恋歌 作

官能小説『ただいま』



第1話

 東京 板橋――
 その中心を走る国道沿いの程よい場所に八階建てのとあるマンションがある。玲子
という女性がオーナーのそのマンションは、作りは瀟洒で、セキュリティ関係も駐車
場も万全、しかもオーナーの出す条件さえ満たせば更に割引と言う実にお勧めな物件
であった。実際、お得さにおいては区内で五指に入り、近在の不動産屋の間では“本
音で言ってのベスト1”に入っているほどだ。
 ただ、これを読んでいるあなたがここに入居できるかどうかは別問題である。実
際、そこの住人達は――ちょっと世間の常識とは変っている人達ばかりなのだか
ら……

―― “変わっている人達しか住めない”のではなく、住んでしまうと変わった人に
なるという説のあることも、一応、付記しておくことにする。


 六○一号室――

「ただいま」
 慎一はいつもの小さな声で自分の家へ帰ってきた。いかにも力ないその様子は、や
たら可愛い顔立ちと背は年齢並にしても細くて白すぎる体つきには、嫌になるほど
合ってはいる。これが“女の子”だったら将来が実に楽しみな逸材であったろう。
 ――しかし、その名の通り、慎一君は男なのであって……
「あーーあ。また、やられたのか」
 ちょっと低めの声と同時に、奥から大柄な影が現れた。慎一はその声にびくっ!と
しながらも、何故かすりよりたいかのような泣き顔になる。
「まあ、いい。早くあがれ。今日からはさすがに何とかしてやろう」
 実に男らしい台詞が、その人影――ライオンのたてがみのような豊かな髪に、きっ
ちりとタンニング(日焼け)した肌、そして、筋肉のみで作られたほぼ完璧な造形美
の身体をTシャツとスパッツだけで包んだ女性がさらりと口にした。信じられないか
もしれないが、この女性は慎一の――
「……ママ……」
「あーーもう!泣くんじゃないよ。またクラスの女の子に虐められたんだろ。言わな
くたって判るよ。その顔の泪の跡を見れば!」
 二人並んだら絶対、実の母子とは思われないであろう。しかし、この二人――どう
みてもはかなげな美少女の男装にしか見えない息子“慎一”と、フィットネスクラブ
でエアロビとボディビルのインストラクターをやっている逞しい母“虎美”は本当の
母子なのであった。

 母の寝室に連れられながらも息子は、声を押さえながらしゃくり始めた。いつもの
事だが母が自分の不幸を慰めてくれると言う信頼の故である――同情されると泪がで
てくるものなのだ――男の子って。
 まあ、いつもなら、元気付けてくれるのは、リビングのソファであり、今日に限っ
て、何故、母の大きなベットに腰掛けさせられたかについては、息子は今だその違い
にすら気がついてはいなかったのだが。
「いいか。ママはいじめに対して肯定的なことは言わないが、泣いたって誰も助けて
はくれないのは確かな事実だ」
 母はそう言うが、この慎一のいじめに関してはそれなりに複雑な事情があった。
 まず、同性からのものではないことだ。これは同じマンションのお兄ちゃん達(空
手の功司君とか柔道の巧君とか)が近所のよしみで長年周辺の小学校、中学校に睨み
を効かせているおかげである。誰であれ男が慎一をいじめようものなら、きつーーい
折檻が待ち構えている事は何度も“実際に”確認されていた。だから男で慎一を虐め
るものなどこの校区には存在しない――
 しかし、お兄ちゃん達も男であるから、“男社会”には顔を利かせられてもそれ以
外はちょっと――ということはある。ぶっちゃけて言えば、慎一の周辺の“女の子”
達には支配力が及ばないのであった。
 要するに、“外見美少女そのもの”の慎一を現在、虐めているのは学校の『女の
コ』なのである――
「不細工な女ガキ共がお前を虐める理由はひとえにお前の外見にある」
 同じ美形でも母とは違い気弱げかつ儚げな――ちょうど守ってあげたくなるようで
あって――それがいけなかった。つまり、どう努力したってその域には届かない世間
一般の女ブス達の運命的な反感を一身に背負っていたのである――それが毎日の慎一
君の泣きべそとなっていたのであった。
「と言って、その外見を変えるわけにもいかない。せっかく、ママ似なんだし…
(?)
 だから、ママが慎一に女向けの攻撃法を伝授してやる。習得には厳しい修行が必要
だが、しっかりマスターするように」
「はあ…」
「まずは特訓の準備だ!」

 ――どこかの師範みたいな口調の実母に命じられるままに準備をした慎一はおずお
ずと口を開いた。
「ねえ、ママ」
「ん?」
「どうしてママはレオタードに着替えているの?」
 息子の教育のためのわざわざ着替えた母は堂々と答えた。
「ママの仕事着だからね。これが一番気合が入るの」
 ベットに腰掛けた虎美は豹柄のレオタードを装ったみごとに鍛えぬかれた身体をし
ならせる。贅肉や無駄や油断はかけらもない、しなやかな筋肉が流れるように、そし
て美しくその女体を形作っていた。息子の慎一の脳裏に、『美しい“牝獣”』――と
いう単語が思わず浮かぶ。
「じゃ、じゃあ……どうして、僕は裸なの?」
 胸の無い少女のようなか細い――白い裸身のままでベットの脇に立たされた慎一
は、恥かしさに消え入るような声で――しかし、真剣に問うた。いくら実の母子とは
言え、この年になっての全裸は恥ずかしい。いったいどういう理由で、母の寝室で息
子が裸にならなければならないのか――
「もちろん、今から行う特訓のためだ」
 母は揺るぎ無い自信を込めてきっぱりと言いきった。
「そ、そうなの?」
「そう!」
 母にそこまで言われてはそれ以上の反抗は絶対に出来ない息子である。
「いいか。慎一」
 母はそんなか弱い息子の薄い両肩に力強い両手をかけた。
「相手はブスでもカスでも、一応、“女の子”だ。だから、普通の暴力はできない。
お前が男の子である以上、どんな理由があろうとこっちが悪者になるからな」
「うん…」
「しかし、世の中には“暴力”にはならない“攻撃”というものもあるんだ。これな
らば相手は――特に女には有効だ。反撃するどころか絶対にお前の言う事を聞く――
いや聞かざるをえないようになる」
「……うん……」
「幸い、お前はママに似て美少年だ。今から教える技さえ習得すれば女相手には無敵
となろう」
ほんとかな――と言う顔を慎一はしたが母は意にも介さなかった。
「ではいくぞ」
「え?」
「まずは基礎からだ」
「え?え?」
「基本その一!口技!」
 ぐん!と風を切って母の鋭い、しかし、かなり美人な小麦色の顔が息子の視界に急
接近した――と思う間もなく、母の両手が息子の頭を後ろからがっしりとつかむ。そ
して、驚くその唇へふわりと生暖かい――そして柔らかくていい匂いのするものが触
れた。


第2話

(う…)
 それが母の唇だ――と理解したと同時に、その真っ赤な唇の間から刃のように舌が
刺しこまれ、あっという間に慎一の口の中に侵入する。
(ううっ?!)
 母の唇が息子の口を封鎖するように密着するなか、その舌は思うが侭に息子の口内
を蹂躙、かつ、ねぶりつくした。産まれて初めての箇所への初めて味わう感触に慎一
は動転するが―――ボディビルダーの母の腕力にしっかりと抱えられた頭は全力でも
動かせなかった
 しかも、その無駄な抵抗に煽られるように母の舌の動きはさらに加速する。母の唾
液に口中を染められる感触に、爆発的なほどのびりびりした痺れが口から脳髄に走
る。
「――――以上が、一般的な攻撃だ」
 どれほどの時間が経過したかわからないくらいに、とろんと酔った慎一にようやく
母の声が聞こえた。――と言うことはキスは終わっているのであろう。
「唇を接触させただけでは、ほんの挨拶でしかない。本気で好きな相手ならそれでも
感動だけど、普通の相手なら是が非でも舌を刺しこまなければ始まらないのだ。その
際の基本は、今、やってみせたように“吸う”、“弄る”、“舐めほじる”、“甘噛
み”――」
 実に冷静な母の指導であったが、息子は半分も聞いていない。上気した顔のまま、
母の手にすがるように身体を支えている。腰すらもがくがくとふるわせて――無理も
ない。初めてキスを―それもの飛びきり濃厚なやつを――しかも、世界で一番好きな
実母にしてもらったのだから。
 いや、キスそのものの意味は判っていなかったかもしれないが、母の舌技はそれで
も――それこそ腰まで痺れるくらいに強烈であった。
「どうした?何をぼけっとしている?」
「あ、は、はい…」
「実戦的に技の説明と実技の練習を混ぜるからな。ちゃんと憶えておけよ」
 息子の動揺には一切構わない母である。
「じゃ、次は胸だ」
「え?う?あ?」
「まずは、脱がすところから。さあ!」
 さあ!――と言ったって慎一にはわけがわかるはずもない。実母は自分のレオター
ドを脱がせて、その戦闘的な乳房を剥き出しにせよ!と命じているのであるが――さ
すがにそれが、男女にとっての非常事態であることは、“うぶで世間知らずでたった
今まではキス以上はしたことがない”慎一にも判る。
 まして、今ここにいる二人はただの男女ではない――実の母子ではないか!
「あ――っ!もう!のろのろしない!ママに言われた事はすぐやるっ!一日百回は
言っているでしょう!」
 良識外の命令に硬直した息子は、次の母のやや怒り気味の叱責に――寸前までの躊
躇や常識を急いで捨てて――ゼンマイを巻いた玩具のように動いた――見事なまでの
条件反射である。
(わあ…!)
 慌てていた分、情緒のない息子の手の動きに母のセパレ―ツになっているレオター
ドの上部が外され、その下から狂暴かつ巨大な握り拳みたいな――固くきっちりとし
た――そして、そこすらも黒くカリビアンに日焼けした乳房が剥き出しになった。
(ママのって…綺麗――)
 思わず、慎一がそう思ったのは、多分にえこひいきの故もあったであろうが、公平
に言って誇張ではない。一般にいう“巨乳”のような“柔らかな豊さ”ではなく、む
しろ“歯応えのある瑞々しさ”の乳房と乳首が威嚇せんばかりに母のしまった胸で自
己主張している。
「も―――う!脱がせかたがなっていないぞ!確かに乱暴を喜ぶマゾもいるけど、そ
うでないものも一杯いる!あくまで基本は『情緒を持って丁寧に』、あるいは“優し
くゆっくり確実に”だ!
 ちなみにママはマゾじゃない!」
 ぽや~~としている息子に母の叱責が飛ぶ。母の“固そうな”双つの胸の塊に見と
れていた息子も、慌ててばたばたした――が、だからと言ってここから先を理解して
いるはずもないのだが。
 結局、動転するだけの息子に母は痺れを切らして叫んだ。
「女の胸を剥き出したら、次は口と指で奉仕する!
 あ―――っ!もうっ!部屋中探しても隠した本やビデオがないんでまさかとは思っ
ていたけど、こんな“常識”も知らないのか!?ママは家庭内教育を誤った!」
 母は絶叫しているが、何を怒られているかも判らない慎一である。いったい、何が
“常識”で、どう“家庭内教育を誤った”なのであろうか?
「ぐずぐずしない!このまんまじゃ、ママだって恥ずかしいでしょ!」
 取りあえず慎一は怒鳴られるがままに実母の胸にむしゃぶりついた。慌てていた
分、雑な動きだったが、その歯と舌を母の乳房の張り詰めた弾力が見事に受けとめ
る。まるで熱く良い香りの“肉塊”にむしゃぶりついたかのようであった。

「そう、そ…そこ…ゆっくりと――」
 数分後、慎一の手と口は、母の指示通りに母の胸の上で動いていった。固い乳房が
握られ舐められ、固くなった乳首がつまれて舌で転がされる。
 とにかく夢中で真剣に慎一は動いた。さっきまで強気だった母の声が急に間延びし
てきたことや、或いはその母の――表情のみならず――全身の太陽色の肌にあわやか
な桃色が混ざりつつあることに息子は気がつく余裕はない。ただ一心不乱に舌と指を
蠢めかせたのだ
「……なかなかだな。筋が良いぞ。慎一」
 ――どれくらい時間がたったか判らなくなったほど熱中している息子に母は――上
気した声で――優しく囁いた。
「――これなら、うちのジムの生徒の中でもトップの…麻美や由紀子なみだ…」
 とにかく夢中で実母の胸を咥え舐めしゃぶっている慎一にはよく意味が判らない
が、誉められている事は確かなようだ。そして、母が“悦んで”いるらしいことも…
「しかし、これが邪魔だな」
 言いざま、母は自分の胸にむしゃぶりついている息子の股間に手を伸ばし――握っ
た。
「!」
 慎一が悲鳴を上げる。突然、母に股間の肉棒を握られたんだから無理はない。しか
もそこはさっきから本人もちょっと困るほど硬直して――
「なーーんだ。これは。さっきからぴたぴたと身体にあたってうっとしい。特訓中に
何をしてんだ」
「…!!!」
 常識的に考えてみれば、生まれて初めて――実母とは言え――女とキスをし、その
胸を愛撫しているんだから、慎一の“男の子”の部分が臨戦体制に入るのも無理はな
い。が、まあ、性知識にとぼしい慎一にも、さすがに実母の身体に勃起し、しかもそ
れを握られていることが“やばい”ことくらいは判る。
 慎一は無理な姿勢のまま――握られたままですから(笑)――第三者が見たら笑え
るくらいにあせり顔色を変え――そして何をして良いかもわからずにいた。
「しかたないな」
 大好きな母はそんな息子を頼もしくも助けてやるようであった。ちなみに声に落ち
着きが戻っているのは、その胸への愛撫が息子のパニックにより中止していることと
無縁ではない。


