ファンタジー官能小説『セクスカリバー』

Shyrock 作



<第41章「酒場の吟遊詩人」目次>

第41章「酒場の吟遊詩人」 第1話
第41章「酒場の吟遊詩人」 第2話
第41章「酒場の吟遊詩人」 第3話
第41章「酒場の吟遊詩人」 第4話
第41章「酒場の吟遊詩人」 第5話
第41章「酒場の吟遊詩人」 第6話
第41章「酒場の吟遊詩人」 第7話
第41章「酒場の吟遊詩人」 第8話
第41章「酒場の吟遊詩人」 第9話
第41章「酒場の吟遊詩人」 第10話
第41章「酒場の吟遊詩人」 第11話
第41章「酒場の吟遊詩人」 第12話

『セクスカリバー世界地図』




<登場人物の現在の体力・魔力>

シャム 勇者 HP 1240/1240 MP 0/0
イヴ 神官 HP 970/970 MP 1060/1060
アリサ 猫耳 HP 990/990 MP 0/0
キュー ワルキューレ HP1120/1120 M620/620
マリア 聖女 HP 820/820 MP 1180/1180
チルチル 街少女 HP 770/770 MP 0/0
ウチャギーナ 魔導師 HP 860/860 MP 1120/1120
リョマ 竜騎士 HP 1360/1360 MP 0/0
エンポリオ アーチャー HP 990/990 MP 0/0
メグメグ 武術家 HP 1160/1160 MP 0/0
エリカ ウンディーネ女王 HP 830/830 MP 1150/1150
シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 1320/1320 MP 0/0
ドルジ 騎馬戦士 HP 1180/1180 MP 0/0
サラーナ 赤魔導師 HP 910/910 MP 980/980



⚔⚔⚔



第41章「酒場の吟遊詩人」 第1話

 ゴブリン族とトロール族の紛争を鎮めるため、クレスピンの泉に出向いていたエリカとシャルルがその使命を終えシャムたちの元に帰還した。

エリカ「スンダーラ族長から『この度は仲裁をありがとうございます。シャムさんや皆さんによろしく伝えてください』との伝言がありました」
シャム「大変だったろう? 無事解決できてよかったなあ。2人ともおつかれさま~」

 エリカとシャルルは、ムーンサルト城の手前で、ドラゴンデーモンナイト率いる魔物軍団とリッチ率いるアンデッド軍団の戦闘場面に遭遇し、見つからないよう遠目に見ていたことを話した。

 すぐに反応したのはドルジとサラーナであった。

ドルジ「リッチが魔物と戦っているのを見たのですか? 詳しく聞かせてくれませんか」
シャルル「それはいいんだけど、あんたは誰?」

 シャルルが出掛けている間に仲間になったのだから、彼らを知らなくて当然だ。
 ドルジとサラーナは自己紹介をしたあと、自身の一族のリッチとの浅からぬ因縁を、かいつまんで話した。(第38章19話参照)

シャルル「つまり悪霊リッチは人間界に強い遺恨を抱いており必ず人間界に害を及ぼすから、先手を打ってやっつけてしまおう、というわけだな?」
ドルジ「そうです。そのとおりです。シャムさんたちにこの話をしたら、協力すると言ってくださって。とても感謝しています」
サラーナ「現在リッチは魔物とも対立していますが、いずれ手を組むかもしれません。そうなればかなり厄介な敵となるでしょう。そうなる前に倒したいのです。ぜひシャルルさんのお力をお貸しください」

 サラーナのあまりの美しさに、シャルルは我が目を疑った。

シャルル(なんと美しい人だろうか……まるでおとぎ話に登場する美少女のようだ)

 シャルルがぼんやりとしていると、隣に座っていたエリカがキッと睨みつけ肘で小突いた。
 我に返ったシャルルは焦ってしまい、とんちんかんな返事をしてしまう。

シャルル「いやあ、お兄さんと揃ってとても美しいと思います!」

 これにはその場にいた全員が大爆笑だった。
 その直後、空気は一変し、シャムが神妙な面持ちで次に進むべき道を語る。

シャム「残念ながらアルフォンス、否、セルペンテ伯爵は取り逃がしたが、必ず討ちとるつもりだ。セルペンテの件は一旦置いといて、次に目指すのは『デスワーム退治』だ。デスワームは人々にとって最悪な怪物だ。人々が砂漠を横切ろうとすると、突然襲ってきて食ってしまう事件が頻発している。騎士隊が倒そうとして数度出動したが、返り討ちに遭って散々だったらしい。だからおいらたちが倒すしかない。相当手強いやつだが秘策はある。ちなみにデスワームをやっつけるとアイテムが得られる。それが『デスワームの角』だ。『デスワームの角』の欠片でも身に着けていれば、リッチの呪術魔法『死の呪い』を98%回避できる。リッチを倒すために絶対に必要なんだ」
ドルジ「皆さんを危険に巻き込んでしまって申し訳ありませんが、よろしくお願いします。必ず勝利しましょう」
シャルル「必ず倒すぞ!」
イヴ「デスワーム退治は私たちに課せられた任務かも知れないわ。神よ、私たちにご加護を」
メグメグ「でも砂の中にいるデスワームをどのようにしておびき出すの?」
サラーナ「デスワームの好物の鳥肉を使います。特定の地点に鳥肉を仕掛けデスワームの出現を待ちます。デスワームが現れたら、空かさず私がエンハンスソードで倒します。皆さんは、万が一私がやられたら全員で一気に切り込んでください。5~6回切れば倒せると聞いています」

 珍しくリョマが険しい表情で異論を唱えた。

リョマ「サラーナさんが倒されたら全員で切り込めだと? 何を言っているのですか。それなら最初から全員で切り込めばいいじゃないですか。あなたは自分が犠牲になっても、他の者を傷つけまいとしている。私たちは同じ敵に立ち向かう同志です。同志であれば同時に切り込めばよいではないか。生死はともにあると思っています」
サラーナ「リョマさん……」

 リョマの熱い言葉に、サラーナは思わず感涙にむせぶのであった。

キュー「どんな敵かな~? 腕が鳴るな~」
ドルジ「キューさんって、豪傑ですね。これ、誉め言葉ですよ」
キュー「アハハ、気にしないで。悪い気はしないから」

 そんな時、ティーノと婚約者のエレナがメイド3人を従えて部屋に入ってきた。
 メイドはそれぞれに料理が乗ったトローリーワゴンを運んできた。

ティーノ「打ち合わせ中にすみませんが、お食事ができたのでお持ちしました」
イヴ「ずっとお世話になりっぱなしで、本当にすみません。そろそろ宿屋に移らないといけないのに、つい甘えてしまって」
ティーノ「そんなことを言わないでくださいよ。こうしてエレナが見つかったのも、皆さんが親身になって捜索してくださったお陰です。これぐらいのことしかできませんが、どうぞお召し上がりください」
エレナ「本当に皆様には感謝しております。ありがとうございました」

シャム「エレナさんが元気になって本当によかった~! それじゃいただきます~! さあ、みんな、食べよう~!」

 エリカとシャルルがティーノとエレナに頭を下げている。
エリカ「居候(いそうろう)がまた2人増えてすみません。皿洗いでも掃除でも何でもしますので」
ティーノ「まさか、そんなことをさせたら親父に叱られます。全然気にしないでくださいね。ところでデスワーム退治にはいつ行くのですか?」
シャム「今日準備を整えて、明朝退治に出発する予定だよ」
ティーノ「人々はデスワームに困り果てています。退治成功を祈っています。でもくれぐれもお気をつけて」
エレナ「あのぉ、デスワームに挑むのはどなたですか?」
サラーナ「私がエンハンスソードを持って挑みます。必ず倒してみせます」
エレナ「これをお守りとして持っていてください。母が天使様からもらったと言ってました」
サラーナ「そんな大切な物をいただいても良いのですか?」
エレナ「デスワーム打倒は私の切なる願いでもありますので、サラーナさんが戦闘時持っていてくださるのが最もふさわしいと思います」
サラーナ「分かりました。ではありがたくいただきます」

 サラーナが『天使のミサンガ』をゲットした!
 サラーナの幸運度が10、守備力が10アップした!



