Simpson 作

『Twin's Story 1 "Chocolate Time"』

《1 双子の兄妹》(1)

 海棠ケンジは高校二年生。学校では水泳部に所属している。だから体格もよく、逞しい。ワイルドに見えて比較的シャイな性格なので、クラスの女子からも水泳部の女子からも熱いまなざしを浴びていたりする。
 その夜、ケンジは双子の妹マユミの部屋のドアをノックした。
 「マユ、いるか?」
 「あ、ケン兄、どうしたの?」
 「開けるぞ。」
 ドアを開けると女の子特有の甘い香りがケンジの鼻をくすぐった。マユミは机に向かっていた顔を兄に向け直した。
 「あ、あのさ、おまえの好きなチョコレートがあるんだ。部屋に来ないか?」
 「ほんとに?行く行く。」マユミはすぐに椅子から立ち上がり、ケンジに駆け寄った。
 「あたし、お茶淹れてくる。ケン兄、何がいい?」
 「え?あ、ああ、俺コーヒーがいいな。い、いや、マユに合わせる。何でもいい。」
 「ケン兄、なにそわそわしてるの?」
 「べ、別に・・・。」
 「じゃ、すぐに行くから部屋で待ってて。」
 「う、うん。」

 ケンジの部屋のカーペットに座って、二つのカップにティーポットから紅茶を注ぎながらマユミは訊ねた。「紅茶でよかった?ケン兄。」
 「いいよ。」
 「珍しいね、ケン兄がお茶に誘ってくれるなんて。」
 「い、いや、チョコレートもらったから。お前好きだろ?」
 「いいの?誰からもらったの?」
 「友だちだよ。」
 「女の子?」
 「ま、まあな。」
 「え~。いいのかな、あたしが食べても。」
 「遠慮するなよ。俺がもらったんだから。俺がどうしようと勝手だろ。」
 「じゃ、いただきまーす。」
 マユミはそのアソートのチョコレートに手を伸ばした。
 「どれにしようかな~。」
 マユミのその仕草を見ながらケンジは自分の鼓動が速くなっていくのを感じた。

 数日前、自分の洗濯物をベランダで干している時に、隣の部屋のマユミが着替えをしているのをケンジは偶然見てしまった。妹のマユミは気づかなかったようだが、ケンジはその時彼女の白くて柔らかそうな肌に目が釘付けになってしまったのだった。双子の兄妹なので、小さい頃から例えば入浴も一緒だった。しかしそれも小学校5年生までで、あの時のマユミとは全く別人のように妖艶とも言える部屋の中のその姿にケンジの呼吸は自然と荒くなり、股間も熱を帯びていった。ケンジは焦って部屋に駆け込んだのだった。

 「ごちそうさま。ケン兄、ありがとうね。」
 「ま、また何かもらったりしたら誘うから。」
 「うれしい。ケン兄好きだよ。」
 ケンジはどきりとした。そしてますます妹に対する想いの温度が上がっていく感じがした。
 「じゃあ片付けるね。」
 「いや、俺が片付けるよ。」
 「あたしがやらなきゃ。ごちそうになったんだもの。」
 「お前勉強の途中だろ。俺に任せろ。時々こういうことをしとけば母さんに好印象だろ。」
 マユミは笑った。「そういうことか~。じゃあ、お願い。」
 マユミといっしょに立ち上がって、ケンジは彼女を隣の部屋まで送った。マユミの身体からほんのりとバニラの香りがした。そしてほのかな彼女の体温を感じてケンジはまた鼓動を速くした。
 部屋に戻ったケンジは、マユミが座っていた所に彼女の小さなハンカチが置き忘れてあるのに気づいた。彼はそれを恐る恐る手にとって、自分の鼻に近づけた。やっぱりバニラの香りがした。妹が座っていた場所に同じように座ってみた。彼女の温かさがまだ少し残っていた。そして妹が使ったカップを手に取った。彼女が口をつけたカップの縁にそっと自分の唇を押し当てた。ケンジの鼓動はますます速く、強くなっていった。

 その夜、ベッドで寝ていたマユミは、かすかな物音と人の声に気づいて目を開けた。それは隣のケンジの部屋から壁越しに聞こえてくる。「ケン兄、こんな夜中に何してるのかな・・・。」
 マユミは耳を澄ました。ベッドが軋む音とケンジの小さな声。小さな声で「マユ」とつぶやいているのがわかった時、何故かマユミの胸の中に熱いものが湧き上がってきた。彼女はそっとベッドから起き上がり、音を立てないようにベランダに出てケンジの部屋の中をうかがった。
 ベッド脇の小さなライトだけが灯っていた。その黄色い光の中でケンジはベッドにうつ伏せになって、両腕できつく抱きしめた枕に鼻と口をこすりつけながら喘いでいる。荒い息で彼は時折「マユ」とつぶやいている。目を凝らしてよく見ると、彼が鼻と口をこすりつけているのは、自分がこの部屋に置き忘れたハンカチだった。やがて兄の腰が上下に激しく動き始め、掛かっていた薄いタオルケットがベッドから滑り落ちた。彼は黒のビキニタイプの下着一枚という姿だった。水泳の大会の時にもケンジの水着姿を目にすることはよくあったが、プールサイドで見るのとは違うそのケンジの男らしく逞しい裸体を目にしたマユミの胸の温度はどんどん上がっていった。激しさを増すケンジの身体の動きは、ひときわ大きな声で「マユっ!イくっ!」と叫んだ時に最も大きくなり、形の良い彼のヒップがびくんびくんと数回脈動した後、ぐったりと動かなくなった。マユミは思わずパジャマ越しに自分の秘部に手を当てた。自分のショーツがしっとりと濡れているのを感じて、彼女は焦ったように部屋に戻った。


1-(2)

 「ケン兄、いる?」
 ケンジの部屋のドアをノックしながらマユミは中の兄に声をかけた。
 「いるよー。」
 「入っていい?」
 「いいぞ。」
 ドアを開けてマユミは部屋の中を見回した。
 「最近、ケン兄の部屋、ちょっと片付いてない?」
 「なんだよ。いいだろ。散らかってるより。」
 「そりゃそうだけど。それに、」
 「それに、何だよ。」
 「前ほどオトコ臭くないね。」ケンジの部屋はほんのりと柑橘系の匂いがした。「何?彼女でもできた?」
 「いないよ。彼女なんか。」
 「ほんとに?」
 「しつこい。神に誓って彼女はいないよ。」
 「いや、別に神に誓う程のことでもないから。」
 「で、何の用だ?」
 「昨夜あたしここにハンカチ忘れてなかった?」
 マユミは昨日の夜中見てしまったケンジの姿を思い出して、少し顔を赤らめた。
 「ああ、あったあった。これだろ?」
 それはきれいにたたまれていた。
 「洗濯してアイロンもかけといたから。ありがたく思え。」
 「え?そんなに汚れてた?」マユミは兄の反応をうかがった。
 「そ、そういうわけじゃないけど、それがエチケットってもんだろ?」
 マユミは胸が少し熱くなった。「意外と紳士なんだね、ケン兄。」
 「気づくのが遅いね。」
 「そうそう、それから、」マユミはちょっとだけ間を置いて続けた。「あたしの学校の体育祭でダンスの時黒のTシャツ着なきゃいけないんだけど、ケン兄持ってる?」
 「黒のTシャツ?あるけど。サイズが合わないんじゃ?」
 「いいの、多少大きい方がお洒落だし。」
 ケンジはクローゼットの中に入って行った。「マユ、何枚かあるけど、どれがいい?」
 「え?何でもいいけど・・・。」
 「お前もちょっと来いよ。」狭いクローゼットの中からケンジが言った。マユミは中に入っていった。
 「これと、これ。こっちにもあるけど。」ケンジは3枚のTシャツを手にとってマユミに見せた。
 「汚れるかもしれないから、一番着古したのでいい。」
 「じゃあ、これだな。」ケンジは一枚を手に残して、後の二枚は引き出しにしまった。「後ろ向けよ。」
 「え?」
 マユミは戸惑いながらも狭いクローゼットの中でケンジに背を向けた。ケンジは手に持ったTシャツを広げ、背中からマユミの肩に合わせてみた。「ちょっと大きいかな。」そして彼女の背中に軽く押しつけた。
 ケンジの指が自分の肩や背中に触れる度にマユミの鼓動は速くなっていった。そのことを悟られまいとマユミは慌てて言った。「だ、大丈夫だよ。これで。」そしてクローゼットを出た。
 「じゃ、じゃあ、借りるね。終わったらちゃんと洗って返すから。」
 「そのままでもいいぞ。」
 「え?」
 「い、いや、洗濯するの、面倒だろ?」
 「エチケットだから・・・。」マユミは少しうつむいてそう言ったあと、ケンジの部屋を出た。

 その夜、マユミはケンジから借りたTシャツを着てみることにした。パジャマの上着を脱いだ。ブラジャーを外した。露わになった上半身に、兄の着古された黒いTシャツを直接身につけた。マユミは、自分の顔が上気するのを感じた。パジャマのズボンも脱いでみた。そして姿見に自分の全身を映してみた。Tシャツは白いショーツが半分隠れるぐらいの丈だった。
 その時部屋のドアがノックされた。「マユ、」
 「ケン兄!」
 マユミは慌てた。「ちょ、ちょっと待って。まだドア開けないで。」
 「わ、わかった。」
 マユミは急いでTシャツの上から元のパジャマを身につけた。ズボンも穿き直して部屋のドアを開けた。
 「ど、どうしたの?ケン兄。」
 「ご、ごめん、着替えかなんかしてたのか?」
 「ま、まあね。」
 ベッドの上に脱ぎ捨てられたブラジャーが無造作に置いてあるのにケンジは気づいて、慌てて目をそらした。
 「い、いや、あの、あのな、」ケンジは口ごもった。
 マユミの身体は急に疼き出した。昨夜目にした逞しい兄の身体を思い出したのだった。
 ケンジの身体も熱くなり始めた。数日前に見たマユミの美しい白い肌を思い出したのだった。彼はパジャマ越しに妹の胸の膨らみを見つめた。「マ、マユ・・・・。」
 「ケ、ケン兄・・・・」
 ケンジは部屋に入るとドアを乱暴に後ろ手で閉めた。そして目の前の妹の身体をぎゅっと抱きしめた。「お、俺、もう我慢の限界だ。」そしてマユミの口を自分の唇で塞いだ。「んん・・・。」マユミは小さな声で呻いたが、ケンジの身体をはね除けもせず、その逞しい腕に抱かれたまま、その快い力に身を任せていた。
 「ご、ごめん!」ケンジはおもむろにキスを止めて、真っ赤になってマユミから目をそらした。「お、俺、と、とんでもないことを・・・。」
 マユミは無言でうつむいていた。
 「ほんっとに、ごめん。こ、このことは忘れてくれ。」そしてケンジは急いでドアを開け、マユミの部屋を出て行った。


1-(3)

 ケンジは部屋の灯りを消して真っ暗にした。そしてベッドに突っ伏したまま動かなかった。だが、息は荒く、鼓動も速かった。「収まれ!収まるんだ!」ケンジは小さく叫んだ。しかし、たった今抱いた妹の体温、着衣越しではあったが、その肌の柔らかさ、抱きしめた時に感じた胸の膨らみの感触が生々しく残り、いつまでも鼓動も体温も収まる気配はなかった。彼はベッドの布団の下に隠してあった小さなショーツを取り出した。そしてそれで自分の口と鼻を塞ぎ、大きくあえぎ出した。「ああ、マユ、マユ!」もはやケンジの身体の疼きは臨界点に達していた。「おまえが好きだ!マユ!」そう言いながらケンジは身につけていたシャツとジーンズを脱ぎ捨て、黒いビキニ一枚になった。枕にしがみつき、マユミの白いショーツの匂いを嗅ぎながらケンジは激しく腰を動かし、やがて果てた。「イ、イくっ!マ、マユっ!」びゅるっ!びゅくっ!びゅくびゅく、びくびくびく・・・。彼は自分のビキニの下着の中に大量に精液を放出したのだった。
 一人になったマユミは灯りを消して部屋を真っ暗にして、ベッドに倒れ込んだ。そしてパジャマを脱ぎ去り、ショーツとケンジの黒いTシャツだけの姿になった。彼女はケンジのTシャツを着たままショーツ越しに自分の秘部をさすり始めた。「ああ・・・、ケン兄。」びくんと身体が反応し、ぐんぐんと興奮が高まっていく。マユミはショーツの中に手を差し入れ、指で自らの谷間を刺激した。ショーツを濡らしながら彼女はさっきのケンジの唇の柔らかさと温もりを思い出していた。「ああ、ケン兄、ケン兄!」マユミの指の動きが激しくなると、身体もそれに合わせて激しく痙攣した。「ああ!ケン兄!あたし、イっちゃう!も、もうだめっ!」びくっ!びくっ!びくん、びくん・・・。そしてマユミはイった。

 「あんたたち、ケンカでもしてんの?」
 夕食時、二人の母親が切り出した。
 「え?」マユミが手を止めた。「な、なんで?」
 「今朝から会話がほとんどないじゃない。」
 「そうだっけ?」
 「あのね、兄妹ってのは一生で一番長く付き合う人間なんだからね。いがみ合ったりしたらきついわよ。」
 「べ、別にケンカなんか、してないよ。なあ、マユ。」
 「う、うん。そうだよ。」
 「ならいいけど・・・。」
 しばらくの沈黙の後、ケンジが口を開いた。「そうそう、また学校でチョコもらったから、後で食べに来いよ、マユ。」
 「ほんとに?いくいく。」
 「誰からもらったっての?」母親が怪訝な顔で訊ねた。
 「だから友だちだよ。」
 「あんたにチョコくれる友だちがいんの。誕生日でもないのに?」
 「いいじゃないか、母さん。あんまりしつこくすると嫌がられるぞ。」父親が言った。
 「ごちそうさま。」マユミが食器を持って立ち上がった。
 「俺も。」ケンジも後に続いた。
 二人がダイニングを出て行った後、母親がため息をついた。「何だかうわべだけ仲良くしてるような気がするんだけど、あの二人。」
 父親が言った。「心配しすぎだよ。」