第3話

「確か、男は“ここ”を小さくしなきゃ落ち着けないんだった。いいよ。ママが小さ
くしてやる。ここに立って!」
 母の命ずるままに息子は身体を起こし、ベットの上に立つ。そうするとその前にひ
ざまづいた母の目の前に、股間がいき――さっきから痛いほど勃起していた肉棒が本
当に天をつかんばかりにいきり立っているのが母の鼻先につきつけたような形になっ
た。
「ふーーん。結構、大きいいじゃん」
 母はしみじみと呟いた。何故かはわからねども、それだけ息子は恥かしさで真っ赤
になる。だから、その母の声がわずかに上気したことまでは気がつかない。
「なかなかに固くて熱かったけど、大きさもこれとは――慎一。よかったな。お前の
ここはすごく男らしいぞ」
「……」
 真面目に母は誉めているんだが、“息子”としてはなんと応えて良いかわかるはず
もない。
「でも、この大きさだと…入るかな?」
 呆然と混乱の混合状態にある息子に比べて、ある意味で冷静な母はそう呟きなが
ら、顔を息子の肉棒に寄せた。そして――
 “ぱくっ”
「わ?!」
 妙な音と感触に急いで下を見た慎一が見たのは――
「マ、ママ!何を…僕のおちんちんを…」
 咥え――いや口一杯に頬張るなんて!
「……」
 動転する息子には構わず、母はしっかりと口と舌と手を使っていた。言ったよう
に、息子の肉棒は“結構な”大きさだったが、何とか“母”の口に入れたらしい。喉
にあたるほど飲みこんでも、全部は入りはしないのだが、ま、これでも十分ではあ
る。
「ま、ママ…」
 肉棒への母の口の愛撫はすぐにも息子を虜にした。熱いぬめりと柔らかな口腔の圧
迫にまるで別の生き物のように蠢く舌の感触に、息子の“まだ”大きく固いだけの肉
棒は過剰なまでに反応し、ほとんど“あっ”と言う間に爆発したのである。
「あ、な、何か、出ちゃう…」
「○△□!(駄目っ!)」
 初めての快感に腰から脳髄まで痺れさせながらも――慌てて腰を引こうとする慎一
の腰に母の力強い両腕が抱きつく。もとより力で母に抵抗できるはずもない。その姿
勢のまま、慎一は爆発して発射された何か――男の子のミルクを母の口腔に全て叩き
つけた。

「――美味しかった。量も勢いもすごいし」
 全てが終わってからようやく母は口を息子の肉棒から離し、恥かしさと快感の余韻
にぼうっとしている息子を見上げた。喋った拍子にその口の端に白いミルクがこぼれ
る。母はそれを舌でなぞって飲みこんだ。
「慎一。おまえ、女相手の戦いは才能があるぞ。アメリカの映画でもこんなすごいの
は見たことがない。ママとしても他の男なんぞは触りたくもないけど、こんな未完の
大器なら腕によりをかけて本物にしてやる」
 満足げにうなずく母であったが、うぶな息子は三分の一も理解できていない。
「さ、これで小さくなっただろう。特訓を続けるぞ!」
 次に母が命じたのは、男からの口淫であった。
「ちょうど女の攻撃は見せたけど、原理はちょっと違う。舌中心の責めになるんだ」
 慎一は言われるがままにベットに横たわり、その顔の上に母が覆い被さる。豹柄の
レオタードはすでに脱がされ、息子の目の前に濃い陰毛の叢とピンクに近い女の肉襞
が剥き出しになる。どちらもすでに湿っていたが、その意味まではまだ息子には判ら
ない。
「まず、その豆みたいなのをちょこっと舌で触り――それから、襞のあるあたりをな
ぞる――たまにその中に入れて…」
 母の命じるままに一生懸命舌を動かす慎一であった。今度はこっちの攻撃だからす
ぐには終わるわけもない。集中しているから時間もわからないが、それでもやがて、
母の声がさきほど以上に昂揚していく。さらに次には目の前の母の秘所が湿り気をま
し――ついには蜜のような熱い液体が母の肉襞の中から息子の顔をびしょびしょにす
るくらいにあふれ出てきたのである。そして――
「あ…あ――っ!」
 突然、息子の顔の上の母の裸身が電気にでもうたれたかのように硬直し――次には
崩れ落ちた。息子には判らなかったが、母は“絶頂った”のである。ほんのわずかな
間とは言え、腰が立たなくなり、そのまま母の秘所は息子の口に押しつけられた形に
なった。慎一の顔面は熱さとぬめりと濃厚な甘い香りに一杯になる。その濃すぎるほ
どの圧迫に息子は何故か満足感と悦びを覚えたのであった。
 しばらくしてから、ようやく元に戻った母は腰を上げ、ベットに仰向けのままの息
子に覆い被さっってキスをした――さっきの愛撫ではない本当のキスを。
「すごいぞ。慎一。ママを舌だけでいかせるなんて」
「そ、そう?」
 喉を鳴らす牝虎のようにうっとりとした母の台詞を、息子は今一つ理解していな
かったが、まあ母の上機嫌が嬉しくないはずもない。はにかみながらも慎一は微笑み
返した。
「絶対にお前は才能がある。ママの女生徒の中にもこんなに舌使いの上手いのは何人
もいない。男に舐めさせたのは初めてだから、興奮したのかもしれないけどそれを差
し引いても立派なものだ」
「はあ」
 思わず慎一は“へへ――”と笑ってしまう。のんきなものだ。
「しか――し」
 恥かしくも幸せな息子の笑顔が引きつった。またしても母の手が伸びて――
「まーーた、大きくしている!これだけははしたない!ママはおまえの実の母親だぞ
!冷静にならんか!」
 あんまりな言いざまであった。いくら、息子が、また股間の肉棒をかちんかちんに
しているとは言え――ベットの上で全裸の健康な美少年に全裸の野性的な美女が寄り
添っているのである。反応するなというほうが無理であろう。まあ、実母相手と言う
のは問題なのかもしれないが…それを言うのなら!
「ご、ごめん…」
 母にまた硬直をむんずと掴まれた息子は消え入りそうな声を出すが、それには反し
てその股間の“男の子”はいっこうに静まってはくれなかった。むしろ母に握られて
いることによって硬度と角度を増してすらいたのだ。
「仕方がないな」
 母はわざとらしくため息をついた。
「ちなみに性教育として教えるが、この男のおちんちんをこのように固くしたのを、
女の“ここ”――さっきお前が舐めたとこに入れるのがSEXだ。男はそこでああこう
するとさっきママの口でしたように“射精”して良い気持ちになる。判ったな?」
 淡々とした声の正確な教育ではあるが、その“おちんちん”を母に握られたまま言
われているのだから、息子としては声も出ない。
「ただし、SEXは誰ともして良いと言うわけじゃない。
 今まで教えたように女への攻撃に使うのならともかく、通常は一番好きな女相手
じゃないとしてはいけないんだ」
「……」
「だから、練習の時はママが口とか手で小さくしてやっても良いが、普通は慎一の好
きな女の子以外にこう大きくしてはいけないんだ。判ったな?」


第4話

「はあ…」
「よし。それで良い。いつでもどこでも誰とでもと言うのはさかりのついた獣だ。慎
一はちゃんと節度を持ってここを使うんだぞ。で――」
 次の質問はさりげなかったが、その実、精一杯さりげなさを装ったものであった。
「慎一はどの女の子が一番好きなんだ?」

 母の演技まで読み取れるほどの慎一ではない。だから即答できなかったのは、質問
内容自体に緊張したせいである。
「……」
 実は――ずっと以前から――答えは決まっていた。しかし、答えるかどうかは別問
題である。慎一の口もさすがにすぐには動かない。ベットの上で全裸同士で息子に寄
り添っている母も口を止めた。
 その状態のまま時間だけがたつ。やがて息子の肉棒を握ったままの母の手にやや力
が入った。意識したわけではない。焦燥の故かもしれない。そして、それが息子の背
を押したのである。
「ママ――なんだ。僕が一番好きなのは」
 やや沈黙があった。この“告白”に恥かしい慎一は目を背ける。よって、母の頬の
熱さが見える小麦色の表情に妖しい笑みが浮かんだのは見えなかった。
「ほう――」
 母はいつもの口調で次の台詞を続けた。
「慎一はママが一番好きというんだな」
 童貞――今の慎一のレベルでは、母の声がかなり努力して感情を押さえているもの
とは判らない。
「…うん」
 慎一はこくりとうなずく。頬が真っ赤に染まり、肩がわずかに震えているのは、け
な気と表現すべきであろうか。
「つまり、このママと――実の母とSEXがしたいと?」
 露骨で背徳的な台詞である。人によっては糾弾に聞こえたであろう。しかし、今の
この二人にとっては“厳粛な”事実なのであった――
 二人だけのこのベットの上ではそれが望みうる最上のであることを息子はこの時、
確信していたのである。
「うん…僕は――ママと…せ、SEXがしたい…」
 止めていた息が漏れる音が二人の間に響いた。母のものである。目を背けたままの
息子には判らなかったが、大胆なまでの息子の告白に母は眼の縁が赤くなるまでに興
奮していた。
「――まあ、そう言うことなら――慎一がそこまで頼むんなら、この“おちんちん”
を使わせてやっても良いが――」
 言いながらも母は力をこめて息子の頭を自分のはりつめた乳房に押しつける。台詞
は偉そうだが、声は熱いまでに上ずっていた。
「でも、ママはそこらへんのジャリ娘とは違うぞ。たとえ、一度でもママとそういう
事をする以上、慎一にもそれなりのものを約束してもらわなければならぬ」
「 ………」
 強気の発言に息子はようやくおびえた風に視線を上げる。その先で上気した母の悪
そうな笑顔がゆっくりと囁いた。
「まず、今後、ママ以外の女に“おちんちん”をこういう風には絶対に使ってはいけ
ない――いや、こんなに硬くすることも許されない――判ったか?」
「うん…」
 母の熱い迫力に押されるようにして慎一はうなずいたが、どう見てもよく判っては
いない顔つきだ。
「それから、ママに“おちんちん”を使う以上、責任は取る!ママだってこれで――
この瞬間からこの身体に火がつくのだから、その火を一生、ちゃんと面倒みなければ
ならない。それこそ、いつでもどこでも何度でも!判った?!」
「…うん」
 とてつもない約束をよく判らずにうなずいてしまった息子であった。“それだけは
止めとけ”と忠告してくれる人も、危険性に気がつく知識もここには存在しない。慎
一は恐らく人生の大部分を今、ここで決定したのである――その事に気がつくには、
この日からさらに数年の歳月が必要なのであるが……
「そう――なら、いい」 
 母の美貌に野性的な微笑みが浮かぶ。満足した雌豹のように舌がその真っ赤な唇を
なぞった。
「―――おいで。慎一。ママの中へ…いらっしゃい」

 母は乱暴に――恥ずかしさを隠すために――仰向けになり、息子はおずおずとその
上に覆いかぶさる。ほぼ筋肉の母の裸身はどこも熱く、慎一に触れた全ての部分が火
傷しそうであった。
「もう十分濡れているけど…ゆっくりしろよ。ママがこう言うことするのは慎一を妊
娠して以来なんだからな…」
 意外に緊張している母であったが、息子はそれ以上にがちがちである。腹につきそ
うなまでに硬直した肉棒を何とか母の股間にあてがったが、そこから先が上手くいか
ない。
「そ、そこ…濡れているとこ…よし。さきっぽがあたった…そこからゆっくり――
あ…やっぱり…お、大っきい…」
 裂けるほどに刺しこまれる感じとつぶれるほどに締めつけられる感じに母子はしば
し無言になった。二人だけの寝室で、ただ、二人の腰だけがゆっくりと動き、熱い
息、汗と愛液の粘つく音が二つの全身に聞こえる。
 やがて――
「はいった…な――」
 確認するような母の声に息子はこくりとうなずいた。かちんかちんの肉棒は母の肉
襞の中へほとんど――ようやく――埋没している。そこでの締めつけと飲みこもうと
するかのようなぬめる感触に、肉棒はまたすぐに爆発してしまいそうに高熱化してい
た。
「あ、う、動かないで…ママ、もうこれだけで…いっちゃいそう…なの…」
 母も同じであった。こちらは大きいとかだけではない。愛する息子がこんな形で
帰って来たと言う事実によってである。
(男はもうこりごりだと思って女の子ばかりだったのに…こんなに逞しくなって…)
 母はもう一度息子を抱きしめた。
「慎一。約束は守れよ」
「え…」
「ママだけを愛すると言う約束だ。他の女には絶対に触らないこと!」
「う、うん」
「そのかわり、ママも今まで通りに他の男には絶対に触らないし――いつでも慎一と
SEXしてあげるから」
「うん!」
 急に元気良く息子が応え――母が悲鳴を上げた。元気ついでに息子の肉棒に力が
入ったのである。
「一生、ママだけにするよ。ママは僕にとって最高――いやこの世で唯一の好きな女
の子なんだ!」
 感動的な宣誓であったが、強気で勝気だったはずの母は声も出ない。喋るたびの振
動で息子の肉棒が秘壺内で微妙に動き、その痺れる感覚が背骨から突き上げていたの
だ。
(こ、このまま腰を使われたら、あたし、死んじゃうかもしれない…)
 母の心配は半分あたった。やがてひ弱な息子が男としての本能で腰を振り出すと、
たったそれだけで鍛え上げたはずの母の裸身は翻弄されたのである。
「あ――い、いいっ!慎一――つ、強いわ――!」
 童貞なのだが、さっき搾り取るほど出したのがきいたのかもしれない。母を半狂乱
にするほどまでに息子の下半身は荒れ狂った。偉そうな事を言っても同性愛専門だっ
た母にこの攻撃への耐性はない。ただただわななくのみである。
「も、もう駄目ぇぇぇ…お願い、せめて――い、一緒に――」
 それほど待つまでもなく母の願いはかなえられる――母子は同時に爆発したので
あった。


第5話

「ママ…」
「慎一…」
 そのままの姿勢でしばらくしてからようやく二つの裸身が動く。爆発の余韻の中で
愛し合う母子はしっかりと抱きしめあった。母は一人息子の最初の――おそらくは唯
一の――女となり、ひ弱な息子は逞しい母を真の意味で初めて“女の子”にしたので
ある。その事実の確認のための今の沈黙の時間ですら――
 事実にどちらがより感動したかは二人には判らない。その内容ないし主張を言葉に
するには互いにまだまだ時間が必要で…が――
「あ、また大きく…」
 熱中のあまり、入れたままだった母がうかつであった。息子はそのままで元気を取
り戻し、母と言う名の女を愛する“男”として―
「も、もうなの?なんて逞しい…い、いい!でも…もっとゆっくり…ああっ!慎
一ぃ…」



