ファンタジー官能小説『セクスカリバー』 Shyrock 作 |
<メンバーの現在の体力・魔力>
シャム 勇者 HP 600/600 MP 0/0
イヴ 神官 HP 510/510 MP 530/530
アリサ 猫耳 HP 520/520 MP 0/0
キュー ワルキューレ HP560/560 MP290/290
エリカ ウンディーネ女王 HP 440/440 MP 570/570
チルチル 街少女 HP 370/370 MP 0/0
シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 630/630 MP 0/0
ウチャギーナ 魔導師 HP 440/440 MP 530/530
ペペ 魔導師 HP 480/480 MP 570/570
マリア 聖女 HP 450/450 MP 580/580
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ペルセ神殿を午後に出発したシャムたちがエルフ村に到着する頃にはすでに陽が西に傾きはじめていた。
シャム「ふう~、やっと着いたぞ~」
アリサ「にゃう~ん、せっかく『旅の樹木』があちこちにあるのに私たち全然使ってないねええええ」
キュー「にゅう、遠く離れた場所に一瞬でワープ移動できる優れものだけど、一度行った場所でないと利用できないからね」
ペペ「各地を訪れているうちに元の場所に戻らないといけないことがきっと出てきますよ、そのうち」
シャルルが不満そうに周囲を眺めている。
シャルル「小さな村みたいだけど店はあるのかな?」
エリカ「できることなら食料や薬も少し補充したいですね」
ペペ「マリアさん、ユマ姫を見たというエルフはどこにいるのでしょうね?」
マリア「何でも18才前後の少年だったらしいのですが、詳しいことはまったく分からないのです。せめて名前ぐらいは聞いておけばよかったですね」
キュー「じゃあ、みんなで手分けして一軒ずつ聞いて回るしかないか」
イヴ「とりあえず食堂かカフェから回るのがいいんじゃない?」
シャム「ちょうど腹の虫が鳴っていることだし、ちょっこら寄ってみるか~?」
シャルル「この村に飲食店があるか不安だけどな」
シャムたちは周囲をきょろきょろと見廻した。
すると店の看板が目に飛び込んできた。
ウチャギーナ「ここから見える範囲では、酒場が1軒、道具屋が1軒あるみたい」
シャム「よくそんなに早く見つけられるな~」
ウチャギーナ「だって私ウチャギだもん」
シャム「?」
チルチル「私もウサギだピョン~♪」
シャム「ウサギって目がそんなに良かったか?」
イヴ「あまり聞かないけどね」
ウチャギーナ「広角に見えるのよ。だから早く見つけられるの」
視力談義はほどほどに、シャムたちは酒場で腹を満たすことにした。
店内はバーカウンターとなんの変哲もない木のテーブルが3つばかり並んでいて、その周りを何脚かの丸椅子が囲む。
ひどく古びた殺風景な店だが、どこか懐かしい。
テーブルの1つには若いカップルが向かい合って談笑している。
「いらっしゃ~い」
店の奥から耳の尖ったエルフの親父が現れ愛想よくシャムたちを迎えた。
「これはこれは! 旅のお方がここに来るのは何年ぶりでしょうか。ありきたりの料理しかできませんが、ゆっくりして行ってくださいな」
残りの2つのテーブルに分かれて腰を下ろす。
10人が押し掛けたものだから店内が一気に活気づいた。
シャム「何が食べられるの?」
エルフの親父「スープからメインディッシュまで何でもできますよ」
アリサ「わ~い! 何でもできるんだってええええ」
一行は卓上の品書きを見て目を丸くした。
エリカ「えっ……?」
イヴ「本当にメニューはこれだけ?」
キュー「あのぉ、何かが足らないような気がするんですけどぉ……」
チルチル「ぜ~んぶ、野菜ばかりでピョン♫」
ウチャギーナ「あの、店のご主人、肉や魚はないのでしょうか?」
エルフの親父は悪びれることなく言った。
エルフの親父「実は私たちエルフは野菜と果物しか食べないのです。この店に来るお客さんのほとんどがエルフなんです……以前は旅人の希望もあって肉や魚も置いていたのですが、砦ができてからめっきり旅人が途絶えてしまって……結局腐らせてしまって捨てることが多くなったので肉や魚を置かなくなりました。砦がなくなっても旅人が減ったままで……」
エリカ「なるほど、早く客足が戻るといいですね。ちなみにこの村で食事のできるところはここだけですか?」
