供品とだいぶ違うね。これ、何だか海の風の香りがする。ケン兄も食べてみて。」マユミはケンジに、チョコレートをつまんで渡した。
 ケンジもマユミから受け取ったそのチョコレートを口に入れた。「そう言われれば・・・。ミントがよく効いてほんとに爽やかだな。」
 「夏らしゅてええやろ?」
 三人はしばらくその海の風を思わせる風味のチョコレートを味わった。
 「素敵な一日だったね。」
 「そうだな。」
 マユミはおもむろに、着ていたTシャツを脱ぎ始めた。「何だか、身体が火照ってる。」
 「ちょ、ちょっと、マーユ、い、いきなり脱がんといて。わいもここにいること、忘れてへんか?」ケネスが赤くなって言った。
 「マユの大胆さには、俺も未だについていけないよ。」ケンジが言った。
 「じゃーん。」Tシャツを脱ぎ去ったマユミが言った。「実は水着でーす。」
 「へ?水着?」
 「そ。三着持ってきてるんだ。昼間着られなかったから、今着てるの。」
 それは真っ白なビキニだった。
 「それで海に入ったら透けてしまいそうだな。」ケンジがマユミの身体をじろじろ見ながら言った。
 「そやな。明日、それ着て泳ぐんか?マーユ。」
 「だめだ!」すかさずケンジが叫んだ。
 「何や、ケンジ、そない強力に否定せんでも・・・。」
 「マユの身体を他人に見せられるか。」
 ケネスは呆れた。「ほんま独占欲の強い兄貴やな、マーユ。」
 「そうなんだよー。」マユミは困った顔で笑った。

 二階のその部屋には三つの布団が並べて敷かれていた。窓際にマユミ、その隣にケンジ。畳二枚分のスペースを空けて入り口にへばりつくようにケネス用の布団が伸べられていた。
 「そんなに遠くに離れなくてもいいじゃないか、ケニー。電話で話さなきゃいけないぐらい遠いぞ。」ケンジが自分の布団の上にあぐらをかいたまま言った。
 「なに言うてんねん。おまえら今夜もいちゃつくにきまっとるやんか。わい、いたたまれなくなるのは火を見るより明らかや。ほんまやったら別の部屋に寝るべきところや。」
 「心配するな。お前には迷惑かけないから。」
 「微妙な言い回しやな。」

