ファンタジー官能小説『セクスカリバー』

Shyrock 作



<第18章「島の女」目次>

第18章「島の女」 第1話
第18章「島の女」 第2話
第18章「島の女」 第3話
第18章「島の女」 第4話
第18章「島の女」 第5話
第18章「島の女」 第6話
第18章「島の女」 第7話
第18章「島の女」 第8話
第18章「島の女」 第9話
第18章「島の女」 第10話
第18章「島の女」 第11話




<メンバーの現在の体力>

シャム 勇者 HP 470/470 MP 0/0
イヴ 神官 HP 410/410 MP 390/390
アリサ 猫耳 HP 410/410 MP 0/0
キュー ワルキューレ HP450/450 MP200/200
エリカ ウンディーネ女王 HP 330/330 MP 440/440
シシ・フリューゲル 女海賊 HP 450/450 MP 0/0
チルチル 街少女 HP 260/260 MP 0/0
シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 500/500 MP 0/0
ペペ 魔導師 HP 360/360 MP 450/450

⚔⚔⚔

第18章「島の女」 第1話

 春まだ遠く、甲板に吹く風が冷たい。
 シャムたちの乗る船はジャノバ港を出帆したあと、船長シシの指揮のもとペルセ島へと向かっていた。
 当初島に行く目的は宿敵メデュサオールが忌み嫌う『鏡の盾』を手に入れることにあった。
 ところが消息を絶っているユマ姫がペルセ島のどこかに囚われているという驚くべき情報が飛び込んできた。
『鏡の盾』発見は重要だが、ユマ姫の救出はそれ以上に重大事といえる。
 シャムたちは当然ながら『鏡の盾』探索よりもユマ姫救出を優先することにした。
 
 ペルセ島にはつい最近までパープルシェイドが築いた砦があったが、奴隷たちが解放されてからは廃墟と化している。
 果たしてペルセ島には砦以外にどのような街や村があるのだろうか。
 島での滞在が長引いた場合、食料や薬類の調達が必要となってくる。
 拠点とすべき場所の確保は不可欠なのだ。
 また、島のどこかに魔女が住んでいるという噂があるが、信憑性が薄く真偽のほどが分からない。
 小さな島とはいっても島の隅々まで歩いて捜索することは厳しいが、町や村で情報を得ることができるかもしれない。、

シャム「それにしてもジャノバ国の参謀職を断るとはびっくりしたな~。どうして引き受けなかったんだ?」
シャルル「俺は参謀なんて柄じゃないさ。窮屈なお城勤めなんて性に合わないしな。シャムたちと魔物退治の旅をつづけるか、魚を獲ってる方がずっと俺らしいからなあ」
シャム「いいだろう。じゃあ最後の敵を倒すまで、おいらたちに付き合ってくれるか!?」
シャルル「望むところだ! この世の最果てまで付き合うぜ! あの世は遠慮しておくけどな!」
シャム「ははははは~、おいらも行きたくないよ!」
シャルル「わっはっはっはっは~! あっ、そうそう、おまえに言い忘れてた! 城を出るとき新国王から沢山褒美をもらったので船底に入れておいたからな」
シャム「おいらたちは褒美をもらうようなことを何もしていないぞ。ニセ国王レッドシェイドと死力を尽くして戦ったシャルル、キュー、ペペの3人で分ければよい」
シャルル「そんなわけにはいかん。新国王は地道に諜報活動をしたシャムたちの功績を高く評価されている。だからおまえと仲間たちが受け取るべきだ」
シャム「そうか、じゃあもらっておくよ~! 新国王ありがとう~!」

 シャムたちは『鉄のよろい』を2つ手に入れた! シャム、シャルルが『鉄のよろい』を装備した!
 シャムたちは『鉄の盾』を2つ手に入れた! シャム、キューが『鉄の盾』を装備した!
 シャムたちは『銀の胸当て』を2つ手に入れた! イヴ、シシが『銀の胸当て』を装備した!
 シャムたちは『フリルブラウス』を1着手に入れた! チルチルが『フリルブラウス』を装備した!
 シャムたちは『薬草』を50本手に入れた! 
 シャムたちは『法力草』を30本手に入れた! 
 シャムたちは『緑キノコ』を10本手に入れた! 
 シャムたちは『青キノコ』を10本手に入れた!