 先に二階に上がったケンジは、ドアの前で後から昇ってきたマユミに声をかけた。
 「マ、マユ、チョコ、一緒に食おうぜ。」まるで好きな子に告白できずにいる少年のようにおどおどしながらケンジは赤くなって言った。
 「う、うん。」
 「あ、あの、お詫びというか、何というか・・・・。」
 「あ、あたし気にしてないよ、ケン兄。」マユミはぎこちなく笑った。「今日はケン兄の好きなコーヒー淹れてくるから待ってて。」
 「あ、ありがとう。マユ。」

 「ケン兄の好きな『ヒロコーヒー』のスペシャルブレンド、今日買ってきたんだ。」一昨日と同じようにマユミはケンジの部屋の同じ場所にぺたんと座ってデキャンタから二つのカップにコーヒーを注いだ。
 「ほ、ほんとか?すまないな。でもマユ、お前コーヒー苦手じゃなかった?」
 「いいの。たっぷりミルク入れて、砂糖も入れて飲むから。」
 「ごめんな、無理させちゃって。」
 「このチョコ、」マユミがアソートの箱を手に取った。「一昨日のと同じだね。」
 「そ、そうだっけ?」
 「友だちからもらったって嘘でしょ。ケン兄。」
 「ぎくり。」
 「自分で買ったんでしょ?」
 「う、うん。お、お前の好きなメリーのチョコ・・・・。」
 「ケン兄優しいね。大好きだよ。」
 「だ、だって、お、俺、昨夜お前にひどいことしちゃったし、その・・・・、お詫びというか・・・・」
 「だから気にしてないって。」
 二人の会話が途切れた。
 「あ、あたし、ケン兄に抱かれて、キスされて、嬉しかった。」
 「えっ?!」ケンジは赤面した。
 マユミの身体がまた疼き出した。彼女は焦ったように自分のコーヒーを飲み干すと、立ち上がった「じゃ、あたし勉強があるから。ごちそうさま。残ったチョコ、ケン兄が食べて。」
 返事も聞かずマユミはカップの載ったトレイを抱えて部屋を出て行った。


1-(4)

 マユミへの想いは、治まるどころか前日よりももっと強烈なものになっていた。ケンジはベッドに横になってからも身体の火照りが治まらず、なかなか寝付かれなかった。彼はベッドから降りて暗い部屋に立ち、全裸になった。すでにペニスは天を指して脈動を始めていた。ベッドに隠していたマユミの白い小さなショーツを取り出すと、それを身につけた。胸が締め付けられるように痛んだ。呼吸も荒くなってきた。「マユ、お前を・・・抱きたい。」小さなマユミのショーツの中ではち切れんばかりに怒張した彼の分身はその先端から透明な液を漏らし始めていた。

 マユミは昨夜と同じようにケンジの黒いTシャツを素肌に身につけた。それだけで彼女の身体は熱くなっていった。ショーツを脱ぎ去り、ためらうことなく彼女は指を自分の秘部に宛がった。そして敏感な部分をくまなく刺激した。「ああ、ケン兄、あなたに抱かれたい・・・・。」
 思いの外早く絶頂は訪れた。しかも昨夜よりもそれは激しかった。
 マユミはしばらくじっとして息を整えた。暗い部屋の中、ベッドの上で放心したように横たわったまま、彼女は壁越しに聞こえる隣の部屋の物音に耳を澄ませた。一昨日と同じようにベッドの軋む音とケンジの息を殺した声が聞こえた。かすかに聞こえるケンジの声、「マユ、マユ、ああ・・・」という喘ぎ声を聞いたマユミは、ショーツを穿き直すと決心したように部屋を出た。

 コンコン。ケンジの部屋のドアがノックされた。もう少しでマユミを想いながらイくところだったケンジは、ベッドの上で凍り付いた。
 「ケン兄、起きてる?」マユミの声だった。
 ケンジはあわててハーフパンツとシャツを身につけ、部屋の灯りをつけてドアを開けた。
 「ど、どうしたんだ?マユ。」
 「怖い夢をみちゃって・・・。」切なそうなマユミのその声に、ケンジの胸はまた締め付けられるように疼いた。
 「入りなよ。」
 「ごめんね。起こしちゃった?」
 「平気だ。」
 「ね、ねえ、ケン兄、」
 「なんだ?」
 「今夜は一緒に寝てくれる?」
 「えっ?!」
 「一人じゃ心細くて・・・。」
 「わ、わかった。お、俺のベッド使いなよ。」
 「うん。ありがと。」
 マユミはあっさりとケンジのベッドに腰掛けた。
 「で、どんな怖い夢をみたんだ?」
 「ケン兄が遠くに行っちゃう夢。」
 「俺が?」
 「そう。もうあたし、辛くて、寂しくて、悲しくて・・・・。」
 「俺はどこにも行かないよ。お前を一人になんかしたりしないよ。」ケンジの優しい言葉に、嘘をついてしまったマユミの目から涙が落ちた。
 「さあ、もう寝なよ。俺は床でいいから。」
 「ケン兄も一緒に来て。」
 「えっ?!」
 「いっしょに寝てよ。昔みたいに。」
 二人は小学校を卒業するまで一つのベッドで寝ていた。マユミは寂しがり屋で、いつもケンジの手を握って眠りについていた。当時ケンジはそんな妹が鬱陶しくて、早く一人でベッドを占領したいとずっと思っていた。
 ケンジは恐る恐るマユミの隣に横になった。しかし妹に背を向けていた。「ごめん、マユ、狭いだろ。」
 「この方がいい。だってケン兄といると安心できるもん。」そういってマユミはケットの半分をケンジの身体に掛け、彼の背中からそっと腕を回した。
 「じゃ、じゃあ、灯り消すから。」
 「うん。」
 ケンジはベッド脇の灯りを消した。
 真っ暗になった部屋にしばらく沈黙が流れた。
 マユミの身体の温もりと柔らかさと甘い匂いがケンジの身体をどんどん熱くしていく。分身も硬く大きくなって脈動を始めている。もはやケンジはこのまま眠りにつくことが叶わない程爆発寸前に高まっていた。
 「ケン兄、」
 「・・・・・・。」ケンジは荒くなっている呼吸を整えるのに必死だった。
 マユミは背後からケンジのシャツをまくり上げた。そして素肌に直に触れたまま腕を前に回し、彼の胸を優しくさすった。
 「マ、マユ!」
 「ケン兄、あたし・・・・。」
 マユミは手をケンジのハーフパンツの中に忍ばせた。そして彼が身につけたままのの小さなショーツの上から、ペニスに軽く触れた。
 「あ!」ケンジはビクンと身体を硬直させた。
 「ケン兄、あたしを・・・抱いて。」
 「マ、マユっ!」ケンジは我慢できず二人の身体に掛かっていたケットをはぎ取った。そして身体を起こすとマユミに乱暴に覆い被さり、その口を自分の唇で塞いだ。
 「ん、んんっ!」マユミは一瞬苦しそうに呻いたが、すぐにケンジの濃厚なキスを受け入れ、同じようにその唇を味わい始めた。
 ケンジは、キスを続けながら、着衣越しにブラを着けていないマユミの豊かで柔らかい乳房をさすった。「ああ・・・。」マユミは喘いだ。そして乱暴にパジャマの上着をめくりあげ、露わになった乳房を夢中で吸った。
 「ああ・・、ケン兄!」
 ケンジははっとしてマユミから身を離した。
 「ご、ごめん、マユ、お、俺、乱暴だよな?」
 「平気だよ。大丈夫。」マユミはそう言って上気した顔をほころばせた。「きて、ケン兄。」


1-(5)

 「マユ・・・。優しく、するから。」ケンジは着ていたシャツとハーフパンツを脱ぎ捨て、マユミの身体を抱きしめた。そして彼女の耳元で申し訳なさそうに囁いた。
 「マユ、ごめん、俺、お前の下着、盗んだ。」
 「知ってるよ。でもなんだか嬉しい。気にしないで、ケン兄。」マユミはそう言いながらケンジの穿いていた自分のショーツにそっと手を触れさせた。
 マユミはためらいがちに言った。「あたしの中にきて、ケン兄。お願い。」すでにマユミの秘部は十分に潤い、ケンジを受け入れる準備を整えていた。
 「い、いいのか?マユ、お、俺で、いいのか?」
 「あなたが欲しいの。きて、お願い。」
 自分でショーツを脱ぎ去り、マユミのそれもはぎ取って全裸にしたケンジは、焦ったようにマユミに体重をかけて覆い被さった。マユミは少し恥じらいながら両脚を少しずつ広げていった。ケンジはこれ以上ない程怒張した自分の分身を彼女の秘部に宛がった。
 「いくよ、マユ。」
 「きて、きて!」
 ケンジのペニスの先端も十分に潤っていて、マユミの中にそれが入り込むのは思いの外簡単だった。しかしケンジはマユミが嫌がらないように少しずつ、少しずつ中に入り込ませた。
 「あ、あああ・・・ケン兄、い、いい。いい気持ち。」
 「マ、マユ、痛かったら、いつでも言いなよ。」
 「だ、大丈夫。痛くない。大丈夫。」はあはあと荒い呼吸を繰り返しながらマユミは固く目を閉じ絞り出すような声で言った。
 やがてケンジのペニスがマユミの中にしっかりと入り込んだ。
 「ああ、ケン兄。あなたが、あなたが好き。大好き。」
 「お、俺も。マユ。お前がこの世で一番、あああああ・・・・。」ケンジはすでに絶頂間近だった。
 「あたしの中で、イって、ケン兄。」
 「マユ!」
 ケンジは腰を動かし始めた。始めから激しい動きだった。マユミはそれを受け止めようと同じリズムで腰を動かした。二人の興奮はぐんぐんと高まっていく。
 「ケン兄、ケン兄!」苦しそうにマユミが叫ぶ。
 「マユ!あああああ・・・お、俺、もうすぐ!」ケンジも叫ぶ。
 「ああああ、ケン兄、イっていいよ、あたしの中で、ああああああ・・・。」
 「で、出る・・出るっ!」ケンジの身体がひときわ大きく脈動し始めた。
 びゅるっ!びゅくびゅくっ!
 「あああああ!ケン兄ーっ!」マユミの身体も大きく痙攣し始めた。
 「マユ、マユっ!んっ、んんっ!」ケンジの身体の中から熱い想いの迸りがマユミの中に注がれ続けた。
 ケンジもマユミも、まだはあはあと肩で息をしていた。二人とも身体中汗びっしょりになっていた。
 「ケン兄、ありがとうね。大好き。」マユミはケンジの背中に回した腕に力を込めた。
 ケンジは恐る恐る言った。「マユ、ほんとうに俺で良かったのか?」
 「うん。っていうか、もうケン兄じゃなきゃだめみたい・・・・。」
 「マユ。」ケンジもマユミを強く抱き返して首筋に唇を這わせた。
 二人は汗だくのまま、しばらくそのまま抱き合い、お互いの身体の熱さをいつまでも味わっていた。
 「ケン兄は、経験あるんでしょ?」
 「え?俺?」
 「うん。だって、すっごく優しかったもん。何か女の子の扱いに慣れてるっていうか・・・。」
 「期待を裏切って悪いけど、マユが初めてだよ。」
 「え?!ホントに?」
 ケンジは身体を起こし、ベッドから落ちたタオルケットを手に取った。そしてマユミの身体を頭からそれで包み込み、全身の汗を拭き始めた。
 「ケン兄ー。」ケットの中からマユミの甘えた声がした。「見えないよー。」
 ケンジはケットをめくってマユミの顔をのぞき込みながら言った。「お前はどうなんだ?マユ。」
 「実はあたしも初めて。って言ったら信じる?」
 「俺からは何とも・・・・。」
 「ふふ。ケン兄が初めてだよ。でも、」
 「でも?」
 「迫られたことはある。」
 「誰に?」
 「一つ上の学校の先輩。」
 「へえ。付き合ってたのか?そいつと。」
 「普通にメールのやりとりはしてたけどね。リアルに会うことはあんまりなかったな。」
 「そうなんだ。」
 「でも、急に『お前が欲しい、抱かせてくれ。』って言ってきたの。」
 「そりゃまた、いきなりだな。」
 「でしょ?もうなんかセックスしたくてたまらない、っていう感じだったし、その相手があたしじゃなくてもいいって感じがしたから、拒否った。」
 「そ、そうだよな、やっぱり・・・・。」
 「どうしたの?」
 「いや、お、俺もそうなのかな、って・・・・」
 「ケン兄は違うよ。」
 「どうして?俺だって相手がお前じゃなくてもセックスしたいって思ったかも知れないし・・・・。」
 「でもさ、男の人って、終わった後急に醒めちゃうんでしょ?」
 「うん。」
 「今はどう?」
 「今も好きだ。お前が。なんかすっごく愛しい。愛しくて堪らない。」
 「それが嘘じゃなければ先輩とは違うよ。」
 「嘘じゃないよ。」
 「ごめんね。一瞬でも疑ったあたしを許して。」


