2.貞淑な人妻を裏切る媚肉の陥穽

 黒木さんに手を引かれてエスコートされ、宴席へと向かう間、着物の下できつく緊縛された私の身体は、早くも禁断の悦楽の予感にざわめいておりました。とりわけ股間をきつく締め上げる、股縄の刺激は強烈。ただでさえ厳しい食い込みが、私を淫らに狂わせるべく、3つの結び目で細工されていたのですから。しずしずと一歩進むたびに、急所に食い込む結び目が擦れてしまい、ズンズンと甘美な戦慄が込み上げて参ります。まるで密かな自慰行為に耽っていると、錯覚を覚えそうな気分で、ございました。

「奥様、皆様ずいぶんお待ち兼ねでございますぞ」

 脚がワナワナと慄えおののき、まるで何かを堪えているような、ヨチヨチ歩きの私に、急げと言わんばかりの黒木さんは酷薄でした。

ーーだって、貴方のせいで、恥をかいてしまいそうなんです! こんなの、無理だわ………

「それにしても、奥様は本当にお美しい。僕までお招き頂いて、光栄です」
「何をおっしゃいますか。金谷君は主賓ですぞ」

 待ち兼ねたのか、食事部屋の前で立っていた、かわいらしいメイド服姿の良美さんが、早く早くと手招きしています。そう、今日は既に婚約したお二人を祝うため、金谷さんをお招きしての宴なのです。元気一杯な婚約者を見た金谷さんが、やや苦笑気味の優しい微笑みを浮かべた時でした。

 自慰行為同然の股縄歩行で、とうとう弾けてしまった私は、ウッと一瞬天を仰いで目をつむり、心中で「イク!」と呻いていました。陰核を襲う鋭い快感、女性器に埋まった結び目からの充溢した快感、そして尻穴を突き上げるおぞましい快感。これらが渾然一体となって、私は絶頂の恥を晒してしまったのです。その場でしゃがみ込んだり、声を出したりしなかったのが、救いでございましたが。

「さすが奥様は慣れていらっしゃいますな」

 いつの間にかジットリ汗ばみ、震えが止まらない私の手を引いた黒木さんが、小声で囁き掛けて来ました。

ーーやっぱりバレてたのね。ああ、何て恥ずかしい……

 先に立った金谷さんが、気付いてない様子だったのは、救いでした。小走りに寄って来た良美さんと手を繋ぎ、初々しいカップルは微笑ましいばかりでございます。それに引き換え、歩きながら絶頂した私は、何と言うふしだらな女なのでしょう。クールで無表情な黒木さんが、どんな気持ちで私をエスコートしている事か。それでも私は顔を出さぬわけには参りません。夫に陵辱された良美さんと 金谷さんを、祝福する宴なのです。そんな不義理が許される筈は、ございません。

 そして、黒木さんは何でもお見通しのご様子でした。なぜなら、股縄を締められた私が、羞恥と快楽に悶絶する様子を楽しむのは、主人がお気に入りのプレイなのですから。もう私は、この忠実な黒服の執事から、逃げるのは叶わぬ事と、覚悟を決めるよりなかったのです。

 今日の宴の席は少人数用の和室。掛け軸の掛かった床の間が上座で、私はすぐそちらに案内されました。右隣に座るのが主賓の金谷さん。そして婚約者の良美さんがその隣で、彼女と仲の良い娘の祥子がその横に座ります。そして最後に息子の建一と、たったこれだけのささやかな宴席でございます。一応私の右が黒木さんの席ですが、給仕に専念されるそうで、開式の前に席を立ち、調理場に行かれたようです。

「さあ、奥様こちらにお座り下さい」

 準備のため席を外した黒木さんに代わり、金谷さんが上座を勧めて下さいました。彼はお客様なのですが、家族同然でざっくばらんな宴席なのです。普段の食事は家族3人で、主賓のお2人が加わっただけの、アットホームな雰囲気に、私は少し安堵致しました。ところが、正座で腰を下ろした途端に、とんでもない感覚に襲われてしまいました。

 先程歩いている途中で、私の股間に淫らな快感を送り込み、絶頂と言う大恥をかかされた股縄からは、逃げる事は叶いません。正座は最悪の姿勢で、一番辛く恥ずかしい尻穴を抉るようにめり込む結び目が、ズンと強烈に未知の部位まで突き上げ、おぞましい尻悦が背筋を猛然と貫いたのです。とても我慢出来るような快感ではなく、咄嗟にウッと手で口を塞ぎ、声を防いだ私は、だらしなく足を崩して横座りするより、ありませんでした。

