14.佐々木のミスリード

「おい増田、起きろ!」

 どのくらいたったのだろう。佐々木に身体を揺り動かされて目を覚ました俺は、そこがまだ例の白い部屋の中だと気付く。室内は2人切りで、千恵利や奈々はいなかった。

「千恵利は?」
「何寝ぼけてるんだよ、しっかりしろ! お前、悪い夢でも見てたんじゃないのか?」
「ダイジョーブ、ですか?」

 2人切りだと思ったら、部屋のすみにいたキャサリンが声を掛けて来た。

「ゴメンナサイ、ハーブティー、ワルカッタ」
「すまんな増田。お前体質的に合わなかったんだな。戻しちまってから、しばらく気を失ってたんだよ」
「そうか……」
「まれにハーブで気分が悪くなる人間がいるんだよ。本当に悪かった」
「オイシャサン、イキマスカ?」
「いやいい、大丈夫だ」

 心配そうなキャサリンの問い掛けに、俺は即答していた。意識ははっきりしているし、本当に悪夢を見て目覚めた直後みたいで心臓がドキドキしていたが、夢だとわかって安心した俺はむしろ晴れやかな気持ちだった。

ーーそうか、あれは全部夢だったのか。そうだよな、あんな事があるわけない

 正気を取り戻した俺はそう冷静に判断した。ちょっと気を失っていただけだろう。どこも具合は悪くないし、医者に掛かるほどではないと思った。

「キャサリン、もういい」

 キャサリンが部屋を出て行くと、佐々木が言った。

「いいか増田、あれは夢だったんだ。そう思え」
「はい、わかりました」

 俺の口からはごく自然に丁寧な言葉が出ていた。

ーーん? 俺はどうしてこんな言葉使いをしてるんだ?

「今からしばらくの間、お前は自分の感情に素直に行動しろ。世間体だとか、余計な事は一切考えるんじゃないぞ。わかったな、ハイッッ!!」

 一体この男は何を言いたいのだろう? 妙な事を言うやつだと思ったが、佐々木が大きく手を叩くと、すぐにモヤモヤが晴れた。そうだ、俺は誰にも干渉される事などない、自立した大人だ。佐々木の言葉は当たり前じゃないか。

「よし、お前がまともになった所で、嫁さんと娘に会いに行こう」
「えっ!?」
「どうした? お前、娘の事で俺に話があったんじゃなかったのか?」
「そ、そうだったな」

 さっきまでリアルな悪夢を見ていたせいで、すっかり思い違いをしていたようだ。俺はバイトを始めると言う奈々が心配で佐々木に会いに来たのだけれど、キャサリンと言う外人妻が作った変なお茶のせいでぶっ倒れてしまったのだ。つまり、まだ千恵利や奈々には会ってもいない事になる。正直ホッとすると同時に、家族に会う事にためらいを覚えた俺は内心苦笑した。

ーー参ったな。あんなとんでもない夢を見ちまった後で、千恵利や奈々とまともに顔が合わせられるだろうか?

 それにしても本当に薄気味悪いくらい、細部までリアルな夢だった。とりわけ奈々のロストバージンと、顔に小便を掛けられた時に迫って来たドアップの女性器が生々しく記憶に残っている。いずれもまともな父親が一生見る筈のない娘の痴態で、あれが全部夢だったと言う証拠に他ならない。

 エレベーターで一階に下りると、キャサリンがもう千恵利と奈々を連れて待っていた。奈々は学校帰りの制服で、千恵利は普段着にエプロンを掛けただけ。あの、佐々木が送り付けて来た千恵利の陵辱動画も、全部夢だったのではないか、と一瞬頭を掠めたくらい普通の様子だった。

 そこで、佐々木と千恵利から、奈々のアルバイトについて説明を受ける。毎日学校が終わってからの2時間ばかり、千恵利と一緒に働いてから帰宅するのだと言う。奈々に聞いてみた。