 六○二号室―― 

「ただいま」
 亮一はかなり陰気な声で自分のマンションのドアを開ける。その姿も声も――い
や、存在そのものが疲れきっていた
 無理も無い。金曜の夜である。月曜からの五日分の疲労が、下がった肩と辛気な顔
色に如実に出ていた――社会人と言うのは子供達が思う以上に大変なものなのだ。
「お帰り!」
 そこへ――何の配慮も同情もなく――反射的と言って良いほどの元気なダッシュで
人影が亮一の視界に飛びこんできた。絶対に待ち構えていたに違いない。驚く事にそ
の人影は、今時貴重なセーラー服を着てすらいたのだ――亮一はそれを確認した瞬
間、五日分の疲労のさらに三割増に重く脱力した。
「お兄ちゃん!どしたの膝なんてついて?何かあったの?」
「あるのはお前だ!」
 玄関に片膝つきながらも亮一は絶叫した。本人としては必死なほどに真面目であ
り、ほとんど“魂の叫び”である。そうだろう。無理も無い。何せ、女子大生の妹が
中学時代の制服を着てきたのだから…
「いい加減にしろ!なんだ、その格好は!」
「せーらあ服よ。あたしの中学の頃の」
「だから!何で、今更、その格好を!?」
「だって、好きなんでしょ!?お兄ちゃんは、こんな“制服”が!」
 実の――たった一人の妹の夏子の反撃に、亮一はぐっ!とつまった。顔色まで変わ
る。
「……」
 かなりのダメージのようだ。何か思い当たる――やましい――ふしがあるらしい。
その引きつった表情はそうとしか見えなかった。
「さ、リビングに来るの!今日の保健チェッ~ク~~」
 明らかに心理的なものによるショックで有効な反撃の出来ない兄を夏子はリビング
へ誘った――いや無理矢理連行した。
「はいっ!脱いで!チェックするから!」
 リビングで夏子はそのまま兄のベルトに手をかけ、強引にスラックスを脱がせてし
まった。抵抗する間もない。さらにパンツも一気に引き下ろす――実の妹の前で下半
身を剥き出しにされる兄の意思など聞こうともしない。
「こ、こらっ!」
 さすがに抵抗しようとした亮一だが、妹はさらに大胆であった。むんずと兄の剥き
出しになった肉棒を掴み――しかも強引にしごき出したのである。
「いい加減にしろっ!夏子!」
「うるさいわね!お兄ちゃんがまた“いかがわしい”とこに行って、“許されないこ
と”をしていないか確かめるのよ!文句あんの!」
「……」

 ここで絶句せざるを得ない、たわけた兄に代わって、事情を説明しよう。
 まず、この二人はとても“仲の良い”兄妹である。数年前に両親を亡くし、今はそ
の保険金で購入したこのマンション六○二号室に兄妹だけで仲むつまじく暮らしてい
た。
 ――で、今の騒動の原因となったのは、兄の亮一が職場の飲み会において――ま
あ、酔った勢いと同僚との付き合いとかなんとかで、制服ヘルスにいったことによる
ものであった。
 その事自体は一般成人健康男性としては不思議でも何でもないであろう。男のコの
生理と言うのは定期的に放出を求めるものだし、またそういう男のコの為にそういう
店は存在を許されているのだ。まして、亮一は独身で彼女もいないのだから、誰が、
どういう理由で責める――いや責められるというのだ。
 同僚達がそう思ったのは間違いない。実際、彼等としてはこの件は、入社以来女っ
けが全く感じられない亮一への気配りと友情の証だったのだから。
――しかし、彼等は知らなかった。実は亮一には、美人で可愛い――そしてたいそう
仲の良い実の妹――『夏子』――という存在がいたことを……

「う―――んん。何か元気ないなあ。やっぱり、今日も“また”一発やっているのか
な?」
 夏子が笑顔で呟いた。しかし、目は笑っていない。声もかなり怖い。手は兄の大事
な肉棒をしっかりと握っている。きっと、そのまま握りつぶすことも可能であろう
――
 亮一は色の変わった声で叫んだ。
「違う!何もしていない!反応しないのはおまえのその――即物的なせいだ!」
「即物的?」
「そう!そんな無理矢理脱がせて、乱暴に握り締めただけでいくわけないいだろう!
乳牛だって嫌がるぞ、そんなもん!男はもっと繊細なんだ!」
「やっぱり、お金払って自分から服を脱いで、どこの誰のどんな使い古しかわからな
い初対面のお姉さんに優しくされないと駄目なわけ?」
 兄の魂の叫びに対して夏子はにこやかに聞き返し――その一瞬で亮一はしぼんだ。
やましいことがある――いやあった男というものはそういうものである。さらにそう
責めながらも犬歯を牙のように見せて笑顔を作る妹を見ると、一生このネタで虐めら
れるのではないかと言う絶望的な気すらしてくるのであった。(見事な未来予測であ
る)
「心配しなくもいいよ。お兄ちゃん。そんなこともあろうかと思ってこういう準備を
してきたんだから」
 一生このままであろうと確信できる自己の優位を確信しきった怖い微笑を浮かべる
夏子は右手はそのままにして身体の位置を変え、ソファに腰掛けさせられている亮一
の剥き出しの膝に座る。そしてセーラー服の前をはだけ、下着をつけていない胸を包
みこむようにして兄の顔に押しつけた。
「ほーーら。セーラー服の生おっぱいだぞ。好きでしょ?好きなんでしょ?お兄ちゃ
ん」
 中学生用セーラー服のサイズにはすでにおさまりきれない妹の成長した両乳房が剥
き出しになり、“ぼわん!”と兄の顔を打つ。その熱さと柔らかさと、顔がうずまる
ような肉感が窒息しそうなくらいに亮一に迫った。
「…くっ!」
 亮一の奥歯が深刻な音を立てる。何と言う即物性であろうか。自分の見事な裸身を
出しさえすれば――自慢のDカップの乳房を押し付けさえすれば、兄がどんな状況で
あろうとすぐにも――簡単にも!――恥かしい反応をすると決め付けているのだ。夏
子は――この妹は!


第6話

「あ……ほーーら。やっぱり。今、くいっ!と来たわね。お兄ちゃん」
 ………悲しい男の性であった。結局――或いはいつものことながら――亮一の兄と
してのプライドは関係なかった。セーラー服から突き出された妹の生乳に顔を埋もれ
させられただけで、その妹の手に握られた兄の肉棒が大きく反応してしまったのであ
る――事実がこれほど悔しかったことは亮一の人生でも…まあ、ほぼ毎日のように
あったのだが。
「ほんと。制服が好きなのね。この、へ・ん・た・い・お兄ちゃん!」
 勝利感に更なる優越感を足し、加えて兄の全てを支配していることへの無限の自信
をかけ合わせた夏子が囁く。どんな言い訳も弁明も、今の現実の前には無意味と悟っ
た亮一は顔をそむけるしかできない。妹はそれにはこだわらず、その小悪魔の笑みの
まま、兄の勃起した肉棒をゆっくりとしごきにかかった。
「おい…ちょっと」
「言い訳は出たのを見てから聞くわ」
 丁寧な手の動きに反して夏子の口調はそっけない。身体を入れ替え、真剣な顔を兄
の恥かしい塊によせる。それはまるで今日の兄が敵か味方か判断しようとしているか
のようだ――と言うことは亮一にもわかりすぎるほどに判っている――でも、兄とし
てはどうすることもできないのだ。
 実妹のセーラー服と生乳にすでに男として“反応”してしまっている兄としては…
 そして――
「え?わ、わ、わー―きゃん!」
 その両手一杯に感じた実兄の躍動と爆発の衝撃に夏子が歓声を上げる。続けて“び
しゃっ!”と鳴ったのは、“兄の男のミルク”が近ずきすぎた“妹の顔”に直撃した
音だ――思わずにんまりと笑う妹の笑顔を、亮一は鋭く痺れる感覚の中で確かに見
た。

 恥かしいけれどもそれなりの“余韻”にひたる亮一の前で、夏子は自分の顔に飛び
散った白いミルクを丹念に指でなぞり――舐めとった。それもこれ以上ない真剣な表
情で。
「うう――ん。濃さはこれくらいかなあ。朝、我慢したわりには今ひとつの気もする
んだけど。外で一回だした可能性が…ないとは――」
「昨晩、お前が自らたっぷり絞っただろうが!」
 恐怖の宣託に一瞬で覚醒した亮一が真剣に叫んだ。
「何回したってんだ!平日は仕事があるからセーブするって約束したくせに!」
 身の潔白を本気で主張する兄であった。よほど“有罪”が怖いのであろう。まあ、
殴る蹴る程度では終わらないのが、ごく最近実証されているのだから、無理はない。
「じゃ、良いわよ。特別に許してあげる」
 意外にも夏子は明るく宣言し、亮一はやっとほっとする。何よりも目の色を変えて
いる兄に満足している妹の“笑顔”であることは兄には判っているのだが、怒るわけ
にもいかない。過去の過ちのせいだけではない。この“妹”に許してもらうことが、
この“兄”にはそれだけの意味があるのだから……
 ところが――――
「おい」
「え?なに?」
「ちょっと待て。何をしている?!その手は?!」
 亮一は、兄の肉棒を――疑いは晴れたと言うのに――掴んで離さず、それどころか
上下にしごいている妹に怖い顔を向けた。
「もう、疑いははれたのだろう!」
「ん…ま、そうなんだけど…」
「“ん”じゃない!何が“ま”だ!認めるんなら、すぐさまその手を――」
 妹を身体ごと押しのけようとした亮一であったが、柔らかく、かつ強固な抵抗があ
り、そうはいかない。そして―――
「なんか、お兄ちゃんの“いった”時の幸せそうな顔とか、この両手の中で跳ねま
わってミルクを噴いている“お兄ちゃんのあそこ”とかがあってさ……ちょっと興奮
しちゃったの」
 実妹の――猫が媚びるような最高度の甘い囁きであった。情けない話だが、たった
それだけなのに、実兄の節操のない身体は反応したのである。
「あ…お兄ちゃんもその気なのね…」
「ち、ちが…」
 という理性の声も虚しい。実際に、妹に握られたままの兄の本音は、すでに“男の
反応”をしつつあった。
「ほらほらほらほら――いいじゃない。けちけちしないでよ」
「…お前は、今週の労働で疲れた社会人の金曜日の夜の状況をどう理解しているんだ
?」
 精一杯怖い声であったが、真意は伝わらなかったようであった。妹は右手でパン
ティを脱ぎ、左手で兄のすでにかなり起き上がってしまっている肉棒を掴んでいる。
そしてそれに唇をよせ軽くキスをした。“ぞくっ!”と強い電流が兄の背筋に走る。
(ここで流されてしまっては!)
 辛うじて気力だけで兄は――兄の上でうごめく熱い妹の肉感とそれに対する自分の
身体の無節操な反応に――堪えようとする。
 が、次の妹の可愛い囁きがその全てにとどめを刺したのであった。
「―――ねえ…いやなの?あたし、もう濡れちゃっているの。今ならすぐ出来るし
――
 お願い、お兄ちゃん…
“して…”」

「きゃん!」
 理性をかなぐり捨てて――妹の可愛い一言“して…”だけで――獣となった亮一は
跳ねあがり、逆に妹の身体を組み敷いた。ピンク色の悲鳴が夏子の唇から嬉しそうに
漏れる。
「いやん…乱暴にしちゃ―――でも、これも好き…」
 確信犯的に騒ぐ妹には構わず、亮一はさっき出したばかりとは信じられないくらい
に一瞬で硬直した肉棒を、妹のスカートの下で剥き出しになっている秘肉にあてる。
宣言どおり、愛液でびしょびしょだ。これなら、すぐに出来る――そして兄が腰を突
き出すのと妹が下から抱きしめるのとが同時になり、次の瞬間、ぬめる音を上げて兄
は妹を突き刺し――“同じ”ぬめる感触のもとに妹は兄を飲みこんだ。
「あ、あ、あ、あ……」
 妹が甘く叫び、それに合わせるように兄の腰が乱暴に動く。“ぐちゃぐちゃ”とい
う粘液質の音がかなり大きく響き、兄妹の激情を更に加速した――
 この兄妹にはいつもの流れである。兄が無言で責め――妹がむせび泣く。そしてそ
れは二人の快感が高まり、爆発するまで続いていく…
「お、お兄ちゃん…あ、あ、熱いのぉ…もっと…乱暴にしてぇぇぇ…」
 下半身だけ裸の兄がセーラー服の妹をひたすら責めて、あえがせている。妹は強引
に犯されながらも――決して離さないと言わんばかりに必死でその兄にしがみつくの
だ。
「もっと…もっとぉ…お兄ちゃんの好きにして…夏子はその為にいるんだもの――」
 ある意味さっきまでの力関係が嘘のような光景である。しかし、この兄妹にとって
は…
「いいのよぉ…好きにして…乱暴なのがお兄ちゃん好きなんだから…夏子もそれが好
きなの…お兄ちゃんが好きなのは―――みんな……
 だって…『お兄ちゃんはあたしのもの。あたしはお兄ちゃんのもの』なんだも
の…」


第7話

 わななくように夢中で囁く妹の声が聞こえたのか、やがて責め続けた兄にも限界が
きた。一度出した分だけ、堪えていたのだが、今度は我慢できなかった。腰の辺りか
らの“ぐっ!”と言う感触に気力が切れ、発射の感触とそれに伴う快感が下半身に走
り――同時にまるで“欲しいものを手に入れた”かのような不思議な満足感が胸を一
杯にする。
「ひ…い、いっちゃうぅぅ…お、に、にいちゃん…感じるのぉぉ…お…にいちゃんの
熱い…」
 更に痙攣さながらに悶える妹が悲鳴を上げつつ痛いばかりに兄にしがみつく事実
に、男としての――まごう事無き“実の妹へ”の愛情と独占欲に、文字通り震えるほ
どの満足感で全身がひたるのだった。
「離さないからな。夏子」
 深い満足感とともに亮一は、実兄の肉棒に奥までえぐられたまま、半分失神してい
る妹に囁いた。同時に抱きしめる両手と腰の辺りに力が入ったのは、故意とも言えな
い自然な動きの故である。
「あ…」
 妹が意識を完全に取り戻すまで、兄はしっかりとその熱くなった半裸身を抱きしめ
ていた。