エルフの親父「はい、この村で飲食店はここだけなんですよ」
エリカ「皆さん、とてもヘルシーな野菜料理をいただくことにしましょうよ」
シャム「まあ、おいらはいいんだけど」
イヴ「身体に良い野菜料理を喜んでいただきます」
キュー「じゃあ、決まったね。注文しよ~。私、フライドポテトがいいな~」
アリサ「弱ったなぁ……私、食べるものがないよおおおお」
シャム「猫耳はやっぱり肉食だものね。じゃあ、一食抜きだな~」
アリサ「プンニャン、プンニャン! シャム酷い~! そんなこと言うとシャムを食べちゃうぞおおおお!」
シャム「どひゃっ! おい、やめろ! アリサ、タマゴ料理があるぞ、タマゴ料理は食べられるだろう!?」
ワイワイガヤガヤと店内は大賑わいとなる。
エリカ「ごめんなさいね。騒がしくてして」
エリカが隣の席の若いカップルに詫びた。
エルフ男性「全然構いませんよ」
エルフ女性「私、賑やかな方が好きですし」
エリカ「そういってくださると助かりますわ。ところで、もしご存知だったら教えて欲しいのですが」
エルフ男性「どんなことでしょうか?」
エリカ「ここからず~っと北西の方角に『クリトビスの塔』と呼ばれる塔があり、その塔にお姫様らしき人が連れ込まれたようなのです。連れ込まれるところを偶然見た人がこの村に住んでいるエルフの男性だと聞いたもので……。そのような噂を聞かれたことはありませんか?」
エルフ男「聞いてますよ」
エリカ「えっ? ご存知なんですか?」
いつしか賑やかに語らっていたシャムたちまでもが、エリカとエルフカップルの会話に耳を傾けていた。
エルフ男「はい、知っていますとも。だって、何を隠そう、その現場を目撃したのは僕の親友なのですから」
エリカ「ええっ! あなたのその人の親友なんですか? ではその人のことを教えてもらえませんか? 私は旅の者でエリカと言います。ある人を助けるために目撃者を探しているのです」
エルフ男「僕はステファノです。お教えすることは一向に構わないんですが……」
ステファノの歯切れが悪い。
エリカ「あら、どうかされたのですか?」
ステファノ「いいえ、話すのが嫌という訳ではないのですが。ただ……」
エリカ「ただ?」
ステファノ「ただ、会っても無駄だと思いますよ」
エリカ「無駄とは一体どういう意味ですか?」
ステファノ「実は……」
エリカ「はい」
ステファノ「彼は名前をエンポリオと言うのですが、記憶を失ってしまったのです」
エリカ「えっ? 記憶喪失に!?」
ウチャギーナ「どうして記憶を失ったの?」
ウチャギーナが尋ねると、ステファノは顔を曇らせた。
何か怯えているようにも見える。
まもなく重い口を開きぽつりぽつりと語りはじめる。
ステファノ「エンポリオは呪いをかけられたのです」
ウチャギーナ「呪いを……!?」
ステファノ「はい、記憶を吸いとる恐ろしい呪いなのだそうです。村の長老がそう言ってました」
イヴ「つまり、しゃべられては困るので口封じのためにその男性の記憶を消してしまったというわけね?」
ステファノ「おそらくそうだと思います」
キュー「誰が呪いをかけたの?」
ステファノ「はい、クリトビスの塔に住む幻術師だと聞いています」
マリア「クリトビスの塔に住む幻術師……? はて、誰かしら? クリトビスの塔には長年誰も住んでいないはずです。おそらく最近になって何者かが忍び込んだのでしょう。もしかしたら魔界の者かもしれません」
シャム「ふむ、目撃した者の記憶をわざわざ消さなければならならないというのは、いよいよもって怪しい」
チルチル「でもその連れ去られたお姫様がユマ姫だとは言い切れないでピョン」
シャム「確かにそうだが可能性がある限り調べないとな。よし、とり合えず長老に会いに行こう」
だれが何のためにエルフの若者エンポリオの記憶を消したのか。
村長に会えば何か情報を得られるかもしれない。
エリカ「教えてくれてありがとうございます」
ステファノ「どうかエンポリオを助けてください! 彼は僕の大切な親友なんです!」
アリサ「にゃんにゃん~、任せておいてにゃ~! 私たちが助けてあげるからねええええ」
イヴ「ちょっとちょっと、アリサちゃん、安請合いはダメよ。記憶喪失を治すことなんてできないと思うわ」
ステファノ「それもそうですね、お医者さんでもないのに無理なことを言ってすみませんでした」
イヴ「いいのよ。大切なお話を聞かせてくれてありがとう。エンポリオさんの記憶を戻すのは難しいと思うけど、できることがあればお手伝いするわね」
ステファノ「どうもありがとうございます! じゃあ皆さんの食事が終わったら、僕が長老の家に案内します!」
