官能亭江露丸 作

官能落語『地獄責め』



第1話

え~、昔から男の遊びてぇと「飲む、打つ、買う」なんてことを申します。

「飲む」はもちろんお酒を飲む。

打つ」と申しますと、こちらは博打。

お終いの「買う」ですが、こいつぁはバーゲン会場に押し駆ける...
てなことではございません。

お金をお支払いして、女性にお相手願うということでございます。

この相手をして頂ける女性は、世界で一番古い職業なんてことも申します。
こればっかりは、どこの国へ行きましても、必ず有るそうでございます。

ところが仕舞いまで行かなくても、それでも楽しく遊ぼうてぇことで、
風俗てぇものが様々ございます。

なんでも、これだけ色々なバリエーションがあるってぇのは、
日本の風俗が一番らしいですな。

新しい趣向のお店ができますいうと、どうなもんだろうと覗いてみる奴がおります。

なかなか良いぢゃ無いか、てなことになりますと、口コミで伝わって大いに流行る。

他の店も真似をする。
また新しいアイデアでもって、客を呼ぼうと工夫する...てな訳でございます。

なかでも、くすぐりやら生殺しなどをやられたいという男性に人気があるのが、
「M性感」
美しい女性に、時には拘束されて弄ばれるというのですから、それも尤もでしょう。