 夜も更けて、三人とも眠ったふりをしていた。特にケネスは、息を殺したまま、いつケンジとマユミの行為が始まるのかと、期待で胸をふくらませていた。
 ごそごそとケンジが動き出す音がした。
 ケンジはマユミの方に寝返りをうって、彼女の布団の上に覆い被さった。
 「もう、ケン兄ったら。」マユミは目を開けて小声でそう言った後、恥じらったように微笑んだ。「ケニーを起こしちゃうよ。」
 「大丈夫。大声を出さなければ平気だよ。」
 窓から射す月の光が、マユミの布団のところだけをスポットライトのように白く照らし出している。ケンジはマユミの布団をはぎ取り、身体を重ねた。そしてそっとマユミにキスをした。
 マユミはさっきの白いビキニの水着姿のままだった。
 やがて二人とも月明かりの中で目が慣れてきた。二人はひそひそ声で話し続けた。
 「マユ、きれいだ、いつ見ても、おまえの身体・・・。」
 「どうしたの?顔が赤いよ。日焼け?」
 「あ、あのさ、マユ、」
 「なあに?」
 「そのビキニ、少しだけ下げてみてくれないか?」
 「え?どういうこと?」
 「ま、まだ全部脱がなくてもいいからさ、ちょっとだけ。」
 「いいけど・・・。いっそ全部脱ごうか?」
 「え?そ、それは・・・・。」ケンジはますます顔を赤くして言葉を濁した。
 「変なケン兄・・・。」そう言いながらマユミはブラを外し、ビキニもあっさりと脱ぎ去って全裸になった。
 ぶっ!ケンジが突然自分の鼻を押さえた。指の隙間から血が垂れ始め、マユミの腹にぼたぼたと落ちた。
 「な、何っ?どうしたの?ケン兄!」マユミは驚いて頭をもたげた。
 「は、鼻血が・・・・・。」
 「えー?鼻血?なんで?」
 「お、お前の水着の日焼け跡が、あまりにも刺激的で・・・・。」枕元に置かれたティッシュを手にとって、ケンジはそれを丸めて鼻に詰めた後、マユミの身体に落ちた血を拭き取った。
 マユミの肌は、水着のブラとビキニの所だけ、透き通るように白く残り、他の場所は褐色に色づいていた。
 「セクシーすぎるっ!」ケンジは鼻にティッシュを詰めたままマユミの身体をぎゅっと抱きしめた。「水着の日焼け跡はオトコのロマンっ!」
 「うふふ、ケン兄、嬉しい。」マユミは続けた。「じゃあさ、今夜はあたしが上になるね、この日焼け跡がよく見えるように。」
 「え?い、いや、いいよ。お前仰向けになれよ。」
 「なんで?」
 「背中が、痛くて・・・・。」
 「背中が?ちょっと後ろ向いてみてよ。」マユミが促した。ケンジはマユミに背中を向けた。「ほんとだー、赤くなってる。」
 「なんだかんだで背中だけいっぱい日焼けしたみたいだ。」
 マユミは布団に仰向けになった。マユミの裸体は月の光に包まれた。ケンジはそのマユミの肌が、さっき口の中で甘くとろけた、つややかなチョコレートの色と同じだと思った。そして水着の跡だけ、白く浮き上がって見えた。
 「や、やばい、俺、こういうマユの身体、抱くのが夢だった・・・。」
 「早く来て。」マユミが手を伸ばした。ケンジはゆっくりとマユミの身体に自分の身体を重ね合わせた。マユミはケンジの首に手を回した。「ケン兄・・・。」
 「マユ・・・・。」
 ケンジの口がマユミの唇を覆った。「んっ・・・。」そしてケンジの舌がその唇を割って中に入ってくると、マユミは思わずケンジの背中をぎゅっと抱きしめた。
 「う、うぎゃっ!」ケンジが口を離して悲鳴を上げた。「い、い、痛い痛い痛いっ!」
 「しーっ!大声出すなって言ったの、ケン兄でしょ?ケニーに気づかれちゃうよ。」
 ケンジはとっさに自分の口を押さえた。そしてすぐにマユミに抗議した。「お前、今、わざとやっただろ?」
 「誤解だよ。感じれば抱きしめたくなるの、当然じゃん。」
 「困ったなー。」
 「わかった。じゃああたし、何もしない。ただ寝てるだけ。それでいい?」
 「いわゆるマグロってやつだな。」
 「何それ?」
 「いいよ、知らなくても。あんまり品がいいとは言えない言葉だ。」ケンジは笑った。「じゃあ、マユ、今夜は俺が一方的に奉仕するから、お前何もするなよ。」
 「わかった。」
 「ただ、感じるだけ。」
 「うん・・・。」
 ケンジはマユミの白い乳房にむしゃぶりつき、舌で乳首を転がし始めた。

 うっすらと目を開けて、二人の様子を見ていたケネスは、すでにかなりの興奮状態だった。「(まったく、人の気もしらんと、あの二人・・・・。)」

 「ねえねえケン兄、」
 「何だ?」
 「またケン兄の、咥えたい。」
 「えー・・・。」
 「ねえ、お願い。」
 ケンジは下着を脱ぎ去り全裸になった。
 「あたし、こうしてるから、ケン兄のをあたしの口に入れてよ。」
 「え?う、上からか?」
 「うん。だってケン兄、仰向けになれないんでしょ?背中が痛くて。」
 「そ、そりゃそうだけど・・・。」
 「昼間みたいに、反対向きでお互いに口で・・・。」
 「わ、わかった。」ケンジは身体を起こした。「で、でもっ!俺、もうお前の口には出さないからな。」
 「ふふ、ケン兄、そんなに抵抗があるの?」
 「ある。」
 「わかった。じゃあ直前でやめさせて。」
 ケンジは身体を反転させてマユミの秘部に舌を這わせ始めた。「あ、ああん・・・。」マユミが喘ぎだした。ケンジの舌がマユミのクリトリスを捉えると、マユミは目の前のケンジのペニスを手で掴んで、自分の口に咥え込んだ。
 「ううっ!」ケンジも呻いた。

 しんとした部屋の中にぴちゃぴちゃという音が響く。ケネスは思わず下着越しに自分の股間に手を当てた。

 しばらくその行為を続けていたケンジは、興奮の高まりに危機感を覚えて、マユミの口からペニスを引き抜いた。そしてマユミと同じ方向に身体を向け直すと、マユミの口の周りを丁寧に舐めた。
 「マユ、ありがとう。気持ちよかった。」
 「あたしも、ケン兄。」
 「俺、入れたい、マユに。入れていい?」
 「いいよ。来て、ケン兄。」
 ケンジはマユミの脚を抱え上げて大きく開かせた。そしてそっとペニスを彼女の谷間にあてがった。「いくよ、マユ。」
 「うん。来て。」
 ケンジはゆっくりとマユミに挿入させ始めた。「あ、あああ、ケン兄・・・。」
 「マ、マユ、大声出すなよ。」
 「うん、わかってる。ケン兄もね。」