シャムたちは酒場で食事をとった後、長老の家へと向かった。
⚔⚔⚔
長老は白眉で白髭をたくわえた好々爺といった風貌をしている。
記憶を消されてしまったエンポリオのことを、シャムたちに詳しく語ってくれた。
長老「とまあ、そう言うことなんじゃ。医者も原因がさっぱり分からんと言うし、祈祷師も念力ではどうにもならんとさじを投げてしまってのぅ。困ったものじゃ」
マリア「それはお気の毒に……。ちなみにエンポリオさんはおいくつなのですか?」
長老「そうじゃな。18才になったばかりの若者なのじゃ」
シャム「それならおいらと同い年だ」
マリア「村長さんは記憶喪失の原因が呪いによるものだとおっしゃるのですね?」
長老「う~ん、絶対とは言えんが、医者も症状からみておそらく病気ではないと言うんじゃ」
ウチャギーナ「どんな症状ですか?」
長老「時々記憶がよみがりそうになるらしいのじゃが、そんな時に限って息が詰まりそうになるらしい。あの症状は呪術の仕業だとわしは睨んどるのじゃ」
キュー「にゅう、もし呪術だとしたらそれを解く方法はあるの?」
長老「残念じゃがわしには分からんのじゃ。はるか遠いマロンクリーム神殿のチル女神様なら呪術を解く方法を知っているらしいが、遠すぎて行くこともできぬ」
少し懐かしい名前がシャムたちの耳に飛び込んできた。
ただし旅の始まりの頃に出会ったので、シャム、イヴ、アリサ以外はチル女神を知らない。
キュー「マロンクリーム神殿? チル女神?」
チルチル「私の名前に似てるでピョン♪」
アリサ「にゃんにゃん~、チルさんならアリサ知ってるおおおお」
イヴ「旅が始まった頃にお会いした女神様だわ。すごく魅力的な人よ」
長老「ほほう。チル女神様を知っておられるのか? それは奇遇じゃ。すまぬがチル女神様に会って治療方法を聞いて来てくれぬか? 私が行けば良いのじゃが、見てのとおりの老いぼれで旅に出るのが無理なのじゃ」
シャム「分かったよ、長老。おいらたちがチル女神に会って呪いの解き方を聞いてくるよ」
長老「おお、おお、行ってくれるか!? それはありがたいことじゃ。一度行ったことがあるなら、この村の外れにある『旅の樹木』から飛ぶと早く行けるじゃろうて」
マリア「シャムさん、チル女神様に会いに行く前に、エンポリオさんに会ってみてはどうでしょうか?」
シャム「おいらもそう思ってたところだ。早速エンポリオに会いに行こう」
シャムたちは早速エンポリオの家に向かった。
エンポリオは両親と3人で暮らしているという。
シャムたちが両親に事情を説明すると、突然エンポリオの母親が泣き崩れ「息子を助けてやって欲しい」と、シャムたちにすがってきた。
両親と会話中もエンポリオはずっとベッドに横たわったままだ。
時折高熱が出て、立っているのも困難になるという。
シャム「エンポリオ、おいらはシャムという者だ。1つ教えてくれないか」
エンポリオ「な、何を……?」
シャム「美しい姫が塔の中に連れ去られるのを見たらしいが本当か?」
エンポリオ「ううっ……それは……思い出せない……」
シャム「姫の顔を覚えているか?」
エンポリオ「ううう……思い出そうとすると頭が割れように痛いんだ……うううっ……」
ウチャギーナ「シャム、それ以上聞くのは酷だよ、やめたほうがいいわ」
シャム「う~ん、そうだな。ちょっと厳しいなあ」
ウチャギーナ「おばさん、ごめんなさいね」
エンポリオの母親「いいんですよ。でも、何とかこの子の記憶を戻してやりたくて……」
母親はそうささやくと再び涙ぐんだ。
シャム「おじさん、おばさん、エンポリオさんの記憶をきっと元に戻してみせるから、おいらたちを信じて待っててほしい」
エンポリオの両親「お待ちしています。どうか息子のことをよろしくお願いします」
⛰⛰⛰
エンポリオの両親に一旦別れを告げたシャムたちは、村の外れにある『旅の樹木』から一気にマロンクリーム神殿へと移動することにした。
移動は瞬時に行われる。簡単に言えば『旅の樹木』という時空のエレベーターに乗って、短時間で空間移動できる代物なのだ。
『旅の樹木』は各地に存在するが、一度行った場所に戻る場合にのみ使用が可能となっている。
使用方法は簡単。『旅の樹木』の中央のカゴに乗って行き先ボタンを押すだけ。年齢、性別、種族問わず使用できるが、使用できるのは地上人と天界人に限られており、魔界人は使用ができないことになっている。乗ろうとすると弾かれる仕組みになっている。なぜなら『旅の樹木』は神が造りし時空の乗り物であるからだ。