シシ「街で買いそびれた物もあるから助かるね。新国王は気が利く~! チュッ💋」

 シシが海に向かってキスの仕草を見せた。

シャルル「新国王がここにいたら涙を流して喜んでいただろうな~」
イヴ「シシさんは以前この海峡で活躍していたので、島のことが詳しいのではないの?」
シシ「ペルセ島には例の砦以外だと北側に確か小さな村があったと思う。でももしかしたらすでに魔物たちに滅ぼされているかも知れないわ」
シャム「どんな村か知っているか?」
シシ「行ったことはないんだけど、島の奥深くに密林があってひっそりと村があるらしいの。その村にはどういうわけか女性だけしか住んでいないんだって。私が海賊をしていた頃、手下の男たちが行きたいと言っていたけど私が止めたの。だっていくら悪を憎む正義感の強い男ばかりだといっても、こと女性に関しては何をしでかすか分からないもの。シャムだってそうじゃないの?」
シャム「なんだって? おいらはムラムラしても村の女には手を出さないぞ~」
キュー「にゅう、シシさん、シャムのことをまだ分かっていないようだね。 シャムは確かに人一倍エロくて、エッチで、スケベーな男だけど、その辺の分別はしっかりしているよ」
シャム「えっへん、よしよし。キューはなかなかおいらのことをよく理解しているじゃないか~」

 シャムたちの会話が耳に飛び込んできてアリサが目を丸くしている。

アリサ「ねえねえ、イヴさん、あのね、女だけの村があるんだってええええ」
イヴ「へえ? それってエリカさんのウンディーネ城のことじゃないの?」
アリサ「それが違うようなの。今から行くペルセ島にあるらしいのおおおお」
イヴ「ふむ、そうなんだ。私はどちらかというと男ばかりの方がいいけどなあ」
チルチル「でも不思議だピョン♫」
イヴ「何が不思議なの? チルチルちゃん」
チルチル「だって子供を作るためには男と女両方が必要だよね?」
アリサ「チルチルちゃん、よく知ってるねええええ。そうだよ! 子供を作るためにはねええええ~」
イヴ「お~っと! そこまで!」

 突然イヴはアリサの口を手を塞いでしまった。

アリサ「ふんが~ふんが~! な、何をするのおおおお! イヴさん、苦しいよおおおお!」
イヴ「あのね! チルチルちゃんはまだ15才なのよ! そんなことを教えるのは早過ぎるのよ!」
チルチル「あのぅ……♫」



第18章「島の女」 第2話

 チルチルが何か言いたそうにしている。

イヴ「チルチルちゃん、どうしたの?」
チルチル「子供を作るには……」
イヴ「ドキッ……!」
アリサ「にゃん?」

 15才の少女からこの種の話題が出ると、先輩女子たちは身構えるのが常。

チルチル「彼女が目を閉じている間に、彼氏にぶっといバナナを大切な場所に挿し込んでもらうと子供ができる、とママが言ってたでピョン♫」
イヴ「まあ、お母さんがそんなことを?」
アリサ「そういえばアレってバナナに似てるかもおおおお」
チルチル「……もしかして間違ってるの? イヴさんやアリサさんやシシさんがシャムにチンヒールをかけられているのを以前見たけど、あれは治療だよね?」
イヴ「そうだよ~、あれは治療だよ~」
アリサ「決して子供を作るためじゃないからねええええ」
チルチル「ん……?♫」

シシ「イヴさん、ちょっとこっちに来て」
イヴ「どうしたの?」
エリカ「チルチルちゃんに間違ったことを教えたらダメじゃないの」
イヴ「そのうち折を見てちゃんと話すから」