1-(6)

 「マユ。」ケンジはマユミの唇を自分の唇で塞いだ。「んっ・・・。」マユミは小さく呻いた。
 口を放したケンジは、少し恥ずかしそうに囁いた。「マユ、お、俺、また・・・・。」
 「え?ケン兄、また盛り上がってきちゃった?」
 「マ、マユ、ごめん。」
 ケンジのペニスは、その堅さと大きさが復活を完了していた。ケンジはマユミの身体をぎゅっと抱きしめた。
 「ケン兄・・・。」マユミの身体にもまた熱いものがこみ上げてきた。
 「はっ!」ケンジは急に腕をほどいた。そしてマユミの両肩に手を置いて少し怯えたように言った。「お、おまえ、初めてだったんなら、血が・・・。」
 ケンジは自分のペニスに目をやった。濡れそぼったそれには少しだけ、赤いものがついていた。
 「マ、マユ!」
 「大丈夫。ケン兄。あたし平気だよ。思ったほど痛くなかったもん。」
 「ほんとか?」
 「出血や痛みには個人差があるって言うよ。」マユミは微笑んだ。「あたしはあんまり痛くなかった。」
 「そ、そうなのか?」
 「それよりケン兄、もう一回したいでしょ?」
 「え?で、でも、また痛い思いをおまえにさせるのは・・・・。」
 「いやだ。もう一回繋がりたい、あたし。ケン兄、お願い。」マユミがケンジの背中に腕を回した。
 「マユ・・・。」
 「ねえ、来て、ケン兄。大丈夫だから。」
 「じゃ、じゃあ、マユ、さっきは俺のペースだったから、今度はお前がリードしていいよ。」
 「え?ど、どういうこと?」
 「マユが上になりなよ。」ケンジはそう言うと、マユミの背中を抱え上げ、自分は仰向けになって身体に跨がらせた。「騎乗位っていうんだって。こういうの。」
 「さすがオトコの人って詳しいね。」
 「ほんとに入れていい?マユ。また。」
 「うん。」
 ケンジはペニスを手で掴み、上になったマユミの谷間にあてがった。
 「そのまま腰を下げてみなよ。」
 「わかった。」
 マユミは少しずつ腰を落としていった。
 「あ、いい、マユ、いい気持ちだ。」
 「あたしもだよ、ケン兄。」
 「痛くないか?」
 「うん。平気。それで、これからどうすればいい?」
 「俺の上で動いて、お、お前の一番気持ちのいいところを刺激するんだ。」
 「だ、だってもう、十分気持ちいい、あ、ああああ、ケン兄。」
 ケンジのペニスに貫かれたまま、マユミは腰を動かし始めた。二人の結合部分の隙間からついさっきの絶頂の時に注ぎ込まれたケンジの精液が流れ出し、二人の股間をぬるぬるにしていた。そしてマユミが腰を動かす度にそれがぬちゃぬちゃと淫靡な音を立てた。その音を聞きながら、ケンジは次の絶頂を予感し始めた。
 「マ、マユっ!」
 「イくの?ケン兄。イっていいよ。あたしも気持ち良くなってるから、ああああ・・・。」
 マユミの動きが激しさを増した。そして彼女は自分の乳房を両手で鷲づかみにすると、一度腰を持ち上げ、一気にケンジのペニスを自分の奥深くに迎え入れた。
 「んんっ!うぐっ!」喉の奥でケンジが呻いた。びゅくっ!びゅるるっ!びゅる、びゅる、びゅくびゅくびゅくっ!
 「ああああ!ケン兄ーっ!」マユミの身体ががくがくと震えた。ケンジの身体は大きく海老ぞりになりびくん、びくんと脈動しながらまた大量の精液をマユミの中に放出し続けた。

 翌日も、そのまた翌日も、二人ははケンジの部屋のベッドで激しく愛し合った。ケンジとマユミの間には、もう以前のように隔てるものはすっかりなくなっていた。

 「今日はさ、ケン兄、」夕食の時にマユミはケンジに囁いた。
 「ん?」
 「あたしの部屋でチョコレートタイムしようよ。」
 「わかった。風呂から上がったら行くから。」
 二人を見て、母親が思いきり怪訝な顔で言った。「二人で、何ひそひそ話してんの?」
 「え?べ、べつにいいだろ。」
 「あんたたち、そんなに仲良しだったっけ?」
 「別に普通でしょ?ママ。兄妹だったらこんなこと。」
 「普通かしら・・・・。」
 「ごっそさん!」ケンジは食器を持って立ち上がった。「じゃ、俺、風呂に入るから。」
 「はいどうぞ。」母親は無感情な抑揚のない返事をしてケンジの背中を見送った。
 「あたしも。」マユミも立ち上がった。母親は彼女の背中も無言のまま見送った。
 「あなたどう思う?」母親は隣で片身を食べ終わった焼き魚をひっくり返していた夫の顔を見た。
 「どうって?」
 「あの二人。」
 「いいんじゃないか。ケンカするより。」
 「そりゃそうだけど・・・・。」

 「マユ、俺さ、お前のショーツ、こっそりずっと隠し持ってた。」
 「気づいてたよ。一枚なくなってたの。でも、それって洗濯の時になくなっちゃったんだ、って納得してた。」
 「そうなんだ。」
 マユミの部屋で二人は下着姿のまま語らっていた。ケンジは手にコーヒーのカップを、マユミはいつものチョコレートをつまみながら。
 「でもつい最近、そのショーツをケン兄が持ってることを知った。」
 「え?ど、どういうことだ?」
 「あたし、見たもん。ケン兄があたしのショーツに鼻を押しつけながら一人エッチしてるの。」


1-(7)

 「えっ!」ケンジは赤面した。「み、見たのか?」
 「うん。こっそり見ちゃった。偶然だけどね。」
 「ぐ、偶然?」
 「夜中、物音がして目が覚めて、こっそり覗いたんだ。」
 「そ、そうなのか・・・。け、軽蔑しただろ?その時。」
 「ううん。だってケン兄オトコだもん。しかもそういう年頃だし。」
 「そ、そりゃそうだけど・・・・。」
 「セックスに飢えてるんだ、って思った。でもそれって当たり前でしょ?高二なんだし。」
 「ご、ごめん。マユのショーツ、勝手に使っちゃって・・・。」
 「嬉しかったよ。なんか、あたしも女として認められた気がしたし。でも、」
 「でも?」
 「ケン兄は、あたしじゃなくてもいいのかな、ってちょっと寂しい気がした。ただの女の子の下着に興奮してるのかなって。」
 「今となってはそれは・・・わからない・・・。」
 「違うコの下着でも興奮してた?」
 「・・・・たぶん。」ケンジはうつむいた。
 「そうだよね。男のコってきっとそうなんだよね。」
 ケンジは慌てて顔を上げた。「でっ、でも、俺、お前の着替えを見て、マユを抱きたい、マユじゃなきゃだめだ、って思ったんだ。」
 「え?着替え?覗いてたの?」
 「え、い、いや、一度だけ、ぐ、偶然だぞ、偶然。」
 「ケン兄だから許す。」マユミは笑った。「いつなの?それって。」
 「こないだ。」
 「その後も一人でエッチした?」
 「その晩から、妄想の対象が具体的にマユだけになったんだ。」
 「あたしもケン兄のエッチしてる逞しい身体を見たら、もうこの人にだけ抱かれたい、って思うようになったんだよ。」
 「そ、そうなのか・・・。」
 「体育祭で黒のTシャツ使うって嘘ついて、ケン兄に借りに行ったぐらいだもん。」
 「あ、こないだのあのTシャツ?」
 「ケン兄のTシャツ着てるとね、実際にケン兄に抱かれてる感じがして身体が熱くなるんだ。だからあのTシャツ着てあたしも一人エッチに耽ってた。」
 「女のコも、っていうか、マユも一人エッチなんかするんだ・・・。」意外そうな顔でケンジはそう言った。
 「ケン兄のこと考えると、手が知らないうちにおっぱいとかあの部分とかを触ってるんだよ。」
 「そ、そうなのか・・・。」
 「でも、やっちゃった後は、とっても虚しくて切ない気分になってた。」
 「マユ・・・・。」
 「でも、やっと本物のケン兄に抱いてもらえた。」マユミは愛らしい顔で笑った。
 「俺たち、ずいぶん遠回りしたみたいだ。」
 「壁一つ隔てて、お互いのこと想い合ってたんだね。」
 「マユ・・・」ケンジは優しくマユミにキスをした。マユミはケンジの背中に腕を回した。そしてそのまま二人は柔らかなカーペットの上に倒れ込んだ。
 「ケン兄、横になって。」
 「マユは上になるのが好きなんだね。」
 「ううん。今日は・・・。」マユミはそう言いながらケンジの黒いビキニの膨らみに手をあてた。「マ、マユ?」
 ケンジのその部分はすでに大きく硬く怒張していた。マユミはおもむろにケンジの股間に顔を埋めた。
 「マユっ!」ケンジは慌てた。
 そしてマユミは彼のショーツを一気に脱がせ、飛び出して跳ね返ったそれに舌を這わせ始めた。
 「だ、だめだ!マユ、やめろ!」ケンジは上半身を起こし、真っ赤になって叫んだ。
 上目遣いにケンジを見上げたマユミは言った。「オトコの人ってこういうことされたいんでしょ?」
 「む、無理しなくていいよ。マユはそんなことしなくてもいいから。」
 「え~。気持ち良くしてあげたい。ケン兄を。」
 「い、いいよ、マユ、お、俺、おまえにそんなことされなくても、ああっ!」
 マユミはケンジの制止も聞かずその大きなペニスを咥えた。そして口を前後に動かし始めた。
 「う、ううっ!だ、だめだ・・・マ、マユ・・・・・。」
 マユミが舌を使ってその先端を舐め始めた時、「あ、ああっ!マユ、マユっ!やめろっ!」ケンジはとっさにマユミの口から自分のペニスを引き抜いた。そして自分の手でそれを握りしめると、「ぐっ!」と言って身体を仰け反らせた。ケンジが慌てて両手で自分のペニスを包みこんだ瞬間、びゅるっ!びゅくびゅくびゅくびゅく!射精をしてしまった。
 「も、もう、ケン兄。なんで一人でイくの?あたしの口の中に出せばいいのに・・・。」
 「ばっ!バカ言うな!そ、そんなことできるわけないだろっ!」
 「なんで?」
 「お前にそんなことさせたくない。お前はAV女優じゃない。」
 「え?なんでこれがAV?」
 「だ、だって、AVでしかやんないだろ、そんなこと。」
 「もしかしてケン兄、AVも隠し持ってるんだ。」
 「そ、そりゃあ、俺もオトコだからな。DVDの一枚や二枚・・・・。」
 「今度見せて。あたしも研究したい。」
 「研究?何を?」
 「どうすればオトコの人が気持ち良くなるのか。」
 「いや、あれは演技であって、虚構の世界だから。」
 「ケン兄のためにいろんなテクニック身につけたいし。それに、ケン兄の持ってるAVだったら、ケン兄の好きなテクニックでイかせたりイかされたりするんでしょ?あたし、ケン兄にもっと気持ち良くなってほしいもん。」
 「あのな、マユ、オトコってのは、キホン射精すればいつでも気持ちいいもんなんだ。だから逆に俺がお前をどうしたら気持ち良くできるかってことを、俺が考えるべきなのであって、」ケンジが真っ赤になって熱弁している言葉をマユミは冷静に遮って言った。「あたし、キホンケン兄に抱かれるだけで気持ちいいもん。」
 「マユ・・・・。」
 「じゃあさ、AVみたいにケン兄、あたしを相手にやってみてよ。」
 「えっ?!」
 「女優さんをイかせるテクニックを再現してみて。」
 ケンジは目を輝かせた。「よ、よしっ!任せろ、マユ。」
 「あはは。俄然張り切りだしちゃったね。ケン兄。」
 マユミはその場に横たわった。コーヒーカップとチョコレートの載ったトレイを脇にどけて、ケンジはその白く柔らかな身体に自分のカラダを重ねた。
 ケンジはマユミの背中に腕を回し、自分の口で彼女の唇を吸い、舌で舐め、時折その舌を口の中に差し入れた。ぴちゃぴちゃと音を立てながらケンジはマユミのマシュマロのような唇を味わい続けた。「ん、んん・・・。」マユミは恍惚の表情で応えた。

1-(8)