第41章「酒場の吟遊詩人」 第2話

 ラクダに乗った若き戦士たちが砂漠を進む。
 騎乗しているのは、言うまでもなくシャムたちであった。

 シャムたちは、夜明けとともに、デスワーム退治の冒険の旅に出た。
 目的地はデスワームがよく出没するといわれているベルデン砂漠の東エリアだ。
 デスワームを倒すために最も必要な物は強力な武器だが、彼らが砂漠で生存するために最も必要とするのは水と方位磁石である。
 人間は、水をまったく飲まない状態に置かれると、4、5日で死に至る。
 とは言っても、徒歩で持参できる水の量には限りがある。
 そこでアルノーが準備したのがラクダ隊であった。
 砂漠における移動手段として、ラクダは最適な動物といえる。しかも10日以上水を飲まなくても生きることのできる便益性を兼ね備えている。

チルチル「ラクダはどうして長い日にち、水を飲まなくても生きてられるのでピョン?♫」
ドルジ「それはね、ラクダは一度に100リットル以上の水を飲むことができて、体内に貯蔵することができる動物なのです。そのため、10日以上水を飲まなくても平気なのです」
チルチル「へ~、そうなんだ。すごく便利だピョン♫」
サラーナ「砂漠で暮らすラクダは、いつでも水が飲めるわけではないので、一度にまとめて飲んで 蓄えておくことができるようになったのだと思いますわ」
キュー「生物って長い年月の間に環境に順応するようになっているのね」

 先頭を行くメグメグがはたと立ち止まった。
 メグメグの視線の先には、白い花が咲いている。

メグメグ「まあ、きれいな花が咲いているわ」
サラーナ「触ってはダメです!」
メグメグ「どうして?」
サラーナ「毒があります」
メグメグ「まあ、あんなに可憐で美しいのにね……何という名前なの?」
サラーナ「“ゴヨ”といいます……」

 サラーナは花の名前をつぶやいた後、さっと身構えた。
 サラーナの異変を察知したシャムが問いかける。

シャム「現れそうなのか? デスワームが」
サラーナ「デスワームは“ゴヨ”の周囲に生息していると言われています。いつ襲ってくるか分からないので、皆さん、気をつけて!」

 その時、突然、地中からまるで巨大なイモムシのような怪物が現れた。
 体長は2メートルほどあるだろうか。頭部に角と牙がある。

シャム「こいつがデスワームか……!?」

 シャムが臨戦態勢をとる。

サラーナ「違う! これはサンドワームです! デスワームは20メートル以上あると聞いています!」

 シャルルがサンドワームに切りかかった。
 しかし剣よりも早く、サンドワームの口から紫色の液体が飛び出した。
 液体がシャルルの胸元を直撃する。

シャルル「うわっ!」
エリカ「その匂いは……毒液よ、気を付けて! 解毒魔法ラツモフィス! 毒を消し去り給え!」

 エリカの指先から白い光が放たれシャルルを包み込んだ。
 サラーナが高く跳び上がり、剣を振り下ろす。

サラーナ「醜き怪物よ、黄泉の国に帰るのだ!」

 サンドワームの頭部が真っ二つに切り裂かれた。

 サラーナがサンドワームを倒したのもつかの間、周囲から5、6匹のサンドワームが顔を出し、シャムたちに襲いかかった。
 毒を吹きつけて来るもの、大きな口を開け牙で攻撃してくるもの、身体を回転させてぶつかって来るものなど攻撃方法は様々だ。
 シャム、リョマ、ドルジ、キュー、メグメグ、アリサの6人は前面に躍り出てサンドワームと対峙する。
 ウチャギーナは風魔法で、サラーナ火の魔法で、エンポリオは弓矢で後方支援し、イヴ、エリカ、マリアは解毒を含む治療班としててんてこ舞いだ。
 ワーム毒は放置しておくと重症化したり死に至ることがあるが、早急に解毒魔法を施せばすぐに回復する。
 チルチルは、傷を負った者に薬草を与える役目を担っている。

 ウチャギーナが放った風魔法ハリケーノスできりきり舞いさせ、リョマが一撃を与えサンドワームはあえなく撃沈。
 サラーナの火炎魔法ファイアストームがサンドワームを炎に包み、キューの切っ先で一刀両断。
 エンポリオの矢を顔面に受けのたうち回るサンドワームを、ドルジの鋭い剣が貫通する。
 最後の一匹をメグメグが流星のムチで叩き、苦悶するサンドワームをシャムが仕留める。

 6匹のサンドワームはあえなく屍と化した。
 シャムたちは、金貨100G☓6=600Gをゲットした!

シャム「デスワームは出てこないのかな?」
サラーナ「まだ出てこないですね」
シャルル「俺たちに恐れをなしたか」
マリア「それはないと思いますよ」
イヴ「少し待ってみようかしら。そのうち現れるかもしれないし」

 砂漠に沈む夕陽の中、美しい光景が広がっている。
 しかし、その美しさに見惚れている暇はない。
 いつ怪物が現れるか、分からないのだから。

 疲れ果てたシャムたちは、砂漠の中で日没まで待った。
 デスワームは姿を見せず、失望が込み上げる中、シャムがつぶやいた。

シャム「次は必ずデスワームを倒す。きっとみんなとともに倒してみせるぞ」

 シャムの言葉には覚悟と決意がみなぎっていた。
 砂漠が暗闇に包まれる中、シャムたちは今日倒せなかった悔しさを噛みしめながら帰路についた。



第41章「酒場の吟遊詩人」 第3話

アルノー「せっかく日暮れまで待ったのに、デスワームが現れなくて残念でしたね」
サラーナ「デスワームが現れやすい環境や時間帯は分かりませんか?」
アルノー「私は冒険者ではないのでそっちの方の知識はありませんが、以前、腕自慢の猛者たちが討伐隊をつくって何回か討伐に向かいました。しかし出会えたのは10回のうち2回だけで、討伐するどころか、反対に散々な目に遭わされて、帰還した戦士は半数以下でした。彼らが言ってました。デスワームが出現する季節は決まっておらず、時間帯もまちまちだと……全然お役に立てなくてすみません……。今回デスワームは倒せなかったけど、サンドワームを6匹倒してくれたじゃないですか。我々住民にとっては感謝しかありません」
サラーナ「でも雑魚なので……」
ティーノ「皆さんにとっては雑魚かもしれませんが、我々にとってはサンドワームも邪悪な怪物です。一匹でも多く倒してくれて、とてもありがたいですよ」

 シャムがアルノーとティーノに、サンドワームを倒して得た600Gを受け取ってほしいと言った。

シャム「こんな大勢をずっと泊めてくれて食事まで出してもらって全然支払わないわけにはいかない。わずかだけどこれを受け取ってくれないか?」
アルノー「いいえ、受け取れません。皆さんからお金をいただいたら罰(ばち)が当たります。私どもへのお気遣いは一切ご無用に願います。そのお金は次の戦いの資金に回してください」
シャム「アルノーさん、まったくあなたって人は……」
アリサ「アルノーさんだいすきいいいい!」

 アリサは突然アルノーに駆け寄り、抱きしめるようにハグをした。
 アルノーは驚いた表情を浮かべながらも、優しく笑み返した。

アルノー「これはこれは、こんなかわいい娘さんからハグされるとは、光栄の至りです」

 アリサの感謝の気持ちが、言葉ではなく身体の温かさとして伝わってきた。
 二人の間には何もない、ただ心からの感謝と共感が交わる空間が広がっていた。

 アルノーがシャムたちに向かって新たな提案をした。

アルノー「デスワーム退治のため、10000Gの懸賞金を用意しましょう。この任務を果たせば進呈することをお約束します」

 驚きの表情を浮かべるシャムたち。一斉に歓声が上がる。
 デスワームは恐るべき存在であり、その討伐は困難を極める。
 しかし、懸賞金の誘惑は彼らの冒険心をくすぐるものだった。

シャム「それは……正直言って魅力的な話だな。デスワームの角を手に入れることが目的だったのだが、冒険の資金としてあれば助かる。その懸賞金を受け取らせてもらうよ、アルノーさん!」

 アルノーは微笑みを浮かべ、シャムたちの決意を受け入れた。
 だが果たして、シャムたちはデスワームと遭遇し討ち果たすことができるのだろうか。

ティーノ「ところで皆さん、今夜、酒場『カザンドラ旅亭』に吟遊詩人カサブランカがやって来るらしいので、お時間があれば行ってみませんか?」
シャム「おいら空いてるよ」
アリサ「カサブランカさんの歌、ジャノバで聴いて以来だよ。また聴きたいなああああ」
イヴ「今夜はキューちゃんがランジェリーショップに行くので、付き合ってあげる予定なの」
キュー「下着がかなり消耗して数が減ってきたので、補充しないとね。でもイヴさんは歌を聴きに行くといいよ。エリカさんたちといっしょに買いに行くので心配しないでね」
イヴ「うん、分かった。じゃあ、私は酒場に行くわ」
シャム「ランジェリーショップなら、おいらいっしょに行こうかな?」
イヴ「もう、シャムったら、男子は行かなくていいのよ」
シャム「だって女子たちにかわいい下着を選んであげたいんだもの~」
キュー「選ばなくてよろしい! 自分で探すので!」

 キュー、マリア、イヴの3人が同時にシャムの頭を叩いた。

シャム「いてててて……殴らなくてもいいのに……ブツブツ」
サラーナ「そもそもランジェリーショップって、男子は行かなくてもよいと思うのですが」
シャム「行かないよ。ちょっと言ってみただけだから。リョマたちはどうする? 歌聴きに行く?」
リョマ「私はシャルルさんたちと、武器屋を覗こうと思っています」

⚔⚔⚔

 その夜、ティーノの誘いで、シャムと数人の仲間は酒場『カザンドラ旅亭』を覗くことにした。

ティーノ「もうすぐカサブランカの演奏が始まるようですね」
イヴ「ジャノバの酒場で聴いて以来だわ」
アリサ「あの時『カリバー』がなんちゃら……って歌ってたけど、よく分からなかったああああ」
サラーナ「皆さんは、カサブランカさんの歌を聴いたことがあるのですね?」
メグメグ「その頃、私はまだ皆と出会ってなかったから、聴くのは今夜が初めて」