 おしゃべりが弾むイヴたちをよそに、ペペは1人甲板の手摺りにもたれて遠い水平線を見つめている。

エリカ「ペペさん、どうしたのですか? 何か思いに耽っているようですが?」
ペペ「あっ、エリカさん。僕も白魔法が使える職業を選ぶべきでした……」
エリカ「どうしてですか? あなたの黒魔法はすごい威力じゃないですか」
ペペ「黒魔法は人を傷つける魔法、白魔法は人を助ける魔法ですよね。先日、城内での戦闘でシャルルさんや多くの兵士たちが傷ついたとき、僕は1人も救うことができなかった……。自分も瀕死状態だったので偉そうなことは言えませんが、なぜか情けなくて……」
エリカ「ペペさんって心のやさしい人ですね。物は考えようです。敵を攻撃し被害を与えることが結果的に味方を救うことになるのですよ」
ペペ「確かにエリカさんのいうとおりですね。そのためには魔法に磨きをかけもっともっと強くならないといけませんね」
エリカ「私もまだまだ未熟者です。お互いにがんばりましょう」
ペペ「エリカさんが未熟だなんてとんでもないです。白魔法も黒魔法も使えるし杖技にも優れているし、羨ましい限りです」
エリカ「そんなに褒めても何も出ませんよ」
ペペ「そのうち時間があるとき、水の魔法を教えてください」
エリカ「いつでもお教えしますよ。ところでペペさんはどうして魔導師になったのですか?」
ペペ「平和なこの世界に魔物が徘徊し人々に危害を加え始めたからです。僕が住んでいた村も魔物に襲われ大きな被害が出ました。魔物を倒すにも元々僕は身体が華奢なので戦士には向かないと考え、魔導師の道を目指したのが切っ掛けです」
エリカ「人には向き不向きがありますからね。自分に合った職種を選ぶのが大切だと思います」

⚔⚔⚔

 まもなく船はペルセ島南端の港に到着した。
 砦が閉鎖されたため港は閑散としているが、今でも漁師や商用など港としての機能はどうにか果たしている。
 小さな港なら島内にいくつか存在するが、いずれも水深が浅く大型の帆船には不向きといえた。

 シャムたちは船から下りるとまずは腹ごしらえをするため食堂を探すことにした。
 ところが砦が閉鎖したせいか、わずかにあった店舗のほとんどが閉めており、早くも寂れた気配が漂っている。
 そんな中、たった1軒だけ開いている食堂があったのでそこで空腹を満たすことができた。

シシ「おやじさん、この島で一番賑わっている街ってどこなの?」
食堂の店主「この島に街なんてないよ」
シシ「じゃあ、村は?」
食堂の店主「村ならあるぞ。一番賑わっている村はアマゾネス村だな。北北東にあるけど、かなり遠いよ」
シシ「アマゾネス村以外で情報が聞けるような場所ってないの?」
食堂の店主「情報ねえ……それならネイロの洞窟に行ってみたらどうだろう? すごく物知りの魔女が住んでいるらしいから」
シシ「らしいっておやじさんはその魔女に会ったことがないの?」
食堂の店主「そりゃないよ。行く用事もないし、それに魔女ってなんかおっかないじゃないか」
シシ「うんうん、分かる分かる。で、ネイロの洞窟はどちらの方角なの?」
食堂の店主「だいたいだけど真北に進めば着くよ、こちらも近くはないよ」
シシ「おやじさん、色々教えてくれてありがとう! また食べに来るからね~!」
食堂の店主「また来てね~、待ってるよ~!」

 シャムたちは島で一番賑わっているアマゾネス村に行くことになった。
 とはいっても砦から先はシャムたちにとって未踏の地だ。
 シャムたちはペルセ島の地図と食堂店主の情報を頼りに北北東に向かって歩き始めた。



第18章「島の女」 第3話

 シャムたちは林の中を進んだ。
 方角は北北東だ。
 食堂店主の情報が正しければ数時間歩くとアマゾネス村に到着するはずだ。
 帆船用の磁石ロードストーンはあるが重いので持ち歩くことができない。
 陸地の場合、影を利用すれば簡単に方角が分かる。
 背の高い物体の影を見つけ、影の頂点の部分に印をつける。
 10分ほどして影が動いたら、また影の頂点の部分に印をつける。
 印と印を結んだ方向が『東西』だ。