「英語の勉強になりそうなのか?」
「うん、バッチリだよ。アメリカの人が沢山いて、もう最高」

 普段口を利いてくれない奈々だが、人前だけにちゃんと話してくれた。タメ口なのが気になるが、まあ良いだろう。一寸嬉しくなった俺は安心した。それに千恵利も言う。

「ね、言ってた通りでしょ。それに私がずっと一緒だから大丈夫なんだって。パパはもう、心配性なんだから」

ーーアレ? 千恵利が一緒だから大丈夫? その通りだな。俺はどうしてあんなに心配していたんだろう

 千恵利が一緒だからこそ心配だったような気がするのだが、よく考えるとおかしな話だ。俺が何を不安に思っていたのか、思い出せない。と言う事は千恵利が言う通り、娘がかわいいあまり俺が過剰に心配してるだけだったのだろう。ともあれ、わざわざ店にやって来て、佐々木と直接話をして良かった。変な心配も消えたし、奈々を安心して働かせる事が出来る。

 ところがここで予期せぬ事態が起こった。妻や娘と一緒に帰ろうとすると、佐々木が駄目だと言うのである。

「奈々さんは今からすぐ『研修』を受けてもらうからな。その間、千恵利さんには『上の階』で働いててもらうよ」

 佐々木は「研修」と「上の階」と言う言葉を妙に強調して言ったのだが、その時俺は不思議な考えに捕らわれた。

ーー奈々を「研修」させるだって? それに千恵利は「上の階」で働く、だと?

「その研修と言うのはどんな事をするんだ?」
「明日から働いて貰うために、アメリカ兵の接待のやり方なんかを、俺がじきじきに指導する。まあ、2時間は掛かるかな」
「2時間もか」
「アメ公は日本人より厄介なやつが多いんだよ。デカいやつも多いし」

 「デカい」と言う言葉は体格だけを指しているわけではないように、なぜか聞こえた。

「それに奈々さんは初めての経験だろう? 俺が一から懇切丁寧に教えてやらないとな。いいですね。奈々さん」
「はい、よろしくお願いします」

 奈々が深々とお辞儀をする姿を見て悪夢が蘇った。まるでこの後「ご主人様」と続けそうに見えたのだ。つまり、この研修は、初めての経験、イコール、バージンの奈々を、佐々木が一から……

ーー待て! 俺は一体何を考えているんだ。あんなのただの夢じゃないか

「千恵利さんには、待っている間上の階で特別なお客様の相手をして貰うよ。実は米軍のVIPの方からじきじきに指名が掛かってるんで」
「うわあ、凄いんだね、ママ」

ーーここはただのカフェじゃなかったのか? 奈々、お前は知らないだろうけど、「指名」が掛かるなんて、まるで性風俗だぞ

 佐々木が2人を2階に連れて上がろうとエレベーターに向かった時、屈強な見張り番を見て俺は迷った。ここは何としても止めるべきではないのか? もちろん悪夢のせいで俺が考え過ぎている可能性が高い。こんな所で頑固親父を演じてしまったら、奈々との関係はますます冷え込んでしまうだろう。それに千恵利との関係も。

 だがその場を動かず見ている俺に向かって、エレベーターを呼んでから振り向いた佐々木があからさまな挑発のトリガーを引く。

「どうした増田、止めないのか? チェリーちゃんも奈々ちゃんも、俺が貰ってくぜ」
「やめろ! 千恵利も奈々も行っちゃいけない、それは罠だ、罠なんだ!」
「タカ君、どうしたの?」
「パパ……」

 もうハッキリわかってしまった。あれは悪夢なんかじゃない。全て本当に起こった事だったのだ!

 俺が突然詰め寄ると、千恵利と奈々は驚き戸惑うばかりだった。彼女達は催眠中の記憶を消されているのだろう。そして佐々木は俺に向かい、なぜか両手を広げて無防備な体勢を取る。

「ホラホラ、どうした増田。嫁さんと娘を行かせたくねえんだったら、俺を殴って力ずくで止めてみな。出来ねえのか? ケッ! 弱虫め、これだからせんずり野郎はよ……」

ーーもう我慢出来ない! そうだ、自分の気持ちに素直にならなくては。世間体とか、余計な事なんか考えちゃいられないぞ!