 やがてケンジは唇を移動させた。首筋、鎖骨、そして乳房へ。左手で彼女の右の乳房をさすりながら、左の乳首を口で捉えた。そして舌でそれを転がした。「あ、あああ、ケン兄。いい気持ち・・・・。」背中から右手を移動させ、彼はマユミのショーツの中に指を忍び込ませた。そして柔らかく温かな谷間に中指を挿入させた。「あ、ああん・・・。」ゆっくりと奥まで指を入れ、抜きながらクリトリスに触れることを繰り返した。マユミの息が荒くなってきた。胸が激しく上下し始めた。
 ケンジは優しくマユミのショーツを脱がせると、さっきマユミが自分にしてくれたように彼女の股間に顔を埋め、舌を使ってクリトリスと谷間を愛撫した。マユミの身体は火照り、びくんびくんと反応し始めた。「ああ、ケン兄、ケン兄、熱い、熱くなってる。」ケンジはその行為を続けた。マユミの谷間から愛液が溢れ、カーペットにしたたり落ち始めた。
 「あ、ああ、ケン兄、入れて、あたしに入れてっ!」マユミが喘ぎながら叫んだ。ケンジはすでに大きく怒張して反り返っているペニスをマユミの谷間に宛がった。
 「中に、入れるよ、マユ。」
 「早く来て、ケン兄、早く繋がりたい!お願い!」
 んっ!ケンジは勢いをつけて腰を前に突き出した。「ああっ!」
 ケンジはゆっくりと動いた。それをしばらく続けたあと、マユミの身体を横に回転させ、ペニスを抜くことなく後ろ向きにした。四つん這いになったマユミをバックから責め始めたケンジはだんだんと絶頂が近づくのを感じ始めた。
 「マ、マユ・・・・。」
 「ケン兄、イっていいよ。あたしの中で、イっていいよ。」
 ケンジは激しく腰を前後に動かし始めた。
 「ああっ!ケン兄!イく、あたしイっちゃう!ああああっ!」
 マユミの身体がびくびくと痙攣し始めた。ケンジはさらに大きく腰を動かした。ぱんぱんと二人の身体がぶつかり合う音が部屋に響いた。「うううっ、ううう!」ケンジは呻いた。マユミは全身を揺らしながら叫ぶ。「イ、イってる!ケン兄!あたし、ああああ!ケ、ケン兄もイって!イって!」
 「ああああっ!イ、イくっ、イくっ!」ケンジも叫んだ。「イくよ、マユ、マユっ!ぐううっ!」
 びゅるるっ!びゅるっ!びゅくっ!びゅくっ、びゅくびゅくびゅく!「あああーっ!ケン兄ーっ!」「マ、マユーっ!」どくん!どくん!どびゅっ!どびゅっ!どくどくどくどく・・・・・。

 ケンジの胸に顔を埋めたまま、マユミは静かに言った。「ケン兄は、どんなポジションが好きなの?」
 「え?ポ、ポジション?」
 「そう。」
 「マユが相手なら、何でもいい。」
 「そうじゃなくて、やっぱり気持ちよさが違うんでしょ?ポジションが変われば。」
 「だから、オトコと言うのはだな、マユ、射精するとき強烈な快感を感じるようにできていて、ポジションがどうあれ最終的に射精できれば単純にそれでいいわけで、」マユミが遮って言った。「じゃあ一人エッチでも同じってこと?」
 「えっ?」
 「だって、そういうことなんでしょ?射精しさえすれば気持ちいいんなら。」
 「そ、それは違う。違うぞ、マユ、お、俺はお前を抱いてイくのと、一人で妄想して射精するのとでは感じ方が全然違う。」
 「いや、ケン兄、さっき言ったことと矛盾してるから。」
 ケンジは穏やかな口調で言った。「ほんとなんだ。マユ。俺、マユとセックスするようになって、本当の気持ちよさがわかったんだ。」
 「本当の気持ちよさ?」
 「大好きな人の温もりだとか、吐息だとか、肌の柔らかさだとか匂いだとかを直接感じる気持ちよさ。」
 「大好きな人?」
 「そう。マユ、おまえだ。」
 「ケン兄・・・・。」
 「だから時には射精しなくてもお前を抱いているだけで心地よくてたまらない時もあるんだぞ。」
 「そっか、だからポジションはあんまり関係ないんだね。」
 「ま、そういうことだな。」ケンジはマユミをそっと抱きしめた。「マユ、」
 「なに?」
 「俺がお前に入っていく時、まだ痛いか?」
 「ううん。もう痛みなんて全然感じないよ。」
 「そうなのか?」
 「とっても気持ちいい。それだけしか感じない。」
 ケンジは嬉しそうに笑った。「良かった。でもさ、俺、あれから毎晩お前を抱いて、イかせてもらってるけど、」
 「そうだね、今日で四日連続のエッチだね。」
 「お前は、その、イ、イけてるのか?」
 「うーん・・・。どういうのをイくって言うのかわからないけど、何か気持ち良さが自分でコントロールできなくなって、カラダの中から何か熱いモノが弾け出しちゃうような感じ・・・・かな。」
 「そんな感じなんだ・・・。」
 「うん。あたしのイく、っていう感覚は、そんな感じ。ケン兄は?」
 「俺?俺は、急速に腰の辺りが痺れ始めて、その瞬間、カラダが浮いたような、どこかに持ってかれるような、そんな感じ。」
 「そうなんだ。」
 「オトコはさ、だいたいいつも射精すればそんな感じになれるけど、女のコはいつもそうってわけじゃないんだろ?」
 「あたしもそんな感じになったのは昨日の晩あたりからだけど、でもね、あたし大好きなケン兄が一生懸命になってあたしの中で動いている、っていうことが、とっても気持ちいいんだよ。心理的な快感っていうかさ。」
 「そうなのか・・・。なんだか、申し訳ないな・・・。」
 「どうして?あたし満足だよ。それに今日も昨日も、カラダの快感炸裂しちゃったからね。」マユミは微笑んだ。
 「マユ・・・。」
 「もうケン兄とのセックスは、心も身体もあたし病みつき。」
 「良かった・・・・。」ケンジはマユミの身体を優しく抱きしめた。「俺も、お前の中にいる時は、心から癒されるし、イく時の快感も、一人でやってた時とは比べものにならないぐらい強烈なんだ。」
 「嬉しい。」マユミもケンジを抱き返した腕に力を込めた。

《2 興味》

2-(1)

 「ただいまー。」
 「おかえり、ケン兄。」
 肩からエナメルバッグを下ろしながらケンジが言った。「あれ?マユ、どうしたんだ?そんな格好で。」
 部活帰りのケンジを待っていたのは、ジーンズ、Tシャツにエプロンをつけたマユミだった。「ハダカにエプロンの方が良かった?ケン兄。」
 「ばっ!バカなこと言うなっ!」ケンジはみるみる赤面した。
 「今日はママが懸賞で当たった温泉旅行に行ってるから、あたしがごはん作ってるんだ。」
 「そうか、そんなこと言ってたな、母さん。で?父さんは?」
 「パパも無理矢理連れてかれた。」
 「無理矢理?」
 「そ。」
 「え?と、ということは・・・。」
 「今夜はケン兄と二人っきりだよ。」マユミは笑顔を弾けさせてはしゃいだ。
 「そうか!マユ、今夜は心置きなくいちゃつけるな。」ケンジはマユミを後から抱きしめた。
 「やだー、ケン兄のエッチ。」

 二人は、マユミ手作りのパスタを食べ始めた。
 「マユの作るパスタはうまい。いつもながら。」
 「ありがとう、ケン兄。嘘でもうれしい。」
 「嘘じゃない。前からそう思ってた。」
 マユミはにこにこしながらケンジの顔を見つめた。「ケン兄って、何でも美味しそうに食べるから好き。」
 「だって本当にうまいもん。」
 「サラダも食べてね。」
 「うん。」
 二人はまるで新婚の夫婦のように睦まじい夕餉のひとときを過ごした。
 食後にはコーヒーが出てきた。
 「なんて贅沢な夕食なんだ。マユ、ありがとうな。」
 「ううん。ケン兄のためだもん。」
 「なんか、ちょっと悪いな・・・・。」
 「気にすることないよ。あたしが好きでやってることだから。」
 「お、俺もマユにいろいろしてやりたいけど、何もできなくて・・・・。ごめん。」
 「じゃあさ、またチョコ買ってきてよ。」
 「そんなんでいいのか?」
 「ケン兄が買ってくれるチョコ、それだけで格別においしいから。」そう言って笑うマユミを見て、ケンジは胸が締め付けられた。
 食卓で食後のコーヒーを味わいながら、ケンジは愛しいマユミの後ろ姿を見つめていた。マユミは食器を片付けながら言った。「ケン兄、」
 「なんだ?」
 「今日はいっしょにお風呂入ろうよ。」
 ぶ~っ!げほげほげほ!「な、何だって?!」
 マユミは振り向いていった。「だって以前は毎日いっしょにお風呂入ってたじゃん。」
 「お、お前、も、もう俺たち年頃の、仮にも男女だぞ!い、い、いっしょに風呂だなんて・・・。」
 「今さら何照れてんの?それ以上の関係じゃない、あたしたち。」
 「そ、そりゃまあ、そ、そうだけど、」
 「変なケン兄。」

 「さ、先に入ってるから、マユ。」
 「うん。」
 ケンジは服を脱ぎ、浴室に入った。そして掛かり湯をして湯船に身体を浸した。
 「ケン兄、入るね。」ドアの外で声がした。「ほ、ほんとに入ってくるのか?マユ。」
 「もう脱いじゃったもん。今さら入るなって言われても無理だよ。」
 ケンジは首まで湯につかってすでに赤くなっていた。すぐにマユミが浴室に入ってきた。湯気の中で白く柔らかそうな肌がますます輝いて見えた。
 「ケン兄、赤くなってるよ。のぼせたんじゃない?」
 「お、お湯にのぼせたんじゃない。お前のハダカにのぼせたんだ。」
 「うれしい。でもそのままじゃほんとに茹だっちゃうよ。先に身体洗って。」
 「え?あ、ああ、そうだな。」ケンジは身体中を真っ赤にして自分の股間をしっかりと押さえながら湯船から出た。そしてマユミに背中を向けながらシャワーの取っ手に手をかけた。
 「なに?ケン兄、なんなのその態度。」
 「だ、だって恥ずかしいじゃないか。」
 「恥ずかしい?あたしともっと恥ずかしいこといっぱいしたのに?」
 「あ、あれとこれとは・・・・・。」
 ケンジの身体はあらためてみても逞しかった。がっちりとした上半身と丸くて形の良いヒップ。プロポーションはモデル並みだった。マユミはその後ろ姿を見つめてため息をついた。「ケン兄があたしのものだなんて、なんかもったいない気分。」
 「俺も、お前が妹で最高に幸せな気分なんだぞ。」
 「ふふっ。嘘でも嬉しい。」
 「だから、嘘じゃないって。」
 ケンジはシャワーを済ませて再び湯船に戻るときも股間を両手で押さえてマユミから目をそらして真っ赤になっていた。「マ、マユ、交代だ。」「うん。」マユミが湯船から出た。
 ケンジは、マユミがシャワーを浴びている間、湯船の中からまた首だけ出してその美しい身体をずっと見つめていた。濡れたショートヘアーが妙に色っぽかった。ケンジの鼓動はどんどん速くなっていった。
 「あたしも中に入るね。」
 「えっ?!」
 「いっしょに入ろうよ。」
 「そ、それは・・・・。」
 ためらうケンジを尻目にマユミはケンジと対面して湯船に入った。「さすがにもう狭いね。二人だと。」
 「そ、そうだな。」
 ケンジとマユミは向かい合って座った。ケンジは必死で股間を押さえ、相変わらずうつむいてマユミと目を合わせようとしなかった。
 「もう!ケン兄ったら、ほんとにシャイなんだね。」
 「マ、マユ、お、俺・・・・。」
 「わかってるよ。ケン兄。もう押さえきれないんだよね。」
 マユミはケンジの首に腕を回してキスをした。そうしてしばらくの間、二人はお互いの唇と舌の感触を味わった。しばらくしてマユミは湯の中で硬く大きくなったケンジの分身を向かい合ったまま自分の秘部に導いた。「マ、マユっ・・・。」いつもとは違って、ケンジがマユミの中に入るのには抵抗があった。ぎしぎしとではあったが、すでに受け入れの準備ができていたマユミの中に、すぐにケンジ自身は入ってしまった。「あ、ああ・・・ケン兄・・。」しかし、挿入の時の抵抗感によって、ケンジはいつもより早くイきそうだった。「マ、マユ、俺、もう・・・・。」
 「ケン兄、いいよ。イっても。」
 「で、でも・・・・。」
 「あたしは大丈夫。後でゆっくりイかせてね。」
 マユミがゆっくりとケンジの上で腰を上下に動かし始めた。「あ、ああああ・・・・。」ケンジは苦しそうに顔をゆがめ、真っ赤になってのけぞった。「イ、イくっ!ぐっ!」びゅるるっ!びゅくん、びゅくん!びゅくびゅくびゅく・・・・。二人はそのまましばらく抱き合ったまま、ケンジの呼吸が収まるのを待った。


2ー(2)