ほんの十数分後―――
「ふ――っ。お兄ちゃん、素敵!かっこいい――っ!ごちそうさまでした!やっぱ
り、お兄ちゃんだけが夏子の“彼氏”よね“」
 醒めてしまえば幾ばくかの後悔に悩む兄を下から抱きしめながら可愛く喉を鳴らす
夏子であったが、もちろんこれで終わりではなかった。
「で、続きはご飯のあとにしよ」
「え?」
「精のつくもんを用意しているから一杯食べてね。今夜は麦とろご飯と鰻よ!金曜だ
からもちろん焼きニンニクもあるわ!」
「ちょっと待て!続きって何だ?俺は疲れているんだから…」
「大丈夫!あとナースとバニーと浴衣は準備しているから!お兄ちゃんならあと三回
は軽いでしょ!夜明けのコーヒーまでお願いね!
 あ、安心して。チャイナ服とサンバとマーメイドとバーチャと喪服は間に合わな
かったけど、来週入荷予定で――」



 六○三号室

「ただいま」
 健一は返事を期待せずにマンションのドアを習慣的にあけ――どきりとした。
「姉さん。帰っているの?」
 玄関に見慣れたハイヒールが脱ぎ捨てられている。まだ、午後三時だと言うのに
――何かあったのであろうか。
 少なからずびくびくしながら健一はダイニングに顔を出す。誰もいない――しか
し、流しには使用後の皿が二枚置かれていた。
「やっぱり…姉さん。帰ってたんだね」
 毎朝、この家のキッチンは健一が登校前にちゃんと片付けている。よって、これは
片付けをしない――本当は家事全般をしない――人物がすでにこの部屋内に存在する
と言う事なのだ。
「姉さん…」
 リビングに“諒子”は――探していた健一の姉はいた。スーツ姿のままでソファに
ひっくり返っている。ぎろり!と弟を睨んだ目が据わり頬が赤くなっているのは、
テーブルに並んだビールの空き缶三個とこちらも空になったワインボトル一本――そ
してそれ以上にこの時間に健一が帰ってきたせいに違いなかった。
「あ、あの…」
「今まで何やってきたの?」
 押さえようともしない姉の声は、弟には遠雷のように威厳――いや、恐怖をもって
聞こえた。少なくともそれだけ容赦はなく、最悪の事態の危険性も同レベル以上なの
だ。
「今日の講義は午前の、しかも一時限だけだったわよね?健一。
 ――で、今、何時か知っている?」
「ゼ、ゼ、ゼ、ゼ、ゼミの――そ、そう、今度、同じゼミになる連中とスタバで顔合
わせしていたんだよ!ごめん!姉さんがこんなに早く帰ってくるなんて思わなかった
から…」
 弟の必死の主張は――絶対に嘘ではないにも関わらず――姉にはとどかなかった
――或いは聞いていなかった。
「ゼミ?ああ、そう」
 一瞬だけ納得したふうをしたのは、姉の弟への純粋な悪意である。
「で、その中に女はいたの?」
 一応、さりげない質問であったが、弟は即答できなかった。その意味することを心
の底から理解している故である。
「慌てているわりには静かね。それとも聞こえなかった?お姉さんは、今日、健一が
お茶した相手の中に“女の子”がいなかったかどうかを聞いているの」
「――――」
 姉が何を言っているかが“この”弟にはよーく判っている。だから何も言えない
――そしてそのこと自体が明確な返答であった。
「やっぱりね」
 諒子の宣言は健一の脊髄まで貫くばかりに悪意に満ちていた。
「姉のあたしが弟の“あんた”の為に、ほとんどの女の喜びを捨て、秘書として会社
でめっちゃ嫌なじじい共の相手に神経をやすりにかけられるような日々を送ってい
るって言うのに、その稼ぎで生きている弟のあんたはよりどりみどりのキャンパスラ
イフを堪能しているってわけね」
 どれほど悪意に満ちた声であるかについては、言われた健一が顔色を変えてわなわ
なと震えだしたことからも実証できる。とにかくこの弟にはよほど、“怖い”ことで
あったらしい。
「しかも、ついにはどうにもこうにもストレスに耐えがたく何とか午後休を取り、こ
の日この時間なら家にいるはずのあんたの顔を見て、せめてもの癒しにしようと半死
半生で帰ってきたあたしの気持ちって――判る?どっかのブス共と楽しく“お茶”し
てきた健一君に?」
 酒精に頬を染めた姉の糾弾に弟は沈黙で応える事しかできなかった。
 そして――
「ごめなさい―――姉さん。どんな罰でも受けます。僕をお仕置きしてください」
 第三者が見れば仰天したであろう。弟は――今時のいけてる学生風で、異性には事
実もてもての――彼はそのまま膝をつき、頭を床まで下げたのである。
「ふーーん」
 弟が土下座して謝っているのを紅い頬の姉は意地悪に見つめていた。ややしてか
ら、次の命令をしたのは純粋な悪意からである。
「まあ、ちゃんと罪を認めるのならお仕置きしてやってもいいけど――それには準備
が整っていないようね」
 弟の肩が一度だけ震えた。それは姉の発言への疑問のゆえではない。判りきってい
る内容への反応であった。
「はい……」
 弟は素直に答えると、姉の指示に従った――すなわち、服を全部脱いでから再度姉
の足元に土下座したのである。満足そうな姉の哄笑だけが部屋へ響いた。
「ふん。悪いことしたと判っているのなら、玄関からその格好にしなさいよ」
 勝利感に満ちてのたまう姉に弟は床につけた頭を一ミリも上げられない。



第8話

「ま、でもお姉ちゃんは優しいから、今日のお仕置きは“口のご奉仕”にまけてあげ
るわ」
 勝ち誇った姉のご許可である。“優しく”命じられた弟は一度だけびくっ!しなが
らも、やがておずおずと命令に従おうとした――が、すぐ、叱責が飛ぶ。
「何やってんのよ!“口”だけって言ったでしょ!手が触るのまでは許していないわ
!」
 空気を裂くような悲鳴に弟は再度ひれ伏した。弟は姉のスカートの中に手を入れ、
パンティを脱がそうとしていただけなのである。
「ご、ごめんなさい…」
 土下座でもってわびる弟に姉は意地悪く微笑んだ。もちろん、床に伏せている弟に
その笑みは見えない。ただ、次の命令だけは歯っきり聞こえた。
「さあ!」
 これ以上叱責されないということは、許してもらえた――ではなく、次に急いで進
まないといけないということである。健一は慌てて動いた。
「それでいいわ。丁寧にするのよ!」
(あ……)
 命令通りに顔だけを動かして犬のように姉のスカートの中へ入る。薄暗い中、むっ
!とくる熱気と同時に、見た事のあるパンティ――紐でとめるタイプが見えた。
(姉さん……意地悪言ってたけど、本当は僕の為に準備していてくれたんだ…)
 欲情した姉がさらに楽しむために着替えて待っていた――と思わないから、この弟
は奴隷状態なままなのである。
(う……)
 犬のような姿勢と口しか使えない不便さのもと、健一は姉のスカートの下の太股に
口を動かし、パンティの紐を何とか咥えた。蝶結びのそれは軽い一引きで容易に緩
む。それをあえてゆっくりとしたのは無意識からの姉へのサービスであったのだろう
か。
「も、もう一つね」
諒子の声もやや紅くなっている。実の弟にスカートの中を漁られ、パンティの紐を
口で解かれたという事実が痺れるほどの刺激的なのだ。その危なげなパンティの下の
“もの”がはっきりといやらしい兆候を示している事は、弟が帰ってきたときから判
りきっているのだ―――
(ん……)
 命じられるままに弟は口だけでパンティを外した。もちろんそのままスカートの中
から出てはこない。ということは今、そこでは剥き出しになった自分の恥かしい部分
が最愛の弟の目の前に―――
「何してんのよ!ご奉仕は!」
 内心の動揺――或いはときめきを隠して姉は叫んだ。従順な弟はそのまま従う。次
の瞬間の恥かしい部分への濡れた感触に、姉は必死であえぎを堪える。
「……ふん。まあ、上手くなったじゃない」
 弟は夢中で舌を――最愛の姉の秘肉に動かした。舐める音とすする感触が諒子の腰
にまでじんじんと響く。思わずでそうになる可愛い声を高飛車な台詞でおさえるのが
やっとだった。
「まだまだよ。あたしがいいというまで…何十分でも…」
 弟への意地悪の為にそう宣言した姉であるが、ほんの数分も立たないうちにそれど
ころいではなくなってきた。
(い、いい!…こんな…ずっと待ってたせいかも――でもけんちゃんもいつもより上
手で…激しくて…)
 何時間も前からこの事態を期待していた分だけ、姉が不利だったのであろう。強が
りを良いながらも、身体は正直であった。
「あ……ん…」
 姉の頬がさらに紅潮し、口元がだらしなく開く。そこから出た舌先が真っ赤な唇を
忙しくなぞった。すでに目は半分くらい空ろだ。そのスカートの中では弟の舌がしつ
こくいやらしく姉の秘肉を舐め蜜壺に刺しこんでいる。その快感は腰から背骨まで突
き抜けそうで愛液のたてる音が“ぴちゃぴちゃ”へかわっていた。
「く……」
 しかし、声は出せない。不埒な弟をお仕置きする姉としては、まさか、舌だけでい
かされそうになったなど認めるわけには―――
「よ、よし…もう良いわ。立ちなさい」
 支配者としてのぎりぎりのプライドで姉は命じた――ほとんど“いってしまう”三
歩手前くらいで。その心の中では“いや!やめないで!”と絶叫するもう一人の女が
いるのだが、姉はそれを強烈な意思の力で何とか押さえこむ。ある意味でたいした精
神力であった。
「は、はい…」
 舌のご奉仕は上手くいってたはずなのに――と弟は命令を訝ったが、もとよりこの
姉に逆らえるわけもない。心残りながらも出来るだけ急いで立ちあがる。
「あー―わ…」
 急いで立ちあがった弟はさっきから全裸だ。当然、この位置ではソファに座ってい
る姉の目の前に腰のあたりがくる。そしてそこには…
「なーーに、おちんちん、おったてているのよ?お仕置きだってのに欲情したの?
!」
 弟の恥かしい反応に急に余裕を取り戻す姉であった。姉に奉仕することに欲情した
弟の可愛らしさが虐めてやりたいほどに可愛く、また、その事実がさっきからぬめる
ほど濡れている秘肉の愛液をさらに潤わせる。何より、羞恥に満ちた弟の顔と反応が
どちらが優位かを決定したのだ。
 姉の勝ち誇ったくすくす笑いが部屋に鳴り響く。
「ほんと、変態ねぇ。実の姉のここを犬みたいに舐めて勃起するなんて。あんたに
きゃきゃ騒ぐ外の女達が知ったらどうなるかしら?」
 姉は意地悪に微笑むと、恥かしさにうつむいた弟の股間を注視する。まだまだピン
クだが、大きさは並以上の弟の肉棒が腹につかんばかりに反り返っていた。これは目
の前の実の姉に欲情しているなによりの証だ。そしてそのことをなじられ侮蔑されて
もこの弟は抵抗する事も逃げ出す事もしないのである。ただただ、許しを請うように
立ちすくむだけ…
(だから、どんなになっても、けんちゃんはあたしからは離れられないのよ。ずっと
ずっと、あたしのもの…)
 優越感を強烈に刺激された姉は右手をあげた。これはよけいなことだったかもしれ
ない。しかし、女王様然と構えながらも、弟の恥かしい――愛しい――反応をもっと
感じたかったのである。
「ふん!何度見てもいやらしい…」
 そう責めながら、姉の右手が伸びて弟の肉棒に触れる――本当にかちんかちんだ。
試しにこっちへ倒してみた。ちょっと力を使ってようやく肉棒の先端が姉のほうを向
く。その時―――
「あ!」
 姉の手の中で弟の肉棒がびくっと震え――半瞬後に弟の悲鳴と“その”爆発が重
なった。よける間もなく姉の顔一杯に“びしゃっ!”と白くて熱いものが多量に叩き
つけられる。そう、その匂いも味も堪能するほどに知っているそれが―――
「何すんのよ!姉さんに向かって!」
 奴隷からの“顔シャ”と言う予想外の事態に、一瞬、呆然とした女王様であった
が、すぐに覚醒するやいなや右手で弟の肉棒を力一杯はたいた――これは痛い。
「いたっ!」
「ふざけんじゃないわよ!」


第9話

 当然の悲鳴を上げる弟に対し、さらに姉は両手で――その真っ赤なマニキュアをし
た長い爪の指で、肉棒と下の双玉を無茶苦茶に握り締める――これはたまらない。男
ならわかる。
「痛い痛い!ごめんなさい!許して!姉さんが触るもんだから……」
「だからって、こんな事をして良い言い訳にはならないわよ!こんな…こんな…」
(もったいない!)
 指の跡が残るほどのお仕置きであったが、被害者はともかく加害者にとっては意外
に早く終わった。涙目で股間をかばう弟は気がつかなかったが、この時、弟のミルク
を顔中に飛び散らせた姉の目の色が変わっていた――そうぬめった熱い朱鷺色に。
(いやだわ…あたし、こんなことでまた興奮している。顔にかけられるなんて、ひど
い話なのに…)
 頭のどこかでそう思わないでもなかったのだが、欲情も二度目となるともう我慢で
きない。許せない思いをこの際、我慢してでも―――
「まったく、しょうがないわね。いつもいつもたまっているからそんな恥かしいこと
になるのよ!」
 姉の主張には無理がある。ほぼ毎日こういうプレイをやって、最後には必ず弟は姉
の裸体の中へ存分に発射しているのだ。
「だから、外の汚らしい女までもいやらしく欲しがるんだわ。
 わかったわ。姉さんが今日は空になるまで搾り取ってあげる」
 顔中に飛び散った弟のミルクを指で丹念になぞりながら、姉は宣言した。