「キャーッ!」
「タカ君、やめて!」

 俺は無我夢中で佐々木の胸倉を掴むと、思い切りぶん殴っていた。一発、二発、三発……佐々木はなぜか全く無抵抗で、所構わぬ俺のパンチで歯が折れたらしく、ゲホッと血反吐を吐く。そこでようやく見張りの大男が割って入り、はるかに強烈なパンチを喰らった俺はあっさりダウンして、意識がなくなってしまった。

 次に俺が目覚めたのは留置所の鉄格子の中だった。意識が戻るとすぐさま面会に来ていた佐々木が現れたのだが、やつは顔に大きな包帯を巻いていた。頭がひどくズキズキと痛んだが、こんな場所に入れられる羽目になった経緯は、全て明瞭に覚えていた。

ーーそうだ。あれは夢なんかじゃない。佐々木に会いに行ってから殴ってしまうまでの一部始終が、全部本当に起こった事なんだ

 ところが不思議な事に、俺が生まれて初めて暴力を振るう原因となった佐々木に対する激しい憎悪は嘘のように消えており、鉄格子を隔ててすぐ前にいるこの男と、俺は極めて冷静に話をする事が出来た。いや、本当は自分が「冷静」だと思い込まされていただけだったのだが。

 俺はあの「ハーブティー」を飲んでしまって掛けられた強力な催眠術にずっと支配されていたのである。術者である佐々木が解いてくれない限り、自力で逃れるのは不可能だった。

「いいか増田。ここにいる間、余計な事は一切しゃべるな。黙秘権はお前の権利であり、それを誰にも咎められる事はない。わかったな?」
「はい、わかりました」

 なぜだろう。憎んでいた筈の佐々木に、自然と服従してしまう俺がいた。

「それがお前のためなんだからな。黙ってれば、じきに俺がお前をここから出してやる」
「ありがとうございます、佐々木様」

 激情に任せて暴行を加えてしまったと言うのに、彼は何と寛大で慈悲深いのだろう。俺の口は素直に「佐々木様」と呼んでいた。

「よし、それじゃもう一言もしゃべるな。いいか増田。お前は違法なドラッグを使用していたために幻覚を見て錯乱し、あんなバカなマネをしでかしたんだ。言わば病人だな。つまりお前には責任能力がなかったし、罪に問われる事もないんだ。どうだ? 名案だろう、増田」

 暴行罪で刑事罰でも受けようものなら、俺の人生は終わってしまう所だった。俺は佐々木のアイディアに素直に納得し、感謝の言葉を述べようとしたのだが、もう口は頑として一言も発してはくれなかった。

「じゃあな」
「!!」

 去っていく佐々木に「待ってくれ」とジェスチャーで伝えようとしたが、取り合ってはくれなかった。まあ良い。どの道本当の事を話す気などさらさらないのだから。催眠術で操られた挙げ句、挑発されて殴ってしまったなどと言う戯言を誰が信じてくれるだろう。何より家族三人が操られて演じてしまった狂った時間の事は、絶対他人に知られてはならない秘密だ。

 千恵利が面会に来た時も、俺は沈黙を守るよりなかった。こんな不祥事を起こした夫であるのに、彼女はとても優しくて、目から自然と涙が溢れて来た。どうしてあんな事をしてしまったのかと聞いても頑として口を割らない俺だったが、千恵利は初めて見る俺の涙で了解してくれたようだった。

「うん、わかった。言いたくないんだったら、言わないでいいよ。私はタカ君を信じてるから、早く戻って来るんだよ」

 彼女自身泣きながら去って行く千恵利の後ろ姿を見送りながら、俺は佐々木の優しさを理解した。何かしゃべればそれはきっと愛する妻を傷付けてしまう。催眠中のおぞましい記憶を完璧に消去されている千恵利だが、今となってはそれを封印したままにしておくのが最良の選択なのだ。とりわけ、俺のみならず娘の奈々までも淫行に巻き込んでしまったあの時間の記憶を取り戻してしまったら、彼女には絶対耐えられないだろう。記憶が残っている俺が盾となって秘密を誰にも洩らさず、愛する妻千恵利を守ってやらねばならないのだ。