 シャムたちの席に注文した物が運ばれてきた頃、時宜を得て酒場の一角に吟遊詩人カサブランカが現れ、リュートを手に弾き語りをはじめた。
 彼の歌声はやさしさに包まれ、聴く者の心を浄化していくかのようだった。
 酒場の雰囲気も一変し、神秘的で物静かな空気が漂い始めた。
 カサブランカの歌は、聴く者に幸せな安らぎをもたらし、その美しい旋律に誰もが魅了された。
 身なりは質素ながら、彼の歌はすべてを包み込み、聴く者の心を浄化していくようであった。

 1曲が終わると、カサブランカはリュートの調弦を行ない、まもなく次の曲名を告げた。

🎵🎵🎵

カサブランカ「次の曲は、『地竜目覚めしとき』……」



『地竜目覚めしとき』

砂漠の果てに乙女は立ちて
笛を吹くは澄みわたる音色
伝説の地竜、深き眠りから
目覚めんと欲する時近し

風よ、荒野を駆け巡り
伝えよ我が声を
地竜よ、眠りから覚めよ
乙女の笛に導かれし時

鳥たちも静まり返り
大地はその足音を喚ぶ
伝説の地竜、やがて目覚め
砂漠にその影を躍らせし時

乙女は笛を構え、心静かに
地竜よ、我が声を聞け
伝説は再び始まりを告げ
砂漠の奇跡を讃えんとする

🎵🎵🎵



 酒場の片隅に座る吟遊詩人が、古代の曲『地竜目覚めしとき』を奏でた。
 マイナー調でありながら激しい旋律は、酒場の雰囲気を一変させた。
 客たちはその音色に引き込まれ、酔いしれるように耳を傾けた。
 吟遊詩人は熱情を込めて歌い、その歌声は魂に響くものだった。
 酒場は一体となり、まるで別世界へと誘われるかのようだった。



第41章「酒場の吟遊詩人」 第4話

 歌は、地竜と呼ばれる古代の神秘的な生物が、眠りから目覚める様子が描かれている。そして、乙女の笛とは、地竜を鎮めるために奏でられる伝説の笛のことなのだろうか。
 酒場は、吟遊詩人の美しい歌声に包まれ、古代の物語が再び息づいているかのようであった。

 歌が終わると、シャムがコインを取り出し、見事な歌声を披露したカサブランカに投げ銭をした。
 その様子を見て、周囲の客たちも続々と貢ぎ始め、カサブランカの前にはたくさんのお金が集まっていった。
 カサブランカは、拍手喝采に包まれる中、笑顔で感謝の気持ちを表した。

 その直後、シャムが話しかけた。

シャム「すてきな歌をありがとう! よかったらお酒をおごらせてくれないか?」
カサブランカ「ありがとうございます、いただきます。あっ、あなた方は……! 以前、ジャノバの酒場でお会いしましたね?」
シャム「よく憶えているな~。各地の酒場でたくさんの人と出会っているはずなのに」
カサブランカ「しっかりと憶えていますよ。だって『聖剣セクスカリバー』のことを聞いてきた人ってそうそういないですからね」
第17章第1話参照
イヴ「私も忘れていませんよ。あの時聴いた詩の一説を。『天界の守護大天使ミカエル 白き羽根を広げ立ち向かう カリバーの剣を携えて……』でしたね?」
カサブランカ「驚きました! すごい記憶力ですね! 金髪の凛々しき神官さん、お久しぶりです」
イヴ「え~~~っ!? 私、神官って言ったかしら……?」
アリサ「ねえねえ、私のことも憶えてるうううう?」
カサブランカ「ああ、ネコマタのアリサさんでしたね。もちろん憶えていますよ、だって可愛いもの」
アリサ「もう~、ネコマタじゃなくて、ネコミミなの! 可愛いと言ってくれたから間違ったことは許してあげるけどおおおお」
メグメグ「へ~驚いたわ。吟遊詩人さんと顔見知りだったとはねえ。吟遊詩人さん、店員さんが来てますよ。お酒は何がいいですか?」

 カサブランカはペリー酒を注文した。

サラーナ「ペリー酒って確か洋梨を発酵させたお酒でしたね。珍しいわ、私もいただこうかしら」
アリサ「私も飲んでみたいなあ。でもまだ19才だから飲めないのよねええええ」
カサブランカ「もしかしてご存じなかった? この国では16才以上ならお酒が飲めるんですよ」
アリサ「え~~~っ! お酒はどこの国でも20才以上だと思ってたあ。じゃあアリサも飲んでみるうううう」

 結局、シャムも含め全員がペリー酒を注文することになった。
 カサブランカを囲んで酒席がたけなわになった頃、シャムは先程カサブランカが歌った『地竜目覚めしとき』について尋ねた。

シャム「カサブランカさん、教えてくれる? 歌詞の中に『地竜』って出てくるけど、あれってドラゴンの一種なの?」
カサブランカ「竜の種類ってすごく多くて、主なものだけでも、ガルグイユ、ワイバーン、ワイアーム、サーペント、ファフニール、ヒュドラ、リムドブルム、ナーガ、ケツァルコアトル、リヴァイアサン、バハムート等がいます。ところが……」

 シャムたちは身体を乗り出して、カサブランカの話に耳を澄ました。

カサブランカ「地竜という名前は、どんな神話や伝説にも登場しないのです」
サラーナ「つまり架空ということですか?」
カサブランカ「いいえ、架空とも言い切れません。地竜って実はミミズのことなのです」
シャム「ミミズってあの小さなニョロニョロしたやつ?」

 拍子抜けした表情のシャム。

カサブランカ「そうです。でも詩の中に登場するミミズは溝に生息する小さなものではなくて、怪物クラスの巨大なミミズだと言われています」
アリサ「気持ち悪うううう……」
メグメグ「それってもしかしたら、デスワームのことですか?」
カサブランカ「おそらくデスワームだと思います。とは言っても私自身この目でデスワームを見たことがないので確かなことは言えませんが」
イヴ「伝説の詩に登場する地竜とはデスワームのことだったのね、ふむ、1つ謎が解けたね」

 詩には、砂漠に立つ乙女が笛を吹き、伝説の地竜を目覚めさせる様子が描かれている。

サラーナ「乙女とは誰のことなの それとどんな笛なの?」
カサブランカ「それは私にも分かりませんが、笛は特定されていないので、どんな笛でもよいのではないでしょうか」
アリサ「乙女って何才の女性なのおおおお?」
メグメグ「乙女って、はっきり決まっていないけど、一般的には10代の女性を指していると思うわ」
サラーナ「シャムさん、お仲間の中で、10代の女子で笛が得意な人はいますか?」
シャム「1人いるよ。チルチルの笛は心が癒されるよ~」
サラーナ「チルチルさんは何才ですか?」
シャム「15才だけど」
サラーナ「では明日、チルチルちゃんを連れて砂漠に行きましょう!」
シャム「乙女だし笛も吹けるけど、そんなにうまい具合に行くか?」
サラーナ「うまく行くか行かないかは、やってみなければ分からないじゃないですか!」
シャム「はい……ごもっともで……」

 サラーナに叱られしょげ返るシャムを見て、一同は大爆笑した。



第41章「酒場の吟遊詩人」 第5話

 カサブランカがペリー酒を飲み干した後、再びリュードを手にした。
 というのも客席からアンコールを期待する拍手が沸き起こり、もう1曲追加で歌唱することになったためだ。

カサブランカ「ごちそうさまでした。では本日最後の曲を歌ってきます。皆様の旅のご幸運を祈っています」

 拍手が鳴りやみ、カサブランカが歌い始めたのはしっとりと美しいバラードだった。

🎵🎵🎵

「栗の実と毒」

砂丘に立つ勇者よ
孤独の泉に身を浸し
栗の実を口に含む

乙女の毒は浄化され
その美しき姿が輝く
勇者よ、その勇ましき姿を讃えよ

栗の実の甘美なる味
孤独の泉の清らかな水
乙女の毒を浄化し

勇者よ、その姿は偉大なり
汝の勇気と力は永遠に讃えられよ
砂丘の上で輝く勇者よ

🎵🎵🎵

アリサ「勇者ってシャムのこと? ああ、うっとりする……吸い込まれそおおおお」
シャム「まさか。伝説上の勇者のことだろう? それにしてもよく分からん歌だなあ」
メグメグ「砂丘に立つ勇者の姿を讃えた歌ですね。勇者は孤独の泉で心を浸し、栗の実の甘さを楽しむことで、乙女の毒を浄化し、彼女の美しさを引き立てていますね」
サラーナ「勇者の勇気と力が永遠に称賛されるというスケールの大きな歌ですね」
イヴ「ふむ……勇者……栗の実を口に……? 乙女の毒を浄化……? 意味がよく分からないけど、何となくエロティックな感じがする……」
アリサ「イヴさん、欲求不満じゃないの? 最近チンヒールご無沙汰だしいいいい」
イヴ「こらっ、アリサちゃん! 言ってよいこととよくないことがあるのよ!」
アリサ「きゃああああ!」
メグメグ「もう、2人とも静かにしてよ」

 アリサが立ち上がり逃げだした。追いかけるイヴ。

メグメグ「まるで子供だわ、2人とも。ひとたび戦闘になったら、あんなに凛々しいのにねえ」
シャム「エロティック……エロ、エロ……」
サラーナ「何を呪文のように言っているのですか?」
シャム「イヴが言ってエロい感じって、実はおいらもビリビリと来るものがあったんだ」
メグメグ「心に響くものがあったのね?」
シャム「いや、股間に響いた」
メグメグ「もう、シャムったら~。やっぱりエロ勇者なんだから」
サラーナ「シャムさんってそんなにエロいのですか?」
メグメグ「エロいのなんのって、もう」

