![]() ファンタジー官能小説『セクスカリバー』 Shyrock 作 |
<メンバーの現在の体力・魔力>
シャム 勇者 HP 600/600 MP 0/0
イヴ 神官 HP 510/510 MP 530/530
アリサ 猫耳 HP 520/520 MP 0/0
キュー ワルキューレ HP560/560 MP290/290
エリカ ウンディーネ女王 HP 440/440 MP 570/570
チルチル 街少女 HP 370/370 MP 0/0
シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 630/630 MP 0/0
ウチャギーナ 魔導師 HP 440/440 MP 530/530
ペペ 魔導師 HP 480/480 MP 570/570
マリア 聖女 HP 450/450 MP 580/580
⚔⚔⚔
ペルセ神殿を午後に出発したシャムたちがエルフ村に到着する頃にはすでに陽が西に傾きはじめていた。
シャム「ふう~、やっと着いたぞ~」
アリサ「にゃう~ん、せっかく『旅の樹木』があちこちにあるのに私たち全然使ってないねええええ」
キュー「にゅう、遠く離れた場所に一瞬でワープ移動できる優れものだけど、一度行った場所でないと利用できないからね」
ペペ「各地を訪れているうちに元の場所に戻らないといけないことがきっと出てきますよ、そのうち」
シャルルが不満そうに周囲を眺めている。
シャルル「小さな村みたいだけど店はあるのかな?」
エリカ「できることなら食料や薬も少し補充したいですね」
ペペ「マリアさん、ユマ姫を見たというエルフはどこにいるのでしょうね?」
マリア「何でも18才前後の少年だったらしいのですが、詳しいことはまったく分からないのです。せめて名前ぐらいは聞いておけばよかったですね」
キュー「じゃあ、みんなで手分けして一軒ずつ聞いて回るしかないか」
イヴ「とりあえず食堂かカフェから回るのがいいんじゃない?」
シャム「ちょうど腹の虫が鳴っていることだし、ちょっこら寄ってみるか~?」
シャルル「この村に飲食店があるか不安だけどな」
シャムたちは周囲をきょろきょろと見廻した。
すると店の看板が目に飛び込んできた。
ウチャギーナ「ここから見える範囲では、酒場が1軒、道具屋が1軒あるみたい」
シャム「よくそんなに早く見つけられるな~」
ウチャギーナ「だって私ウチャギだもん」
シャム「?」
チルチル「私もウサギだピョン~♪」
シャム「ウサギって目がそんなに良かったか?」
イヴ「あまり聞かないけどね」
ウチャギーナ「広角に見えるのよ。だから早く見つけられるの」
視力談義はほどほどに、シャムたちは酒場で腹を満たすことにした。
店内はバーカウンターとなんの変哲もない木のテーブルが3つばかり並んでいて、その周りを何脚かの丸椅子が囲む。
ひどく古びた殺風景な店だが、どこか懐かしい。
テーブルの1つには若いカップルが向かい合って談笑している。
「いらっしゃ~い」
店の奥から耳の尖ったエルフの親父が現れ愛想よくシャムたちを迎えた。
「これはこれは! 旅のお方がここに来るのは何年ぶりでしょうか。ありきたりの料理しかできませんが、ゆっくりして行ってくださいな」
残りの2つのテーブルに分かれて腰を下ろす。
10人が押し掛けたものだから店内が一気に活気づいた。
シャム「何が食べられるの?」
エルフの親父「スープからメインディッシュまで何でもできますよ」
アリサ「わ~い! 何でもできるんだってええええ」
一行は卓上の品書きを見て目を丸くした。
エリカ「えっ……?」
イヴ「本当にメニューはこれだけ?」
キュー「あのぉ、何かが足らないような気がするんですけどぉ……」
チルチル「ぜ~んぶ、野菜ばかりでピョン♫」