 「(全部聞こえとるがなー。)」ケネスは辛そうに独り言を言った。そして布団の中で下着を下ろし、ペニスを掴んでさすり始めた。「(ん、んんっ・・・。)」

 ケンジは腰を前後に動かし始めた。
 安普請な民宿で、温度調節の利かない空調のせいで寒いぐらいに冷えた部屋の中で、ケンジとマユミは全身に汗を滲ませながら同じように揺れ動いていた。
 ケネスはその月明かりに浮かび上がった二人の躍動する様子を、もうしっかりとまぶたを開き、その蒼い目でつぶさに見ながら高まる興奮に身を預け始めていた。

 マユミが思わず腕を伸ばし、ケンジの背中を抱こうとした。ケンジはとっさに彼女のその腕をとり、布団に押さえつけた。そしてさらに激しく腰を動かした。
 「あ、ああ、ケン兄、ケン兄、あたし、あたしっ!」マユミの声が大きくなってきた。ケンジはマユミの腕を押しつけたまま、身体を倒して彼女の口を自分の口で塞いだ。「んん、んんんっ!」マユミは声を出すことができず、苦しそうに大きく呻いた。
 「んん、んんっ!」ケンジもそのまま呻き始めた。そして腰の動きが最高潮になった次の瞬間、びくっ、びくっ!重なった二人の身体が同時に数回跳ね上がった。「んんーっ!」マユミもケンジもお互いの口を吸い合ったまま大きく呻いた。

 「うう、くっ!」ケネスは布団の中で、ペニスを包み込んだティッシュの中に、激しく身体の中で熱く煮え立っていたマグマを何度も放出させた。「ぐっ、んっ、んんっ!」

 ケンジの体内に溜まっていた熱いエキスが、何度もマユミの中に迸った。
 いつしか汗だくになっていた二人の身体は、長い間びくびくと痙攣していた。やがてケンジがマユミから口を離すと、はあっ、と大きく二人とも息を吐き出した。そしてそのままはあはあと荒い呼吸を繰り返した。
 「マ、マユ・・・・。」
 「ケ、ケン兄・・・、とっても気持ちよかった・・・。」
 「俺もだ、マユ。」
 ケンジとマユミは繋がったままお互いの顔を見つめ合った。
 「ケン兄のキス、ミントの香りがしたよ。」
 「俺も感じた。マユの息は夏の風と同じ香りがしたよ。」
 「ケニー、起こさなかったかな・・・。」
 ちらりとケネスの布団を見やったケンジは言った。「大丈夫みたいだ。気づいてなさそうだ。」

 「(いや、気づかんわけ、あれへんて。あないに激しく求め合っといて、何言うてんねんな。)」

 「ケン兄、まだ背中、痛い?」
 「え?何でだ?」
 「あたし、ケン兄を抱きしめたい。もう、欲求不満になりそうだよ。」
 ケンジは押さえつけていたマユミの腕を解放した。
 「ねえ、抱きしめさせてよ、お願い。」
 「そっとな、そっとだぞ。」ケンジはこわごわ言った。
 「うん。」マユミはそう言って上に重なったケンジの背中に腕を回した。そして最初は柔らかく彼の胴体に腕を巻き付け、少しずつ力を込めて愛しい兄の身体を抱いた。
 「う・・・・。」
 「痛い?ケン兄。」
 「だ、大丈夫。我慢できるよ。」ケンジはそう言ってまたマユミにキスをした。
 口を離したケンジの目を見つめて、マユミは言った。「ねえねえ、次はケン兄を抱きしめてイきたい、あたし。」
 「そうか?続けてイける?マユ。」
 「うん。まだ身体が熱い。それにケン兄、また大きくなってきてるよ、あたしの中で。」
 「よし、じゃあいくよ、マユ。」
 「うん。」
 ケンジは再び腰を激しく動かし始めた。