 方角を信じてひたすら歩き続けるが、歩けど歩けど周囲は樹々ばかりで風景がまったく変わり映えしない。
 それでも退屈しないのは時折出没するザコ魔物スライムのせいかもしれない。
 魔物とはよく出会うが、人間とはまだ一度も遭遇していない。
 本当にこの島に人間が住んでいるのかと、少し不安になってくる。
 もしかしたらすでに人間は滅ぼされてしまったのだろうか。

キュー「にゅう、人間とは全然会わないね」
シシ「出会うのは魔物ばかりだよ。しかもザコばかり」
シャム「ケガをした者はいるか? チンヒールの希望者はいるか?」

 反応はまったくない。
 シャムの発した声は林の中に吸い込まれていった。

イヴ「シャム、残念だね。チンヒールの手当てがいるようなケガは誰もしていないよ。だって敵が弱すぎるんだもの」
エリカ「私のような者でも杖だけで倒せますわ。これだけ弱い敵だとあまり経験値が稼げないですね」
ペペ「新米なのに生意気をいいますが、私はちょっと違う見方をおります」
イヴ「というと?」
ペペ「敵が弱いのではなく、皆さんの力がアップしたからだと思います。と言いますのも、確かに敵は雑魚キャラのスライムばかりですが、この島のスライムはランドスライムが多いようなんです。ランドスライムはジャノバ周辺にいるやつより体力があるんです」
エリカ「へ~、ペペさんは魔物に詳しいですね」
ペペ「はい、学生の頃、魔物研究会に入っておりましたので」
シャム「ほぇ? そんな会があるんカイ?」
イヴ「キューちゃん、寒くない……?」
キュー「はい、暖房がほしいです……」

 その時、林の奥から空気を切り裂くような女性の悲鳴が唐突に上がった。

アリサ「あっ! 悲鳴が聞こえるうううう!」
シャム「とにかく行ってみよう~!」

 シャムたちは声のする方向に向かって駆け出した。
 悲鳴は聞こえるが姿が見えない。

シシ「どっち!?」
チルチル「向こうだピョン!」
シャム「よし、行くぞ!」

 確実に声の正体に近づいているはずなのだが、生い茂った樹々が死角になって目標が見えてこない。
 大木を通り過ぎると遮るものがなくなり一気に眺望が開けた。

 そこには驚愕の光景が広がっていた。
 胸当てとふんどし状の下穿きだけの衣装をまとった若い女が、2倍以上もある魔物2匹に前後から襲われているではないか。
 魔物は褐色の肌をしており、額には1本の角と背中にはコウモリのような羽根が生えている。
 女は勇敢にも槍を振り回して応戦しているが、かなり苦戦を強いられているようだ。

 シャムは剣を抜くと魔物たちに真っ向から立ち向かっていった。

シャム「おりゃ~~~!」

 突如現われたシャムたちに驚きを見せる魔物たちであったが、すぐさま攻撃の矛先を女からシャムに切替えた。
「グオォォ!」と雄叫びをあげる2匹の魔物たち。
 シャムの突き込んだ剣を奇妙な形の斧でガッチリと受け止めた。
 容易な敵ではなさそうだ。

シャム「こいつら、意外と手強いぞ! みんな、気をつけろ!」

 雄叫びをあげながら反撃に転じる魔物たち。
 巨大な斧が振り下ろされる。

シャム「おおっと!」

 敵の斧を躱すシャム。

キュー「にゃっ! 今度は私が相手だよ~!」
シシ「女海賊の本領を見せてあげるわ~!」
アリサ「にゃんっ! ガリガリ引っ掻いてあげるうううう!」

 キューたち3人が果敢に躍り出た。

若い女「あなたたち、気をつけて! その魔物はすごくいやらしくて女子ばかりを襲うのよ!」

 魔物に挑もうとしたキューたちだったが、若い女の喚起の一言で怯んでしまった。
 たとえ相手が強敵であっても怖れることのない彼女たちだが、わいせつな攻撃を仕掛けてくる相手となると勝手が違う。
 若い女の言葉どおり、魔物の股間は恐怖を感じるほど大きく隆起していた。