ウチャギーナ「あの、店のご主人、肉や魚はないのでしょうか?」
エルフの親父は悪びれることなく言った。
エルフの親父「実は私たちエルフは野菜と果物しか食べないのです。この店に来るお客さんのほとんどがエルフなんです……以前は旅人の希望もあって肉や魚も置いていたのですが、砦ができてからめっきり旅人が途絶えてしまって……結局腐らせてしまって捨てることが多くなったので肉や魚を置かなくなりました。砦がなくなっても旅人が減ったままで……」
エリカ「なるほど、早く客足が戻るといいですね。ちなみにこの村で食事のできるところはここだけですか?」
エルフの親父「はい、この村で飲食店はここだけなんですよ」
エリカ「皆さん、とてもヘルシーな野菜料理をいただくことにしましょうよ」
シャム「まあ、おいらはいいんだけど」
イヴ「身体に良い野菜料理を喜んでいただきます」
キュー「じゃあ、決まったね。注文しよ~。私、フライドポテトがいいな~」
アリサ「弱ったなぁ……私、食べるものがないよおおおお」
シャム「猫耳はやっぱり肉食だものね。じゃあ、一食抜きだな~」
アリサ「プンニャン、プンニャン! シャム酷い~! そんなこと言うとシャムを食べちゃうぞおおおお!」
シャム「どひゃっ! おい、やめろ! アリサ、タマゴ料理があるぞ、タマゴ料理は食べられるだろう!?」
ワイワイガヤガヤと店内は大賑わいとなる。
エリカ「ごめんなさいね。騒がしくてして」
エリカが隣の席の若いカップルに詫びた。
エルフ男性「全然構いませんよ」
エルフ女性「私、賑やかな方が好きですし」
エリカ「そういってくださると助かりますわ。ところで、もしご存知だったら教えて欲しいのですが」
エルフ男性「どんなことでしょうか?」
エリカ「ここからず~っと北西の方角に『クリトビスの塔』と呼ばれる塔があり、その塔にお姫様らしき人が連れ込まれたようなのです。連れ込まれるところを偶然見た人がこの村に住んでいるエルフの男性だと聞いたもので……。そのような噂を聞かれたことはありませんか?」
エルフ男「聞いてますよ」
エリカ「えっ? ご存知なんですか?」
いつしか賑やかに語らっていたシャムたちまでもが、エリカとエルフカップルの会話に耳を傾けていた。
エルフ男「はい、知っていますとも。だって、何を隠そう、その現場を目撃したのは僕の親友なのですから」
エリカ「ええっ! あなたのその人の親友なんですか? ではその人のことを教えてもらえませんか? 私は旅の者でエリカと言います。ある人を助けるために目撃者を探しているのです」
エルフ男「僕はステファノです。お教えすることは一向に構わないんですが……」
ステファノの歯切れが悪い。
エリカ「あら、どうかされたのですか?」
ステファノ「いいえ、話すのが嫌という訳ではないのですが。ただ……」
エリカ「ただ?」
ステファノ「ただ、会っても無駄だと思いますよ」
エリカ「無駄とは一体どういう意味ですか?」
ステファノ「実は……」
エリカ「はい」
ステファノ「彼は名前をエンポリオと言うのですが、記憶を失ってしまったのです」
エリカ「えっ? 記憶喪失に!?」
ウチャギーナ「どうして記憶を失ったの?」
ウチャギーナが尋ねると、ステファノは顔を曇らせた。
何か怯えているようにも見える。
まもなく重い口を開きぽつりぽつりと語りはじめる。
ステファノ「エンポリオは呪いをかけられたのです」
ウチャギーナ「呪いを……!?」
ステファノ「はい、記憶を吸いとる恐ろしい呪いなのだそうです。村の長老がそう言ってました」
イヴ「つまり、しゃべられては困るので口封じのためにその男性の記憶を消してしまったというわけね?」
ステファノ「おそらくそうだと思います」
キュー「誰が呪いをかけたの?」
ステファノ「はい、クリトビスの塔に住む幻術師だと聞いています」