 追いかけっこをしていたイヴとアリサが席に戻ってきた。

イヴ「歌の意味を聞こうと思ったけど、カサブランカさん、帰ってしまったわ」
アリサ「ジャノバで見た時、男か女か分からなかったけど、今日はっきりと分かったよ。あれは間違いなくきれいな顔をした男子だよおおおお」
サラーナ「ジェンダーレスというか中性的な印象のすてきな人でしたね」
メグメグ「デスワーム退治2回戦にはいつ行くの?」
シャム「明日行く。チルチルの笛でおびき寄せる」
イヴ「デッドワームが現れるといいね」
アリサ「きっと現れるよおおおお」
サラーナ「出て来たら、私が一刀両断!」
メグメグ「頼もしいね~ 期待しているよ~」

⚔⚔⚔

 翌日、日の出とともにシャムたちが騎乗するラクダ隊が出発した。
 今回は2回目である。
 前回はデスワームと遭遇することが適わなかったが、今回は秘策がある。
 カサブランカの歌にヒントを得て、チルチルの笛を活用しようというのである。
 果たして笛でデスワームを呼び出すことができるだろうか。

チルチル「緊張してきたでピョン♫」
サラーナ「でも絶対に私の後ろにいてくださいね」
チルチル「は~い♫ そうそう、昨夜サラーナさんのショーツも買っておいたから帰ったら試着してみてピョン♫」
サラーナ「まあ、ありがとうございます! 気が利きますね。どんなショーツかしら? でも無事に帰れたらということにしておきましょうか……」
チルチル「ハイレグのセクシーなやつだよ♫ 絶対に帰れるに決まってるじゃないの♫」
キュー「そうだよ、弱気は禁物だよ。サラーナさんの腕前ならきっと倒せるって。微力ながら私も援護するから」
サラーナ「はい、お願いします」

 まもなく白い花ゴヨが5,6本密生している場所でシャムが号令をかけラクダが脚を止めた。

シャム「よし、この辺りに集合しよう」

 シャムたちは一風変わった陣形を組む。
 チルチルを中央に配し、その前方にサラーナ、左側にシャム、右側にドルジ、そして後方をキューが陣をしく。

 その後方を、イヴ等の白魔法隊、ウチャギーナ等の黒魔法隊と弓矢隊が布陣し、背後をリョマとシャルルが固める。
 はたして笛の音とともにデスワームが現れるのだろうか。

 チルチルが笛を奏でた。
 透明感のある美しい音色が広大な砂漠に吸い込まれていく。
 シャムたちはいつデスワームが現れてもよいように臨戦態勢をとる。
 緊張の糸を張り、五感を研ぎ澄ます。

 ほどなくぼこっという音とともに、地面を突き破るようにして巨大なミミズ状の怪物が姿を現した。
 デスワームだ。
 眼光鋭く赤く光り、環形動物特有の肌を持ち、大きさは優にサンドワーム(2メートル)の10倍を超えている。、
 この怪物は、過去にどれだけ多くの人々を襲い、葬り去ったのだろうか。
 この砂漠において天敵が不在であるため、長きにわたり砂漠の帝王として君臨しているのだろう。

サラーナ「それじゃあ、頃合いを見計らってジャンプし、角を切り落とします!」
シャム「サラーナと同時に、おいらたちも攻撃するぞ!」
一同「お~!!」

 砂漠に高らかな鬨の声があがった。



第41章「酒場の吟遊詩人」 第6話

 サラーナの視線が釘付けになる。
 呼吸を整え、突撃の機会をうかがう。
 しかし相手は戦士ではない。デスワームは『静』ではなく常に『動』の怪物だ。
 しかも想定をはるかに超える迅速な動きに、シャムたちは思わず幻惑される。
 地面を突き破って現れたデスワームは、そこからスギのように、真っ直ぐに空へと向かって伸びていく。

サラーナ「まるで昇り竜のようだわ……」

 サラーナの視線は、高く昇っていくデスワームに思わず見入ってしまった。

ドルジ「おい、サラーナ、口をポカーンと開けて見惚れててどうするんだ」
サラーナ「えへへ、いけない」
ドルジ「そんな笑い方をしていたら彼氏ができないぞ」
サラーナ「いいもん」
シャム「チルチルは魔法隊のポジションまで下がってろ!」

 笛吹の役目を果たしたチルチルは後方に下がり、入れ替わってリョマとシャルルが前方に進み出た。
 シャムたちとともに先駆けに加わる。
 スギのように真っ直ぐに空に伸びた巨大ミミズの怪物が、蛇行しながらシャムたちの方へと襲いかかってきた。

シャム「来たぞ! 準備はいいか!」

 先駆けの顔ぶれが掛け声をあげる。
 できるだけ引き付けて、先駆けが一斉に斬りかかる算段だ。

シャム「とりゃあ~~~~~~~!!」
 
 シャム、サラーナ、ドルジ、リョマ、シャルル、キューの剣が同時に煌めく。
 切った! 手応えがあった!
 しかしデスワームのダメージはかすり傷程度であり、難なくシャムたちを弾き飛ばした。
 地面に叩きつけられ苦悶の表情を浮かべる戦士たち。
 大急ぎでイヴとマリアがヒールを唱える。
 エンポリオが頭目掛けて矢を射り、エリカとウチャギーナがデスワームの顔面に黒魔法を浴びせ、戦士への攻撃を緩和しようとした。
 確かに矢は突き刺さり、魔法は確実に命中したのだが、まったく怯む気配が見られない。

ウチャギーナ「何てやつなの、魔法が効かないわ」

 跳躍力に勝るアリサとメグメグがパンチや蹴りを繰り出したが、いとも簡単に跳ね返されてしまう。

アリサ「うぇ~~~~ん、爪で引っ掻いても知らんぷりしてるぅ、もうやだああああ」
メグメグ「私の飛び膝蹴りを受けてダメージのない敵などいるのか……」

 心が折れそうになりながらも、立ち上がるアリサをデスワームが急襲する。
 デスワームを紙一重で躱したアリサが耳にしたのは、彼女の背後で大地が砕け散るけたたましい音だった。

アリサ「ゾ~、あんなのまともに喰らってたら……あわわわわ……」
シャム「よし、もう一度総攻撃するぞ! デスワームの注意力を分散しよう! その隙を突いてサラーナは角を叩き切るんだ!」
サラーナ「分かったわ!」
シャム「来るぞ!」

 シャムたちは大地を蹴って跳ぶ。
 空中から落下するように襲いかかってきたデスワームが、アリサが元いた場所を掘り起こし砂塵が巻き起こる。
 足をくじいたのかアリサの動きが鈍っている。

シャム「アリサ、危ない! 逃げろ!」

 アリサを庇うように、一斉に切りかかる戦士たち。
 集中攻撃を受けたデスワームが慌てている。
 デスワームは直近にいるアリサを追い始める。
 凶悪な牙を剥き出しにして、デスワームが背後から迫ってくる。
 その刹那、シャムがデスワームの紅い眼をつらぬく。

 ギャア~~~~!

シャム「しめた! 目は効果があるぞ!?」

 野獣のような奇声を上げて、のたうち回るデスワーム、その角めがけてサラーナがエンハンスソードを叩きつける。
 深々と食い込む鋭い刃。

 ギャア~~~~~~~~~!!

 ひときわ激しい唸り声をあげ、口から紫色の液体を吐き出した。
 紫色の液体は直近にいたサラーナの胸元に付着した。

サラーナ「きゃぁ~~~~~~~~!!」

 サラーナは何とか着地はしたものの、平衡感覚を失い転倒してしまった。
 すぐにサラーナの元に駆けつけ介抱する仲間たち。
 エリカが紫色の吐物を布で拭いとり、マリアがヒールを唱えるが、一向に意識が戻らない。
 そればかりか顔色が紫色に変色している。
 もしかしたら紫色の吐物には毒が含まれているのかも知れない。
 イヴが解毒魔法を唱えてみるが、顔色が元に戻らない。

イヴ「お願い、目を覚まして、サラーナさん!」
ドルジ「サラーナ、しっかりしろ! 目を開けてくれ!」

 一方、苦しみ悶えるデスワームにとどめを刺したのはシャムだった。
 先程までサラーナが使っていたエンハンスソードを握りしめた。
 気を送り込みながら力を込めて、エンハンスソードをデスワームの眼に深く押し込むと、デスワームは断末魔の叫びをあげ地面に崩れ落ちた。

イヴ「シャム、カサブランカさんの歌『栗の実と毒』を思い出して!」
シャム「そんなこと急にいわれても……はっきりと歌詞を憶えていないよ」
メグメグ「🎵砂丘に立つ勇者よ 孤独の泉に身を浸し 栗の実を口に含む 乙女の毒は浄化され その美しき姿が輝く🎵」
アリサ「あっ、なるほどっ! 栗の実を口に含むと毒が浄化されるのねええええ」
イヴ「歌詞の解釈が正しければ、毒が消えるはずだわ。今はこれにすがるしかないわ。シャム! サラーナさんのクリトリスを吸ってあげて!」
ドルジ「冗談じゃない! サラーナに変なことはしないでください!」
イヴ「ドルジさん、サラーナさんの命を救うにはこの方法しかないのよ! 分かって!」
マリア「今は詳しく説明をしている暇はありません。妹さんの救命は時間との勝負なのです」
エリカ「まだお話していませんでしたが、シャムさんは女性の体力を回復させる能力と、もう一つ最近分かったことなのですが、『クリポイゾナ』という解毒能力を持っているのです。その方法がクリトリスを吸うことなのです。決してサラーナさんを辱めるものではありません」