「ただし、甘やかしてるんじゃないからね。さっきの無礼の分のお仕置きはするわ
よ」
 そう言って姉が命じたお仕置きは単純なものであった。もう一度勃起しろというの
だ。まあ、これからの二人には当然必要なことでもある。ただし―――
「手を使っちゃ駄目!」
 今、たっぷり出した身としてはいささか辛い条件であった。
「それも今から“あたしが服を全部脱ぐ”までの間によ!いい!」
(ね、姉さん…)
 ありがたいお言葉に弟は思わず涙が出そうになった。そこまで僕のことを気遣って
――感動する弟の前で、姉はシャツのボタンを外し、スカートのホックを取る。その
動きは奇妙に緩慢で――むしろ、たった一人の観客を煽るかのように淫靡ですらあっ
た。
 姉は弟の目の前で短いストリップを演じてみせたのだ。
(姉さん――綺麗だよ…)
「ふん――」
 シャツとスカートに続いてブラジャーが外れて短いショーは終わった。最後に現れ
た姉の双房は、意外なほど――言うと本人が本気でおこるほど――小ぶりであった
が、形はそう悪くはない。第一、たった一人の観客にそんな欠点など視野に入ってい
なかった。
「姉さん…」
「どうやら、間に合ったみたいね」
 可愛いくらい感激する弟の股間には、もう十分なまでに――さっき以上に大きく固
くなった肉棒があった。それを見る姉の目が朱鷺色にぬめる。
「じゃあ、約束だからやってあげるわ。そこに横におなり」
 弟は急いで命令通りになった。
「ふふん」
 姉は素直に横になった弟の均整の取れた裸身をひとまずまたいで立った。その姿勢
のまま見下ろすと懇願するような目と抱きつきがいのある身体、そして最大限に硬直
し姉の慈悲を乞うように不安定に揺れている肉棒が一度に見える。素晴らしい光景で
あった。
(あたしの可愛いけんちゃん…)
 しかし、姉も余裕を持っていられる状況ではない。またいだ股間の秘肉から、先ほ
どからだらだらと垂れていた愛液が、ちょうど弟の肉棒へとろりと大きな滴を落とし
たのだ。
(いつまでも可愛がってあげるからね…ずっと、あたしだけのものよ…)
「ね、ねえ…」
 出来るだけあせらないように腰を落とし、弟の股間に座る。揺れるその肉棒を右手
で掴むとそのまま自分の秘肉にあてがい――するりと咥えこんだ。
「姉さん!」
「あ……」
 そのぞろりとした感触が意外に大きく、思わず腿の力が抜けたのが姉の不覚だっ
た。自然に落ちた腰のせいで、一気に弟の肉棒は姉のとろとろの肉壺へ全部突き刺
さってしまったのである。
「あああ――――っ!」
 今度上げた絶叫はまごう事無き本気のものだった。もちろん“お姉様”らしくはな
いが、散々じらしたあとだから、もはやプライドも精神力も姉の欲情した女体を止め
られない。弟がびっくりするような大きなあえぎを上げながら、壊れそうになるくら
いに腰を振る。
(い、い…いいっ!けんちゃん、いいっ!)
「…姉さん…気持ちいいよぉ…」
「あんたは動いちゃ駄目ぇっ!」
 姉の“中”のあまりの気持ち良さに陶然とする弟に、厳しく命じて姉は腰を振り続
けた。自分が気持ち良いように動いているのだから、よけいなことをされては迷惑な
のはもちろんだが、それ以上に――この期に及んでも“姉の立場”というものがある
のだ。
 そう、弟に“させてやっている”のであって、姉が“いかされる”わけにはいかな
いという事情が。
「どう?気持ちいい?」
「うん…最高だ…ずっとこうしていたい…気持ち良くて…もう――」
「い、いいのよ――健一。いっても…はやくいきなさい…」
「ん…でも、大丈夫。もう少しは耐えられる…」
(はやくいけっていってるでしょう!じゃないとあたしのほうが先にいっちゃうじゃ
ない!)
 心の中の姉の絶叫は、弟には決して聞かせてはならない。かくして姉は自分の快感
と戦う最高の拷問を受けることになったのだった。
(は、は、はやく!もう、いって!いってよ!)
 どれだけ時間がかかったか、夢中の姉弟にわかるはずもない。ただ、さっき思いっ
きり一度出した弟の方が条件的に有利であって、早く搾り出そうとする姉が必死で腰
をふるほど自分の肉壺の中の快感があふれんばかりにどんどんたまっていくのであっ
た。
「ねえ…気持ち良い?」
「うん…姉さんの中って熱くてきつくて…」
(そんな感想はいいから、早く!)
「我慢しちゃ…駄目ぇ…身体に悪いわ…」
「でも、なかなかすぐには姉さんのここには入れないんだし…」
「―――大丈夫…今日はサービスしてあげるから…」
「本当?じゃ、せめて姉さんも気持ち良くなるよう僕も頑張るよ!」
 逆効果であった。
「い、いや…いやーーっ!あたしが、先に、い、いっちゃう…」



第10話

六○四号室――

「ただいま」
 ドアを開ける義一の声は期待ですでに浮きあがっていた。一日の仕事疲れなど一歩
部屋に足を踏み入れた瞬間からどっかへ蒸発してしまっている。げんきん――或いは
元気なものであった
「あれ?お兄ちゃんへのお迎えはどしたのかな?おーーい、加奈ちゃーーん!」
「騒がないでよ、もうっ!聞こえているわよ!」
 ずかずかとあがった義一は自室からおずおずと出てきた妹を見てにんまりとした。
その兄の笑顔を、加奈は睨みつける。眼鏡をかけた結構美少女かつ気の強そうな妹
は、驚くべき事に、この時、“眼鏡”しか身につけていなかった。
「おお、愛しの妹よ。約束は守ったんだね。お兄ちゃんは嬉しいよ。これも愛だね」
「えーーい、白々しい!愛なんてもんじゃないわよ!もし、守らなかったら…ちょっ
と!触んないで――」
 妹の抗議も抵抗も無視して兄は駆けより、“ほぼ全裸”の妹を抱きしめた。実の兄
の前に裸――可愛い乳房や薄い股間の叢までも――をさらす羞恥にほんのりと紅く
なっている妹の身体は、両腕の中で折れるほどに華奢で、かつ、“どきり”とするま
でに熱くなっていた。
「力を緩めてよ!服がすれて痛いんだから―――あ…」
 恥かしさを誤魔化す為にも騒ぎ立てる妹の唇を、兄は唇で蓋をした。その態度が虚
勢の証拠に、兄の舌は容易に妹の唇と歯を割り、たっぷりと口腔内をねぶりつくす。
妹の身体をすみずみまで知り尽くした兄の攻撃に全身を痺れさせながらも、何とか息
だけは荒げまいと押さえる妹の反応が義一にはたまらなく可愛かった。
 やがて、ようやく唇を離した兄は妹に命じた。
「さ、ソファに横におなり」
「ちょ、ちょっと待って。もう“する”の?!」
「当たり前だ。昨日は俺の連勝だったんだよ。だから、命令権はあと一つ残っている
はずだろ」
「う……」
「家の中では今日一日は裸でいること――それから、今からのただいまHね」
 今更言うまでもないことだが、この実の兄妹は――両親が離婚して兄妹二人暮らし
なのをいいことに――こういう関係なのである。そしてこの兄妹だけの家庭内ルール
で、『SEXの際、先に“いった”ほうが負けで、一敗につき、一つ命令を聞かなけれ
ばならない』と言うのがあるのだ。
 と言っても、勝敗に関してはほぼ兄の全勝だったのだが。
「あ、いや…」
 抵抗も出来ないままにソファに横たわらせられた妹の胸に兄は顔をうずめた。さし
て大きくない右の乳房にむしゃぶりつき、指は左の乳首をつまむ。
「ちょっ…そんな…一方的に――ああん!」
 どんなに偉そうなことを言っても気が強くても、十四才の処女を奪ってから二年
間、その女体を徹底的に開発した兄は妹の全てを知り尽くしている。加えて徹夜も辞
さない体力と、この“妹”には無限に復活する元気――どう考えてもSEXで妹が勝つ
可能性は皆無であった。
「おや?もう濡れているじゃない?加奈ちゃん。ほんとはお兄ちゃんが帰ってきてこ
うしてくれるのを“うずうず”しながら待っていたのかな?」
「……知らないっ!」
 兄の指は妹の薄い股間の叢をかき分けて、その下の秘肉に触れた。やや小さいそれ
からはしっとりと湿り気が伝わってくる。どんなに偉そうなことを言っても身体は正
直であった。
「あ…」
 兄はひとしきり秘肉をなぞってからおもむろに中指をその裂け目に入れた。ゆっく
りと進む指に少女の肉襞のきつい締め付けがからむ。そしてそれが強くなるほどに、
妹のあえぎ声も大きくなっていくのであった。
「い…あ――そんな…そこ――」
 兄の指に感じる妹の感触が、湿り気からとろとろ――ついにはびしょびしょになる
までにはたいした時間はかからなかった。
「いい…あー―お、お兄…ちゃん――」
 乳房を口で責められ、秘肉を指で弄られ、妹はついに虚勢を捨てた。下から兄の身
体にしがみつく。妹の裸体の熱さといやらしい汗が兄の胸と腹と足にぴったりとへば
りついた。
「お兄ちゃんが欲しいのなら、はっきりそうお願いしなさい」
 余裕をもって兄が囁く。囁きながらも急いでスラックスとパンツを脱ぎ捨てている
のも大変なのだが、妹にそこを突っ込む余裕などありはしない。あえぎはそのまま悲
鳴となった。
「お、お願いします。お兄ちゃんの“あれ”を――加奈の…中へ―――入れ…てくだ
さい…」
 妹のいやらしい懇願に兄は満足した。その分、現れた股間の肉棒は固く大きく角度
を増す。そしてそのまま、“大きすぎる”と苦情の多いそれを妹の秘肉にあてがい
――一気に突き刺した!
「い、いやーーーーっ!いたっ、き、きつ―――あ、ああーーん…」
 妹の鋭いはずの悲鳴に甘い粘液がかかったような動揺が混じる。成功だ。もうここ
までくれば妹の――高校一年生の女体は意のままなのだ。多少の痛みはすぐにもそれ
以上の快感で吹き飛ぶ。あとは獣のように責め上げるだけで―――
「も、も、もう…だめ―――っ!」

 いつもよりは長くはあったが、やっぱり妹が先にいったのを確認してから兄は
“たっぷり”と放出した。痺れあがっているはずの幼い女体に止めを刺すように兄の
ミルクが注ぎ込まれ、あえぐ波のように反応する。男として至福の時間であった。
「ま――た、勝っちゃった。今度は何にしようかなあぁ」
 全てを終えてから兄はソファに大きく座った。終わったばかりの姿のままに――
シャツ、ネクタイに下半身は裸という変な格好だが、本人はいっこうに気にしていな
い。そのまま隣で放心状態の妹の裸体を見下ろす目には幸せと満足と意地悪ながらも
慈しみがたっぷりと含まれていた。
「あー―――」
 ようやく気がついた妹であったが、事態の理解にはさらにややかかり――兄に聞こ
えないように奥歯を噛み鳴らした。
(くっ!またしても……お兄ちゃんのおもちゃになっちゃって…)
「あのね、お兄ちゃん」
(でも――いいわ。最終作戦発動よ。もう、お兄ちゃんを自由にはさせない!)
「ん?なんだい?」
 さっきの猛攻のせいでちょっとふらふらの妹に可愛く囁かれた兄は明るく応えた。
「もっとゆっくりしていいんだよ。疲れたろう」
 優しい言葉である。思わず、妹は“じん!”とくるが――これに騙されてはいけな
いと自分を叱咤した。そうだ、実の妹を半日も全裸でまたせ――いろいろといけない
想像をさせた上で――無理矢理犯した兄なのだ。今更、ちょっと優しくされたからっ
て…
「あのね、さっきの加奈の負けね。お風呂でおぎなわさせてほしいの」
「え?風呂?」
「うん。どうせ、入るんでしょ。加奈が“サービス”してあげるからさあ」
「“サービス?”――ま、それもいいんだけど」
「じゃ、決まりぃぃ――っ」


第11話

 妙に明るくなった妹に背中を押されながらも兄は浴室に入った。そのこと自体に疑
問を感じないまでもなかったが、まあ、考えてみれば誰でも全裸になる場所である。
“仲の良い”兄妹にとっては“うふふ”の空間であろう。まして、さっきから全裸の
妹がかいがいしくも兄の身体を洗ってあげようと言うのだから…
 結局、兄はこの下心に負けたのであった。
「ぜーーんぶ洗ってあげるからね。お兄ちゃん」
 そう言って兄の身体を洗い出した妹は、両手を一生懸命動かしながらも、意識して
裸体を摺り寄せる。泡一杯のボディタオルの刺激以上に、妹の木目細かく――熱くぬ
める肌の感触に兄は陶然となった。
「背中に前に足に…これで、全部終わりね。じゃあ――」
 そして、ほとんど泡だらけになった兄に妹は優しく囁いた。思わず唾を飲む兄の喉
である。実はまだ唯一残っているところがあるのだ。それは兄のこ…
「ここは―――大事だから…加奈のお口でして上げる…」
 言うなり、妹は兄の前に膝まづき、頭を下ろす――そのまま股間に顔を寄せ、その
可愛い口で、兄の――さきほど妹を半狂乱にさせた――肉棒をぱくっと咥えた。
「は…うっ!」
 意外に可愛い声を上げる兄であった。実は今までの妹はこの口淫が苦手でなかなか
やってくれなかったのだ。兄には“今日はそれなのに…”という感動が入っているの
である。
(フ…グ!フモ…グ!)
 感動の分、急に大きくなった肉棒に妹は目を白黒させたが、何とか我慢した。その
事にさらに感動する兄であったが、実は妹の事情は少し違う。
(見てなさいよ)
 その決意に燃える表情を見れば何か企んでいることは明白である。だが、肉棒を大
きく口に咥えた姿勢では兄からは見れない。
「い…いいぞ…研究したな…そう――吸いながら舌を上手く動かして…先っぽを刺激
したら、次はボールのほう…」
 気持ち良さに打ち震える兄に対しての妹の口淫は執拗に執拗に続けられた。いつも
ならすぐ“いや!”と言い出すところだが、今日は口が疲れようと顎がだるくなろう
と歯を食いしばって――いや、本当にこの状態でそうしたらたいへんだが――耐え
る。
 そして―――
「あ…」
 一度出したせいもあって粘った兄であったが、妹の努力と妹がしているといういや
らしさに、ついに爆発した。ビシャリ!と言う音ともに兄のミルクが妹の口中に叩き
つけられ、その濃厚な匂いが鼻孔から咽喉まで充満する。妹はそれら全てを一息に飲
みこんだ。
「全部飲んでくれたんだね…」
 感極まって兄が囁く。とても本気で嬉しいらしい。その股間では妹が兄の肉棒をさ
らに舌で綺麗にし、ミルクの残りを吸い取っていた。
「加奈…お兄ちゃんは嬉しいよ。こんなことまでしてくれるなんて…毎日開発に努め
た甲斐があったというもの―――」
 兄は妹を抱き起こした。抱きしめてキスをしようと言うのだ。しかし、そこで急に
股間から顔を上げて立ちあがった妹はその兄の手を払いのけた。
「なーーに、勝手なこと言っているのよ!中二の妹の処女を奪ってから毎日毎日ケダ
モノ三昧だったのを美化しないで!それより判っている?」
「え?え?ちょっと、加奈…」
「あたしが今度は“勝った!”ってことよ!お兄ちゃんだけが一方的にいっちゃった
んだからね!」
 妹の突如の変貌ぶりに唖然とする兄であったが、ようするに妹は謀ったのである。
今までの“可愛くいやらしい妹”も艶技であり、“あまあま”で奉仕するふりをして
一方的な口淫に持ちこむ作戦だったのだ。
「そ、そんな…加奈。お兄ちゃんを心をこめて奉仕してくれたんじゃ…」
「よくもぬけぬけと!―――あ、でもそれ良いわ。今度のあたしの命令権はそれに決
まりね」