キュー「うわっ! シシさん、アリサちゃん、あれを見て! あの魔物たち、私たちを見てすごく興奮してるみたいだよ!」
アリサ「きゃあ~! エロいいいい!」
シシ「うへっ、あんなデカイものをブラブラさせられるとどうも戦いにくいわ……」

 キューたちは魔物の巨大なイチブツを見て唖然としている。

シャム「う~ん、デカイな~、おいら負けそうだなあ……」

イヴ「何を呑気なこと言ってるのよ! アレの比較をしている場合じゃないわ! 早くやっつけなきゃ! 行くわよ~! と~っ!」
チルチル「あっ! イヴさん、無理はいけないでピョン♫」

 魔物は舌なめずりをしている。
 もう1匹の魔物に至っては手ぐすねを引いて待ち構えている様子だ。
 魔物はイヴの突き出す剣を、いとも簡単に斧で払いのけた。
 反撃に転じてくるかと思っていたら、意外なことに斧を地面に突き刺し、イヴの胴体をガッチリとつかんでしまった。

イヴ「うわ~~~っ! 放してっ!」



第18章「島の女」 第4話

 3メートルを優に超える巨体が高々とイヴを持ち上げる。
 蛇のような長い舌を出すとイヴの股間をペロリと舐めた。
 ぐりぐりとクロッチ部分を食い込ませて、その刺激にイヴの腰がもぞもぞと動く。
 ジュルジュルと音を立てながら、その蜜を舐めとる魔物の舌。

イヴ「きゃあ~! 気持ち悪い!」

 ぐっしょりと染み込んだクロッチを魔物はこそぐように舐めチューチューと蜜分を吸いとる。

シャム「やめろ! イヴにエッチなことをするな! イヴにエッチなことをできるのはおいらだけだ!」
イヴ「そんなこと言ってないで早く助けてよ~!」
シシ「敵は斧を地面に突き刺したわ! シャム、今がチャンスよ!」
シャム「行くぞ! とりゃ~~~!」

 魔物目掛けて切りかかるシャムであったが、もう一匹の魔物が前方を遮った。
 斧でシャムの剣をしっかりと防御する。

シャム「ううっ、なんという馬鹿力だ!」

「ガオ~ッ!」とうなり声とともに、魔物はやすやすとシャムを跳ね返してしまった。

 シャムにつづいてシャルル、キュー、そしてシシが突入する。
 さらに漆黒の爪を光らせアリサが襲いかかった。
 同時に三方から攻撃を受けた魔物は逃げ場を失い、その隙を狙ってシャムの剣が宙を舞った。
 叫び声をあげもがき苦しむ魔物だが、まだ致命傷には至っていないようだ。

ペペ「では私の魔法の力で! 神よ!」

 ペペは呪文を唱える。
 発せられたブリザードの魔法が魔物を包み込んだ。
 叫喚を発するとまもなく魔物の身体が硬く凍りついてしまった。
 地響きをあげて大地に倒れ込む魔物。
 1匹は倒すことができた。

イヴ「いやあ~~~! そんな大きな物を入れないで~! 裂けちゃうわ~!」

 もう1匹の魔物がイヴのショーツを引き裂き、猛り狂ったイチブツを宛がっている。
 まるで馬並みの巨大なイチブツで貫かれたら一大事だ。
 先ほどの若い女が槍で挑みかかる。

若い女「私のせいで助けてくれた人がやられるなんて絶対にあってはならない! この魔物め~~~っ!」

 しかし力の差は歴然で、魔物は難なく槍を払い除けてしまった。

アリサ「イヴさんがやられちゃう~! 魔物を倒さなければああああ!」
エリカ「あの魔物にはペペさんのブリザードが一番効くようです! ペペさん、早くブリザードをお願いします!」
ペペ「いいえ、無理です! 今、あの魔物にブリザードを浴びせると、いっしょにイヴさんも凍りついてしまいます!」
シャム「むむっ! もう一度おいらが! とりゃあ~~~~~!」

