第2話

 ベネツィア大聖堂。
 法術師教会の総本山であるそこは、全ての法術師達のあこがれの地である。そこで勤めるという事は法術師でも選り
すぐられたエリートである証。別の地への教会でもその経歴は大きな力となる。
「これで準備よし。さあ、地下の掃除ね」
 朝6時。大聖堂を統べる祭師長の女は、地下へと足を運ぶ。
 法術の真なる力は男性の性欲向上を促し、性行為を円滑に行なう為の物。その真実を知るものは法術師のみだ。本来
なら公開してもいいと女は考えているのだが、未成年への影響を考えると芳しくない。その為、本来の姿である聖堂は
地下に隠されている。
「あら・・・?」
 立ち入り禁止の看板が掲げられた地下聖堂へ続く門が、ほんの僅かだが開いている。この先に本来の聖堂があり、祈
りを毎朝捧げるのだが、まだその時間ではない。
「まさか、泥棒・・・」
 盗むに値する金品など無いのだが、万が一ということもある。祭師長は靴音を立てぬようゆっくり、ゆっくりと門へ
近づき、開ける。誰も居ない事を確認すると、底へと続く階段を降りていき地下聖堂のドアを開いた。
「・・・!?」
 地下聖堂の中央で、2人の男女が口付けを交わしていた。
 男は肥満体で、服が張り付くほど汗をかいている。その体臭は狭い地下聖堂の空気を汚していた。
 女は腰まで届く金髪で、豊満なバストを男に押し付けながら、唇を吸っている。首輪と腰の焼印からして奴隷である
事は察することが出来たが、祭師長はその女を見たことがあった。
「あなたは・・・!ミント・アドネード!?」
「ぶちゅるるる・・・。ぷはぁ・・・。お久しぶりです、祭師長・・・」
 唇を離し、ミントは祭師長へ振り向いた。
 母メリルから受け継いだ帽子はそのままだが、法衣ではなく白いボンデージに変わっている。胸元には腰と同じ焼印
が刻まれていた。また母の形見であるイヤリングは胸につけられている。
「あなた・・・。どうしてここに?破門寸前なのに・・・」
「・・・祭師長。法術は本来、愛する男性にのみ使うものですよね?」
「え?ええ・・・」
 ミントの当たり前の問いに、祭司長は頷いた。法術師ならば誰でも知っている当然のことだ。
「それでは、私を追い出したトーティス村で起こった事はご存知ですか?」
「・・・どうゆう事かしら?あなたの言っていることがよく掴めないのですが・・・」
「あの村で、禁忌とされる事が行なわれていたのです」
「まさか・・・!」
 さも信じられないといった風に、祭師長は首を振った。
「あそこを統べる師長は厳格な性格よ?自ら禁忌を破るなんて・・・!」
「では、あの村に妊婦が増えたことは偶然ですか?」
「増えた・・・?」
 妊婦が増えた、その言葉に祭師長はハッとした。1月前に全国の師長が集まり、市町村の現状報告が行なわれた。
その中でトーティス村は妊婦が増えたと報告があったのだ。廃村間際の村にベビーブームが来たと喜ばしい報告だと思
い、心に留めていたのだが。
「まさか、本当に・・・」
「はい、行なわれました。禁忌である不特定多数の男性に法術を掛けることが」
「そんな・・・。そんなことが・・・」
 一瞬眩暈がするほどの衝撃に、祭師長は足元をふらつかせた。何とか踏みとどまるも、足には震えが残っていた。
「・・・わかりました。すぐ調査しましょう。あなたの処罰はそれからでも・・・」
「いえ、祭師長に見ていただきたいものがあるのです」
 ミントはピッグと自分を包むように法術陣を展開した。
「法術師にあるべき姿を。私が法術師に足るかどうかを・・・!ディスペル!」
 ミントが唱えた法術、ディスペル。それは掛けた法術を解く法術である。
 2人の体の奥深くから、眠らされていた性欲が溢れ出してきた。

「タイムストップ・・・。ブヒか?」
「ええ」
「法術は性欲を引き出すための術だと解るブヒが・・・」
 出発前、ピッグはミントの提案に首をかしげた。
「それを止めるブヒか?」
「タイムストップは周囲の時間を止める法術ですが、本来は性欲を止めるのです」
「でも、ポクの性欲はかなりあるブヒよ?」
 ピッグの性欲は人一倍あり、毎日ミントとの性交渉は欠かせないレベルまでに達している。もちろん、ミントの性欲
も法術で増幅されており、ピッグが居なければ普段の生活もままならないほどだ。
「大丈夫です。自身はあります」
 ミントはピッグの目を見据えた。
「この日のために、練習してきました。今が使う時だと思います。ですから、お願いします。ピッグ様・・・」
 ミントが膝を折り、頭を床に擦り付ける。
「どうか、卑しい奴隷であるミント・アドネードのわがままを受け入れてくれませんか?」
「ミント、顔を上げるブヒ!」
 ピッグは慌ててミントの顔を上げさせる。ミントの生真面目さは時折、ピッグを困惑させた。悪いことではないのだ
が、行き過ぎている。


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PIXIV「24-16」



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