 ドルジはようやくシャムの特殊能力に理解を示した。

シャム「すぐに脱がせて! 下だけでいいぞ!」

 イヴたちは急いでサラーナの下半身の衣類を脱がせにかかった。



第41章「酒場の吟遊詩人」 第7話

⚔⚔⚔

 話は数日前、エリカとシャルルがクレスピンの泉におもむいたときに遡る。
 彼らはゴブリンたちの紛争を無事仲裁し、その帰路の途中、女神チルに近況を報告するためマロンクリーム神殿に立ち寄った。

チル「皆さんが元気そうで何よりだわ。魔物討伐の旅は茨の道だと思うけど、がんばってシャムを支えてあげてね」
エリカ「はい、これからも変わることなく支えて行きたいと思います」
シャルル「はい、お任せを」
チル「そうそう、寄ってくれたお礼に、あなたたちに良いものをあげましょう。エリカさんには、『レモトヒールの魔導書』を差し上げましょう。味方と約100メートル離れていても治療できる優れものなのよ。便利でしょう? シャルルさんには『力のブレスレット』を差し上げます。戦闘時、数回に1回だけど会心の一撃が出るので戦いを有利に進めることができるでしょう」
エリカ「とても嬉しいです。できる限り早く習得したいと思います」
シャルル「すごく助かるよ! 女神さん、ありがとう~!」

エリカは『レモトヒールの魔導書』をゲットした!  エリカは『レモトヒールの魔導書』の学習を開始した!
シャルルは『力のブレスレット』をゲットした! シャルルは『力のブレスレット』を装備した!

チル「もう一つ大切なことを伝えておくわ」
シャルル「もしかしたら、俺にもチンヒールの能力を授けてくれるとか……?」

 シャルルの目がきらりと光っている。

チル「それは無理というもの。チンヒールの能力は神様がシャムだけに与えたものなの。世界広しと言えど、チンヒールの能力を持つものはシャムだけよ」
エリカ「シャルルさん! あなたはそんなに色々な女の子とエッチがしたいのですか!?」

 日頃物静かなエリカが珍しく顔を真っ赤にして激怒した。

シャルル「いやいや、少しでも多くの傷ついた者たちを助けられたらと思っただけで」
エリカ「チンヒールで助けられるのは女子だけじゃないですか!」
チル「まあまあ、エリカさん、落ちついて」
エリカ「あら、私としたことが、お恥ずかしいですわ」

チル「話が逸れたので本題に戻すわね。知ってのとおりエリカさん、イヴさん、マリアさんたち3人は解毒魔法『ポイゾナ』を習得しているので、味方1人の毒状態を回復することができるの。だけど……」
エリカ「……?」
チル「『ポイゾナ』の魔法をもってしても、治しにくい毒があるの」
エリカ「何と! それはどんな毒でしょうか」
チル「それはオオミミズの毒なの。男性が毒に冒されても『ポイゾナ』か解毒剤ですぐに治るんだけど、どういうわけか女性が冒された場合、『ポイゾナ』か解毒剤で治療しても50%までは治せるんだけど100%完治しないの。1週間安静にしていれば自然治癒するんだけど、戦闘中だと安静に、というわけにはいかないものね」
シャルル「じゃあ、女性がオオミミズに遭遇して運悪く毒を受けたら、かなりやばいな……」
チル「でも安心して。あなたたちにはシャムという心強い味方がいるじゃないの」
エリカ「でもシャムのチンヒールは女子の体力を全回復させるけど、解毒作用はなかったかと」
チル「実はね、シャム自身気付いていないと思うっけど、もう一つ能力があるのよ」
シャルル「それはいったい……!?」
チル「勇者が戦闘経験を積みレベルを50まであげれば『クリポイゾナ』という特殊能力が備わってくるの。勇者が毒に冒された女性の……ゴホン、話すのが恥ずかしいわ……クリトリスをチュ~チュ~と音を立てて吸えば、あら不思議、すぐに浄化され治ってしまうの。その後、チンヒールを打ってあげれば完全に元気さを取り戻すわけ。分かって? この件は、シャムにまだ話してないので、彼と合流したらすぐに伝えてあげてね」
エリカ「分かりました。シャムに必ず伝えます」
シャルル「あ~、うらやましいなあ~。俺も能力が欲しいなあ」
エリカ「シャルル!」
シャルル「すまん……」
エリカ「ところでオオミミズって各地にいるのですか?」
チル「いいえ、オオミミズは湿地帯にたまに潜んでいるけど、先手を打って倒せばなんてことはないわ。ただし、砂漠にデスワームという伝説の怪物がいるんだけど、これはかなり手強くて一般人だと遭遇したらまず助からないと言われているの。皆さんが遭遇しないことを祈っているわ」

⚔⚔⚔

 イヴたちはサラーナの下穿きを脱がせ大地に仰向けに寝かせた。
 サラーナは日頃馬にまたがり野山を駆け巡っているのでよく日焼けをしているが、下半身の肌の白さに一同は驚きを隠せなかった。

キュー「まあ、サラーナさんってきめが細かくてきれいな肌をしているのね」
リョマ「これは目の毒ですね。私は向こうに行っています」

 シャムがサラーナの股の間にひざまずき秘部を見据えた。
 毛がうっすらと生えている。大陰唇も小陰唇も小さめだ。

シャム「クリトリスを舐めれば毒が消えるんだな?」
エリカ「クリトリスの皮を剥いてしっかりと音を立てて吸ってあげるのがコツらしいです」
イヴ「女神チルさんって意外と過激なのね」
マリア「過激といっても、これも治療の一環ですからね」
 
 シャムがそっとクリトリスに触れた。
 気を失っているはずなのに、サラーナがピクリと反応した。

ウチャギーナ「すごい敏感だね、やっぱりあそこは女の子にとって特別なのね」
アリサ「ああっ、私までおかしくなってきたあ……身体は正直いいいい」

 包皮を傷つけないようにゆっくりとめくる。
 小さく可愛らしいクリトリスが顔を覗かせた。
 イヴたちのそのようにキラキラと輝く宝石状ではなく、ごくふつうのピンク色だ。

 シャムはサラーナの秘部に顔を寄せ、ぺろりと舐めた。
 ぷくりと膨らんだクリトリスを舌で転がす。
 ジュルっと音を立てて愛液を吸うと、レロレロレロと高速で横舐めを開始した。

「あ……あっ……あぁぁぁっ……」

 意識を失っているはずなのに、反応を示すサラーナ。
 サラーナは、秘部を舐められるのはこれが初めてだった。



第41章「酒場の吟遊詩人」 第8話

 シャムはこそぐようにクンニリングスを繰り返す。

サラーナ「はぁはぁはぁ……」

 サラーナの呼吸が荒くなっている。
 ビクビクと激しく身体を痙攣させる。
 クリトリスを舐め上げるたびに、波打つ腹筋がいかにも女戦士らしい。
 足を硬直させて腰を浮かせて、のけ反るサラーナ。
 シャムは周囲を気にすることなくジュルルと音を立てて吸いあげる。

サラーナ「はぁはぁ……んぐうぅぅぅっ……」

 チュパッ、チュルルッ、レロレロレロッ……

 シャムがサラーナに施す治療現場を女性陣は食い入るように見ているが、それとは対照的に男性陣は治療現場から少し離れたところで待機している。ところが兄のドルジだけは間近でサラーナの生々しい姿を見守っていた。

ドルジ「うわぁ、サラーナがあんな凄いことをされている……とても見ていられない」
キュー「『とても見ていられない』と言いながら、指の隙間からしっかりと覗いているじゃないの」
ドルジ「だって治療とはいっても、シャムさんに大切な場所をペロペロされているんですよ。兄として無視できないじゃないですか。私は何もしていないのに」
キュー「当然でしょう? 兄が妹にペロペロしたら異常だわ」
アリサ「ドルジさんの兄妹愛ってすごいねえ。っていうかサラーナさんに恋してるのかなああああ?」
ドルジ「ないです、ないです! 絶対にないです! 私たちには兄妹愛しかありません!」
キュー「そこまで言い切るなら信じてあげるわ」

 シャムは一旦口を離すと、愛液まみれになった口元を手の甲で拭いながら、サラーナの顔を見つめた。
 チル女神の助言どおり施した神技『クリポイゾナ』の効果が現れてきたようで、サラーナの息遣いが穏やかになり、血色も元に戻りつつあった。
 
エリカ「そろそろ頃合いですね。クリポイゾナとチンヒールの合わせ技でサラーナさんを一気に元気にしてあげてくれますか?」

 シャムは静かにうなづくと、おもむろに下穿きを下げ自身の肉柱を取り出した。
 しかし何と便利な男だろうか。それはすでに隆々と勃起していて、フェラチオの必要性などさらさらない。
 サラーナはまだ意識を取り戻したわけではなく朦朧としている。