 そして留置所で過ごす手持ち無沙汰でやたらと長く感じられる時間の間、俺は次第に自分の記憶を疑い始めていた。そもそも家族三人が操られてしまったあの狂った時間は、俺の妄想に過ぎないのではないか。万一あれが本当だったら、俺はもう千恵利や奈々に合わせる顔がなく、隠してこれまで通りの生活を彼女達と過ごす自信はまるでない。すなわち家庭崩壊である。だからあんな事は初めから起こってはいないのだ。

ーー何だ、佐々木が言ってた通りじゃないか。俺はウッカリ飲んでしまった脱法ハーブのおかげで精神が錯乱して、あんな酷い幻覚を見た挙げ句、佐々木を殴ってしまったんだ

 こうして自力で真実に到達した俺は、もう迷いなく完全黙秘を通した。薬物検査で陽性と判定された俺は、罪を問われる事もなく精神j病院に移送される。だが俺は慢性薬物中毒ではなく、一度使ってしまっただけだ。呆気ないくらいの短期間で治療は終了し、俺は外の世界に戻れる事になった。

 退院する時真っ先に駆け付けてくれたのは、頻繁に通院してくれていた千恵利でなく、意外にも佐々木だった。

「どうして千恵利は来ないんだ」
「悪いが、チェリーちゃんは操って店で足止めしている。今はまだ米兵にサービス中だ」
「そうか」

 明らかに悪意を感じる佐々木の行動にもまるで腹が立たないのが不思議だった。もう自覚していた事だが、佐々木が説明する。

「増田、お前はまだ俺の催眠術に支配されている。わかってるな?」
「そんなネタバラシをしてもいいのか」
「別に構わんさ。俺は一度もお前から術を解いてやった事はないだろう? その証拠に、お前はあの日俺に会いに来てから後の事を完璧に覚えている筈だ」
「そう言えばそうだな」
「俺が解呪しない限り、お前は一生操られる事になる」
「何だか、そんな気はしないな。どうして、意識してるのに操られるんだ?」
「頭の鈍いやつだなあ。前にも説明してやったから、思い出せ。とにかくお前は、今から俺の言う事を聞いてしまう筈だ」
「何が言いたい?」
「チェリーちゃんと別れろ」
「……」

 すぐに拒否出来ず口ごもってしまった俺は自分で悟る。これまで心の底から絶対に彼女と別れたくない、と思っていた気持ちが揺らいでいるのだ。迷いがなければ、催眠術で操る事は不可能なのだから。

「お前には過ぎた妻だな、チェリーちゃんは。いくら俺が命令しても駄目なんだ。だから、お前から別れてやるんだ、わかったな、増田」
「……」

 すぐに断る事の出来ない自分が情けない。千恵利は催眠状態でも、俺との結婚生活を堅持しようと頑張っているのに。

「それが彼女のためなんだぞ。よく考えろよ、増田。薬物乱用で暴行事件を起こしたお前は懲戒免職だ。再就職も難しいぞ」
「……」

 これは佐々木の操りだ、たぶらかされてはいけない、と思っても、自分が置かれた状況を冷静に判断するほどに俺は目の前が真っ暗になる気がした。もうまともな職に就つ事は不可能だろう。社会復帰出来たような気になっていたのは大甘で、この先は茨の道なのだ。

「チェリーちゃんに働かせて、ヒモにでもなるつもりか? 家のローンはどうする? 奈々ちゃんを進学させたり、留学させたり出来るのか? お前は家族を幸福に出来るのか、ええ、どうなんだ! 答えろよ、増田」
「難しいと思います」

 駄目だ。いくらこんな卑劣感の思う通りになってたまるか、と気持ちを奮い起こそうとしても、心がどんどん折れていくのがわかった。仕方ない、これは本当の俺自身がもう千恵利との結婚生活の継続を熱望してはいない、と言う事実の現れなのだから。