 ところが魔物は再びシャムの剣をがっちり受け止めてしまった。
 その直後、魔物の怒り狂ったイチブツの先端がついにイヴを貫いてしまった。

イヴ「ぎゃあ~~~! いたいっ~~~!!」

 まさにそのとき、チルチルがポーチから笛を出し突然吹き始めた。

 ピロロンピロロン、という美しい音色が林を包みこむ。
 するとどうしたことだろう、魔物が突然苦しみ始めたではないか。

魔物「ウガァッ……ウガガッ……!」

 戦闘の最中に笛を吹く……兵士を鼓舞するため打楽器を使用する場合はあるが 笛の使用はあまり聞かない。
 ところがチルチルの笛には何か不思議な力が宿っているようである。
 笛の音色にもがき苦しむ魔物のただならぬ姿を見て、シャムたちはチルチルの笛の力を改めて知るのであった。
 まもなく魔物は枯れた大木のように地響きを立てて倒れてしまった。

シャム「……!?」
キュー「にゃっ、いったいどうなったの? 今、誰も攻撃をしていなかったのに……」
アリサ「チルチルちゃんの笛だよ! きっとそうだよ! すごおおおお!」

 あまりにも呆気ない幕切れに、チルチル以外の全員がまるでキツネにつままれたように唖然としている。

エリカ「チルチルさん、すごいですね。やりましたね!」
シャルル「チルチルの笛にはどんな魔力が秘められているのだろうか……」

 危機一髪のところで救われたイヴと若い女のところにシャムたちが駆け寄る。

シャム「だいじょうぶか?」
イヴ「大丈夫よ……でもアソコが裂けるのではないかと怖ろしかったわ……」
若い女「ありがとう……だいじょうぶだよ」

 2人とも『鯖折り』を決められたせいで、まだ背中に痛みが残っているのだろう。
 先程まで伏していたが、ようやく起き上がろうとしている。

キュー「チルチルちゃんの笛はすごい威力だね。そんなパワーがあるのを以前から知ってたの?」
チルチル「実はよく知らなかったの。困ったときにこの笛を吹きなさい、ってお母さんから言われてて……」
ペペ「たぶんチルチルさんの横笛は『魔笛』と呼ばれている代物なのでしょう。魔笛は羽根が生えた生物に効果的だと聞いたことがあります」
エリカ「へえ、そうなのですか。ペペさんは物知りですね」

 ようやくダメージから回復したのか若い女が救出の礼を言ってきた。
 戦闘中は気が付かなかったが、じっくりと見ると彫が深く野性味に溢れた美人である。
 鍛え上げられた筋肉美と褐色肌は見事なものといえるだろう。

若い女「あたしの名前はモニカ。みんな、助けてくれてありがとう。もう少しで死ぬところだったよ」
シャム「間に合って良かったな~。怪我はないか? なんならおいらがチンヒールを掛けてやるぞ」
モニカ「チンヒールってなに?」



第18章「島の女」 第5話

 臥せていたイヴが少し不機嫌そうにしている。

イヴ「あのぅ、シャム~? 私も怪我をしているんだけど~」
シャム「あっ、そうだったな。じゃあ2人まとめて治そうか。どちらが先でもいいぞ」
エリカ「じゃあこうしましょう。シャムさんはイヴさんにチンヒールを掛けてあげてください。私はモニカさんにヒールをかけますわ」

 エリカがヒールの呪文を唱える。
 怪我が軽かったこともあってモニカの傷はたちまち回復した。
 イヴを抱え上げ木陰に運んでいくシャム。
 皆の前でのチンヒールをイヴが拒んだのだろう。

モニカ「あの人たちはどこに行ったの?」
エリカ「ごほん、たぶん、用を足しに行ったのかと……。それはそうと、モニカさんは地元の方ですか?」
モニカ「あたしは島の奥地に住むアマゾネスなの」
エリカ「まあ、アマゾネスなのですか?」
チルチル「アマゾネスってどういう意味?♫」
エリカ「女性だけの部族のことをいいます。ギリシャ神話の勇猛な女戦士からなる民族が始まりと言われています」
チルチル「へ~、そうなんだ♫ 一度行ってみたいな~♫」
エリカ「モニカさん、実は私も女ばかりで暮らしているウンディーネ族なのですよ」
モニカ「ウンディーネ族のことは聞いたことがあるけど、会うのは初めてだよ~。へえ~」