⛰⛰⛰
チル「ようこそ、勇者シャムと仲間の者たちよ。な~んて硬い挨拶は抜きにして、ほんと、久しぶりだわ、皆さん。あら、顔ぶれがかなり変わったわね」
シャム「チル女神様、ご機嫌うるわしゅうございます。なんておいらも肩の凝る挨拶はやめにして、チル女神、ちょっと教えてくれないかな~?」
イヴ「ちょっとなれなれしすぎじゃないの?」
チル「まぁ、いいじゃないの、イヴさん。相変わらずおきれいだこと」
イヴ「まあ……(ポッ……)チル様に誉められて光栄ですわ」
チル「それにアリサちゃんも元気そうで何よりね。耳が一段と立派になったような」
アリサ「にゃう~ん、チルさま~、お久しぶりです~、ゴロゴロゴロおおおお」
チル「で、今回はどんな用なの?」
チル女神の問いに対して、マリアが一歩前に進み出て答えた。
マリア「はじめまして。私、聖女マリアと申します。以後お見知りおきを」
チル「まあ、聖女マリアさんって、もしかしてペルセ神殿を守ってらっしゃるあのマリアさん?」
マリア「はい、おっしゃるとおりペルセ神殿の守護をおおせつかっております。しかし今はシャムさんたちとともに旅をすることに決めましたので、神殿はガーゴイルに任せております」
チル「そうなんですか。でもマリアさんが加わるとあなたたちも心強いわね」
シャム「うん、心強いし楽しみも色々と増えて……ニタッ」
マリア「……?」
チル「勇者シャムに何やら淫靡な気配が……。まあ、その話は一旦置いといて、ご用とは?」
マリア「はい、実は」
マリアはエンポリオが記憶喪失になった経緯を説明した。
チル「ふむ……」
シャム「どうかな? 治りそう?」
チル「その症状は病気ではなく、おそらく呪いによる記憶喪失だと思うわ」
マリア「やはりそうですか」
チル「かなりの能力を持った魔導師かそれとも幻術師の仕業だわ」
キュー「魔導師は知ってるけど幻術師って初めて聞いた!」
チル「これを治すには成人女性3人の協力が必要です」
ウチャギーナ「成人女性3人の協力? といいますと?」
チル「言うなればチンヒールの逆バージョンでしょうか。嫌だわ、ポッ……説明をしようとするだけで顔が熱っぽくなってきたわ」
シャム「どれどれ?」
衣装の上からではあるがチル女神の乳房に触れるシャム。
チル「な、何をする!? 顔が熱っぽいと言っているのに、どうして胸を触るの?」
シャム「胸が熱くなったと聞こえたもので」
チル女神がシャムの耳たぶを掴んで大声で叫んだ。
チル「良い耳をしてるのね! これなら聞こえて~~~~~!?」
シャム「うわっ! 耳元で大声を出すのはやめろ!」
2人のどうでもよい会話を聞き流し、イヴが涼しい表情でチル女神に尋ねた。
イヴ「つまり、チル様がおっしゃりたいことは、治療方法はあるけれど、いささか妖しげな方法だということですね?」
チル「早い話がそういうことになるわね」
イヴ「もう少し具体的に教えてもらえませんか?」
チルはコホンとひとつ咳ばらいをすると、呪いによる記憶喪失を治療する方法を語り始めた。
チル「術の名前は『満月九射の術(まんげつきゅうしゃのじゅつ)』といいます。術とはいっても一種の儀式のようなものなの。『満月九射の術』は満月の夜に執り行わなければなりません。少しでも月が欠けると効果がないので気をつけてね」
チルチル「あっ! 明日がちょうど満月の夜だピョン♫」
ウチャギーナ「よいタイミングだね」
チル「先ず成人の女性3人を選んでください。3人の順番を決め、1人ずつ記憶喪失の男性の部屋に行きます。男性の部屋に行った女性はその男性と愛し合わなければなりません」
キュー「にゅう、素敵だわ~。今すぐ私も成人になりたい~」
エリカ「もう、キューちゃんったら、冗談じゃないわ……」
チル「男性と愛し合った女性はその男性を必ず3回イカせてあげること。そして後の2人の女性も同様に3回ずつイカせてあげてください。つまり3人が各3回なので、記憶喪失の男性は合計9回イクことになるわけです」
静かに話を聞いていたシャムだったが、俄然、目の色を変えてチルに迫った。
シャム「おお、おお、おお~! 何と言うラッキーな役目だ~! その役目をおいらがやりたい~~~!」
チル「なんと、でもあなたがやっても意味がないではないか」
シャルル「何なら俺が変わってやってもいいぞ」
アリサ「にゃう~ん、じゃあ、シャムの欲求はアリサが受け止めてあげるうううう」
エリカがアリサをじろりと睨み首を横に振った。
アリサ「もしかして、私、拙いこと言ったああああ……?」
キュー「たぶん」