 シャムはサラーナの両脚をがっしり掴んで開く。
 思わずドルジが顔を背ける。治療だと理解しているから不服は言わない。
 唾液と愛液にまみれた花裂に亀頭を押し当てると、ググっと力を込めた。

サラーナ「あぁぁぁっ……!」

 狭い。
 シャムが最初に感じたことはあまりの膣の狭さだった。
 おそらくいまだに未開の地なのだろう。
 メリメリと肉を引き裂くように挿入されていくシャムの肉柱。
 サラーナは辛そうな声を漏らすが、大きく張ったエラをさらに押し進める。

サラーナ「ううっ……」

 破瓜の痛みに顔をしかめるサラーナだが、シャムは腰を止めない。

シャム「痛いか? 我慢しろよ、痛いのは最初だけだ。すぐに気持ちよくなるから」

 そうつぶやきながら、ゆっくりと律動させるシャム。
 サラーナは痛みに耐えかねて、ギュッと目を瞑り歯を食い縛る。

サラーナ「んっ、んぐぅぅ……っ!」
シャム「力を抜いて……気持ちを楽にして……」

 そうささやきながら、やさしくキスをする。

アリサ「ちょっとやさし過ぎない? 私の時キスなんかしてくれなかったよおおおお」
イヴ「シ~、声が大きいって。状況次第でやり方が変わるのよ」

 ヌチョヌチョヌチョ……

 腰の動きが次第に増していく。
 結合部から処女の証である赤いものがしたたる。
 見ていられなくなったドルジが両手で顔を覆った。
 シャムは息を荒げながら夢中で腰を振り続ける。時折、射精感が込み上げてきてぶるりと身震いする。

 シャムがくぐもった声で呻くのと同時に、膣内でビクンッと脈打つ感覚があった。
 その直後……

 ドピュッ! ビュルルル~~~~ッ!

 生温かい液体が大量に注ぎ込まれた。
 膣内で弾ける熱い液体の感触に全身が粟立つ。
 精を出しきったシャムがズルリとペニスを引き抜いた瞬間、収まりきらなかった白濁液が溢れ出した。
 サラーナの花裂は真っ赤に充血しており、ヒクヒクッと痙攣していた。

サラーナ「はぁ………」

 ほどなく生気を失い、蒼ざめていたサラーナの頬は紅潮するように血色を取り戻していった。
 目を覚ますときょろきょろと辺りを見回すサラーナ。
 すっかり毒が抜け体力が回復したことも元気そうな表情から見て取れる。

サラーナ「ん?……私、生きているの……?」
ドルジ「サラーナ、もうだいじょうだよ。シャムさんが治療してくれたよ」

 サラーナは下半身に衣類がないことに気付き仰天する。
 
サラーナ「きゃぁ~~~~~~! 私、パンツ穿いてない~! しかも皆で私を見てるし!」

 急いで下半身に布をかけてやるメグメグ。

サラーナ「メグメグさん、ありがとう。ん? どうしてお兄さんまで私を見てるのよ~! このエロ兄が~!」

 そばにあった小物をドルジに投げつけるサラーナ。

ドルジ「そうじゃないんだ! 心配で治療を見守っていただけなんだ!」

 メグメグがサラーナに治療に至るまでの経緯をかいつまんで話して聞かせた。

サラーナ「そうだったのですか……シャムさん、治療してくれてありがとうございました。皆さん、心配をおかけしてすみませんでした。それから取り乱してしまってごめんなさい」

 サラーナは『デスワームの角』をゲットした! 『デスワームの角』はひとまず魔法の鞄に収めた!

 サラーナは『ゾーラの剣』をゲットした! 『ゾーラの剣』はドルジが装備した! ドルジの攻撃力が10上がった!

ドルジ「まさかデスワームがゾーラの剣を持っていたとは!?」
リョマ「水に濡れると強化されるという不思議な剣ですね。地底に眠っているとされていますが、何かの拍子で地中に棲むデスワームが奪ったのでしょう」
シャルル「この剣があればリッチなんてイチコロだな~」
ドルジ「でも私が使っても良いのでしょうか? シャムさんや他の方々が使うべきかと」
シャム「何を言ってるんだ。リッチ打倒はあんたの悲願だろう? ヤツの首はドルジが取るべきだ。もちろんおいらたちも全面支援するから心配するなよ~」
ドルジ「ありがとうございます。必ずリッチを倒してみせます!」



第41章「酒場の吟遊詩人」 第9話

 無事にデスワーム退治を終えたシャムたちだが、休むことなく情報収集に奔走した。
 宿敵リッチ、セルペンテ、メドゥサオールの情報をできるだけつぶさに集めることが目的だ。
 人々が暮らす街は情報の宝庫である。今回は未踏の街ポルケを対象に加え、ベルデンヴァーレ、ポリュラスの3つの街を3班に分かれて実施することにした。

シャルル組:シャルル、イヴ、キュー、ウチャギーナ
リョマ組:リョマ、エリカ、サラーナ、アリサ、エンポリオ
シャム組:シャム、マリア、ドルジ、メグメグ、チルチル

 未踏の街ポルケにはシャルル組が、港町ポリュラスにはリョマ組が、現在いるベルデンヴァーレにはシャム組が、それぞれ分担することになった。

⚔⚔⚔

 ここは緑あふれる閑静な住宅街ポルケ。
 シャルル組は先ず“伯爵”セルペンテが住んでいると噂の屋敷を調べることにした。
 随所で聞き込みをしてようやくたどり着いたが、屋敷は誰も住んでいる気配がなかった。
 シャルルたちは近所に聞き込みを行なうことにした。

近所の住民A「さあね、いつ頃引っ越ししたのか知らないね。全然付き合いがなかったから」
近所の住民B「メイドさんとはたまに挨拶をする程度で、ご主人とは全くお会いしたことがありませんね。引越しされたことは知らなかったです」

 近所の住民からこれといった情報を得ることができなかった。
 ただし話の内容から、当該屋敷にセルペンテと何人かの従者が住んでいたことは間違いないようだ。

シャルル「どこに消えたのかな……? ここまで来たのに残念だ」
イヴ「がっかりするのはまだ早いわ。アルフォンス邸を思い出して」
キュー「あっ、そういえば、ごろつきが八百屋のご用聞きを装ってアルフォンス邸に忍び込んでいたわ」
イヴ「そうなの。アルフォンスとセルペンテが同一人物ならば、習慣は変わらないはず」
ウチャギーナ「つまり伯爵御用達の商人がいるはずということね?」
イヴ「その可能性が大きいと思うの」
シャルル「ご用聞きをする商人は、八百屋、酒屋、穀物屋、といったところかな?」
キュー「可能性が高いのはやっぱり八百屋!」
イヴ「その線で調べてみようよ」

 屋敷から最も近い八百屋が判明した。
 屋敷から東方向徒歩7分のところに店舗がある。

シャルル「この店だな。店頭に並んでいるブラッドオレンジがうまそうだな~」
ウチャギーナ「今日は買物に来たんじゃないのよ」
イヴ「まあまあ。おじさん~、ブラッドオレンジ美味しそうだね~。4つくれる?」
八百屋のおやじ「毎度ありがとう! 今日入ったばかりで新鮮だよ~! 1個おまけしておくね」
イヴ「おじさん、ありがとう」

 イヴは硬貨で支払うと、その場でブラッドオレンジに齧りついた。

キュー「え? ここで食べるの?」
イヴ「だって美味しそうなんだもの~」

 シャルルとウチャギーナも同様にブラッドオレンジを食べ始めた。
 名前のとおり中は血のように赤い。果肉はオレンジ色にほんのり赤紫がさしている。
 甘みが強く酸味とのバランスが絶妙だ。

シャルル「うんうん、美味い。ジューシーだな~」

 イヴたちが美味しそうに食べている姿を、八百屋の店主は笑顔で見ている。
 その時、イヴがさりげなく店主に声をかけた。

イヴ「おじさん、ちょっと教えてくれない? ここから西に少し行ったとことに伯爵が住んでいるんだけど、おじさんは配達したことがありますか?」
八百屋のおやじ「ああ、アルフォンス伯爵のお屋敷のことだね。とても良いお得意さんで、よく注文してくれて感謝してるんだけどね、実はね、最近引っ越ししてしまったんだよ。あんたたちは伯爵の知り合いかな?」
イヴ「はい、剣の練習とかで顔見知りなもので、久しぶりにちょっと寄ってみたんだけど、不在だったもので……」
ウチャギーナ「伯爵はどこに引越ししたか知りませんか?」
八百屋のおやじ「直接伯爵に聞いたわけじゃないんだけどね、屋敷のメイドさんに聞いた話では……」
イヴ「ああ、彼女たちね」
八百屋のおやじ「何でも、カルミナに行くとか言ってたよ」
キュー「カルミナって……?」
八百屋のおやじ「ここポルケからず~っと北東に進んだところにある街だよ」
シャルル「大陸の北部にある寒冷の街だよね」
イヴ「行ったことがあるの?」
シャルル「行ったことはないんだけど、レジスタンス運動やってた頃の仲間の出身地がカルミナだったもので覚えているんだ」
イヴ「おじさん、ありがとうね~! ごちそうさまでした!」
八百屋のおやじ「ありがとうございました。また来てくださいね~!」

ウチャギーナ「イヴさんのテクニックすご~い!」
イヴ「テクニックって何よ。何もしていないわ」
ウチャギーナ「物を1つ買うことで店側の客への心象が全然違う」
イヴ「ああ、そのことね。テクニックというより、人間の心理の問題よ。だって商売人の立場からすれば商品を買ってくれる人って大切じゃないの」
ウチャギーナ「確かに。イヴさんは商売をしてもきっと成功すると思うわ」
イヴ「何言ってるのよ。私はロマンチーノ城の神官イヴよ!」
シャルル「ははははは~、確かに。間違いないな。ところで……」

 シャルルは驚くべきことを口走った。

シャルル「今から、カルミナに行こうか? 伯爵野郎を一気にやっつけようぜ」
キュー「シャルル、正気で言ってるの? こんな大事なことは先ずシャムたちに知らせなければ」
ウチャギーナ「もし私たちで攻めて全滅でもしたらどうするの?」
シャルル「確かに……軽率だった……すまん……」
イヴ「そんなに落ち込まないでよ。あなたの意気込みと勇気は立派だわ。でも今は自重しなきゃ」
シャルル「は~い、イヴちゃま~。その凛々しさ、惚れてしまうな~」

 バシンッ!