 ケンジはマユミの部屋のベッドに横になっていた。額に濡れタオルが乗せられている。
 「ごめん、マユ。」
 マユミはベッドの横から肘をついてケンジの顔をのぞき込んでいた。「大丈夫?ケン兄。」
 「情けないな、俺。」
 「珍しいね。ケン兄が湯あたりするなんて。」
 「いろんな意味でのぼせちまった・・・・。」
 「エアコン強めにかけてるから、しばらくそうやってじっとしてるといいよ。あたし、コーヒー淹れてくるね。」マユミはそう言い残して部屋を出た。ケンジはマユミのベッドの甘い香りを嗅いでいるうちに、少しずつ気分が落ちついてきた。そしてゆっくりと起き上がると、下着姿のまま自分の部屋に入って、買い置きしていたチョコレート・アソートの箱を机の引き出しから取り出し、マユミの部屋に戻った。
 しばらくしてマユミがトレイに二つのカップと香しい香りのコーヒーが入ったデキャンタを載せて部屋に戻ってきた。「ケン兄、もういいの?大丈夫?」
 「ああ。もうすっかり。本当にごめんな、マユ。」
 「いいの。気にしないで。」
 「お詫びに、これ。」ケンジはチョコレートを差し出した。
 「わあ!うれしい。いつもありがとうね。」
 「これぐらいしか・・・できなくて、本当にごめん。」
 「もう何度も卑屈に謝らないでよ。」
 「だ、だって今日は食事の準備をしてもらったり、湯あたりして介抱されたり、何より俺、がまんできずに先にイっちゃって、お前をイかせられなかったってことが、すっごく悔しくて・・・。」
 「あたしは平気だって。もういいからコーヒー飲んで。ケン兄。」
 「うん。マユ、ありがとう。」
 「でもさ、本当にケン兄ってシャイなんだね。」
 「こんなのをシャイって言うのかな・・・。」
 「ケン兄のそれ、実は萌え要素なんだよ。」
 「萌え要素?」
 「そうだよ。あたしの学校の部活の女子、ケン兄のこと気にしているコ、いっぱいいるよ。」
 「え?お前のいる水泳部に?」
 「うん。あたしマネージャーだからみんなと話すんだけど、身体つきもルックスもいいし、照れてすぐに赤くなるところがいいんだって。」
 「な、なんでお前んとこの女子水泳部員が俺のことを知ってるんだ?」
 「大会でよく一緒になるじゃん。ケン兄、熱い視線感じないの?」
 「大会の時にそんな余裕はないな。」
 「あたし、大変なんだから。」
 「何が?」
 「ケン兄を紹介しろ、アドレス教えろっていつも誰かに言われるんだよ。」
 「で、教えてるのか?」
 「教えない。あたしだけのケン兄だから。」マユミは笑った。「それとも、いろんな女のコと付き合いたい?」
 「いや、断る。めんどくさい。」
 「『めんどくさい』?何その理由。」
 「だって、そのコのこと、いろいろ知るのに時間がかかるし、メールが来れば返事しなきゃなんないし、」
 「ま、確かにそうだね。それに、」マユミがクスッと笑ったので、ケンジはコーヒーをの飲む手を止めた。「何だよ。」
 「たくさんの女のコと付き合ったりしたら、スケジュールの調整が大変だもんね。」
 「何言ってんだ。俺、そんなチャラいキャラじゃないからな。」
 「素質はあると思うけどな。」
 「マユ、お前、俺がそんな風に何人も女子と付き合ってもいいのかよ。」
 「いろんなタイプの女のコが抱けるよ。高校生の男子としては超おいしい話じゃない?」
 「ばかっ!」ケンジは赤くなってまたコーヒーカップに口をつけた。
 「それだよ、それ。その仕草が萌え要素。」
 「からかうなよ。まったく・・・・。」
 二人はしばらくチョコレートとコーヒーを楽しんだ。
 「ねえ、ケン兄。」
 「何だ?」
 「ケン兄ぐらいの男のコってさ、やっぱりイっちゃうの早い方なのかな。」
 「そ、それは・・・・。お、俺の場合、大好きなお前のハダカ見たり、肌に触れたりしたらもうどんどん興奮しちゃうからな。い、入れたらすぐにでも出そうになる。」
「そうなんだー。」
 「それは俺も悩んでる。俺だけ先にイくのはとっても悔しい。負けた気がする。」
 「でも、あたしもケン兄がイくとき、たぶん何度も一緒にイけたよ。」
 「そうなのか?」
 「うん。あたしもケン兄のハダカ見たり、肌に触られたりしたら身体がどんどん熱くなってくるもん。」
 「へえ。女のコもそんなもんなのか。」
 「あたしが特別なのかも・・・ううん、ケン兄があたしにとって特別なんだね。」マユミはそう言ってケンジに抱きついた。ケンジはキスを返しながらマユミの背中に腕を回した。
 「今日はさ、」マユミが小声で言った。「ベランダでやってみようよ。」
 「ええっ?!」
 「大丈夫だよ。部屋の灯り消せば暗くて外からは見えないよ。」
 「そ、それは・・・・。」
 二人の家は住宅地の中にある。二階のベランダから見渡せば近所の家がたくさん並んでいる。当然昼間であれば、それらの住宅の庭からケンジたちの部屋のベランダは丸見えだ。
 「でも、もし誰かに見られたりしたら、どうするんだよ、マユ。」
 「見せつけてやりたい気分。」
 「おいおい・・・。」
 二人は部屋の灯りを消して、そっと暗いベランダに出た。見渡すと、遠く近くの家々の窓に明かりが灯っているのが見えた。時折窓を横切る人影も見える。
 「もしこっちを見ても、見えないよきっと。」 
 「たぶんな。」
 マユミが先にケンジにキスを求めた。二人は下着姿でそこに立ったまま抱き合ってむさぼるようにキスを続けた。ぴちゃぴちゃ、とお互いがお互いの唇を味わう度に音がした。ケンジはその場に跪いた。そうしてマユミのショーツをゆっくりと降ろしながら、彼女の腹部から舌を這わせていった。「ああん・・・。」マユミは思わず喘ぎ声をだした。


2-(3)

 「マ、マユっ!あんまり大きな声、出すなよ。」
 マユミはとっさに自分の口を手で押さえ、ケンジを見下ろして大きくうなずいた。
 ケンジはあらためて舌をマユミの下腹部に這わせ始めた。その舌が繁みをかき分け、秘部に達すると、マユミはことさら強く身体を震わせて喘いだ。そしてしばらくケンジはマユミの潤った谷間を慈しむのだった。ケンジの唾液とマユミの中からわき出す雫がいっしょになり、彼女の太股を伝って幾筋も流れ落ちていった。
 「ケ、ケン兄、あ、あたしもしたい。」マユミは小声でそう言ってケンジを立たせ、自分が跪いてケンジがしたのと同じようにショーツを下にずらしながら、彼のものを口で求めた。ケンジのそれはすでに大きく怒張し、天をさしてビクン、ビクンと脈動していた。「今度は我慢してね。」
 「マ、マユ、や、やっぱり俺はいいよ、うっ!」
 マユミは目を閉じてケンジのペニスに舌を這わせ始めた。それは温かく、心地よい感触だった。自分の中に何度も入ってきたその愛しいものをマユミは心を込めて咥え、舌や唇で刺激した。
 「う、ううう・・・マ、マユっ。」
 マユミは口を離して上目遣いに言った。「気持ちいい?ケン兄。」
 「う、うん。」ケンジは目を固く閉じ、苦しそうな表情でやっと言った。「も、もういいよ、マユ。また俺だけイっちゃうよ。」
 「そう?」
 ケンジは息を荒くしたままマユミを立たせた。そして彼はマユミの濡れた唇を吸い、口のまわりを舐めた。「ごめん、マユ、無理させちゃって。」
 「無理?」
 「お、俺のを咥えるの、イヤだろ?」
 「ううん。あたし好きだよ。」
 「えっ?だ、だってオトコのアレって、グロテスクだと思わないのか?」
 「ケン兄のは全然平気。っていうより可愛くて愛しい。頬ずりしたくなる。」
 「そ、そうなのか?」
 「うん。だからあんまり気にしないで。あたし全然無理してないから。」
 「そうか。」
 ケンジはマユミを立たせたまま右手で彼女の左脚を持ち上げた。そして、少し身をかがめてケンジはマユミの秘部に、愛撫されますます硬く大きくなった自分のものを宛がった。「入れていい?マユ。」
 「うん。来て、ケン兄。」
 ケンジのペニスがマユミの中にぬるりと入り込んだ。「あ、あああ、ケン兄。」
 ケンジはマユミの脚を持ち上げたまま左腕で彼女を強く抱きしめた。そしてゆっくりと腰を動かし始めた。
 「んっ、んっ・・・・。」マユミはまた自分の口を手で押さえ、目を閉じてわき上がる快感に身を任せ始めた。「あ、あああ・・・・」ケンジは急速に興奮が高まりだし、今にもイきそうになった。
 ガタン。突然近くで大きな音がした。マユミとケンジはとっさに動きを止め、息を潜めてその場に凍り付いた。
 「なに?」マユミがケンジに囁いた。「じっとして、マユ。」「うん。」ケンジはマユミを抱いたまま、様子をうかがった。
 にゃーお・・・。音がした方から声がした。
 「大丈夫。猫だったみたいだ。」
 「びっくりした・・・・。」
 ケンジはまたマユミにキスをした。マユミは安心したように身体のこわばりを解き、ケンジの腕にその身を任せた。
 再びケンジは腰を動かし始めた。「あ、ああ・・ケン兄、いい気持ち・・・。とっても・・・。」次第に荒くなる息をマユミの首筋に吐きながらケンジは動きを速めた。「ケ、ケン兄、あ、あたしもうすぐ、あ、あああああ・・・・。」
 「いつでもいいよ、マユ、イっていいよ。」
 マユミは両脚を大きく持ち上げ、ケンジの腰に回して締め付けた。そして腕を彼の首に回してしがみついた。ケンジは両腕をマユミの背中に回し、強く抱え込んで身体を揺すった。「ああ、お、俺ももうすぐ・・・・マ、マユ・・・・。」
 「イ、イって、ケン兄、イって!」
 「あああああ・・・、イ、イく、イくよ、マユ、マユっ!」「ケン兄!あたしもっ、あああああ!」
 びゅるるっ!びゅくっ!びゅくびゅく、びゅる・・・どくっ、どくっ、どくんどくん、どくどくどくどく・・・・・。ケンジの放出した大量の液はマユミの秘部から溢れ出し、ベランダの床にぼたぼたと落ちた。

 「ケン兄の腕力ってすごいね。」
 「え?」
 「だって、あたしを抱え上げたままイけるんだもん。」
 「そ、そりゃまあ、毎日鍛えてるからな。」
 二人はマユミのベッドに全裸のまま横になり、ケンジは優しくマユミの髪を撫でていた。
 「マユもイけた?」
 「うん。いっしょにイけたみたいだね。」
 「猫のおかげ。」
 「え?」
 「あの時、猫がじゃましてくれたお陰で、俺、もった。」
 「そうだったんだー。」
 「実は、またマユより先にイっちゃうのかも、って焦ってたんだ。」
 「でも、どきどきだったね。」
 「そうだな。」
 「向かいの家の窓から誰かがこっちを見てたって知ってた?」
 「な、なんだって?!」ケンジは大声を上げた。そしてみるみる真っ赤になった。
 「嘘だよ。」
 「そ、そんな冗談やめてくれよ。」
 「ごめん。またケン兄の赤くなるとこ見たかっただけ。」
 「こいつめっ!」
 ケンジはマユミの頭を軽く小突いた後、その逞しい腕で彼女をぎゅっと抱きしめた。


《3 ケネスの仲裁》

3-(1)

 週明けの月曜日、夕方の海棠家の食卓はケンジの所にだけ箸が揃えて置かれたままだった。
 「ケン兄遅いね。」
 「今度の土曜日、大会だからね。」母親が言った。「今週は部活の時間も延長だって言ってたわ。あんた知らなかったの?」
 「知ってたけど・・・・。」
 「ふうん・・・・。」母親は怪訝な顔でマユミを見た。
 「何よ。」
 「ケンジのこと心配してるあんたも久しぶりだな、って思ったのよ。」
 「そ、そりゃ、に、肉親だもん。少しは心配するよ。」
 「確かにここんとこあんたたち妙に仲良しだもんね。何かあったの?」
 「え?べ、別に何もないよ。」
 「あるわけないか。高二になってからあんたケンジのこと脂臭い、オトコ臭いって避けてたりしたしね。」
 「け、ケン兄の部屋は、確かにオトコ臭くって・・・。」マユミは野菜ミックスグレープジュースを飲み干した。
 「なに?あんたケンジの部屋に行ったりするの?」
 「え?あ、あの、この前Tシャツ借りに行ったときにさ、そう思ったんだよ。」
 「Tシャツ?ケンジの?なんで?」
 「も、もういいでしょっ!」マユミは頬を赤らめて叫び、食器を持って立ち上がった。「ごちそうさまっ!」
 マユミはさっさと、二階に上がっていった。
 「よく解らない子だわね。我が子ながら。」
 「ま、年頃だからな。」父親が一言つぶやいた。

 遅く帰ったケンジが入浴を済ませて二階に上がってくるのをマユミは待ち構えていた。ケンジの部屋の前でマユミは言った。「ケン兄、いっしょにコーヒー飲もうよ。」
 ケンジの返事はちょっと意外なものだった。「あ、う、うん。マユ、今日は遠慮するよ。」
 マユミは一瞬絶句してケンジの顔を見た。「そ、そうか、疲れてるんだね。」
 「悪い。もうくたくたで・・・。俺、寝る。じゃあなマユ、おやすみ。」
 マユミの返事も聞かずケンジは自分の部屋に入った。閉じたドアの前に立ったマユミは一つため息をついて、自分の部屋に入っていった。

 火曜日も水曜日もケンジの反応は同じだった。マユミは日に日にケンジへの想いが募り、夜はケンジの身体の熱さを想っては自らを慰めるのだった。
 そして木曜日。
 「・・・・ケン兄、」
 「マユ、ごめん。最近相手してやれなくて。」
 「あたし、寂しい。何だかケン兄がほんとに遠くへいっちゃう気がしてきた。」
 「大げさだよマユ。大会が終わったらまたいっしょにチョコレートタイムしよう。」
 「あたし、待てない。そんなに。」
 ケンジが少しむっとして言った。
 「俺だって、お前といれば癒される。でも、大会も大事なんだ。わかってくれよ。」
 「癒してあげるよ。いつでもあたし、ケン兄を癒してあげられるから。」マユミは少し涙声になっていた。
 「もう少し我慢してくれ。マユ、お願いだ。」ケンジはそう言ってマユミの肩に手を置いた。
 しかしマユミはその手を振り払うと強い口調で言った。「もういいよ!ケン兄。あたしの気持ちなんかわかってくれないんだ。」そして彼女は自分の部屋に戻り、ドアを一方的に閉めた。