ウチャギーナ「おそらく」
チルチル「言ったと思うでピョン♫」
エリカが合計9回の行為に難色を示す。
エリカ「つまり満月の夜に成人女性3人が順番に男性と交わるだけでなく、1人3回ずつ男性を射精させなくてはならないわけですね。う~ん、これはかなり難関ですね」
チル「そうそう、1つ言い忘れてたわ。合計9回イカせなければならないのだけど、体位は9つとも決して同一のものであってはならないの」
イヴ「なんですって!? つまり9つの体位を選ばなければならないと言うことですか?」
チル「そうなの」
シャム「いよいよ、おいらの出番だな~」
イヴ「まだ言ってるの? 今回シャムは指を咥えて見物してて」
ところで『満月九射の術』に加わる3人の女性とははたして誰なのか。
女性たちにとっては最も気になる点といえる。
エリカ「私たちの中で成人女性3人は、イヴさん、マリアさん、そして私ということになりますね。覚悟を決めないといけませんね」
イヴ「愛してもいない男性と愛し合うのは辛いけど、これも使命だと思ってがんばるわ」
マリア「『愛なき性』は神様に背く行為ですが、これも神様の思し召しと考えることにします」
3人の女性は神妙な面持ちになっている。
シャム「まあ、みんな~。気軽に行こうぜ、気軽にな~!」
イヴ「相変わらずノリが軽い……」
エリカ「いずれにしても満月の夜にエンポリオ宅を訪れる顔ぶれが決まりましたね」
マリアが不安そうな表情でつぶやく。
マリア「ところで……」
イヴ「なにか?」
マリア「男の人をイカせる……っていったいどうすればいいのでしょうか?」
思わずずっこけるイヴ。
イヴ「もしかしたらマリアさんはまだ処女なの?」
マリア「はい、言いにくいのですが、実はまだ……」
エリカ「シャムさん、どうもあなたの出番のようですね。今夜マリアさんを特訓してあげてください」
シャム「お安いご用だよ~~~! 任せて~~~!」
イヴ「ったく仕方がないね、シャムったら。調子いいんだから」
キュー「もしかして生まれつきのエロボーイ?」
アリサ「エロエロおおおお」
ペペ「あのぉ、僕も童貞なのでこの機会についでに……」
イヴ「そのうち彼女ができるよ、ペペやさしいから」
ペペ「そうですか、ありがとうございます!」
エリカが男性の“性”に関して疑問があるようだ。
エリカ「ところで一晩で9回もイクことができるものでしょうか?」
シャム「うん、おいらなら10回は軽くイケるよ~」
エリカ「シャムさんは例外だと思いますが」
イヴ「そうね、シャムの精力は怪物クラスだわ。だって果てた直後にもう元気になってるんだもの」
アリサ「イヴしゃん? シャムといつそんなに沢山エッチをしたのかなああああ?」
イヴ「え~っ? あはは……いや、私はチンヒールしかしてないよ~。これはあくまで想像だからね~」
アリサ「な~んだ~、想像だったのか~。アリサだって一晩で3回しかしてないから、イヴさんもっと沢山したのかと思ったああああ」
イヴ「一晩3回……? いつの話?」
アリサ「あ、しまったああああ!」
イヴ「もう、アリサちゃんったら! いいなさいよ~!」
逃げるアリサを追いかけるイヴ。いつもながらにアリサの逃げ足が速い。
チル「おほほ、にぎやかね」
エリカ「チル様、うるさくして申し訳ありません。大事なお話の途中なのに」
チル「おほほ、いいのよ。元気な証拠だわ」
マリア「ところで、チル様。おっしゃられたとおりに実行すれば、その男性の記憶は蘇るのでしょうか?」
チル「必ず蘇りますよ。病気が原因だと回復は望めないけど、呪いが原因なら間違いなく蘇るわ」
チルチル「やった~~~! 呪いが解けるピョン♫」
チル「とても可愛い子ね。あなた名前は何ていうの?」
チルチル「チルチルというピョン♫」
チル「私と似た名前なのね」
チルチル「女神様と似た名前ですごく光栄でピョン♫」
チル「私も嬉しいわ。この先、苦難の道が続くと思うけど勇者シャムとともにがんばるのよ」
チルチル「は~い、がんばりでピョン♫」
チル「名前が似ているのも何かの縁だわ。チルチルちゃんにこれを差し上げるわ」
チルチル「えっ!?」
チル「これはサファイアです。サファイアのメッセージは慈愛です。身に着けることで心が鎮まり、真実が見抜ける直観力を与えてくれるのです。チルチルちゃん、あなたに幸運が訪れますように」
チルチル「わ~い! 嬉しいなあ~! チル女神様、ありがとうございます~~~! この指輪、大切にするでピョン~~~♫」
チルチルは『サファイアの指輪』をゲットした!
チルチルの知力が10アップした!