 寝室のベットに戻った裸の妹は、同じく全裸のまま、まだどこか傷心の兄にサディ
スティックに宣言した。
「じゃ、舐めて!」
 ベットに偉そうに腰掛けて足を組んだ妹である。兄はまだ良く理解していない。
「舐めるのよ。あたしがいつもやらされているみたいに、いやらしいところを犬のよ
うに!もちろん、あたしが良いというまでよ!
 文句ないわよね?お兄ちゃんがいつもさせていることなんだし!」
 呆然としたまま頭を下げ、兄はのっそりと妹に接近した。観念したらしい。いつも
自分がさせていることをするのだ。自分が気持ち良いわけではなく、許してくれるま
でどれだけ時間がかかるかわからない苦行を。
 だが、まだ甘かった――妹は。
「駄目!キスはなしよ!いつもどおり身体の端から!上手かったらご褒美にさせても
いいけど」
「…はーーい」
  兄は陰気に応え――突然、妹の身体を押し倒した!
「きゃああーーーっ!何するのよ!」
 もちろん、妹はびっくりして悲鳴を上げる。ばたばた抵抗しようとするが、上を取
られてしかも抱きしめられているから思うようにはいかない。
「先にいったら言う事を聞くのは大事な“約束”でしょ!守ってよ、馬鹿ぁっ!」
「もちろん、約束は守るさ」
 兄の唇が妹の耳元で囁いた。ふっ、と息がかかる。ぞくりとして一瞬抗議の止まっ
た妹に次の感触は予想外であった。
「い?な、なに…」
「身体の端からだろ?」
 そう囁いた兄の舌は妹の耳たぶをゆっくりと舐めた。熱い粘液が薄い皮膚に塗られ
るように染み込む。初めての感触だった。
「う……う…」
 予想した舐め技とはまったく場所が違う。“反則よ!”と叫ぼうとした妹であった
が、奇妙なくすぐったさと――ひょっとしたら“気持ち良さ”で声を飲む。こんなと
ころが性感帯になるとは思わなかったのに…
「あ…」
 耳をたっぷりと舐め尽くした兄は、ほのかな快感に浸っている妹を確認してから
“にやり”と笑い右手に力を込めた。ほとんど脱力状態にある妹の裸身が簡単に裏返
る。
「え…?」
 急にうつぶせにされた妹であったが、いやとは兄は言わせない。そのままその白い
うなじに口を寄せ、ゆっくりと舐めはじめたのである。
「ぉぉ……」
 それだけでぞくぞくっ!と電流が妹の背筋から脳天まで走る。重要な場所以外への
こういう丁寧な愛撫は初めてだったが、じっくりと味わうそれは、まるで別種の、し
かし確かな“快感”であった。
「くぅ…っ!」
 兄の舌は妹のうなじを唾液でたっぷりと濡らすとそのまま下がり、背中へ踏み入れ
た。そしてことさらにゆっくりと動き始める。まずは背骨から肩甲骨沿いに――次は
背中の筋肉の一つ一つを丹念に執拗に――そして愛情を込めて…
「…………」


第12話

 終わりのない舌技に妹は耐えた。まるで、裸体の奥深くに灯された小さな火を少し
づつ大きくしていくかのような燃え上がりかたに、わずかなうめきだけで耐える。感
じているのは事実だとしても、どこでもない背中を舐められているだけでこうなった
とは、兄に知られるのがたまらなかく悔しい――或いは恥かしかった。
(ど、どこでこんな技を――さっきの仕返しね…でも、あたし、このままでいってし
まうかもしれない…それは…それだけは…)
「さあ、次はお尻だ。それから腿から脚の先まで」
 兄は妹の腰の辺りに吹きつけるように囁いた。背中一杯に広がった痺れあがる快感
に浸っていた妹の脳裏にわずかな理性が走る。
(それはつまり、まだ続くという事であり――まだ“しない”ってことで…)
「あ、あのね。お兄ちゃん…」
 ようやく単語を口にした妹に兄は“ん?”と顔を上げた。あどけない顔である。し
てやったりと笑っているようには見えない。
「どした?加奈」
「あ、あの…もう、もういいから…」
「ええーーーっ!」
 わざとらしい兄の声が妹には心底憎らしかった。
「まだ、いっぱい残っているのに!下も、それから仰向けにして前も!キスもおっぱ
いもお蜜さんも!――それなのにもういいっていうのかい?」
「い、いいのよ!もうっ!」
 妹は自分でもびっくりするくらいの大声を出した。
「そんなことより――お願い」
「やれやれ。あせっちゃってもう――はしたないなあ、加奈は」
 絶対、許さない!と妹が誓った台詞と共に兄は身体を上げ、うつ伏せの妹の腰を両
手で抱えた。そのまま腰だけを持ち上げる。牝犬のようなポーズを取らされた妹で
あったが、今更、抗議などできなかった。
「あああ。もうびちょびちょだ」
 あくまで余裕をもって兄は後ろから、こちらもすでに十分に固くなっている肉棒を
恥かしい姿勢の妹の肉襞にあてがう。
「こんなはしたない妹に育てたつもりはないのにねえ」
「いいから!早く!」
「はいはい。ご命令とあれば」
 “ずぶり”と兄の肉棒が突き刺さった。ほとんど抵抗がないくらいあっさりと。同
時に妹が悲鳴をあげる。それだけで今度の“勝負”は決まったようなものであった。
「あー―い、い、いいっ…も、もうお兄ちゃんの…かたくて――いっぱいで…」
 さんざんじらされた火が一気に爆発した妹の裸体は、自分でも恥ずかしいことを叫
びながら、後ろからの兄の攻撃に荒れ狂った。自分の身体を満足に支える事すら出来
ずに顔をベットにこすりつけながらも、妹の腰は兄を求めて高く差し上げられている
のである。兄の攻撃がどんどん加速していったのも無理はない。
「あ…ああああああ――――っ!」
 今度の絶頂も妹が先だった。再度の爆発に大きく痙攣すら走る。数秒遅れて、妹の
痴態に満足した兄も爆発した。
(もう――やっぱり…)
 汗だくの裸体でベットに崩れながら妹は心の中だけで呟いた。
(―――お兄ちゃんにはかなわないわ…)



六○五号室――

「ただいま」
 ドアを開けながら聖一は首をかしげた。鍵は開いているのに、部屋の中が真っ暗
だったからである。
「姉さん。帰っているの?どしたの?――あ、いた」
 明かりをつけながら中へ入る聖一は、リビングのソファにうずくまる姉の恭子を発
見した。
「どしたのよ。姉さん」
 見れば朝、大学に行った時のままの服である。膝を抱えるポーズからも姉がぐれて
いるのは判るが、いつもの“だだ”とは少しちがうようでもあった。
「ねえ。どうしたの?姉さん」
「せいちゃーーん…」
 優しい言葉に恭子は夢中で弟に抱きついた。流れからも構えてはいた弟がしっかり
受けとめる。十六才の弟に二十才の姉の身体は決して軽いものではなかったが、聖一
は男の義務はしっかりと果たしたのであった。
「うんうん。大丈夫。僕がついている」
「せいちゃん…お姉ちゃんね――あのね、あのね――」
 母は海外赴任で滅多に帰ってこない。よっていつも二人きりの姉弟で仲はとても良
い。ただ、精神年齢はほぼ逆転していた――清楚な美人の恭子は頭が悪いわけではな
いのだが、ちょっとぼけていて…
「どうしたの?何かあったの?いいから全部言ってご覧」
 だから、あやすような弟もあやされる姉も二人にはちっともおかしな光景ではな
かった。
「今日ね。クラブの先輩がお茶しようっていうからね―――」
 そして、姉は暖かい弟の胸の中でとんでもない訴えをはじめたのであった。

「――で、暗いお店に連れていかれてね。二人きりになったところで先輩がばさっ!
と――」
「な、なにーー!」
 長い話をまとめると、恭子は大学の先輩にだまされていかがわしい喫茶店につれこ
まれたらしい。その先輩はそこで二人にきりになったとたんに下を脱いでいかがわし
いものを取りだし“舐めろ”と強制したというのだ。
「そ、そ、それで姉さん、どうした!」
「怖くなったから力一杯暴れて逃げてきたの」
「ああ、良かった」
 あせって顔色を変えた弟はちょっと安心したが、怒りそのものは収まらなかった。
まったくとんでもない話だ。僕の大事な姉にいかがわしい真似をする奴がいようとは

「もう信じられない!学校じゃ優しい人だったのに!あんなことするなんて!」
「そうだよ。外は悪い奴ばっかりだからね。僕以外の男には近づいちゃいけないんだ
よ」
「―――うん。そうするわ。せいちゃん以外はもう絶対信じないことにする!」
「そうそう、男なんてのはみんな下心だけで動いているんだから」
 世間知らずの姉に都合のいい教育をする弟ではあったが、同時にこの時、重大な一
つの決心をした。もう限界だ。このままではいずれこの穢れない姉が世の男共の毒牙
にかかり汚されてしまう。
 だから、その前に僕の手で―――

「え?いやあ…何故服を脱がなきゃなんないの?」
 実の弟に言葉巧みに寝室のベットに連れこまれた恭子は、そこでようやく弟の意図
が良く判らないままにも抵抗をした。
「姉さんが、今日みたいな目に会わないようにするためだよ」
「それは良いんだけど――だから何故、あたしが服を脱がなきゃなんないの?それに
せいちゃんまでなんで脱いじゃうの?」
「だから!今日のことも含めて姉さんが狙われるのは、男共が下心で…姉さんにいや
らしいことをしたいからなんだよ!」
「う…うん。せいちゃんがいつもそう言っているよね」


第13話

「でも姉さんはそれが具体的どんなことか知らないでしょ?だから狙われてもその場
まで判らないんだよ。今日、へんな店に連れ込まれたのも、この前、電車でへんなも
のを掴まされたのも、そのさらに前に夜道でへんなものを見せられたのも―――
 その対抗上の基礎知識として今日特別に僕が教えてあげるよ」
 優しく囁きながらも聖一は結構本気であり、そのぶんたいへんであった。自分の服
を脱ぎながらも柔らかく姉の服も剥ぎ取っていかねばならないのだ。安心させるため
の笑みに脂汗が数滴流れていた。
「でも、いやらしい事って……いつも言っていた“せ、せっくす”なの?」
「ま、そうもいうね」
「“せっくす”って姉弟でやっちゃいけないんじゃなかったかしら」
 ぼけているようで意外に常識はある姉であった。ま、そりゃそうだ。
 弟の脂汗が倍化する。しかし、ここで諦めては長年の――
「そうだよ。だからそれがどんなのか教えるだけさ。最後まではやんないよ。安心し
て」
「そ、そう?」
 弟の大嘘に姉の抵抗が止まる。何と都合の良い姉であろうか。今の状況のおいしさ
に不純な弟は涙すら出そうだった。が――
「でも、具体的に教えてくれるってことは、せいちゃん、せっくすをしたことがある
の?」
「ん……ま、まあ、ちょっとね――」
 ほんとはたくさん――優しい担任女教師から始まって、学校やクラブの先輩後輩多
数。街で声をかけてくれたお姉様、恐喝にきたのを逆に食べちゃったヤンキー娘、お
小遣いまでくれたOL、腰が抜けるほどタフだった主婦、本当に上手だったおばさま、
その他もろもろ――
「まだ十六才なのにぃ?」
 上は五十六才から下は十二才まで――
「最初はキスからだよ!」
 天然ぼけのくせに鋭い――いかがわしい弟のいかがわしい過去を次々に暴こうとす
る姉に、弟は急いで実力行使に出た。
「あ…」
 全裸の姉を押さえつけ――抱きしめ、強引に唇を奪う。殴るように刺しこまれた舌
にこれがファーストキスの姉が抗えるはずもない。
「う…ううっ…」
 もうここまで来たらあとは一気呵成にいくまでである。男とはそう言うものだ。最
愛の女である以上、たとえそれが血のつながった姉だとしても――
 弟は今までの――豊富な――経験の成果を全て駆使し、その口と舌と歯で、姉の口
腔を丁寧に吸い、執拗になぶり、甘く噛み締めた。
「……」
 初心な姉はそんな弟のキスに酔ってしまう。ファーストキッスでここまでされれば
無理はあるまい。まして弟は経験も豊富にあり、それ以上に“本気”だったのだか
ら。
 ようやく唇を離した弟への一声はあえぎとしか聞こえないものであった。
「ああ…せいちゃん…なんか――お姉ちゃん、へん…になっちゃった…」
「いいんだよ。姉さん。姉さんは綺麗なんだから」
 脈絡はないが、うっとりと目を細め頬を染める姉を見た本音を呟く弟であった。ま
して、それが自分のキスによるものとあれば…
(ああっ!あちこちの女で練習しといてよかった!努力ってむくわれるんだ!)
 不純に感動した弟は欲情に耐えきれずそのまま顔を下げる。目の前に夢にまで見た
――よく入浴や寝姿は覗いていたが――姉の豊満なおっぱいが世界一杯に広がった。
「いやん、せいちゃん。おっぱいにそんな…赤ちゃんみた――はうっ!」
 欲望のままに弟は姉の乳房にむさぼりついた。動機は不純でも姉を想う心は純粋
で、かつ技は百戦錬磨である。夢中であっても“つぼ”をはずすわけがない。
「い、いやあ…そんな…舐め――ないで…こんな…初め…てよ――お姉ちゃん、おか
しくな…ちゃ…う…」
 弟の口が右乳房を一杯に頬張り、舌が乳首を弄ぶ。手は空いた左乳房を握り――
じっくりと丁寧な愛撫を行った。
(あせっちゃいけないんだ。姉さんにとっては初めてなんだし、僕にとっても姉さん
は“初めて”なんだから…)
 弟は自分にそう一生懸命言い聞かせながらも、手と指と口と舌を乱暴なまでに動か
す。“やりすぎかな”とも思うのだが、姉が敏感に反応してあえぐ声を聞くと、わ
かってはいてもより一層力が入ってしまうのだ。
「あ、ああああああ、ああああっ――――!」
 その時は意外なまでに早く来た。姉の裸体が紅く染まり、同時に微妙な痙攣が始
まったのだ―――胸への愛撫だけで姉が絶頂寸前までいったのである。
 弟は慌てた。
(まずい!これで終わってしまっては、下手したら醒めちゃうじゃないか!)
 急いで口と手を――惜しいながらも――離し、姉の裸体の沈静化を図る。それでも
じたばた感じていた姉であったが、やがて少し静かになった。“え?終わり?”と目
が言っているような気がしたのは弟の願望であろうか。
(難しいなあ。いかせてはならず、その寸前まで盛り上って、そこからじらして――
だもんなあ)
 真剣に悩む弟であったが、身体はちゃんと動いている。すうっと顔を下げ――
「え?なにをするの?せいちゃん。そんな恥かしいとこ――」
 慌てて両腿を閉じようとする姉より、わずかに早く弟は、そのかぐわしい股間に頭
を入れた。もちろん、ここで姉に“恥かしい”と陶酔を醒まさせてはいけない。だか
らここは一気にいくしかない。
「やめて!そんな、汚いわあっ!」
 真っ赤になって叫ぶ姉の悲鳴を、むしろ心地よいものとして弟はその股間の薄い叢
の下へ、ずぶりと舌を刺し入れた。姉の――一度として汚された事のない――美しい
秘肉が、弟の熱い――百戦練磨の――舌に初めて犯される。姉は羞恥の絶叫を、弟は
会心の微笑を同時に放った。
「せいちゃん…や、やめ…そんな汚い――恥かしいとこを…ああん…舐めちゃ…いや
あ…ああん…」
 騒ぎ悶える姉だが弟は両手で固く姉の両腿をロックして離さない。舌を一心不乱に
動かし続ける。ここまでくると技巧うんぬんではない。純粋に姉への口姦へ没頭して
いたのだ。
 そして最初から十分湿っていた姉の秘肉がわずかな間に牝蜜を涎のように垂らしだ
した。“今だ!”と悪い弟は思った。
「姉さん!」
 にわかに体を起こし、姉の上に腰を合わせて覆い被さる。何十人のよその女を泣か
せたその肉棒はすでに直線と化していた。
「気持ち良かっただろ?」
「あ……う…ん」
「もっと気持ち良くしてあげるね」
 弟は狂暴な肉棒をとろとろの姉の秘肉にあてがった。今なら簡単に入るはず――し
かし
「だ、駄目ぇ…それって本当の“せっくす”じゃない…あたし達、姉弟なのよ…」
 そう言って姉の腰が逃げようとする。日頃、ぼけている分、こんな状況でもそれな
りの理性が残っているのか!――と絶叫したい弟であったが、ここは我慢である。も
うひとおしなのだ。


