目の裏にちらちらと明るいものが映って、少女は眠りの海から浮かび上がった。
完全に覚醒しないまま、ぼんやりと明るいものの正体を探す。
あった。
カーテンが完全に閉まっていなかった。閉まりきっていないその隙間から細い光が少女の顔に差し込んできている。
あまりに眩しくて、カーテンをちゃんと閉めようと、少女はベッドから降りようとした。
だが、彼女の身体はしっかりと固定されていて動かない。
???・・・・・!!!
少女は一気に覚醒した。
彼女の後ろには珪が眠っていて。少女の体が動かなかったのは、背後からしっかりと抱きしめられていたせい。
二人とも裸で。
背中にあたる、暖かな吐息と肌の感触。少女の全身が真紅に染まる。
とにかく、カーテンを閉めようと、そっと珪の腕を外す。
ベッドの下に落ちていたバスタオルを拾って、身体にまとい、窓に近づいた。

カーテンを閉める前に振り返って、いまだ夢の中の恋人を見つめる。
さらさらの髪。頬に影を落とす長いまつ毛。すっと伸びた鼻、形の良い唇。綺麗な寝顔。
毛布から出ている肩と腕は、細いけれど、しっかりした筋肉がついていて、彼が男性であることを感じさせる。
それを見た少女は昨夜の事を思い出してしまい、恥ずかしくなる。けれど、同時にじんわりと胸に温かなものが広がってくる。

“お前が欲しい”と言ってくれた。
一人の夜は淋しくて。待つだけの夜が哀しくて、ついあんなメモを書いてしまった。
大切にしてくれているのを知っているのに、何か確かなものが欲しくて。
迷子の子猫になりかけてた少女の気持ちに居場所をちゃんと教えてくれた人。
どうしても書けなかった最後の願い。それすら解ってくれて。

肌を合わせ、身体を重ねるということ。
大好きな人に愛されるということ。
それが、こんなに幸せなことだったなんて。
言葉じゃなく、身体中で想いを感じる。溢れてくる。

幸せなからだ。幸せな自分。
幸せすぎて、おかしくなっちゃうんじゃないかと思った。
彼に出会えた事を、全ての事に心から感謝しよう。

ふいに涙腺が緩んで、視界が霞んだ。
少女は慌てて、ぱちぱちと瞬きを繰り返して、浮かんできた涙を元の場所に押し込める。
それから、もう一度珪の居るベッドへ潜り込んだ。
ほんの少し側に寄ってみた。珪の温もりが伝わってくる距離。
その温もりで、また涙腺が緩みそうになる。
と、不意に。
珪が動いた。
少女はあっという間に彼の腕に捕らえられる。
ぎゅっと抱きしめられて、少女の全身が再び真っ赤になる。
動けず、固まってしまった少女の耳に、いや身体に直接、彼の鼓動が聞こえてくる。ゆったりとした鼓動。
それを聞いているうちに、いつしか少女の身体から力が抜けた。珪の腕の中に身を委ねる。

“大好きよ。ずっと、ずっと一緒にいてね。”
そっと心で囁いて。
少女は、彼の胸に顔を摺り寄せた。幸せの吐息を1つつく。
そうして。
少女は再び眠りの海へと沈んでいった。
今までで一番綺麗な笑みを浮かべて・・・





後朝 【きぬぎぬ】 とは……

(1)男女が互いに衣を重ねて共寝した翌朝、別れるときに身につける、それぞれの衣服。
(2)相会った男女が一夜をともにした翌朝。また、その朝の別れ。ごちょう。こうちょう。





































投稿官能小説(3)

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