キュー「いいな~。チルチルちゃんが羨ましいな~」
チル「うふ、ご心配なく。あなた方にもプレゼントがあるのよ」
キュー「にゅう! 私たちにもあるのですか? 名前は全然似てませんが」
チル「いいのよ。これをどうぞ」
チルがキューと仲間たちに渡したものは『トルマリンの指輪』だった。
キュー「嬉しいです! ありがとうございます~!」
シャム、キュー、エリカ、チルチル、シャルル、ウチャギーナ、ペペ、マリアの知力が5上がった!
神殿内で追いかけっこをしているイヴとアリサも同様に知力が5上がった!
アリサ「にゃお? 何か頭が晴れ渡ったような気が……? もしかして頭が良くなったのかなああああ?」
イヴ「まさか。アリサちゃんが頭良くなるなんてあり得ないわ~」
アリサ「イヴしゃん! それどういう意味にゃ? プンニャンプンニャン!」
イヴ「気にしてはダメダメ~。あれ? そういえば私も頭がスカっとしたような……?」
トルマリンの指輪の効果にいまだ気づかないアリサとイヴであった。
チル「では皆さん、健闘を祈ってるわね~!」
マリア「チル女神様、大変お世話になりました」
エリカ「また来ますね」
チルチル「女神さま~! バイバイでピョン♪」
シャム「女神、じゃあな~」
キュー「さようなら~」
シャルル「これからもよろしくな~!」
ペペ「では失礼します」
⛰⛰⛰
シャムたちは女神チルに別れを告げると、再び『旅の樹木』を利用しつつ、エンポリオの住むエルフ村へと再び向かった。
次の目的地に向かう時、いつもならシャムが仲間を率いて元気よく先頭を進むのに、今日はどうも足取りが重い。
なにげに元気がないようにも見える。
気がかりに感じたイヴが声をかけてみた。
イヴ「シャム、どうしたの? 元気がないみたいだけど」
シャム「おいらは元気だぞ」
イヴ「それならいいんだけど、何かしょんぼりしているように見えたの」
シャム「なあ、イヴ。まじであのエンポリオとするのか?」
イヴ「え~? もしかしたら気にしてくれてるの? 今回の件は本音をいうと複雑なのよ。誰だって好きでもない男性としたくないじゃないの。でもね、呪いを解くためにするんだから仕方がないわ」
シャム「気軽に引き受けてしまったおいらのせいだよな、すまないイヴ」
イヴ「気にしなくでいいよ。それはそうとシャム?」
シャム「なに?」
イヴ「もしかして妬いてくれているの?」
シャム「バ、バカ言え! なんでおいらがヤキモチを妬くんだ~!」
イヴ「なんだ。妬いてないの? それなら心置きなくエンポリオ君を可愛がって来るわ」
シャム「おまえ、以前より意地悪になったな。べ、別に可愛がらなくてもいいじゃないか。普通でいいんだ、普通で。儀式なんだから」
イヴ「まあ、むきになって。やっぱり妬いてる~」
シャム「うううっ、うるさいっ! おいらはまじで怒ったぞ~!」
イヴ「きゃ~~~! 犯される~~~!」
シャム「人聞きの悪い! 誰がおまえなんかを犯してやるものか! 尻をペンペンしてやる~~~! 待て~~~!」
逃げるイヴをシャムが追い掛けていく。
マリア「イヴさんってよく追いかけっこをよくする人ですか? 先程はアリサさんと今回はシャムさんと」
エリカ「最近チンヒールの機会が少ないので、おそらく元気があり余っているのだと思います」
マリア「まあ……。ところで、呪いを解く施術のことですが、エリカさんも施術者の1人ですよね?」
エリカ「はい、そうです」
マリア「エリカさんは平気なのですか?」
エリカ「正直にいうと気が進みません。しかし大切なお役目なので仕方がありません」
マリア「ここだけの話ですが、実は私は男性との経験がないのです」
エリカ「だったら今回のお役目は大変ですね……」
マリア「初めての時はかなり痛いのですか?」
マリアは真剣な眼差しでエリカにたずねた。
エリカ「ほとんどの女性は初めての時痛いものです。でも今夜シャムさんといっしょに準備運動をしておけばだいじょうぶですよ」
マリア「そうします。ああ、緊張しますわ……」
エリカ「おほほ、マリアさんって本当に純真な方ですね」
エルフの村の外れにある『旅の樹木』を出ると再びエンポリオの家を訪れた。
両親に記憶喪失の治療法について説明したところ、初めのうちは淫猥で奇々怪々な治療法に難色を示したが、シャムたちの熱心な説得の結果、ようやく両親は心を開いた。
母親「すべてをあなたたちにお任せします。息子の病気を治してやって……うううっ……」