第14話

「でも、姉さん。“恋人同士”ならSEXは許されるんだよ」
「え?こいびと?」
「そうさ!姉さんは僕が好き?」
「…それは…好きだけど…」
「じゃ、僕以上に好きな男はいる?」
 結構、真剣な質問である。問題は、こういうことをする前に確認すべきことなので
あって――
「いいや…せいちゃんより好きな男っていない…」
 思わず、ガッツポーズを取る弟であった。
「実は僕も姉さんが一番好きなんだ。誰よりも愛しているよ。本当にもの心ついた時
から!」
「…でも他の女の人と“せっくす”したんでしょ?」
 冷や汗が弟の背筋に一筋流れる。
「そ、それは、姉さんが振り向いてくれなかったからさ!姉さんさえ恋人になってく
れるのなら、そんなことは絶対にしなかったよ!」
「そう?」
「そうさ!
 そしてこれでわかっただろう!僕達は愛し合っているんだ。だから恋人同士さ!だ
から、今からその愛を確かめあっても良いんだ!」
 弟は姉を力強く抱きしめた。
「…そうなの?」
「僕の恋人になるのは嫌?」
「そ、そんなことはないわ…」
「じゃ、恋人同士で良いんだね?」
「で、でも…」
「でも、何さ?」
「恋人同士ってことは浮気しちゃいけないんだよ。せいちゃん。これからお姉ちゃん
だけって約束できる?」
 喋れば喋るほど立場が悪くなることに気がついた弟は、ついにここで決心して実力
行使に出た。さっきからあてがっていた腰をわずかに前進させたのである――その肉
棒の先端は姉の秘肉にずぶずぶと入りこんだのだ。
「あ、あああーーーんっ!」
 あえぎと悲鳴をミックスした姉の絶叫に弟は全身が紅潮するまでに煽られた。しか
し同時に数多の処女を奪ってきた経験が、“最愛の姉の為に”身体を冷静にコント
ロールする。
 あせってはならない。最初はほんとに痛いだけなのだ。それを貴重かつ美しい体験
とするには、男の気配りと思いやりと愛と――何より我慢が必要なのであった。
「姉さん。力を抜いて。大丈夫。僕に任せて。この世で一番愛している姉さんのため
だもの」
「ほ、ほんと?…せいちゃん、お姉ちゃんを愛してくれるの?」
 最初はじわじわだ。出血するくらいだから乱暴はいけない。出来るだけゆっくりと
腰を前後させて――男がつまらなくても、ここは女の身体をならすほうを優先するべ
きで――
(で、でも…姉さん、締まる…この前やった…先輩のお尻より…)
 弟にとって意外だったのはあれだけ愛撫して緩めたはずの姉の秘壺が、生まれて初
めて味わうまでに緊縮だったのである。これでは――ただでさえ、姉の処女を奪って
興奮している弟の肉棒が―――
「ね、姉さん…」
「…なに?」
「気持ち良い?痛くない?」
「う…ん…ちょっと気持ちは良いけど…やっぱり痛い――さっきほどじゃないけ
ど…」
「そ、そう?良かった…」
「?せいちゃんは大丈夫なの?なんか苦しそうだけど?」
「いや、苦しくはないんだ…気持ち良くて――」
 その気持ち良さを我慢するのが苦しくて――姉のことを思いながらも、徐々に速く
なる腰の動きを止めかねる弟であった。
「あ……まさか…」
 そして、爆発は信じられないほど早く来た。感じたときにはもはや手遅れで、弟は
童貞を失った時よりも激しく噴出す感触に、ただただ驚きを感じるしかなかったので
ある。
「あ…せいちゃん。何かした?大丈夫?お姉ちゃんの中で――何か熱いものが…」
 こういう状況でも弟を気遣い、かつ可愛くぼける姉を弟は全力で抱きしめた。
「姉さん。一生離さないよ。たった今から僕等は最高の恋人同士だ」
「うん。良いわよ。お姉ちゃんもせいちゃんなら――一生、大丈夫だわ…」
「姉さん!」
「でもね」
「え?――でもって?何?」
「さっきも言ったけど浮気は駄目よ」
 急に冷静な姉の強固な主張に、幸福に酔っていた弟の熱い背を冷たい汗が数筋流れ
る。
「わかった?もし、浮気したら――お姉ちゃん、怖いからね!お返事は?!」



六○六号室――

「ただいま」
 ドアを開けると、それを待ち構えていたかのように急いだ小走りの足音がした。
「お帰りなさい。宏一さん」
 睡蓮の柄の浴衣にエプロンという――ちょっと、家庭的には妙ないでたちのその女
性は、思わず声を上げてしまいたくなるほどに上品でしっとりとした――そのくせ、
胸と腰の辺りは特に大きいなかなかの美人であった。年齢は三十代半ばであろうか
――名は津子と言う。
「やっと期末試験が終わったよ。ママ」
「お疲れ様でした。
ご飯になさいますか?それともお風呂に?」
 これが宏一の実の“母親”だと言われても十人中十一人は信じないであろう。高校
生を息子に持つには“若すぎる”だけではない。何よりも、その“実の息子に対し
て”貞淑な妻が最愛の夫に尽くすかのようなその態度に――である。
「風呂にする。電車の中で汗をかいた」
「判りました」
 津子はうやうやしく頭を下げると息子の鞄を両手で受け取った。その手を宏一が掴
む。
「あ……いけませんわ」
 母のかすかな抗いをものともせずに宏一はその豊満な体を抱き寄せ、その唇に自分
の唇を――強引に重ね合わせた。
「う、ううう……」
 息子の舌が母の唇の間に刺すように侵入する。津子は一応、抵抗しようとしたが、
息子は母の浴衣ごしの熱い身体をしっかりと抱きしめて、許さない。すぐにも息子の
舌が母の口内をねぶりつくすように愛撫し出すと抵抗も加速度的に弱っていった。
「あ、う……うう・・」
 いつの間にか抗う母の両手は動きの向きを変えて、息子の首を抱きしめていた。頬
も見る見る赤くなり、もう相当にたまらないのか、身体も震え出す。その効果に息子
は会心の笑みを浮かべて、ようやく唇を離した。
「も、もう。おいたしちゃいけませんわよ。宏一さん」


第15話

 実の息子の淫らすぎるキスに、上気した顔とまだ微妙に震える身体のままで津子は
“めっ!”をした。母としての最後の見栄であろう。それが判っている息子はそんな
母をたまらなく可愛いと思った。
「だって、試験のために一週間も我慢したんだ。これくらいは許してもらわないと」
「駄目です。まず汗を流して、ごはんを食べてからです!」
 それなりの威厳を込めて津子が命令する。それでも、『わたしだって我慢したんだ
から…』という本当の思いを判らない最愛の息子ではない。宏一はにやりと笑った。
「その浴衣、いいね。ママに似合っているよ」
 津子が着ている睡蓮のデザインの浴衣――二人がどこよりも気に入っている“あ
の”旅館で買った浴衣である。それをわざわざ着て息子を出迎えた母の意味などは
――それこそこの二人にとっては口にする必要も無い事であった。

「お湯加減はどうですか?」
「ちょうど良いよ。ママ」
 待っていた息子はそう答えながらにやりと笑った。浴室のドアの向こう側の光景が
明快に想像できる。そこにはあの母がいて――いつものように次の準備をしているの
に違いないのだ。
「お背中を流しますわ。宏一さん」
 二分後、予想通りに母 津子が、予想通りの姿――その豊満な女体を、片手と手ぬ
ぐいだけで覆いながら浴室に入ってきた。もちろん息子に否やはない。
「じゃ、頼むよ」
 宏一は我慢して今まで入っていた湯船から、わざと勢い良く立ちあがった。浴室に
満ちる鋭い水飛沫と豊な湯気の中で、宏一の“男の子”の部分が威勢良く跳ね上が
り、元気良く振りまわされる。宏一はそれが“ママ”に直視されていることを確信し
ながら、あえて一切隠そうとぜずに洗い場の湯椅子に座った。
「ほんとうに立派になられましたね」
 向けられた息子の広くなった背中を見ながら、津子はしみじみと呟いた。母として
の誇らしさと嬉しさと――そして、“母”のものではない恥ずかしさが微妙に入り混
じった声で――
 それが判った宏一は、にやりと――子供の顔でなく“男”の顔で――笑う。
「綺麗にしてよ。ママ」
「はいはい」
(何せここは今からたっぷりとしがみつくんだから……)
 ――と思ったのがどちらかは判らない。
 津子はボディシャンプーをつけたタオルを両手で持ち、息子の背中を丁寧に流し始
めた。その愛情のこもった力具合が息子にはとても良い。心と身体をマッサージされ
ているような絶妙な感触である。
「あの――終わりました」
 うっとりとした息子に津子はちょっとおずおずと言った。
「これでいいですか?」
「何言ってんだよ。前もしてよ」
 言いざま宏一はくるりと身体ごと振りかえる。湯椅子に腰掛けた姿勢のまま、ほぼ
垂直に起立した息子の肉棒が津子の視界に突きつけられる格好となった。
「きゃっ!」
 刺激的な“息子”の光景に、少女のような声を上げて顔を両手で覆った母が宏一に
はたまらなく愛おしい。それが、演技ではない証拠に、その頬も――両手が上がって
剥き出しになった豊な裸身も、鮮やかに紅潮しているではないか。
「きゃっ!じゃないよ」
 この母の自分への態度に宏一は永久に勃起し続けるような強烈な陶酔感を骨の髄か
ら味わいながらも、あえて命令調にでた。
「早く洗ってよ。おなかが空いているんだ。“母親”なら当然だろ」
 言われて津子はおずおずおとタオルを構える。息子がこう強く言わねば、恥ずかし
がり屋の母は動けないのである。例え――本人がどんなに求め、欲情していたとして
も。
「駄目駄目。前にタオルは駄目。こっちは背中より繊細なんだから、もっと優しく
洗ってくれなきゃ」
「はい……」
 いつものことなので津子にも息子の要求している意味は判る。そして、それを自分
も望んでいるということも――実の母子の間としてはどんなに恥ずかしく、かつ背徳
的であろうことも。
「……失礼します」
 津子は礼儀正しく一礼してから、湯椅子に腰掛ける息子の――股間の前にひざまづ
いた。その姿勢だと、当然、息子の逞しく勃起した肉棒が目の前につきつけられた格
好になる。至近距離で見るそれは、大きく、何本もの血管が威嚇するように浮き上が
り――そして、息子の前に屈辱的な姿勢でひざまづいた“母”である津子の裸身と、
今から息子のそれを受け止めると決めた心――いや、“欲情”めがけて勃起している
ことがありありと判る。
(……では)
 心の中でそう拍子を取る。同時に津子は自分の股間が湿った音で鳴ったような気が
した。
「はうっ!」
 宏一が小さい声を上げる。自分の肉棒を母の真っ赤な美しい唇がぱっくりと咥えた
感触と――その背徳的かつ甘美すぎる事実に……。
「ふふふ。ママ、良いよ。一週間ぶりってこともあるけど、ママのお口は最高だ」
 誰よりも美しい“母”が息子の股間に誠心誠意“お口の奉仕”をする――と言うこ
とが、男としての優越感と息子としての愛される深さへの感動の双方をたまらなく刺
激する。宏一は、股間の下の母を力一杯抱きしめたい衝動を、せめて母の頭を抱える
ことでこらえ、母の口と舌と――“愛情”による肉棒への感触をたっぷりと堪能し
た。
(う…大きい…宏一さんって――やっぱり一週間我慢したせいかしら。それにとって
も熱くって……)
 母としてあるまじきことを思いながらも津子は懸命に舌と口を動かし、口の中の息
子の肉棒を愛撫する。この狂暴さは誰よりも良く知っているが、加えて今は本当に食
べてしまいたいくらいに可愛いい感じすらもしていた。
(……やだ、あたしも一週間我慢したせいかしら。実の息子の宏一さんに対してはし
たないことを……それとも――)
 これからの狂暴さを期待しているのかしら――などと全身で真っ赤になって思いな
がらも、津子は舌で息子の肉棒を丹念に舐め上げ、口全体で力一杯吸いこむ。
「そうそう…もっとなぶって…下のほうも…」
 息子の希望の通りに――加えて母の欲情のままに、息子の肉棒は母の口腔に愛され
――弄り続けられた。そして――
「……そろそろいくよ。ママ、どっちが良い?」
 眉間に皺を寄せ――股間の爆発に耐えて宏一がうめく。津子も“大変!”と視線を
上げた――息子の肉棒をその真っ赤な唇にしっかりと咥えたまま。
「顔か胸にする?」
 母はちょっと考え――いやいやをする。
「じゃ、飲む?」
 息子の肉棒を口から一ミリも離さずに、“こくこく”と母がうなずく。宏一はそん
な母の可愛らしさににっこり笑い――同時にその淫靡さにこらえきれずに肉棒を爆発
させた。
(う……!)