マリア「クリトビスの塔に住む幻術師……? はて、誰かしら? クリトビスの塔には長年誰も住んでいないはずです。おそらく最近になって何者かが忍び込んだのでしょう。もしかしたら魔界の者かもしれません」
シャム「ふむ、目撃した者の記憶をわざわざ消さなければならならないというのは、いよいよもって怪しい」
チルチル「でもその連れ去られたお姫様がユマ姫だとは言い切れないでピョン」
シャム「確かにそうだが可能性がある限り調べないとな。よし、とり合えず長老に会いに行こう」
だれが何のためにエルフの若者エンポリオの記憶を消したのか。
村長に会えば何か情報を得られるかもしれない。
エリカ「教えてくれてありがとうございます」
ステファノ「どうかエンポリオを助けてください! 彼は僕の大切な親友なんです!」
アリサ「にゃんにゃん~、任せておいてにゃ~! 私たちが助けてあげるからねええええ」
イヴ「ちょっとちょっと、アリサちゃん、安請合いはダメよ。記憶喪失を治すことなんてできないと思うわ」
ステファノ「それもそうですね、お医者さんでもないのに無理なことを言ってすみませんでした」
イヴ「いいのよ。大切なお話を聞かせてくれてありがとう。エンポリオさんの記憶を戻すのは難しいと思うけど、できることがあればお手伝いするわね」
ステファノ「どうもありがとうございます! じゃあ皆さんの食事が終わったら、僕が長老の家に案内します!」
シャムたちは酒場で食事をとった後、長老の家へと向かった。
⚔⚔⚔
長老は白眉で白髭をたくわえた好々爺といった風貌をしている。
記憶を消されてしまったエンポリオのことを、シャムたちに詳しく語ってくれた。
長老「とまあ、そう言うことなんじゃ。医者も原因がさっぱり分からんと言うし、祈祷師も念力ではどうにもならんとさじを投げてしまってのぅ。困ったものじゃ」
マリア「それはお気の毒に……。ちなみにエンポリオさんはおいくつなのですか?」
長老「そうじゃな。18才になったばかりの若者なのじゃ」
シャム「それならおいらと同い年だ」
マリア「村長さんは記憶喪失の原因が呪いによるものだとおっしゃるのですね?」
長老「う~ん、絶対とは言えんが、医者も症状からみておそらく病気ではないと言うんじゃ」
ウチャギーナ「どんな症状ですか?」
長老「時々記憶がよみがりそうになるらしいのじゃが、そんな時に限って息が詰まりそうになるらしい。あの症状は呪術の仕業だとわしは睨んどるのじゃ」
キュー「にゅう、もし呪術だとしたらそれを解く方法はあるの?」
長老「残念じゃがわしには分からんのじゃ。はるか遠いマロンクリーム神殿のチル女神様なら呪術を解く方法を知っているらしいが、遠すぎて行くこともできぬ」
少し懐かしい名前がシャムたちの耳に飛び込んできた。
ただし旅の始まりの頃に出会ったので、シャム、イヴ、アリサ以外はチル女神を知らない。
キュー「マロンクリーム神殿? チル女神?」
チルチル「私の名前に似てるでピョン♪」
アリサ「にゃんにゃん~、チルさんならアリサ知ってるおおおお」
イヴ「旅が始まった頃にお会いした女神様だわ。すごく魅力的な人よ」
長老「ほほう。チル女神様を知っておられるのか? それは奇遇じゃ。すまぬがチル女神様に会って治療方法を聞いて来てくれぬか? 私が行けば良いのじゃが、見てのとおりの老いぼれで旅に出るのが無理なのじゃ」
シャム「分かったよ、長老。おいらたちがチル女神に会って呪いの解き方を聞いてくるよ」
長老「おお、おお、行ってくれるか!? それはありがたいことじゃ。一度行ったことがあるなら、この村の外れにある『旅の樹木』から飛ぶと早く行けるじゃろうて」
マリア「シャムさん、チル女神様に会いに行く前に、エンポリオさんに会ってみてはどうでしょうか?」
シャム「おいらもそう思ってたところだ。早速エンポリオに会いに行こう」
つづく