母親は泣きくずれてしまい後は言葉にならなかったが、すべてをシャムたちに託すのであった。
シャム「おばさん、エンポリオの病気はおいらたちがきっと治してやるからな」
母親「ううう……ありがとうございます……。このままでは不憫で……。どうかエンポリオを助けてやってください。おっしゃっておられる治療方法だと私たち両親がそばにいたらやりにくいと思います。夫と話し合ったのですが、私たちは明後日の朝まで親戚の家に身を潜めています。そうすれば心置きなく治療に専念していただけると思うのです」
父親「お願いです。どうかエンポリオの呪いを解いてやってください。私たちが留守中、ご自分の家だと思って自由にお過ごしください。食料もたっぷりと蓄えがありますのでご自由に調理しお好きなだけ召し上がってください」
シャム「それでは遠慮なくいただきま~す! しっかりと栄養をつけてがんばらないといけないから」
キュー「にゅう? 今回はシャムが主人公じゃないからね~」
シャム「そうだったな。でもおいらだって今夜マリアにしっかりと講習する役目があるからね~。むふふふふふ」
イヴ「なに、そのスケベー笑いは」
マリア「……」
照れて顔を手で隠すマリアの仕草が実に初々しい。
母親「では私たちはそろそろ消えます。エンポリオ治療のじゃまになってはいけないので」
父親「どうか、どうか、息子をよろしくお願いします」
シャムたちにエンポリオの治療を託し両親は立ち去った。
家に1人残されたエンポリオは2階から下りてこない。
おそらく塞ぎこんでいるのだろう。
エリカ「大きな責任を背負ってしまいましたね」
イヴ「まったくだわ。でも後戻りはできないわ」
マリア「私にできるのでしょうか……」
明夜ヒロインとなる3人の女性たちはそれぞれ複雑な心境を抱えている。
ウチャギーナ「みんなあんまり悩まないで。きっとうまく行くよ」
エリカ「ありがとう。ウチャギーナさん」
アリサ「にゃお~、何なら私が替わったげようかああああ?」
キュー「なんと! 大胆な発言!」
イヴ「ダメダメ~、アリサちゃんはまだ10代じゃないの~。対象は20才以上なんだから」
アリサ「にゃは~、そうだったか。忘れてたああああ」
チルチル「ワクワク~」
キュー「どうしてチルチルちゃんがワクワクしてるの?」
チルチル「だって男の子1人に対して、美女3人が入れ替わり立ち替わりあんなことやこんなことをするのよね? そりゃあ女の子なら誰でも興味あるでピョン♫」
ウチャギーナ「チルチルちゃんは思春期なんだもの。興味を持って当然だわ」
エリカ「かく言うウチャギーナさんはまだ処女じゃなかったですか?」
ウチャギーナ「え? いえ、あのぉ、そのぉ……」
ウチャギーナはしどろもどろになっている。
イヴ「ウチャギーナちゃん、まだ男性経験がなかったんだ~」
ウチャギーナ「そんな大きな声で言わなくても……」
イヴ「じゃあ今夜、マリアさんといっしょにシャムの講習を受ければ?」
ウチャギーナ「ええ~~~! そんなぁ……」
ウチャギーナもマリアと同様に頬を真っ赤に染めている。
聞き耳を立てていたシャルルが手を挙げた。
シャルル「みんな、俺のことを忘れていないか? 男はシャムだけじゃないんだぞ」
イヴ「でもシャムがするのは聖なるチンヒール。シャルルがしたいのは煩悩のセックス。似ているけど全然違うのよ」
シャルル「俺には同じに見えるけどなあ。なあ、ペペ、おまえもそう思うだろう?」
ペペ「いいえ、思いません。チンヒールはあくまで神聖な行為だと思うのです」
シャム「ペペ、おまえはいいやつだな~!」
シャルル「なんか納得いかないなあ……」
シャム「合コンしたらおまえを1番に指名してやるからな」
シャルル「今の時代にそんなもんあるか~!」
シャルルの不満は残ったが利発なペペの合意が得られて、俄然元気になったシャムが高々と腕を上げた。
シャム「よ~し! では今夜はまとめて2人にチンヒールを見舞うぞ~!」
マリア「もしかして2人いっしょですか?」
ウチャギーナ「できれば別々の方がいいんだけど」
シャム「いっしょじゃ嫌なのか? チンヒールができるんだったら、2人まとめてでも、別々でも、おいらは構わないけど」
イヴ「まったく節操のない男」
シャム「何か言ったか?」
イヴ「別に」
シャム「よし! んじゃ早速始めるぞ~~~!」
キュー「シャム、先に夕飯にしようよ。2人を相手に奮闘するんだから、体力つけなきゃ途中でバテるよ」
イヴ「2人ぐらいでバテる勇者じゃないけど、まずは食べてからだよね。私も腕を振るってご馳走を作るとしようかな~」