 私が縄緊縛の上から、着物を着ていると言う秘密を知っている金谷さんの、眼鏡の奥が一瞬好色に輝いたような気がしました。嬉しそうに身体を寄せる良美さんが、私の子供たちと早くも話を咲かせているので、金谷さんも私の方に注目してるわけではありませんでしたが。

ーーだけど、良美さんだって知ってるのね……

 復讐のため、私に睡眠薬入りの紅茶を飲ませた良美さんも、黒木さんと金谷さんが、私に何かいかがわしい行為を働いた事を知ってる筈です。結局何も知らないのは、娘の祥子と息子の健一だけ。私は針のむしろに座らされてるようなものでした。

 さて、調理場から戻って来た黒木さんが、飲み物を皆さんの前に置き、料理を配ってから、言います。

「本日は特別に皆様と同席しておりますが、娘の良美がこの宴の料理一切を支度致しました。皆様のお口に合えば幸いにございます」
「良美ちゃん、すご-い。本格的!」
「そうですね、驚きました」
「エヘヘ」

 並べられた料理は見事な和食の懐石料理で、同い年の良美さんの料理の腕前に、祥子は感心しきり。金谷さんにも褒めてもらい、良美さんは誇らしそうでした。幼い頃にお母さんを亡くした彼女を、ちょうど同級だった祥子の遊び相手にと、小学生の頃主人がこの家での同居を許して以来、良美さんは父娘とも家族同然。父親が執事ですから、彼女がメイドとして働き出したのは、自然の流れでした。

 娘さんがこんな立派なメイドになった事を、黒木さんも内心では誇りに思っているに違いありません。ですが、そんな事はオクビにも出さず、「奥様、一言ご挨拶を」と頼まれた私は、その時恐れていた事が、急速に現実のものとなり、オロオロとうろたえてしまいました。それはあの恐ろしい媚薬「女悦膏」の効果でした。まず塗られた乳首が、ムズムズと痒みに疼き始めますが、どうにも出来ません。そして股縄に潤滑油として使われた成分のおかげで、股間が猛然と刺激を欲しがってしまうのです。

 いつしか私は、小用でも我慢するかのように、横座りの腰をモジモジと揉んでいました。こうすると、ウッと声が出てしまいそうな快感が迸るのです。こんな浅ましい肉体は疎ましいのですが、「女悦膏」の疼きに、私はどうしても勝てないのでした。とうとう、素晴らしい快感を貪るように、せわしなく腰を揉みながら、私は挨拶してしまいます。何を言ったのか思い出せないくらい、私は一心不乱に股縄が与えてくれる快感に身を任せていたのです。

「で、では、お二人の前途を祝して、乾杯(ヒ、イクっ!)」

 当然立っていたはずですが、ここへ来る途中も歩きながら絶頂したのです。一刻も快楽を求める腰の蠢きが止まらない私は、何と「乾杯!」と大きな声を出した瞬間に、弾けてしまいました。余りに無様な失態に、呆然としながら、ヨロヨロと腰を下ろします。黒木さんはもちろん、金谷さんや良美さんにも、気付かれてしまったか、知れません。皆様に失礼をわびながら、すぐにトイレへと向かいました。

 ゆっくり歩いても、自慰行為同然の快感から逃れる術はございません。何とか絶頂を回避してたどり着いたトイレの中、便座に腰を下ろすなり、私は本当に疼き上がる身体を慰めてしまいました。股間にやった手で、泣き所にキッチリ食い込んだ股縄をまさぐり、同時に胸にもう片手をやっていました。淫薬に狂い、異常に膨れ上がった上下の尖りに触れた瞬間に、強烈な快美の矢にズンと貫かれた私は、グンと背筋を弓なりに反らせて絶頂を果たします。後はもう無我夢中。もう片方の乳首を弄って乳房を揉みしだき、秘所や尻穴に埋まった結び目を、強くなぞりながら粘膜で食い締め、私は二度も三度も、思いを遂げてしまったのです。

 それから宴に戻っても、淫魔に魂を奪われた私の頭は、嫌らしい想念が渦巻くばかりで、全く虚ろでございました。自分から声を掛けたと言う、積極的な良美さんの恋話も、聞き流すばかり。ただ悶々と腰を捩らせ、股縄の快感に陶然と酔う私は、更に何度かトイレで中座して、はしたない自慰に耽ってしまいました。

 こんな状態ですから、今流行の恋愛映画を、みんなで鑑賞に行きましょうと言う、良美さんの提案を、気分が優れないからと拒絶しても、不自然ではなかったでしょう。外出の支度で、良美さんと、祥子は自室に戻り、男性達が忙しく宴席の片付けを行っている間も、私はへたりと横座りのまま。何か手伝おうとしても、男性の皆様に、気分が悪いのだから、大人しくしているようにと、諭されました。ところが私と来たら、腰を蠢かせ股縄の擦れる快感を、密かに堪能してしまう有様なのです。女性としてあるまじき罪深さでございました。