シャルル「いてて……殴らなくても……」
イヴ「私の隣にエリカさんがいてもそれが言える?」
シャルル「……言えません」



第41章「酒場の吟遊詩人」 第10話

 ふっくらとした鳩が窓辺にとまり、室内をのぞいている。 まもなく窓枠をくぐると、ふたたび飛びあがりシャムの肩にとまった。

シャム「ん? おいらに手紙か?」
ドルジ「よくしつけていますね。シャムさんを探して飛んできたようで驚きです」
シャム「しつけなんかしていないよ」
マリア「ドルジさん、あの鳩は神様が遣わした鳩なのです。だから勇者とその仲間はすぐに見分けがつくのです」
ドルジ「なんと! ふつうの伝書鳩ではないのですか。びっくり」
マリア「外見では分かりません。外見で分かると魔物などに狙われますからね」

 シャムが手紙を広げた。

シャム「ふむ、ポルケにいるイヴたちからだ」

 美しく滑らかな筆記体で、簡潔にしたためられていた。

『アルフォンス(セルペンテ)がポルケからカルミナに引越ししたらしい。指示を待つ』

シャム「カルミナといえばポルケの北東にある街だったな」
メグメグ「すぐにポルケのイヴさんたちと合流し、一気にセルペンテを叩きつぶそうよ」
マリア「それも方法ですが、近頃リッチの破壊活動が活発になってきているので、セルペンテよりもむしろリッチの動きが気になるところです」
ドルジ「どちらもまだまだ情報が少ないので、もう少し状況を見定めてから結論を出してはどうでしょうか?」
シャム「どのみちどちらも倒さなければいけないんだけどな。よし、3日間駆けまわってから決めよう。チルチル、イヴに返事を送って。ポルケで3日間調査を続けてくれと」
チルチル「任してピョン♫ 鳩さん、おなか空いたでしょう? 餌を上げるからこっちにおいで」

 鳩はチルチルの言葉が理解できるのか、ピョンピョンと豆の小皿まで跳ねていった。
 その光景を、ドルジは目を細めて眺めていた。

⚔⚔⚔

 港町ポリュラスの情報収集を任されたリョマたちが最初に向かった先は祈祷所であった。
 なんとリョマの妹サチェルがポリュラスで祈禱所を開いているという。

エリカ「リョマさん、サチェルさんがペルセ島を出てポリュラスにいらしたのはいつ頃ですか?」
リョマ「実は私がサチェルから聞いたのもつい最近でして、引っ越ししたのは1か月以上前のようなのです」

 サチェルの祈禱所は海が見える街の最南端にあった。

アリサ「サチェルさん、すてきな祈禱所だね。開所おめでとううう!」
サチェル「ありがとう、アリサちゃん! 皆さんもお祝いに来てくださってありがとうございます! 島にいなければならない事情がなくなったので、思い切ってこちらに引っ越ししました」
リョマ「サチェル、これを……」

 リョマが不慣れな手つきで花束を贈った。
 
サチェル「お兄様、ありがとう。いつも毅然としているのに、珍しくおどおどしているわね」
リョマ「花束贈呈など私には似つかわしくないから……」
エンポリオ「たしかに」
リョマ「おいおい、そこは『そんなことはありません』とか否定してくれてもいいだろう」

 周囲は爆笑の渦に包まれた。
 笑い声が収まり静寂が訪れると、サチェルがぽつりのたずねた。

サチェル「さて、皆様が、今、一番占ってみたいことは何ですか?」
リョマ「今日は妹ではなく祈祷師サチェル様に、竜騎士リョマとしてお願いしましょう。次に倒すべき敵は誰なのかを教えてください」
サチェル「分かりました。占ってみましょう」

 室内のランプがすべて消され、灯りは水晶玉の手前にあるローソクだけとなった。
 サチェルが呪文を唱えながら、水晶玉をじっと凝視する。
 水晶占いは、相手の情報を一切得ないで行なう。
 水晶占いにおける余計な情報は、占い師の直感をかき乱すだけなのだ。
 いくら優れた占い師であっても、水晶玉に必ず映るとは限らず、何も映らない日もあるのだ。
 はたしてサチェルの瞳は、水晶玉の奥に何かをとらえることができるのだろうか。

サチェル「見えました……滅びた城が見えました……」
リョマ「なんと!? それはいったいどこの城なんだ!?」
サチェル「復興の兆しが見えましたが、再び城は炎上しています。城の入口にロゴがあって……」
アリサ「もしかしたらそれはああああ!?」
サチェル「はい、ムーンサルト城です」
エリカ「どういうこと? ムーンサルト城は以前メドゥサオールに滅ぼされた城で、最近ユマ姫が戻り再建が始まったと聞いていますわ。なのにどうして燃えているのですか!?」
サチェル「お兄様、手元にタロットカードがあります。左からどれか1枚、右からどれか1枚引いてください」

 リョマは左側の一番上のカードを引いた。
 左側は、大アルカナカードで『13.死神』だった。

リョマ「何と不吉な……」
サチェル「まさか……」

 つづいて右側のカードを引いた。
 右側は小アルカナカードで『カップ5』が出た。

エンポリオ「カップの5ってなに?」

サチェル「カップの5は失望や喪失感を意味します」
アリサ「死神と、失望と、喪失感って、何か嫌な感じいいいい……」

 サチェルの表情が険しくなった。

サチェル「はっきりと言います。死神のカードが出たから悪いことばかりとは限らないのですが、今回の場合に限っては……強力な『死神』が出現しました。場所はムーンサルト城です。再建途中だった城が再び炎上しています。
 次に、カップの5ですが、先程申しあげたとおり失望と喪失感を意味し、物事がうまくいかなかったり、自信を失ったりととても暗いことばかりなのですが、悲しむ男の背後を見てください。壊れていない聖杯がありますね? この男は気づいていませんが、希望を意味します」


大アルカナカード 13.死神

小アルカナカード カップ5




第41章「酒場の吟遊詩人」 第11話

アリサ「大変っ! ムーンサルト城にいるユマちゃんが心配だああああ!」
サチェル「えっ、ユマ姫様が城に戻っておられたとは……!?」
リョマ「魔物に殺害されたお父上とお母上に代わって、城再建のため城に帰ったんだ。ああ、どうかご無事で……」
エリカ「サチェルさん、ユマ姫の消息を占うことはできませんか?」
サチェル「ええ、やってみましょう」

 サチェルは水晶玉の前で目を閉じ念を送った。
 何やらぶつぶつ唱えているが、周りの者には聞き取れない。
 サチェルは目を開くと、水晶玉を覗きこんだ。

サチェル「だいじょうぶです。ユマ姫様は苦境のさなかにありますが、ご無事です。理由は何者かがユマ姫様をお守りしているからです」
エンポリオ「無事で何よりだ。ねえ、ユマを守っているのは誰なの?」
サチェル「それは……」

 突然サチェルが口ごもった。

リョマ「どうしたんだ、サチェル? 誰がユマ姫様をお守りしているのか教えてくれないか……?」
サチェル「死者です」
リョマ「なんと!? 死者がユマ姫様をお守りしているというのか!?」
サラーナ「つまり幽霊ということですか……?」
サチェル「はい、おそらく幽霊かと……」
アリサ「幽霊は誰なのおおおお?」
エリカ「皆さん、サチェルさんを質問攻めにするのはやめましょうよ。冷静になって順序だててお聞きしましょう」

 一同はこっくりとうなづきサチェルに詫びた。

サチェル「幽霊が誰なのかは分かりません。姿がぼんやりとしか見えないのです。詳しいことは分かりませんが、複数の幽霊が壁となってユマ姫様をお守りしていることは確かです……だけど……」
リョマ「うん……?」
サチェル「しかし死神のパワーは凄まじく、徐々にユマ姫様の守護側が圧されつつあります。できる限り早く救出にいってあげてください」
リョマ「分かった、すぐにシャムさんたちに伝えてできるだけ早く救出に向かうよ」