シャム「それじゃ先ずは腹ごしらえと行くか。イヴとキュー、美味いものを頼むぞ~」
エリカ「じゃあ私も手伝いますね」
アリサ「何を作るのおおおお?」
チルチル「私も調理を覚えたいでピョン♪」
ウチャギーナ「皆さん~、ビーフシチューはいかが? ネイロばあちゃんに教えてもらった方法で作ってみたいの」
シャム「ビーフシチュー食べたい!」
シャルル「期待してるぜ」
イヴ「じゃあ、決まりね! ウチャギーナちゃんの作り方を説明してくれない? 皆で手分けして作ろうよ~」
アリサ「料理の苦手な私はシャムとトランプでもしてようかにゃああああ?」
イヴ「エッチ以外なら何をしてもいいわよん」
アリサ「にゃふん! フンガアアアア!」
シャム「同じ言うならギャフンだろう?」
イヴ「いいのよ、アリサちゃんは半猫族だからそれで合っているの」
ネイロ流ビーフシチューの作り方をウチャギーナが説明し、それぞれが分業することになった。
ブイヨンから手づくりしたビーフシチューはまさにご馳走の極み。じっくりと煮出した牛のエキスと野菜の甘味が口内でとろける肉と合わされば絶品の味に仕上がる。
本来は2日かけて作るのが理想だがシャムたちにそんな時間はない。
それでも数時間かけてこしらえたので、夕食が予定よりも少し遅くなった。
エンポリオを囲み和やかなディナータイムが訪れた。
⛰⛰⛰
夕食後、マリアとウチャギーナは先に風呂に入り初夜に備えた。
続いてシャムが入浴している間、イヴたちは居間で寛ぐ。
キュー「ねえ、アリサちゃん?」
アリサ「なあに? キューちゃんんんん」
キュー「私たちは今日も明日も予定がないから退屈だね」
アリサ「指を咥えて見てるだけだと、欲求不満になっちゃいそおおおお」
イヴ「じゃあ女の子とレズれば?」
キュー「にゅう! なんてことを言うの~! イヴさん!」
アリサ「フ~、ガリガリガリ~! エッチは好きだけど私は男子以外には興味がないの~! イヴさんも男子が好きだよねええええ?」
イヴ「男子が好きというのと、それはちょっと違うような。それはそうと明晩の儀式は、私やっぱり気乗りしないなあ……」
キュー「もし私がイヴさんの立場だったらきっと同じ心境だと思う。知らない男子とエッチしなきゃいけないってやっぱり嫌だなあ」
⛰⛰⛰
エンポリオの家は2階建てで、1階には広い居間と3つの部屋がある。
2階には部屋が2室あり、うち1室をエンポリオが使用している。
風呂から上がったマリアは緊張しているのかいささか表情が硬い。それに比べてウチャギーナは普段とさほど変わらない様子だ。
緊張するマリアに対し、終始ジョークを飛ばしながらマリアの気持ちを解そうとするウチャギーナの心遣いが嬉しい。
2人は寝衣に着替えシャムがいる1階の端の部屋に向かった。
一方、シャム、マリア、ウチャギーナ以外は1階の居間でひとときを過ごしている。
イヴとエリカは明夜行なう『満月九射の術』に備えて作戦を練っており、キュー、チルチル、アリサ、シャルル、ペペはポーカーに興じている。
ゲーム中ではあってもシャムたちのことが気になるのか、ときおりシャムの部屋のほうにちらっと視線を走らせている。
アリサ「シャムたちが気になるよ。ちょっと覗いてこようかなああああ?」
ペペ「アリサさん、ダメですよ! 覗くのは絶対にだめですよ!」
アリサ「やっぱ、ダメかああああ?」
チルチル「私もさっきから気になって仕方がないんだけど、覗くのはやっぱりよくないと思うでピョン♫」
仲間から窘められしぶしぶ周囲の注意に従うアリサ。
アリサ「できた! 💜のフラッシュうううう!」
シャルル「なんだよ、シャムたちを気にしている割にはアリサ強いじゃないか」
キュー「ね~ね~、少し覗くだけならいいんじゃない?」
ペペ「キューさんまでそんなことを言って!」
キュー「だって今までみんなの見ている前で、シャムは何回もチンヒールをしてきたよ~。それと同じじゃないの」
ペペ「確かにそれは理屈ですね。童貞の僕にはチンヒールを拝見することは刺激が強すぎるのですが、戦いの直後でもありやむを得ず何度も見せられました……」
チルチル「それとこれとは違うよ。こっそりに覗くのってやっぱり良くないと思うでピョン♫」
それでもしつこく食い下がるアリサ。
アリサ「そんな硬いこと言わなくても。ね~ちょっとだけだからああああ」
覗く、覗かないで議論は伯仲し、配られたカードが6枚になっていることにも気づいていない。