 「あんたたち、ケンカでもしてんの?」
 金曜日の夕食時、母親が切り出した。明日の大会に備えて、前日の今日はケンジの帰りは早く、いつものように家族四人で食卓を囲んでいた。
 「え?」マユミが手を止めた。「な、なんで?」
 「今朝から会話がほとんどないじゃない。ついこの前は何やらひそひそ囁き合って仲良さげだったのに。」
 「そんなことしてた?」
 「あのね、兄妹ってのは一生で一番長く付き合う人間なんだからね。いがみ合ったりしたらきついわよ。って、こないだ言わなかったっけ?」
 「べ、別にケンカなんか、してないよ。なあ、マユ。」
 「う、うん。そうだよ。」
 「ならいいけど・・・。」
 しばらくの沈黙の後、ケンジが口を開いた。「そうそう、明日の大会、お前も来てくれるだろ?マユ。」
 「・・・・・行けないかも。」
 「何で?あんたの学校の水泳部も何人か出場するんでしょ?」母親が怪訝な顔で言った。
 「うちからは出ないよ。弱いから。」
 それだけ言うとマユミはさっさと食器を片付けて二階へ上がっていった。
 「やっぱりあんたたちケンカしてるんじゃない。」
 母親の言葉に応えもせず、ケンジは一つため息をついて立ち上がった。「明日早いから、俺、もう寝るよ。」

 土曜日。ケンジは競泳の大会に出場するため、暗い内から家を出た。遅く起きたマユミは母親と向かい合って朝食をとっていた。
 「あんたも行くでしょ?ケンジの水泳の大会。」
 「友だちと約束があるから行かない。」
 「何それ。冷たい妹ね。お兄ちゃんのことが気にならないの?」
 「別に。」
 「母さん10時頃には家を出るから。」
 「あたしその前に出かける。」
 「もう、勝手にしなさい。」
 しばらく黙ったままトーストをかじっていたマユミが唐突に口を開いた。「そう言えば、ケン兄が外国人を明日連れてくるって本当?」
 「そうなのよ。ホームステイをうちで引き受けることになってね。」
 「それって誰?」


3-(2)

 「ケン兄の学校に部活留学でやってきている男の子らしいわよ。」
 「部活留学?」
 「そ。カナダの全国中学生大会で3位だったとかいう子。帰国前の3日間、うちにホームステイするんだって。」
 「み、3日間も?!」
 「そうなのよ。2泊3日。」母親はため息をついて続けた。「英語なんてみんなしゃべれないのに、どうしろっていうのかしらね。」
 「じゃ、じゃあ、その人、二晩もケン兄の部屋に泊まるわけ?」
 「あんたの部屋に泊めるわけにはいかないでしょっ。」
 「最低・・・・。」
 「なに?あんたその男の子を部屋に泊めたいわけ?」
 「そんなわけないでしょ!もう、ほんっとに最低。」

 日曜日の午後。ケンジはその外国人を連れて帰ってきた。
 「紹介するよ。こいつはケニー。ケネス・シンプソン。俺と同い年。」ケンジが言った。
 「い、いらっしゃい。ゆっくりしていってね。」母親が引きつった顔でそう言うのをマユミは隣で少しあきれ顔で見ていた。ケニーとかいうその少年は右手を母親に差し出しながら言った。「よろしゅう頼みますわ。わいケネス・シンプソン言いますねん。愛称ケニー。二晩やけどお世話になります。」
 「ず、ずいぶん流暢な、」母親が口をぽかんと開けてつぶやいた。「関西弁だな。」父親が背後で腕をこまぬいて同じようにつぶやいた。

 その日の夜。ケニーと共に食卓を囲んだケンジたちは、いつもと違う雰囲気での夕食をとっていた。
 「で、ケニーはどうしてそんなに流暢な、その、関西弁をしゃべるのかね?」父親が切り出した。
 「わい、10歳まで大阪に住んでましてん。母親が大阪のおばはんですよってにな。ほんで小学校高学年の時に父親の母国カナダに引っ越したっちゅうわけですねん。」
 「ほう・・・。」
 「カナダでは水泳で記録を持ってるんだって?」母親が訊いた。
 「へえ、中学生の時に全国大会まで行きましてな、100mバタフライで3位に。」
 「そりゃあすごい!」
 「わい、自分の能力を伸ばすために今回日本に来ましてん。ほんで水泳の強豪校に留学しとるっちゅうわけですねん。」
 「バタフライか・・・。ケンジとライバルってわけね。」母親がケンジをちらりと見て言った。
 「それはそうと、ケンジの妹はん、ごっつかわいらしいな。噂以上や。」
 「え?」マユミが顔を上げた。
 「ケンジもイケメンやけど、妹はんも素敵な娘さんや。わいもこんな妹やったら毎日なんか買うてきたったるけどな。マユミはん・・・でしたっけ?」
 「そう。マユミだ。」ケンジがぽつりと言った。
 「マユミはん。名前もいけてるやんか。わい、惚れてまうな。」
 「ふざけんな。ケニー。」
 「何やの、冗談やんか。なにキレてんねん、ケンジ。」
 「もういい。部屋に行くぞ。早く片付けろ。」ケンジは食器を持って立ち上がった。
 「ごちそうさま。めっちゃうまかったです。」ケネスは丁寧に手を合わせた後、慌てて立ち上がりケンジの後を追った。「待ってえな、ケンジ。」そしてどたどたと階段を上がっていった。
 「親しそうだな。」後ろ姿を目で追って父親が言った。
 「あれを『親しい』というのかしら・・・・。」母親も言った。

 ケンジの部屋に入ったケネスは、ドアを開けて中に入るなり言った。「さっき荷物置きに来たときも思ったんやけど、」
 「何だよ。」ケンジが無愛想な口調で言った。
 「この部屋、女の子の匂いがするな。」
 「ぎくっ!」
 「ケンジに彼女、おったんかいな。」
 「い、いないよ、彼女なんか。」
 「ほんまか?」
 「いないって。神に誓って。」
 「誓わんでもええ。」ケネスは鼻をクンクンと鳴らした。「なんでやろなあ・・・・。」ケネスはケンジの顔を見た。
 ケンジは目をそらして言った。「コーヒー飲むか?ケニー。」
 「おお、ええな。わいコーヒー好っきゃねん。ごちそうしてくれんの?」
 「ああ。待ってな。」
 ケンジは階段を降りた。丁度降りたところでマユミと鉢合わせをした。「マ、マユ・・・。」
 「コーヒー淹れた。今持っていこうと思ってたとこ。」
 「お、お前の分も、」
 「あるよ。でも自分の部屋で飲むから、気を遣わないで。」マユミは自分のカップを手に持つと、二つのカップとデキャンタの載ったトレイをケンジに預けて、自分だけさっさと階段を昇っていった。

 「なあなあ、ケンジ、」
 「何だよ。」
 「妹はん、何か怒ってるみたいなんやけど、気のせいかな。」
 「ああいうヤツなんだ。まったく可愛げのない。」ケンジはぶつぶつ言ってコーヒーカップを口に運んだ。
 「おまえら、ケンカしてるやろ。ホントはめっちゃ仲ええんとちゃう?」
 「ばっ、バカ言え!」
 「何やの。そんなに怒ることかいな。」
 「だからどうでもいいだろ、妹のことなんか。」
 ケネスは少し考えていた。そしておもむろに立ち上がった。


3-(3)

 「ど、どうしたんだ、ケニー。」
 ケネスは自分のバッグからごそごそと小さな箱を取り出すと、振り向いてケンジに言った。「仲裁したるわ。」
 「え?」
 ケネスはケンジの持っていたカップを奪い取り、無理矢理トレーに戻すと、それを持ってドアを開け、部屋を出た。「ほれ、ケンジ、おまえも。」
 「よ、余計なことを・・・。」
 ケンジの焦りをよそに、ケネスはマユミの部屋をノックした。「すんまへん、ケニーです。ちょっとお邪魔してもよろしか?」
 しばらくしてドアが開けられた。「何の用?ケニーくん。」
 「いっしょにお茶しませんか?お土産もありますよってに。」
 「お土産?」
 「そうです。カナダ土産のチョコレート。ほれ、ケンジも早う来んかい。ほたらお邪魔します。」
 ケネスに促されてケンジはしぶしぶマユミの部屋に入った。
 「ん?」
 「な、何だよケニー。」
 「この部屋、ケンジの部屋と同じ匂いがすんねけど。」
 「そ、そりゃあ、同じ家の中だからな。と、当然だろ。」
 「そうかなあ・・・。」
 「ケニーくんのお土産のチョコレートって?」マユミが口を開いた。
 「チョコレートお好きですか?」ケネスが訊ねた。
 「大好物だ。」ケンジが言った。
 「ケンジには訊いてへん。」
 「わ、悪かったよ。」
 「甘いもんとコーヒー、よく合いますな。ところでマユミはん、ケンジと何でケンカしてはんの?」
 「こ、こらっ、ケニー!」
 ケネスはあきれ顔でケンジを見た。「あのな、ケンジ、わい3日間もここで暮らすねんで、おまえらのことよう知っとかんといろいろと気まずいこともあるやろ?」
 「ケンカ、って言うか・・・・。」マユミがうつむき加減で言った。「何でもない。気にしないで、ケニーくん。」
 「それにしても、ほんまかわいらしいな、マユミはん。ケンジと双子なんやて?」
 「そうなの。」
 「わいの好みのタイプやなー。いや、冗談抜きやで。でもな、」ケネスが急に小声になった。「わいな、実はバイですねん。」
 「バイ?」
 「誰にも言わんといてな。バイ。『バイセクシャル』。つまり、オトコでも女でも同じように愛せるってことや。あ~こんなとこでカミングアウトしてもうた。」
 「そ、それって・・・・。」
 「大丈夫、ケンジ、心配せんでもええ。わいにも理性はある。おまえを夜中に襲ったりはせえへんから心配いらんで。」
 「当たり前だ!俺にはそんなシュミはない!」
 「ま、当然やな。」ケネスはコーヒーを一口飲んだ。「そやけど、便利やで。」
 「何がだよ。」
 「好きになる対象の人間が普通の人の倍おるっちゅうことや。」
 「何だよそれ。」
 「そやけどな、誤解せんといてな。オトコとみれば誰にでも欲情するっちゅうわけやあれへん。そやから銭湯行ってオトコどものハダカ見てもいつも興奮するわけやないんや。」
 「へえ。」
 「『へえ』って。やっぱり誤解してたやろ?女とみれば誰にでも欲情するわけやないのと同じや。好みのルックス、好みのプロポーション、ドキドキする対象はたまにしかおれへん。それがオトコでもな。」
 「なるほど。」
 「そんなん、男湯に入る度に興奮しとったら身がもてへんがな。それは単なる変態や。」
 「おもしろい。」マユミがクスッと笑った。
 ケネスもにっこりと笑って言った。「ああ。笑ろた方が百倍魅力的やで、マユミはん。」
 「ケニーくんて、ユーモアがある。話を聞いてると和む。」
 「そりゃ嬉しなあ。っちゅうわけやから、ケンジ、わい、おまえあんまり好みやないねん。そやから夜中襲ったりせえへんから安心しいや。」
 「変なヤツ。」ケンジはあきれ顔でそう言った。
 「おお、もうこんな時間や。遅いから寝るわな。ほな、マユミはん、おやすみなさい。ええ夢みてな。」
 「おやすみなさい。」

 マユミの部屋を出て、ケネスたちはケンジの部屋に戻った。
 「本当におまえおしゃべりだな。」
 「大阪のおばはんの血がまじってるよってにな。そやけど、ケンジ、昨日の大会、えらく調子悪かったな。」
 「・・・・・。」
 「いつものケンジやない、って感じやったけど、何かあったんか?」
 ケンジはしばらく考えて口を開いた。「俺、自分でも意志が弱いやつだと思う。」
 「弱い?」
 「そう。些細なことが気になって、大切な時に集中できなくなっちまってた。」
 「いやあ、今までのケンジやったら多少のことで力を出せなくなったりせえへんやろ。今回のは些細なことやなかった、っちゅうことやな。何?どないしたんや?言うてみ。」
 「大会の時の俺を見てほしい人に見てもらえなかった、とだけ言っとくよ。」
 「へえ。」ケネスも少し考えて続けた。「いつもその人はケンジを大会の度に見に来てくれてたんか?」
 「ああ。いつも。欠かさずな。」
 「待てよ、おまえ彼女おれへんかったんちゃうか?」
 「いや、彼女とは違うから。」
 「女の人か?」
 「もういいだろ。俺も大会でいい結果出せなかったから落ち込んでんだ。蒸し返さないでくれ。」


3-(4)