 さらにリョマは、もう一方の宿敵セルペンテの動向についても確かめた。

リョマ「サチェル、セルペンテ伯爵の動きを占ってくれないか?」

 水晶玉に向かい念じるサチェル。
 果たして……

サチェル「水晶にセルペンテは現れません。おそらく現在特に動きがないということになります」

 さらにタロットカードをめくるようリョマに指示する。
 リョマが引いた大アルカナカードは『吊るされた男』だった。
 そしてつづいて引いた小アルカナカードは『ペンタクルナイト』が逆位置で現れた。

サチェル「ふうむ……やはり水晶玉と同様にカードも静止を告げています」
エリカ「セルペンテに特に目立った行動がないということですね」
サチェル「はい、そうです。これで方向が決まったようですね」
エリカ「私たちが行くべき場所はムーンサルト城ということですね」
サチェル「相手はかなりの強敵です。どうかお気をつけて」
リョマ「死神の正体がリッチだと決まったわけではないが、絶対ユマ姫を救出しなければならない」
サラーナ「城を乗っ取るというような野心丸出しの死神は、リッチをおいて他にはないと思います。必ずこの手でリッチを倒してみせます」
サチェル「サラーナさんにはこれを差し上げます」
サラーナ「まあ、これは『呪いよけの指輪』ではありませんか!?」
サチェル「この指輪をしていると99%呪いを回避することができます。1つしかなくてごめんなさい」
サラーナ「私がいただいても良いのでしょうか。むしろリョマさんが持つべきかと」
リョマ「いやいや、これはサラーナさんが持つべきだと思います。私たちにはデスワームの角があるので気兼ねなくどうぞ」
サラーナ「分かりました! では遠慮なく装備させていただきます!」

 サラーナが『呪いよけの指輪』をゲットした! サラーナは早速『呪いよけの指輪』を装備した!

⚔⚔⚔

 ベルデンヴァーレは砂漠最大の街である。
 大きな街であればその分だけ情報量も多い。
 時には、びっくりするような情報が耳に飛び込んでくることもある。
 シャムたちは薬草類補充のため薬屋を訪れていた。

薬屋「いらっしゃい~」
マリア「風邪薬をもらえますか?」
薬屋「いくつお入用ですか?」
マリア「10袋もらっておこうかしら」
ドルジ「ヒール魔法の名人でも風邪は治せないのですね」
マリア「病気も魔法で治せたら良いのですが、そんな都合のよい魔法はありませんね」
ドルジ「ちなみにどんな怪我でも治せるのですか?」
マリア「いいえ、手足を切断してしまった場合は、ヒール魔法を唱えても再生しません」
ドルジ「そう考えると再生能力を持つイモリはすごいですね」

 薬屋がマリアから代金を受け取ると奇妙な話を始めた。

薬屋「お客さんは裸で暮らす島があるのを知ってますか?」
シャム「え~~~!? ハダカ? 裸で暮らす島? それどこ? 教えて~~~~!」

 裸という言葉が耳に入り、突然シャムが会話に割り込んできた。

薬屋「何でもね、ダタナ大陸の北側にある小さな国らしいんだけど、王様の命令で女性は全員裸で暮らしているという話ですよ。もし服を着ると罰で投獄されるらしいのです。もちろん旅人も女性であれば従わなければならず、到着したらすぐに入国手続き所で服を預けなければならないらしいです」
メグメグ「そんな破廉恥な国、絶対に行きたくないわ」
チルチル「それって未成年でも同じ扱いなのでピョン♫?」
薬屋「年齢は関係がないそうですよ。とはいっても私が行ったわけではなくて、貿易でその国に行った船乗りから聞いた話なんですけどね」
シャム「行ってみたいな~」

 シャムは羨望の眼差しで薬屋の窓から空を見上げている。

メグメグ「1人で行って来れば?」
チルチル「女性だけなら行ってみたいでピョン♫」
マリア「沢山の美女とともに旅をしているのに、何と欲張りな勇者さまだこと」
ドルジ「そんな島があるなら、私だって行ってみたいですよ」

 生真面目だと思われていたドルジの一言で、女性3人がその場にずっこけてしまった。


大アルカナカード 12.吊るされた男

小アルカナカード ペンタクルナイト



第41章「酒場の吟遊詩人」 第12話

 こちらはイヴたちが滞在中のポルケの街、今日は朝から雨が降り続いている。
 シャムから『セルペンテを追わず街でとどまるように』と連絡を受けたイヴたちはその後もポルテで調査をつづけていた。
 宿屋で朝食を済ませたばかりのイヴたちの元に、ポリュラスで捜索中のリョマから新たな連絡が舞い込んだ。

『リッチがムーンサルト城を占領し、ユマさんが苦境に立たされているようだ。シャムさんから連絡があるまで待機のこと。 リョマ』

シャルル「なんということだ。再建中の城が再び襲われるとは。ユマが心配だ」
ウチャギーナ「ユマさん、かわいそう。再び戦火に見舞われるとは……」
キュー「どうかご無事で……ユマちゃん」
イヴ「早くユマさんを助けなければ。まだシャムから連絡はないよね」
シャルル「ペルセンテよりリッチ討伐が先になりそうだな」

 宿屋のロビーで寛いでいると、8歳ぐらいの女の子がイヴたちのところにやってきた。
 この子が宿屋のおやじ(経営者)の愛娘であることをイヴたちは知っていた。
 というのも娘がかなりの父親っ子であり、父親が仕事中であるにもかかわらず頻繁に父親の職場に現れていた。

宿屋の娘「ねえ、おねえさんたちはどんなお仕事をしているの?」
イヴ「私たちは悪い魔物をやっつける仕事をしているのよ」
宿屋の娘「まあすごい! じゃあゾンビや幽霊もやっつけられる?」
イヴ「うん、ゾンビはやっつけられるよ。幽霊は……やっつけたことがないけど、たぶんやっつけられると思うよ。あ、でも、悪い幽霊だけね」
宿屋の娘「良い幽霊っているの?」
イヴ「いるよ、悪い幽霊ってごく一部なの」
宿屋の娘「昨日、恐い夢を見たの」
キュー「どんな夢?」
宿屋の娘「幽霊とゾンビが戦っている夢なの」
キュー「どっちが勝ったの?」
宿屋の娘「どっちが勝ったんだろう? 目が覚めたので途中までしか見てないの。ねえ、幽霊とゾンビが戦ったらどっちが強いの?」
キュー「え~と、それは……」
シャルル「幽霊だろう? 幽霊は実体がないから」
ウチャギーナ「私はゾンビの方がパワーで勝っていると思うわ」
イヴ「ごめんね、ゾンビと幽霊が戦っているところを見たことがないので、どちらが強いか分からないの」
宿屋の娘「そうなんだ。いつか見たら教えてね」
イヴ「うん、見ることがないかも知れないけど、見たら教えてあげるね。ねえ、お嬢ちゃんは何という名前なの?」
宿屋の娘「私はリタだよ~」
イヴ「リタちゃんね、よいお名前ね」

 その時、宿屋のおやじがやって来た。

宿屋のおやじ「リタ、お客様の邪魔をしてはいけないよ。皆さん、すみませんね、この子はうちの娘なんですよ」
イヴ「かわいいお子さんですね、とても明るいし」
宿屋のおやじ「たしかに明るい性格なんですが、ちょっと変わった特徴を持ってましてね」
キュー「変わった特徴って?」

宿屋のおやじ「睡眠中に見た夢が、その後現実に起こることが多いんです。私も妻もそんな傾向はないのですが、変ですよね」
イヴ「予知夢ですね、変なことはないですよ。たまにそんな能力を持った人はいますよ」
宿屋のおやじ「ちなみに昨夜どんな夢を見たと言ったのですか?」
リョマ「なんでもゾンビと幽霊が戦っている夢を見たと言っていました」
宿屋のおやじ「いくらなんでもそれはあり得ないでしょう。気にしないでくださいね。まあ、当たらない時もありますからね」
キュー「リタちゃんは気にならないの?」
リタ「うん、気にしていないよ~」
イヴ「それがいいわ。じゃあね」

 リタちゃん親子はその場から去って行った。

ウチャギーナ「みんなどう思う? 今の話」
イヴ「こちらから聞いてもいないのに、リタちゃんが自ら見た夢を話した……偶然かも知れないけど、スピリチュアル的(霊的)に考えて何かを暗示しているように思えるの」
リョマ「夢は不思議ですよね、理屈では解せないものを持っていますからね」
ウチャギーナ「うちのネイロおばあちゃんも夢は結構正直だと言っていたわ」
キュー「そうだとしたら、いったいどこでゾンビと幽霊が戦っているのかしら?」
イヴ「未来、そういう場面に遭遇するかも知れないわね」

 羽ばたく音がするので、ふと見上げてみると窓辺に一羽の伝書鳩が飛んできた。
 シャムからの手紙だ。

『リッチが再建中のムーンサルト城を占拠した模様。ユマを救出したい。急ぎ戻ってほしい。 シャム』

イヴ「大変っ! ユマちゃんが危険だわ! 急いで戻るわ!」
シャルル「一度落城した城をふたたび攻めるとは卑劣な!」
キュー「ただし一度目がメドゥサオール、二度目がリッチだわ。魔物たちとアンデッド王は不仲だと聞いたわ」
ウチャギーナ「強敵のリッチが籠城したとなるとかなり厄介だわ」
イヴ「でもこの機会に一気に倒さなければ」




第42章につづく

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馬賊の王女サラーナ


吟遊詩人カサブランカ


女神チル


地底の巨大怪物デスワーム











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