「お前が意地を張ってたら、チェリーちゃんや奈々ちゃんを不幸にするだけだ。そう思うだろう? 増田」
「はい、そう思います……ご主人様」

 いけない、と思っても、とうとうその言葉が口をついて出てしまう。だが佐々木に操られる事を受け入れ、やつの意のままに服従する意志を表す「ご主人様」と言う言葉を口にした瞬間、俺は奇妙な安らぎを覚えていた。そう。ずっと思っていた事だが、意識を保ちながら操られてしまうのは決して不快な体験ではない。むしろ、まるで自我意識の確立していない幼少期に戻ったかのような、甘美で心安らぐ時間であった。だからこそ、人は催眠術に掛かってしまうのではなかろうか。佐々木が説明したように、催眠術とは心の中に隠していた欲望を解放してくれるものであるからかも知れない。

「ふはははは! ようやく素直でいい子になって来たじゃねえか、増田。チェリーちゃんと別れるんだ、わかったな?」
「はい、別れます、ご主人様」
「チェリーちゃんが嫌がっても、お前の方から離縁を叩き付けるんだぞ。そして、俺と結婚するように説得しろ」
「ご主人様! そんな事が出来るのですか?」
「ああ。キャサリンはただのパートナーだからな。チェリーちゃんを受け入れるのに何の支障もないぞ。家のローンも娘の学費も俺が面倒みてやる。いいか、増田。今後は俺がチェリーちゃんを幸せにしてやるからな」
「千恵利と奈々を、どうかよろしくお願いします、ご主人様」

 俺は率直な気持ちでご主人様に頭を下げる。考えれば考えるほど、それが俺達にとって最善の選択であるとしか思えなかった。

「よし、俺に任せろ。もし事がうまく運んだあかつきには、ご褒美として、お前の生活も一生面倒みてやるからな」
「本当ですか、ご主人様!」
「俺達の家に奴隷として飼ってやるから、死ぬまで奉仕しろ。いいな?」
「……はい、わかりました、ご主人様」

 奴隷、と言うこれまでの人生で馴染みのなかった言葉に少しためらった俺はしかし、すぐに迷いを吹っ切ると新しい人生をご主人様の奴隷として生きていく事に恭順の意を表していた。そしてそれと同時に、俺は甘美な電流に撃たれて、名状のし難い不思議な歓びに打ち震えていたのである。俺の中に隠れていた、他人に支配される事に無上の歓びを覚えるマゾヒズムをはっきりと自覚した瞬間であった。

「増田、奴隷になるのが嫌なら、お前の催眠を解いてやってもいいんだぜ」

 俺が少し逡巡したのを見たご主人様の、決意を確かめるかのような質問だった。催眠を解かれたらどうなるのだろう? あの日からの記憶も消えてしまうのだろうか? そして、同じように記憶を消された妻や娘と、本当の気持ちを隠し仮面を被った家族ごっこを続けると言うのか。

 そんなのはまやかしだ。本当の幸福なんかであるわけがない。少し考えた俺は当然の決断を下した。

「いえ、このままで結構です、ご主人様。どうか私を催眠術で操り、ご主人様の奴隷として飼って下さいませ。お願いします」

 こうして新しい人生に踏み出す決意を固めた俺は、ご主人様の術を解かれた千恵利にすぐ別れ話を切り出した。千恵利はもちろん大いに驚き、「どうして?」と泣き崩れたので、落ち着かせてから誠心誠意説得に努める。彼女はまだ俺に強い未練があるようで、「働かなくてもいいんだよ。私が何とかタカ君の面倒も見てあげるから」とまで健気な事を言ったのだが、俺は心を鬼にし頑として離婚する事を譲らず、ご主人様佐々木と再婚するように強く勧めたのである。

 千恵利はもともと俺にはもったいないほどの賢明な女性だ。俺の懸命な説得も功を奏して、程なく冷静な判断を下してくれた彼女とは円満に離婚が成立し、ご主人様と千恵利は無事結ばれたのであった。




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作者二次元世界の調教師さんのブログ

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