 「ま、いいけどな。ん?」ケネスは、ケンジのベッドの布団の隙間から何か白い布が少しだけ出ているのに気づいた。彼はそれを引きずり出した。「なんや?これ。」
 「あっ!やめろ。そ、それに触るなっ!」
 「おお!女物のショーツやんか!」
 「よこせっ!」ケンジはケネスの手からマユミのショーツを奪い取った。そして真っ赤になった。
 「考えられることその1、ケンジは普通の高校生で、女子の下着に興味があり、それを一人エッチのアイテムにしている。その2、実はケンジは女装癖があり、夜な夜なそれを穿いて興奮している。さあ、どっちや?白状しい。」
 「残念ながら前者だよ。」
 「ほたら、そのショーツの持ち主は誰なんや?考えられることその1、マユミはんの干してあった洗濯物に手をつけた。その2、母親の干してあった洗濯物に手をつけた。その3、自分で購入した。」
 「なんでそんなこと聞く必要があるんだよ。いいかげんにしろ。」
 「いやいや、これは男同士で語らう話題の定番、エロトークの一種やないか。あんまり深く考えんと、答えるんや、さあ!」
 「エロトークって・・・おまえな。」
 「最も簡単に手にはいるんは妹はんのやけど・・・。見たところお母はんの年代が穿くようなショーツではなさそうや。」
 「そうだよ。マユのだよ。悪いか。」
 ケネスはにっこりと笑った。「ケンジは健全やな。」
 「誰にも言うなよ。」
 「言わへんて。それにわい、明後日には日本からいなくなるよってにな、話したくてもおもしろがって聞いてくれる人、残念ながらカナダにはおれへん。」
 「そりゃそうだ。」
 「なあ、ケンジ、正直に遠慮なく言わしてもらうけどな、おまえとマユミはん、雰囲気おかしいで。」
 「な、なんだよ、いきなり。」
 「何度も言うようやけど、ほんまはもっと仲ええんとちゃう?」
 「な、何を根拠にそんなこと・・・。」
 「いつもお前の口からマユミはんの話が出てくるやん。」
 「た、たまたまだ。別に普通の兄妹だし。」
 「そうか?そうかなあ・・・。」
 「もう遅いから寝るぞ。」ケンジは客用の布団を床に敷き始めた。そしてさっさと自分はベッドに潜り込み、明かりを消してしまった。
 「おいおい、ケンジ、お客さんに対して失礼やないか。なんやの、勝手に電気消さんといて。」
 ケネスも仕方なくケンジが敷いてくれた布団に潜り込んだ。

 明くる月曜日。朝からケンジといっしょに学校へ行ったケネスは、夕方ケンジよりも先に帰ってきた。
 「ただいま帰りました。」
 「お帰りなさい。ケニー、先にお風呂いいわよ。」母親が促した。
 「すんまへん。ほな遠慮なくいただきます。」ケネスはそう言って、二階のケンジの部屋に入っていった。
 着替えを持って階下に降りる前に、すでに部屋にいたマユミに声を掛けた。「マユミはん、お風呂先にいただいてもええですか?」
 「あ、ケニーくん。お帰り。いいよ。あたし先に済ませたから。」
 「そうでっか。ほな。」
 ケネスは階段を降り、浴室に入った。

 風呂上がり、灰色のスエット姿のケネスは、マユミの部屋をノックした。
 「どうぞー。」
 「すんまへん。お邪魔してもええですか?」ケネスは手にチョコレートの箱を持っていた。
 「いいよ。どうぞ。」マユミはケネスを部屋に招き入れた。
 「はい、これ、マユミはんの好きなチョコレート・アソート。」
 「え?どうしてあたしが好きなチョコレートを?」
 「ケンジに訊きましてん。」
 「そうなんだ・・・・。」
 「ケンジ、ちょっと遅くなる言うてた。」
 「ふうん。」マユミはそのつれない反応とは裏腹に、ひどく残念そうな顔をした。
 「マユミはん、伝えたいこと、あんねけど。」
 「え?何?」
 「ケンジな、こないだの大会、全然あかんかってん。」
 「知ってる。」
 「その原因がな、言いにくいことなんやけど、マユミはんなんや。」
 「え?あたし?」
 「ケンジはそんなこと一言も言わへんのやけど、わい、あいつと話してるとわかるんや。ケンジにとってマユミはんが欠かせない人なんやっちゅうことが。」
 「・・・・・・・。」
 「わいな、もう何週間もケンジといっしょに学校で過ごしてて、はっきり解ることが一つだけあんねん。」
 「はっきり解る・・・こと?」
 「そや。ケンジはあんさんのことが大好きやってこと。」
 「えっ?!」
 「それも、ただの妹としてではなくて、一人の女のコとして、誰よりも好きなんやってこと。」
 「そ、それは・・・・。」
 「毎日毎日顔合わせる度に、わいケンジからあんさんのこと聞かされてきた。今日は妹がどうしたーとか、マユの好きなのはメリーのチョコレートでーとか。そりゃもう会話の8割はあんさんネタや。」
 「そ、そうなんだ・・・。」
 「でもな、ケンジのやつ、大会前にあんさんとケンカしたこと、ものすごく気にしててな、あんさんの気持ちが自分から離れていくことをめっちゃ恐れてるんやと思うで。」
 「あ、あたしの気持ちがケン兄から離れていくことなんて、あり得ない。」マユミが大声を出した。


3-(5)

 「やっぱりそやったか。」ケネスは微笑んだ。「マユミはんの気持ち、ようわかった。」
 「え?あ、あの・・・・。」マユミは赤くなってうつむいた。
 「でもな、あいつも年頃の高校生や。あんさんを好きだっちゅう感情が、単に女のコを抱きたい思春期の一症状やないか、って迷てるフシがあんねんな、これが。」
 「この前も、ケン兄、そんなこと言ってた。」
 「そのくせあいつは、あんさんの優しさにあぐらかいとる。」
 「あたし、ケン兄が好きでいろいろしてあげてるんだよ。ケン兄気にすることないよ・・・・。」
 「それは、たぶんあいつのためになれへんで。」ケネスは人差し指を立てて続けた。「ケンジはあんさんのその優しさを当たり前や、思い始めてんねん。思い上がりっちゅうかな。」
 「え?」
 「もういっつも横にいて当たり前の存在になっとるやろ?何しろ元々兄妹やし。」
 「・・・・・。」
 「いやな言い方するとな、ケンジはあんさんを好きな時に自由にできる、思てるねん。ちょっと極端な表現やけどな。」
 「・・・あたし、どうしたらいいか、もうわからない・・・・。」マユミはうつむいた。
 「マユミはん、わいな、あんさんらに恩返ししたる。これは第三者が、あんさんらの本当の気持ちを知ってる第三者が動かな解決せえへん問題や。わいがその役を引き受けたる。」
 「ケニーくん・・・・。」
 「日本に来て、一番世話になり、一番のライバルやったケンジが苦しんでる。そしてそいつが愛している妹も苦しんでる。これはもうわいが一肌脱ぐしかないやろ?」
 「ごめんね、ごめんね、ケニーくん。」マユミは涙を流しながら震える声で言った。
 「心配いらへん。わいに任せとき。」ケネスはそう言って立ち上がった。「そろそろケンジが帰ってくるころや。」ケンジはマユミの手をとってその潤んだ目を一瞬見つめ、部屋を出た。

 風呂から上がったケンジを待ち構えていたケネスは、彼が部屋に入ってくるなり言った。「ケンジ、おまえに言いたいことがあんねけど。」
 「何だよ。」
 「マユミはん、えらく落ち込んでるで。」
 「落ち込んでる?」
 「そや。」
 「あいつは落ち込んでるんじゃなくて、怒ってるんだろ。俺に。」
 「ちゃうちゃう。おまえもいいかげん意固地になんの止めた方がええで。」
 「意固地になんかなってねえし。」
 「おまえ、マユミはんの気持ち、考えてないやろ?」
 「何言ってるんだ。俺はあいつのことをいつも気にしてる。」
 「わかってへんな。おまえ、マユミはんがいつも優しく声をかけてくれることを『当然や』思てるんとちゃうか?」
 「え・・・・。」
 「ケンジのことを誰よりも思てるマユミはんの言葉を、おまえはちゃんと聞いてやらんかった。おおかたそんなとこやろ。そやからケンカみたいになっとるんとちゃうか?」
 「ケニー、お、おまえ、なんでそんなことまで・・・。」
 「誰が見てもわかるこっちゃ。おまえもマユミはんも、ものすごくわかりやすい反応しよるからな。」
 「だけど、マユは俺のこと、もうどうでもいいって思ってるんじゃ、」
 「あほ。おまえのこと思てるから、どうしたらええかわかれへんで落ち込んでるんやんか、そんくらいもわからんかな。」
 「何だよそれ、矛盾してるだろ。」
 「ま、マユミはんがどれだけ兄を想てるか、っちゅうことをおまえ自身、過小評価してるっちゅうことやな。」
 「・・・・・。」
 「もう隠さんでもええで。わい、すっかりおまえらの気持ちも今の状況もわかってもうたからな。」
 「ケニー・・・・。」
 「おまえとマユミはんが、お互い誤解したまま背中を向け合って、ケンジがわいのライバルでなくなることが、わいにとっては一番悔しい。」ケネスは笑顔を作って続けた。「また日本に来るとき、ケンジがわいのライバルでいてくれることが、わいの最大の望みや。」
 「ケニー、済まない。おまえがそんなに俺たちに気を遣ってくれてるなんて、気づかなかった。」
 「わい、大阪の血が混じってるせいか、めっちゃお節介焼きなんや。気にせんといて。」

 その夜、マユミは隣の部屋から物音がするのに気づいて目を覚ました。不審に思い、彼女はベッドを降りてそっとベランダに出て、ケンジの部屋の様子をうかがった。灯りの消された暗い部屋の中で動くものがあった。暗さに目が慣れてきたマユミが見たのは、ケンジに覆い被さっているケネスの姿だった。「う、うそっ!」マユミは口を押さえた。
 二人とも下着だけの姿だった。ケネスはケンジを押さえ込み、脚を絡ませたままで腰を前後に激しく動かしていた。よく見ると、ケンジはいつも自分との夜にそうするように、苦しそうに顔をゆがめたままうめき声を上げていた。
 マユミは堪らなくなって急いで自分の部屋に戻り、ベッドに潜り込んだ。心臓の鼓動がなかなか収まらなかった。


3-(6)

 ベッドで寝ていたケンジは夜中に人の気配を感じて目を覚ました。
 「ん・・・な、なんだ、ケニー。どうしたんだ?こんな夜中に。」
 「ケンジ、おまえ最近カラダ持て余してるやろ。」
 「え?」ケンジはケネスの言っている意味がよくわからなかった。
 「いつもマユミはんとセックスしてたのに、ここんとこ抱けなくてムラムラしてるんとちゃうか?」
 「お、おまえ、なんでそんなことを!」
 「わいが、おまえのカラダの火照りを鎮めたる。」ケネスはそう言うと間髪を入れずにケンジを抱きしめ、無理矢理唇を奪った。
 「や、やめろ・・・ケニむ・・・むぐ・・・。」ケンジは両腕ごとケネスに抱きしめられ、思うように抵抗できなかった。ケネスのキスは情熱的だった。口全体を覆い、舌を差し込んでケンジの舌や歯茎を舐め回した。そしてケンジの舌を強く吸って、抱いた腕の力を込めた。「んんんっ!んん・・・」ケンジは言葉を発することもできず、身動きとれずに呻くばかりだった。
 観念してケンジが身体のこわばりを解き始めたことを察知したケネスは、ようやく口をケンジの口から離した。 「どうや?ケンジ。悪くないやろ?」
 「お、俺・・・・。」
 「安心し。わいに任せるんや。気持ち良うなろうな。」
 ケネスはびっくりするほどの力でケンジを抱え上げると、床に敷かれた自分の布団の上にケンジを横たえた。そしてシャツ、ハーフパンツ、と次々に脱がせていった。ケンジはなぜかもう抵抗する気を失っていて、顔をそらし、固く目を閉じてケネスのされるがままになっているのだった。
 ケンジは全裸にされた。
 「初めてやろ?オトコに抱かれるの。」
 ケンジは目を閉じたまま頷いた。
 「大丈夫や、今回は抱き合って二人で射精するだけにしとくからな。」
 ケンジのペニスはすでに大きく、硬くなり、反り返ってびくんびくんと脈動していた。
 「ケ、ケニー、お、俺のこと好みじゃないって言ってたじゃないか。」
 「マユミはんの前で、おまえのこと、好みや、抱きたいんや、なんて言えるわけあれへんやんか。」
 「本当のところは、どうなんだ?」
 「めっちゃ好みのカラダやねん。ケンジ。」
 「カラダだけかよ。」
 「いや、おまえのそのシャイなところも、わいに見せる笑顔も、異国人にも親切にしてくれるその優しさも、好きや。初めて会った時から好きやってんで。」そう言うとケネスはまたケンジの唇に自分の唇を重ねてきた。しかし、今度はまるで壊れ物を扱うように優しく、ゆっくりと味わうようにケンジの舌を、唇を吸うのだった。
 ケネスはビキニのショーツ一枚になった。そしておもむろにケンジの股間に顔をうずめ、大きく脈動しているペニスをためらうことなく咥え込んだ。「うっ!ケ、ケニー!」
 「まだ、我慢するんやで。」ケネスは一度口を離し、上目遣いでそう言った後、再び舌と唇でケンジのペニスを刺激し始めた。
 「あ、あああ・・・ケニー・・・。」ケンジの興奮が高まり始めた。「も、もうすぐっ!あ、ああああ・・・。」
 ケネスはケンジのペニスから口を離した。ケンジは射精の直前で踏みとどまった。
 「ケ、ケニー・・・・。お、俺もおまえの・・・・。」
 「ケンジ、無理せんでもええで。」
 「く、咥えてみたいんだ・・・。」
 「わかった。」ケネスは仰向けに横たわった。上になったケンジは、ケネスの穿いていたショーツをゆっくりと脱がせ、すでに大きく怒張しているものをおそるおそる右手で握った。先端からは透明な液が漏れていた。ケンジはそれを舌で舐めとり、そして自分の口の中に咥え込んだ。ケネスはうっ!と小さく呻いた。
 「う、うまいで、ケンジ。」はあはあとケネスの息づかいが荒くなっていく。
 ケンジは一生懸命になってケネスのペニスを咥えたまま頭を前後に動かした。時々動きを止めて舌で全体を舐め回すことも忘れなかった。
 「うう・・。ええ気持ちや、ケンジ・・・。」
 ケネスの呻き声が次第に大きくなっていく。ケンジはいつしか夢中でケネスのペニスを愛撫し続けていた。
 しばらくしてケネスは腰を引き、ケンジの口をペニスから遠ざけた。「そこまでや、ケンジ。」
 「も、もういいのか?」
 「あんさんの口の中に出すとこやった。危ない危ない・・・。」
 「お、俺は別に構わないけど・・・・。」
 「止めとき。まずいで。」ケネスは再び下着を身につけた。「ケンジ、横になり。」
 ケンジを元のように仰向けに寝かせたケネスは、ベッドに挟まれた白いレディスのショーツを取り出し、ケンジに穿かせた。戸惑うケンジにケネスは顔を近づけて囁いた。
 「このままフィニッシュや。」
 「え?」
 「ケンジ、下着フェチやろ?」
 「ばかっ!」
 ケネスはケンジの脚を広げ、覆い被さってきた。そしてまるで男女のセックスのように腰を動かし、ショーツ越しにペニス同士をこすりつけた。「あ、ケ、ケニー・・・。」
 「イくときは言うんやで。」
 「お、俺の中に入らないのか?」