これにハマってしまった人々が集まってくる、
「M性感の部屋」というサイトもございます。

掲示板では、どこそこの何々さんは、
テクニックが素晴らしい等と情報交換も盛んにやっております。

ある時、ちょいとそちらを覗いてみますとてぇと、
これが「地獄責め」というお話で持ち切り。

と申しますのも、連射ってなこと...こいつは野郎は元来できません。

一発撃ったと思ったら、す~っと醒めて、火縄銃と同じで、しばらく休まないと、
次は撃てない。

実は、女性の方は、うまいこと可愛がれば、羨ましいことに、
続けて何度もイクことができるんですな。

反対に申しますと、この辺の男の心持ちゃあ、
なかなか理解して貰い難いもののようでございます。

それでも中には、手練の技でもって、
ちょいと他ぢゃ味わえないような思いをさせてくれる方もおられます。

なんでも、精管を前立腺のところで指でもって、
キュ~ッと押し付けておくものだから、達しても漏れない。

漏れないものだから、達しても達しても興奮が冷めずに、
続けて何度もイってしまう....と、こういう寸法で。

こいつを「地獄責め」と、こう称する訳ですな。

やられている方は、地獄どころか、しばしの間、
極楽浄土をさまようことと相成ります。

「おぅ、熊! どうしたい?」

「おや、八っさんかい? 今ちょいと、遊びの帰りだけど...いや凄いもんだね」

「へっ! 何でぇ? 何が凄ぇんでぇ?」

「あっしゃ、まだ膝がガクガクしてるよ」

「をおっ、出たのか!? 出やがったのかよ?」

「それがね、なかなか出ないんだけど、出るとなったら...いや、もう腰が抜けましたよ」

「へぇえ~! そんなにもの凄ぇ幽霊さんが、お出ましになったかい?」

「何を言ってるんだい、幽霊の話ぢゃ無いんだよ...かくかくしかじか」

....ってな訳で、店の道順から、姫の源氏名まで、仔細に聴きました八五郎、
喜び勇んで街へと繰り出します。

「おっ、ここだね...ここですよ、へへっ、ちょいと判りにくい場所だね...」

「良く聴いておいて良かったぜ」



「ごめんよ...邪魔するぜ」

「いらっしゃいませ...ご予約でございますか?」

「いや、飛び入りさ、よろしく頼むぜ」

「指名なさいますか?」

「何だ? 」
「たった今来たばっかりで、もう、おしめえってぇのは、ちょいと気が早えぇんぢゃねぇかい?」

「いえ、そうではございません...コンパニオンのご希望はお有りですか?...」
「こちらに写真がございます」

「そんならそうと言ってくれ、あんたも人が悪い...」

「ご希望、ご希望と...畜生、目移りがしてきやがった」

「直ぐにご案内できるのは、こちらと、こちらになりますが」

「おっと、そうだった、熊の奴に、名前ぇを聴いておいたんだ...」
「え~...この娘で頼むぜ」

「こちらで...へい、承知しました...お掛けになって、お待ち下さい」

しばらく待っていますというと、準備、相整いましたってなことで、
部屋の方へと案内されます。

そこで姫とご対面致しますと、早速着物を脱いで、シャワーを浴びるんですな。


「てへへ、初めて顔を見て、早々に裸になるってのも、なかなか照れ臭いもんで....」

「うふふ、これから、もっと恥ずかしい目に会わせてあげるわよ!」

こういうのを「言葉責め」と申しまして、
痴女のように淫語を耳元で囁くというのが、M性感の特徴でございます。

シャワーからあがりますというと、うつ伏せにちょいと横になりまして、
指圧をして頂けます。

「う~、効くなぁ~! 姐さん、ありがとうよ、ちょうど腰が張ってとこだ」

「この腰のツボを、キュ~っと押すと、下半身の血行が良くなるのよ」

「ほぉ~、血行が良くなって、大変結構ってなもんで、腰が軽くなったような心持ちだぜ」

「血の巡りが良くなれば、肌も敏感になるし、勃ちも良くなるの...たっぷり感じさせちゃうから」

「うへっ、こいつは堪らねぇや」

....ってなことで、指圧の効果か、鰯の頭も信心からか、
八五郎、すっかりその気にさせられております。



第2話

さて、ひと通り体を揉んでもらいまして、すっかりリラックスしたところで、
次へ進んで参ります。

「どう? 疲れが取れた? 今度はパウダーマッサージよ」

「ん? 何でぃ、その粉は!? ん~? そいつを...あはっ!」

「うふふ、くすぐったいの? こっちは?」

「ひゃぁ! ちょっと待った! ゾクソクしちまって」

「ダメよ、イイ子だから、じっとなさい」

「おっ、おほっ!」

「フフフ、暴れると、縛っちゃうわよ~」

肌にちょいとパウダーをはたいておきますと、これは滑りが大変良くなります。

そこへ持ってきて、触れるか触れないか、微妙なタッチで撫でられますというと、
これがたまらない。

身体じゅう、もう、鳥肌が立ってまいりますが、そのうちに他のモノも...

「あらっ? どうしたの? そんなに大きくしちゃって」

「えっ? いや...その」

「いやらしいこと考えてたのね? そうでしょう? 正直に言いなさい」

「ん...まぁ」

「どこにそんなにスケベな考えが入ってるの? 絞り出してあげる...」
「分かったわ、ここでしょう」

「うわっ」

「触ったら、益々大きくなったじゃないの...奥から全部出さなきゃ!」
「 四つん這いになって」

八五郎、すっかり主導権を奪われた恰好で、ノソノソと膝と手を突きます。

その間にも、こちらはローションを取り出しまして、また一人、
極楽へ案内しようと待ち構えます。

さて、四つん這いと申しますのは、ちょいと考える以上に、無防備な体勢でございます。

相手に後ろに座りますと、どこまで追い詰めたのか、実は前から見るよりも、
こいつが分かりやすい。

おまけに、手を突いておりますから、意表を突いて、
腋やら乳首やらに指を滑らせても、相手は息を呑むばかり。

....と、こういう訳でございますから、八五郎があと少しとなるまで、
そう長くは掛かりません。

そして、そうなっていることも、すっかりお見通しでございます。

「ふふっ、ダメよ、まだ」

「いや、でも...もう」

「慌てないの、我慢なさい...ホラ」

「アアッ! もう...もうイキてぇんだよ! 何とかしてくれ」

「しょうがないわね...それじゃ、え~と...」
「イッて良いわよ、ふふふ、イケるものなら」

....ってな訳で、きっちりと指で管を抑えますと、
ようやく地獄責めの始まりでございます。

「をっ、をっ、をっ、出る...出るぞ...をっ、出るぞ」

「良いわよ、出して! ふふふ、出してごらん」

「あぁ、あぁ、あぁ...ん、ん、ん?」

「どうしたの? 出ないの?...うふふ、出せないのよ」

「うぅ、うぅ...もうイッてるんだ...でも」

「ダメねぇ...まだたっぷりと、たまってるわよ...ちゃんと出しましょう! さぁ」

「うわっ、あっ...イク、あぁ、またイク」

「イキなさい...何回でも」

「う~ん、う~ん」

「出ないわよ...私が抑えている限り」

「はぁ、はぁ、イッた、イッた...けど」

「どう? もう一回? いやらしい液が抜けるまでは、終われないわねぇ? それっ」

これはもう、際限がございませんから、文字通り、精魂尽き果てるまで続きます。

いや、正確に申しますと、精は止められていて尽きませんが、
根が突き果てたようでございます。



さて、ふら付く足を踏み締めながら、どうにか家に帰り着いた八五郎でございますが、
一晩明ければ何のその。

仕事もうわの空で、昨晩の心持ちを思い出すといいますと、
それだけで胸がドキドキしてくる始末でございます。

「けっ! こいつはたまらねぇや!」
「日が暮れてきたところで、またひとつ繰り出すとするか」
「そう言えば『次は予約を入れてね、八さん』って言われたっけな」
「『予約を入れてね、八さん』か...へへっ、畜生、よだれが出てきやがった...」
「そうだよ、名刺を貰ったんだよ」
「名刺、名刺と...おっ、ありましたよ...」
「どれどれ、こいつに電話番号が書いてある」

....ってな調子で、二晩続きで遊んでやろうと、
いそいそと電話機に手を伸ばします。

「おぅ! ひとつ、予約って奴を頼みたいんだけど...」
「今晩の九時頃からはどうでぇ?」

「今晩の九時でございますか...」
「生憎と今日はもう店の前まで、お客様が並んでおられる有り様でして」

「ふ~ん、大した繁盛だな...で、何時になるんだい...」
「なぁに、夜遅くったって、構いやしねぇや」

「いえ、本日は、もう店仕舞いまで一杯でして...」
「先程も、お一人、お引き取り願ったような次第で...」

「えぇっ? するってぇと何かい? 夜中でも、もう入れねぇってぇのかい?」

「申し訳ございません。」
「風営法とのお達しで、零時を過ぎてお店を締めませんと、お咎めがございます故...」

「ちぇっ! こちとらぁ、ムズムズ来てんだよ...」
「仕方が無い! 明日だ! 明日の何時なら入れるんだい?」

「誠に相済みません、明日分のご予約もたった今一杯となりましてございます」

「なんだい悔しいねぇ、空きは無いのかい?」

「へい、有り難いことに大入り満員、前日で札止めとさせて頂きました」


「おぅ! そいつを是非、頼みてぇんだよ...前立で管止めを!」


テケテンテ テンテ テンテ...














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