第16話

 びしゃっ!と男のミルクによる音と衝撃が津子の喉まで叩きつけられ、息子の熱さ
と男の香りが口一杯に飛び散る。それでも母の口の中でどくどくとうごめく息子の肉
棒を津子は離さずーー逆にその全てを飲みこもうと喉に力を入れた。

 入浴を終え、すっきりとした宏一はパンツだけをはいてリビングへ入った。すでに
一足先に出て、浴衣に着替え直した津子がいる。
「今日はちゃぶ台にしときましたわ」
 津子はリビングの絨毯の上に置いたこたつ机に料理を並べていた。サイコロステー
キや刺身、ガーリックライス等々の息子の好物を嬉しそうにそろえるその姿は、まる
で新妻のように初々しく――けなげでもあった。第三者であれば、これがついさっき
息子の全部を飲みこんだ実の母だとは絶対に見えなかったであろう。
「あ、鯛に烏賊だ。この刺身はママが作ってくれたの?」
「もちろんです。魚市さんに活きのいいのが入っていましたの」
 ちょっと自慢する母に歓声を上げながら、宏一はするりとその母の隣に身体を刺し
入れた。その際に触れた息子の身体の熱さに津子の心臓は思わず跳ねあがる。
「あの…宏一さんの席はあっちなんですけど」
 嬉しい動揺を悟られないよう何とか押さえようとする母の抗議を息子は嬉しそうに
無視した。
「だあめ!試験明けで疲れてんだから、食べさせて」
 そう言いながら息子は母を横から抱きしめようとする。その肌の熱さが胸が密着し
た脇から腕が回った背中にまで焼け付くように津子の身体に響いた。思わず、母の理
性は声をからして叫んだ。
「な、なんですか。宏一さん!子供みたいに!」
「子供だもーーん。ママの」
「………あ――」
 言われて見ればそのとうりである。宏一は津子の実の――たった一人の息子なの
だ。
「あーーん」
 しかし――いや、息子がまるで雛鳥のように口を大きくあけてご飯をねだるのは、
まあ良しとしよう。しかし!その間にその両手が母の浴衣のあちこちから不埒な侵入
することを“母”として許して良いのだろうか?
「ちょ、ちょっと!いけません!そんなおいたをしちゃあ…」
「ママ。和服の時には下着をつけないっていう言いつけは守ってるんだね」
 息子は母の躾などは、“完全”に聞いていなかった。
 それどころか、右手を胸元から入れて母の豊な乳房をわしづかみにし、左手は裾を
割って暖かい母の股間に侵入する。すでに固くなった乳首への刺激ととっくに湿って
いる股間への攻撃に、津子は――母として!――はしたない声だけは必死でこらえ
た。
「なんだ。もう立ってるし、濡れているじゃない。結構、飢えていたんだね。ママ」
「だ、駄目ですぅ…」
 息子の右手が母のすでに固くなった乳首を弄び、また左の中指が母の肉襞の中に刺
しこまれる。乳首のこりっ!とした感触と愛液のぬめる音は誤魔化しようが無い。あ
まりの恥ずかしさに津子の声は消え入りそうであった。
「なに?何が駄目だって?今すぐママを姦ること?」
 宏一の腰が動き、津子のお尻にその股間が押し当てられた。
「あ、ああ……」
 その感触に津子の背筋が震える。薄い浴衣の布ごしに伝わるその熱さと硬さは、い
つもの――母子が変わった“あの日”から、ほぼ毎日、浸りきるほどの堪能した日々
によって津子の“女”の全てに刻印されたものであった。
「ほら、もう僕は準備OKだよ。触って――次に何をするかは判っているよね?」
「…ご飯を食べてください……成長期なんだからお身体にさわりますぅ…」
 実の息子に巧妙に胸と股間を責められ、また、耳元で“女”として甘く囁かれなが
らも、津子はかろうじて“母”の台詞を声に出した。
「ほおおう。まだ、そんなうそつきなことを言うの」
 台詞とは裏腹に息子は嬉しそうである。か細い抵抗が更に嗜虐性をくすぐったよう
だ。少し意地悪な息子は、口だけは正直でない母の身体に対して実力行使にでた。
「きゃうんっ!」
 素早く――しかし丁寧に、津子の身体は仰向けにされた。その勢いで割れた裾を覆
う間もなく、すでに十分に熱く湿った股間めがけて息子の頭がかぶさる。どうなって
いるのか理解したのは、恥ずかしい母の肉襞に息子の熱い舌が触れた痺れるような刺
激によってであった。
「いやっ!そんな――ご飯前にぃ!」
 抗おうとしても何も出来ない津子の股間に息子が顔をうずめている。和服故に下着
は何も付けていないから、息子の視覚と嗅覚には剥き出しになった母の“女”の部分
が――それも息子の指の愛撫だけで、涎のように愛液を垂れ流している肉襞が熱さを
感じるほど密着して存在しているのだ。津子の声はもう死にそうであった。
「や、やめて…それより先に…ご飯を食べて下さいぃぃ…」
「食べるよ。今から――ママの一番美味しいところを」
「ひうっ!」
 津子の秘肉に生暖かく柔らかいものがぞろりと触れた。見るまでもなく、毎夜の経
験からそれが息子の舌の愛撫であることは感触だけで母には判る。そして、それがい
かに執拗、かつたまらないものであるかと言う事も…
「あ、ああん…いやぁぁ…そんなぁ…いいっ…いや…宏一さ…ぁぁん…」
 千回以上の経験を誇る息子の母自身への舌での愛撫は、津子の予想通りに果てがな
いほど濃厚で、かついやらしいものであった。ぺちゃぺちゃと息子の舌と母の秘肉が
鳴る音が二人にははっきりと聞こえる。
 そして、そのどうしようもない快感には、“母の威厳”など何の意味もなく、津子
はただただあえぎを上げてむせぶだけである。“止めなくては…”と頭のどこかで
思ったとしても、息子の両腕が母の両腿をしっかりと抱きこんでいて、外せそうにな
い。いや、それどころか無意識のうちにその両手は股間にむしゃぶりつく息子の頭を
逆に押さえてすらいたのだ。
「ひ――ッ!」
 ついに短い悲鳴と衝撃が津子の身体を鋭く走った。濃すぎる息子のクンニに母が軽
く“いった”という事は津子にも宏一にもわかる。さっき母の口に爆発して男のミル
クを全部飲んでもらった息子はようやく満足げな笑みを母の剥き出しの股間に密着し
たままもらした。
「良かった?ママ」
「――あ…ああん…」
 まだ痺れる股間から上げた息子の笑顔に優しく聞かれたって応えられる状態の母で
はない。一週間待たされたあげくに、お風呂で“息子の”への濃厚な肉奉仕を強制さ
れ、そしてこれから先の予定に、本意ではなくてもどこかで、わくわく―母として恥
かしくも―していたのだ。同じくらいに盛り上っていた息子の愛撫が――
「じゃ、本物で行くよ」
 まだ余韻に浸りきっている母の身体に熱くなった息子の身体が覆い被さる。浴衣の
帯はすっと息子に外され、津子の白い肌の裸身――豊すぎる胸と大きな腰――そして
勃起したような乳首と繁みまで濡れた秘肉までもが、剥き出しにされた。
「いや、でもその前にせっかくのおっぱいを食べちゃおうかな」
(え?――)
 と、思ってしまったことが、母として実に恥かしいことであった。宏一は母の“希
望”に反して、まずは胸に殺到したのである。
「美味しいよ。ママ」


第17話

 母の乳首をぺろりと一舐めしてから猛然と宏一は津子の乳房にむしゃぶりついた。
知り尽くした息子の舌と歯が激しくあばれ、しびれが母の脳天まで響く。その快感の
激しさは(“おあずけ”なのに)、全身が跳ねあがるほどであり、実際、これだけで
もう一度いってしまいそうであった。
「あああぁっ――!」
 しかもそれだけではなかった。息子の胸への激しい愛撫だけでこれだけ狂っている
というのに、母の濡れきった下半身は満足していなかったのである。
「ひ、ひぃ…い、いいっ…でもぉ…」
 母の大きな乳房をむさぼる息子の頭をしっかりと右手に抱きしめながらも、津子の
左手は下を――半ば無意識のうちにさぐる。探しているのだ。母の、沸騰するほど欲
情している肉壺をふさぎ、思いっきり蹂躙してくれる最愛の――母だけの肉棒を。
「あ、はしたないことしている」
 母にようやく肉棒を掴まれた宏一は余裕たっぷりに囁いた。津子の左手のひらから
伝わる息子の肉棒の熱さと血の鼓動の合間にその悪戯声が耳に染み入る。もう、津子
には母としての威厳などなかった。
「お願い…して…宏一さぁん…もう…我慢…でき…な――」
 母の肌の熱さと股間の十分過ぎる湿り、乳首の背伸びするかのような硬直――そし
てこの哀願に宏一は満足の笑みを浮かべた。腰を引いてゆっくりと母の左手から自分
の“凶器”を解き放ち、それを慎重に母の秘肉に押し当てる。
「うっ…うーーーーーっ!」
 ことさら丁寧にしたのはじらすためだけではない。一気に行くと自分も爆発しそう
だったからである。
 そして、ぐっ!という衝撃が母子の双方に波のように走った。
「いいっ!…こ、宏一さん!」
 上から熱い肉棒を刺しこむ息子に、母の熱い肉壺はしゃくりあげるように腰を浮か
せて迎えた。欲情した肉と肉が交わるいやらしい音と快感が、二人の股間から全身へ
爆発する。
「ひぃぃぃ――っ!」
「いいよ…ママ。相変わらず最高だ。一週間待ったかいがあったよ」
 息子の激しい腰の動きの下で母が獣のように跳ね、泣き叫ぶ。余裕のある台詞の息
子も、それにあおられるように紅潮し、さらに母の肉壺をえぐる自分の肉棒を加速さ
せた。
「い―――いくぅっ…い…くぅ――お…お願い…こ…こう…宏一さ…」
 夢中で津子は――いや津子の体は宏一にしがみついた。熱すぎる母の肌が汗を浮か
べた息子の肌を覆い尽くすように密着し、硬くなった母の乳首が息子の胸に押しつけ
られる。母の右手が動いて息子の頭を抱え、同時にその唇が息子の唇に貪るように食
いついた。その感触がさらに母子に欲情をあおる。
「そ、そんなにされるとぉ…」
 次の爆発までの時間はいつもより早かったが、二人とも、もう本気の限界であっ
た。それから数秒後――
「あ……」
 二人の身体中に、しかも同時に爆発が起きた。自分の中のふるえるほどの快感――
それを密着した肌から伝わる相手に同種の衝撃がある喜びがさらに倍化させる。それ
はきっと相手への――実の母子であっても、いやそれだからこそ――“愛”の故で
あったのだろう……
「ああ……宏一さん…」
「ママ…良かったよ。やっぱりママが最高だ。僕はもうママしかいらない」
「――嬉しい…」
 二人だけの世界で愛し合う母子は互いを力一杯抱きしめて、余韻と互いの愛を確か
め合う。しかし、同時に次の愛へのエネルギーがその二つ裸身に加速度的に盛り上り
つつもありー―そして数分後二つの声が重なるのだ。
「ねえ…」



「――いかがでしょうか。お客様。
 さらに申し上げれば、ただいま説明させていただきましたお勧め点は、当マンショ
ンの魅力のほんの一部でしかございませんが、それだけでも十分なものであったと、
私どもは確信しております。他の様々なお買い得ポイントにつきましては、後ほど
個々の説明で申し上げますが、それ以上につきましては――ご購入の上でお客様自ら
ご確認くださいませ。
 ご心配なく。絶対に損はさせません。
 あ、それから――最初に申し上げましたように、当マンションに入居なさるについ
てはオーナーより『仲の良いご家族であること』という条件がつけられております
が、お客様達なら大丈夫でしょう。
 いえいえ、ご謙遜なさらないで。こうしてお伺いしているだけで仲むつまじさは十
分判りますわ。片親だけだとか子供だけだとかなんて気になさらないで下さい。最近
では珍しいことでもないですよ。この私も母子家庭ですし、そもそもここのオーナー
もそうです。
 それに、申し上げましたように、このマンションはお客様のようなご家庭には特別
割引がございますので…私の親友の由佳のご紹介の分も合わせて勉強させていただき
ますわ…
 
 え?では早速、ご契約いただきますので?
 ありがとうございます――そしておめでとうございます。いや、正直申し上げまし
て、不動産屋としてもお客様の今後のお幸せをこれほど確信できる物件は他にござい
ません。
 では今後のお二方のご多幸をお祈り申し上げます―――」

 K不動産株式会社社長 宏美女史のある日の営業活動より









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