3-(7)

 「バックのこと言うてるのか?」
 「あ、ああ。」
 「初めての時は単に痛いだけや。慣れるまで時間がかかるよってに、いつかわいが日本に永住することになったら教えたるわ。」
 「よかった・・・。」
 「入れられる、思てたんか?」
 「覚悟はしてた。」
 「大丈夫や、ケンジ。」ケネスは再び腰を動かし始めた。二人の怒張したペニスはショーツ越しに擦り合わされ、ますますその大きさと硬さを増していった。そして次第にその動きが激しくなった。ケンジもいつの間にかケネスの動きに合わせて身体を揺らし続けていた。
 「イ、イくんや、ケンジ。こ、このまま、ううう・・・。」
 「ケ、ケニー、お、俺、俺っ!」
 「イくで!ケンジ、ケンジっ!ぐっ!」「俺もっ!あああああっ!」
 びゅるっ!びゅくんびゅくんびゅくん!
 二人はほぼ同時に射精を始めた。小さなショーツからはみ出した二人のペニスの先端から勢いよくお互いの重なり合った腹部に大量に発射された。ぬるぬるになりながらも二人はさらに身体を擦りつけ合い、快感の余韻を味わい続けた。

 ケネスが身体を離したあと、ケンジは横になったまま目を閉じてぼんやりと考えた。自分がケニーに身体を許したのはどうしてだろう。自分もバイセクシャルなのだろうか、それとも、性的に興奮させられて突き進んでしまっただけなのだろうか・・・・。今の自分の気持ちは?今はいったい誰を一番愛しているのだろう・・・・・。
 ふと気がつくと、ケネスの姿がなかった。
 「ケニー?」
 起き上がって部屋を見回したが、彼はいなかった。

 マユミは、ケンジとケニーの情事を見てしまってから、しばらく動悸が収まらなかった。眠れないままベッドに横になっていると、部屋のドアが静かに開いた。
 「だ、誰っ?」マユミはとっさに起き上がった。
 「わいや、マユミはん。」
 「ケニーくん。」マユミは怪訝な顔で続けた。「どうしたの?こんな夜中に。」
 ケネスは後ろ手にドアを閉め、臆することなくベッドに近づいた。そしていきなりマユミの肩を両手でつかんだ。
 「な、何するの?!」
 「マユミはん、わい、あんさんのことが好きや。めっちゃ好みやねん。」
 マユミはおぞましい予感がして、身体をこわばらせた。「いや、やめて!離して!」
 マユミが暴れ出す前に、ケネスは素早くマユミの唇を奪い、そのままベッドに押し倒した。
 「ん、んんんっ!」口を塞がれたままマユミはもがいた。
 ケネスはその強い腕力でマユミを押さえ込み、パジャマ代わりの黒いTシャツの上からバストを揉みほぐし始めた。
 「んんんーっ!」ケネスに塞がれた口から言葉を発することができず、マユミは呻くばかりだった。ケネスは両腕を背中に回し、強く抱きしめた。すると、マユミの身体から力が抜けていった。彼女は観念したようにケネスのされるがままになってしまった。
 マユミの身体が脱力したことを確認すると、ケネスは口を離し、言った。「ケンジよりも、もっと気持ち良くしてやるさかいな、マユミはん。」
 マユミの気持ちは拒絶していたが、なぜかカラダは無抵抗状態だった。「そう、いい子や、そのままじっとしとるんやで。」
 ケネスはまず自分自身が全裸になると、マユミの着ていたTシャツを脱がせようとした。すると彼女は異常な程に暴れた。「いやっ!これは脱がせないで!お願い。あたしあなたに抱かれてもいいけど、このシャツだけは脱がない!」
 「わかった。ほな、そのままで。」
 ケネスはまたマユミにキスをした。男のわりには柔らかな唇だとマユミは思った。そしてその柔らかさが次第に心地よさに変わっていった。
 ケネスの指がショーツの中に忍び込んだ。「あっ!」マユミは小さく叫んだ。そしてその指は彼女の谷間を這い、茂みの入り口のクリトリスを弄びながら細かい動きでマユミの身体を熱くしていった。
 「あ、ああああ、ケ、ケン兄・・・・。」
 「マユミはん、わいの名前を呼んだんか?」
 「ち、違う、ケン兄・・・・」
 「ケニーって聞こえるわ。まあええ、あんさんがケン兄って言う度にわいの名を呼んでるて思うことにするわ。」
 ケネスはその行為を執拗に続けた。「あ、ああああ・・・身体が、熱くなって・・・あああ・・。」
 「そうや、そのまま快感に身を任せるんや。」
 しばらくしてケネスはマユミの上半身を起こし、彼女の口に自分のペニスを近づけた。「マユミはん、咥えてくれへんか?」
 「い、や・・・いやっ!」マユミはかぶりをふった。ケネスはTシャツ越しに二つの乳首をつまんで刺激し始めた。「ケンジのもの、いつも咥えてるんやろ?同じようにしたらええんや。ケン兄のものや、思てな。」そして半ば無理矢理彼女の頭を押さえつけ、大きくなったペニスを口に押し込んだ。「む、むぐっ!」マユミは苦しそうに顔をゆがませた。ケネスは構わず腰を動かし、マユミの口に自分のペニスを出し入れした。
 「んっ、んっ、んっ!」マユミは観念したように目を固く閉じたままケネスのペニスに凌辱され続けた。
 「だ、出してええか?マ、マユミはん!」
 マユミは驚いてとっさに口を引いた。そして顔を背けた。

 びゅるっ!びゅくびゅくびゅくっ!ケネスのペニスから勢いよく精液が噴出し始め、マユミの顔や髪に容赦なくかけられた。「ああっ!い、いやっ!」マユミは叫んだ。しかし、いきなりケネスに再び押し倒され、無理矢理ショーツをはぎ取られた。そして両脚を大きく広げられ、たった今射精したばかりなのにまだ硬さを失わず天を指して大きく脈動しているペニスが、彼女の谷間に宛がわれ、一気に中に挿入された。「い、いや!いやっ!」顔と髪が精液に汚されたまま、マユミは激しくかぶりをふった。しかし、ケネスはしっかりと腰と両手でマユミの身体を押さえつけていた。そしてそのままケネスは激しく腰を動かし始めた。


3-(8)

 ケンジは隣の部屋から物音が聞こえるのに胸騒ぎを覚えた。彼はベッドを降りると部屋を出て、マユミの部屋の前に立った。そしてドアを少しだけ開けて、隙間から中を見た。

 「イくんや、マユミはん。遠慮せんとイくんや!」
 ケネスの上気した声にマユミの身体は魔法に掛けられたように熱く興奮し始めた。「あ、ああああ、熱い、熱いっ!」

 ケンジはその場に凍り付き、身体の中から沸騰したものがあふれ出す気がした。妹がケネスに押さえ込まれ、犯されている!さっき自分を犯した男が、今度は自分の最も大切な人を犯している!

 「イ、イくで、マユミはん、わい、もうイく・・・。」
 「あああ、イって、イって、あたしの中で、ああああああ!」
 「で、出るっ!ぐうっ!」
 びゅくっ!びゅるるっ!びゅく、びゅく、びゅくっ!
 「ああああああ、イっちゃうっ!」マユミは悲鳴を上げて身体を痙攣させた。

 「マユっ!マユっ!」ケンジは大声で叫びながらマユミの部屋に駆け込んだ。

 「マユーっ!」ケンジは自分のベッドで目を覚まし、飛び起きた。汗びっしょりになっていた。辺りは静まりかえっている。床に敷かれた布団でケネスが丸まって寝息を立てている。
 「ゆ、夢?」
 その時部屋のドアが開けられた。「ケン兄・・・。」涙声のマユミだった。
 「マユ!」
 マユミは部屋に駆け込み、ケンジに飛びついた。「ケン兄、ケン兄!あたし、あたし・・・・。」
 泣きじゃくるマユミの髪をそっと撫でながらケンジは言った。「どうしたんだ?マユ、」
 「厭な夢、みた。とっても厭な夢。」
 「夢?どんな?」
 「ケニーくんにレイプされる夢・・・。」
 「な、なんだって?!」
 「も、もう忘れてしまいたい。自分が許せない。あんな夢をみた自分が、許せない!」
 「お、同じ夢を、俺とマユが、同時に・・・・・」
 ケンジはマユミを抱いたまま囁いた。「マユ、もしかしてお前がみた夢って・・・・。」
 話し終わったケンジの顔を驚いた顔で見つめて、マユミは言った。「ど、どうして知ってるの?」
 「俺も同じ夢をみたんだ。」
 「信じられない・・・・でも、なんで・・・。」
 ケンジはマユミをベッドに一人で座らせ、部屋の灯りをつけた。そして床の布団で丸まっているケネスの頭を足で小突いた。「こいつめ!おい、起きろ、この変質者野郎!」
 ケネスはしょぼしょぼと目を開け、つぶやいた。「え?何?なんやの。」
 「お前のせいで俺たち大変な目に遭ったんだからなっ!」
 ケネスは布団の上に正座して何が起きているのかわからないような顔をした。「わいのせいで?」
 マユミはくすっと笑って言った。「ケン兄、もういいよ。現実のケニーくんに罪はないから。」

 ケンジとマユミの話を聞き終わったケネスは言った。「あんさんらが勝手にわいのキャラを創り出したんや。何やの、そのやな性格のケニー。」
 「本人が言うな!」
 「そやけど、話としては萌えるな。なかなか。」
 「何他人事みたいに言ってんだ。」
 「他人事やんか。ほぼ。」
 マユミが言った。「ケニーくんがバイセクシャルだ、って聞いてしまったから、二人でそういうシチュエーションを創り出しちゃったのかもね。」
 「ま、そんなところかな。」
 「しかし良かったやないか。」
 「何が。」
 「おまえら、仲直りできたみたいやし。」
 マユミは赤くなってうつむいた。「ごめんね、ケン兄。あたし大人げない態度とっちゃって・・・・。」
 「お、俺もマユをもっと大切にするべきだった。たとえ部活で疲れていても、お前を寂しがらせるような態度をとったりしちゃいけなかったんだ。」
 「やっぱりおまえら、兄妹以上の関係なんやな。」
 「えっ?!」「あ、あの・・・。」
 「見え見えや。ほんま。気づかんわけあれへんやろ。ケンジ、前にも言うたけど、すっかりおまえらの気持ちも今の状況も解ってる。そやけど、」
 「な、何だよ。」
 「まさか一線を越えてるとはさすがに思わへんかったわ。」
 ケンジとマユミは真っ赤になって顔を背けた。
 「けど、わいも普通やないバイセクシャルやから、あんさんらの普通やない状況も理解できる。がんばりや。」ケネスはベッドに並んで座った二人の肩を同時にぽんとたたいて笑った。「ほしたらわい、ここで一人で寝直すよってに、あんさんら、出て行ってくれへんか。」
 「え?」
 「マユミはんのベッドで仲良うしたらええやん。もう夜中に起こさんといて。わいも夢の中であんさんら邪魔したりせえへんから。たぶん。」
 「そ、そうか、済まないな、ケニー。」
 「早よ出てって。」ケネスは手をひらひらさせて二人をケンジの部屋から追い出した。

 「いいやつだよな、ケニー。」
 「うん。ケン兄、あの人とライバルで良かったね。」
 二人はマユミのベッドで抱き合っていた。ケンジはマユミの白いショーツ、マユミはケンジの黒いTシャツだけを身につけている。
 「ケン兄、変態だよ。」
 「な、何でだよ。」
 「だってあたしのショーツ穿いてるじゃん。」
 「お前だって俺のTシャツだけ着て、下は何も穿いてないじゃないか。」
 「一般的にオトコが女性モノを着るのを変態って言うの。」
 「えー、そんなの不公平だ。」
 「でも嬉しい。あたしのものがケン兄の肌に触れてるって思うと。」
 「俺も、これ穿いてると、マユを抱いてる気になる。」
 「興奮する?」
 「する。」
 「やっぱり変態だ-。」
 「お前な・・・・。」ケンジは一瞬あきれ顔をした後、すぐに笑顔に戻り、マユミにキスをして、背中に腕を回した。マユミもケンジの唇を味わいながら彼の首に手を回した。
 「久しぶりに、」「うん。」そして二人は一つになっていくのだった。









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