 「(勘弁してえな・・・・。)」ケネスは布団を頭からかぶったまま大きなため息をついた。

 明くる日もよく晴れていた。
 「二人とも寝不足なんやろ?」貧相な卵焼きを口に運びながら、ケネスがおかしそうに訊いた。
 「え?」マユミが恥ずかしげにケネスに顔を向けた。
 「そういうお前も目が赤いのはなんでだ?」ケンジがケネスを睨みつけて言った。
 「え?おかしーな。昨夜は疲れて早うにぐっすり眠ったはずなんやけど・・。」
 「嘘つけ。」
 「な、なんやねん。」
 「お前の布団の下に丸められたティッシュが山ほど隠してあったのを俺は知っている。」
 「えー、ケニー、夜中に一人エッチしてたのー?」マユミが口を押さえて言った。
 みそ汁の椀を心静かにちゃぶ台に置いて、正座をして居住まいを正したケネスは二人を交互に見ながら言った。「あのな、マーユ、同じ部屋で、恋人同士が、夜通し愛し合ってる状況で、心安らかに眠れると思うか?」
 「えー、知ってたの?」
 「おまえら、わいの知ってるだけで四回も繋がったやろ。」
 「え?五回じゃなかったっけ?」マユミが言った。
 「五回もイったんかいな!マーユ!」
 「だって、ケン兄がやめてくれないんだもん・・・。」
 「俺のせいかよ!」ケンジが口からご飯つぶを飛ばしながら言った。
 「まったく、人の気も知らんと・・・・。」ケネスは再びみそ汁の椀を手にとって、わかめくずと小さな麩の入ったみそ汁をすすった。
 「ごめんね、ケニー。あなたを眠らせないつもりじゃなかったんだよ。」
 ケネスは一転爽やかな表情で言った。「ええねん。わいな、ケンジとマーユがああやって熱々の関係である証拠、見せられると、めっちゃ嬉しくなんねん。わいこそ、こそこそ二人のことのぞき見したりしてすんまへんでした。」
 「俺も悪かった。もっと気を遣うべきだった。すまん、ケニー。」
 「かめへんて。それにな、何もなしに一人エッチやるのに比べると、もうその興奮の度合いが全然違うねん。何しろ目の前で、惚れ惚れするぐらい美しい男女がセックスし合うんやから。AVやエッチ本なんかとは比べもんになれへん。最高のオカズやねんで。」
 「役に立てて嬉しい。」マユミが言った。
 「ううむ・・・これを役に立つというのかどうか・・・。」ケンジは頭を抱えた。

 三人は砂浜に腰を下ろして、清々しい朝の海を眺めていた。
 「気持ちいいねー。」マユミが大きく伸びをした。
 「そうだな、まだ朝のうちは人も少なくて、気分いいな。」
 「ケンジ、もう高校総体も終わって一息っちゅうとこやけど、卒業したらどないするつもりなんや?」
 「俺か?俺、水泳ばっかやってきたから、大学でも続けられればなって思ってる。インストラクターとか、指導者としての技術を身につけたい。ケニーは?」
 「わいはショコラティエになることが運命づけられとる。」
 「店を継ぐんだー。偉いね、ケニー。」マユミが言った。
 「でも、それって、おまえ納得してるのか?違う仕事に就きたいとか、思わないのか?」
 「幸か不幸か、わいはずっと前からこの目標は変われへん。別に親父やおかんに気い遣っとるつもりはないねん。わいも純粋にチョコレート職人になりたい思とるから、その道を選ぶだけや。」
 「そうか・・・。」
 「マーユは?」
 「あたしはね、経済とか流通とか経理とかの勉強がしたい。だから進学する。」
 「二人ともちゃんと先のこと考えとるんやな。」ケネスは空を仰いだ。
 「さて、」ケンジが立ち上がった。「一泳ぎしたら、荷物まとめるか。」
 「そやな。昼前の電車に間に合うようにな。」
 「マユ、おいで。」ケンジはマユミの手をとった。マユミも立ち上がった。
 「ケン兄、もう背中痛くない?」
 「うん。昨日よりずいぶん痛くなくなった。」
 「良かった。」
 「もう、ボート使わへんのか?」ケネスが悪戯っぽく笑って言った。
 「気を遣わないでくれ、ケニー。」
 「確かに今からくたくたのへろへろになったら、帰るのん、大変やからな。」
 「そうだよ、またあんな思いをしてボート膨らませなきゃって思うと、気が遠くなる。」
 「いや、そういうことやのうて、おまえ、ボート膨らました後が大変やんか。」
 「なんで後が大変なんだよ。」
 「大変やんか。ボートに乗ったら、またおまえらあんなことやこんなことして激しく愛し合うに決まっとるやん。昨日も昨夜もそやったけど。」
 「大きなお世話だ。」
 「さすがにこれ以上愛し合ったらくたくたのへろへろやろ?」
 「それについちゃ心配いらないよ。」ケンジはマユミの手をとって海に向かって走り出した。
 「ほんま。タフっちゅうか、元気っちゅうか、絶倫っちゅうか・・・・。」ケネスは腰に手を当てて一つため息をついた。「わいも負けてられへんな。って、独り身でどないせえっちゅうねん。」ケネスは一人突っ込みをかまして、二人の後を追った。「待ってえな!わいもまぜたって!」
 マユミが波打ち際で振り向き、飛び跳ねながらケネスに大きく手を振った。「早くー、ケニー。」









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