体験談『咲くころ』





チョコレート作




第2話


彼と初めてデートする日が来て、「さぁ。」と自分に気合を入れながらも薄くため息を吐きながら待ち合わせ場所に向かった。

彼はわたしの先生のような存在の、歳はニ回り離れた男で、尊敬しきれないのは彼が若い頃遊びまくっていたからか、わたしがいないと生きていけないなんて弱気なところを見たからか。尊敬してもいいぐらい社会的にも人間的にも「優」な人で、頼りにされたり愛されたり、初デートできることは満面の笑みでスキップして待ち合わせ場所に行っても良いくらいなのに、わたしにはそれが出来なかった。



彼氏が欲しいとは、ずっと思っていた。だけど自分が好きになれる男性には出会えなかった。彼氏が欲しくても、誰でも良いとは思えなかった。いつか王子様が、と言う言葉があるが、いつかわたしに出会うべき人が現れると信じていた。遠い存在の彼に恋するばかりだった。

それで30近い年齢になってしまっていた。



冬の五時ごろと言えばすっかり暗くなっている。待ち合わせ場所に良く使われる駅に行くと、混雑した人の中に彼がいて、声をかけた。



彼は普通に手を伸ばしてきてわたしの手を握ると歩き出した。わたしは声をかけたが彼と目が合うとちょっとそらしてしまって、彼が手を握って歩き出したので、暗くなった道路を眺めながら彼の隣を歩いた。



彼が予約してくれた店に行くと個室に通された。個室の方が人の目がなくて落ち着けるような気がした。

彼と向かい合わせに座って、メニューを見て、何でもいいと言いそうになるのを我慢して、選んだ。彼の目を見るのが怖くて視線を合わすのが大変だった。彼がわたし以外のところを見るときに彼の顔を見たり。彼がお酒を飲まなかったのでわたしも飲まなかった。



彼の話を聞いて答える。わたしが答えたことに対して彼が話し出す。そんなことの繰り返し。笑ったりまじめな顔をしたり、その間に注文した夕食を食べた。



彼はタクシーを呼んでホテルに向かった。初デートに泊まるホテルを予約していて、それはラブホではなくて、いわゆる高級ホテルの部類だった。わたしを愛する彼は、わたしが30近いのに経験のほとんどないお子様だということを知っていたので、場所を選んでくれたのだった。



彼が鍵を開けるとドアを開けてくれたので中に入った。広い部屋の真ん中にあるソファに座った。彼はすぐに洗面所へ行って手を洗うと風呂場に行って、お湯を貯め始めた。その後冷蔵庫を開けて小さなシャンパンを取り出してグラスを二つ持ってソファに置いた。彼の行動に気後れしながら、わたしはその間に手を洗った。

彼はシャンパンを開けてグラスに注いでいる。シュワシュワ言う音が無音の部屋に心地良い。彼の隣に座ると彼がグラスを渡してくれた。「初デートに乾杯」彼はにこやかにそう言ってグラスをわたしのグラスにあてた。わたしも乾杯と言って、グラスは「チン」と言った。わたしは少しずつ飲んだ。彼はおいしそうに飲んでいる。

彼がポケットから小箱を取り出してわたしに渡してくれた。「開けてごらん」

わたしはゆっくりと包みを開けた。指輪だった。

「俺と結婚してください」と彼は言った。

わたしは彼を見て彼が真剣な顔をしているので、ちょっと萎縮しながら「はい」と言ったら、彼は満面の笑みを浮かべてわたしを抱きしめてくれた。すぐに彼は指輪をわたしにはめてくれた。わたしは熱くっていっぱいだった胸がさらにいっぱいになった。



彼はお風呂のお湯を見に行って、止めた。ソファまで戻ってきて、お風呂に入っておいでと言われた。



NEXT







 




投稿体験談(1)

トップページ







inserted by FC2 system