「奥様、皆様出発なさいました」

 玄関まで見送りに出ていた黒木さんが、戻って来ました。そしておもむろに手を出し、私を立たせると、エスコートして歩き始めます。終始無表情で無言のまま。私は一刻も止んでくれない、股縄の快感に悶絶しながら、大人しく着いて行くよりありません。ところが、私の私室の前を通り越してしまったので、黒木さんに聞かずにはいられませんでした。

「一体どこに向かっているのですか」
「旦那様のお部屋でございます」
「どうして?」

 しかしクールそのものの執事から、それ以上の言葉を得る事は出来ませんでした。そして主人の部屋に入ると、照明が点けられ、私は中央の大きなダブルベッドに寝かされます。もう彼の意図を理解した私は、観念して黒木さんのなすがまま。サイドボードから、本格的な黒革の拘束具が出され、私の手足は、大の字に固定されてしまいました。

「このベッドには、拘束具を止めるため、金具が付いておりますでしょう。実はわたくしが、旦那様に言われて、取り付けたのでございます。もちろんそれは、奥様を愛して差し上げるためでした」

 主人に付き合って、SMクラブで腕を磨いたと言う黒木さん。幾度となく主人に拘束されて、女の歓びを教え込まれたこのベッドが、彼の細工による物だったとは。黒木さんに着物をはだけられ、縄掛けされた裸身が露わになって行くと、私は緊張と同時に、はしたない快楽の予感で震えおののくばかりでした。

 そして、完全に着物がどけられ、亀甲縛りの恥ずかしい痴態が晒されると、黒木さんはスマホでパチパチと撮影を始めました。

「奥様は縛られると本当にお美しい。この染み一つない、スベスベでなおかつ、瑞々しいお肌のツヤは、地上に舞い降りた天女様のようでございます。これを記録に残さずにいられましょうか」
「止めて下さい。恥ずかしいではありませんか」

 黒木さんは止めるどころか、近付いて、絶対撮られたくない箇所ばかり、接写するのです。縄でくり抜かれた、大き過ぎて嫌らしい乳房の先端で、ツンと固く勃起してるはしたない乳頭。そして淫液で濡れそぼった股縄がきつく食い込み、女泣かせの結び目が埋没した女性器や、刺激を受けて大きく膨らんだ陰核まで接写されて、もう生きた心地も致しませんでした。

「それにわたくしは、奥様にご奉仕しておるので、ございます」

 黒木さんの全く意外な言葉に、私は耳を疑いました。

「奥様は縛られて、恥ずかしい姿を見られる事を、望んでおられましょう。長年旦那様に愛されておれば、どんな女性でもそうなってしまうのです。奥様、貴女は正真正銘、マゾなのでございます」
「な、何を勝手な……アッ!」

 黒木さんの手が股縄に掛かり、きつい食い込みを外されていくと、思わず声が出てしまいました。性感の急所に食い込んだ股縄が、メリメリと引き剥がされるのです。その淫らな感触は嫌らしい快感も伴っており、私はこれ以上声を出さぬよう、必死でした。

「……ホオッ!」
「やはり奥様も、お尻が一番我慢出来ないご様子。立派なマゾの特徴ですな」

 紐状の股縄をキッチリ外して終えた黒木さんは、水がボタボタ滴り落ちる結び目を、見せ付けて来ます。

「すっかりふやけてしまってるではありませんか。奥様が、よほどお歓びだった証拠ですな」

 真っ赤になって、うなだれるばかりの私の口は、丈夫な布の猿轡で塞がれてしまいました。これも勝手知ったるサイドボードから、出された物です。そのいかがわしい道具が詰め込まれた貯蔵庫から、次に黒木さんが持ち出した物を見て、私は弱々しく目を閉じてしまいます。その男性の形を象ったお道具には、ハッキリ見覚えがありました。ウィーンと隠微なモーター音を響かせる、その振動が私の頬に当てられます。

「奥様のご寝所から、移動させておきました。このような物を、まさか奥様がお使いとは、使用人として、誠に遺憾でございます」

 見覚えがあるどころか、ほとんど毎晩のようにお世話になっている私。たとえ口が使えても、黒木さんに言い返す事も出来なかったでしょう。もう開ける事も出来ない両目も、目隠しが施されてしまいました。

「奥様、ご安心下さい。このわたくしが、慰めてさしあげます。今宵はどうか心行くまで、ご堪能下さいませ」

 さっそく、さっき頬に触れた振動が、唸りを上げて襲い掛かって来ました。



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作者二次元世界の調教師さんのブログ

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