 モニカはしげしげとエリカを眺めた。
 あまり見られるので照れくさくなってエリカはもじもじしている。
 モニカはエリカの親しみやすい人柄に心が和んだのか次第に打ち解けていく。

 エリカとモニカの会話を聞いていたシシがアリサにささやいた。

シシ「アリサちゃん、それにしてもあの2人はどちらも女族なんだけど、タイプが正反対だね」
アリサ「うん、全然違うね。おしとやかで大人っぽいエリカさんも魅力的だけど、あの野性的なモニカさんも格好いいねええええ」
シシ「アリサちゃんは人を観る目があるね」
アリサ「いいえ、シシおねーさまほどでは」
シシ「あははははは~」

 モニカが助けてもらったお礼に、何か恩返しをしたいと言っている。

モニカ「あたしにできることなら何でも言ってね」
エリカ「恩返しなんか要りませんわ。偶然通りかかって襲われていたから皆で応援しただけです」
モニカ「それは困るの。あたしの部族では、人から助けてもらったら必ずその人のためお返しすることが決まりなの」
エリカ「そうなのですか。では何をお願いしましょうかね……。シャムさん! あっ……今シャムさんは取り込み中でしたね。おほほほほ……」

 そのときシシがパンと小気味よく手を叩いた。

シシ「島のことを詳しく尋ねてみてはどうかな?」
エリカ「それはいいですね。シャムは今取り込み中なので、私たちで聞いてみましょう」
キュー「賛成!」
チルチル「島のことをもっと知りたいな~♫」
シシ「じゃあ決まりだね」

 シシやエリカたちの会話を聞いていたモニカが首を横に振った。

モニカ「島のことは何でも教えてあげるけど、それでは恩返しにはならないよ。もっと実のあることをしないと私の気が済まないの」
エリカ「弱りましたね。私たちの今一番知りたいことは島のことなんですよ」
モニカ「ではこうしようか? 島のことは今何でも聞いて。で、恩返しはあなたたちがこの島にいる間に必ずさせてほしいの」
シシ「うん、分かった、そうするわ」
モニカ「じゃあ島のことで、知りたいことは何かな?」
エリカ「今一番知りたいのはムーンサルト城のお姫様のことなんです。噂ではこの島のどこかに囚われているらしいのですが、何か知りませんか?」
モニカ「その噂なら聞いたことがあるよ。でも詳しいことは知らない」
シシ「詳しい人は誰かいないの?」
モニカ「そうね……あっ、そうだ。ネイロの魔女に聞けば何か分かるかも知れないよ、島一番の物知りと言われているから」
アリサ「にゃうん、そのネイロの魔女ってどこにいるのおおおお?」
モニカ「小猫? 可愛い小猫ちゃんを飼っているんだね」
アリサ「ふ~! 私、猫じゃないもん! ネコミミなのおおおお! プンニャンプンニャン!」
シシ「この子はね、猫でも人間でもなくて、半猫族なの」
モニカ「半猫族って聞いたことがあるよ。見るのは初めてだな~」

 珍しい物を見るような顔で、アリサをじろじろと眺めるモニカ。

アリサ「もう! そんなにジロジロと見ないでよおおおお」
モニカ「あ、ごめん、ごめん」

 モニカはアリサに謝ると、すぐさまネイロの魔女が住むという洞窟を、アリサが差し出した地図で説明を始めた。
 モニカの話によると、ここからずっと北に行ったところの洞窟に住んでいるという。アマゾネスの村よりも少し手前にあるらしい。
 しかしかなりの偏屈者で人付き合いが悪く、滅多に他人と会いたがらないという。
 はたして会って話を聞くことができるのだろうか。

シシ「それ以外のことを教えてくれる? この島にはアマゾネスの村と洞窟の魔女以外に誰か住んでいるの? 砦は例外として」
モニカ「他にも住んでいるわ。でも人間はアマゾネスと魔女だけかも。人間以外ではペルセ山の麓にサイクロプスと言う魔人が住んでいる村があるの。魔人と言っても彼らは大人しいし悪いことはしないよ」
エリカ「ふ~ん、第1関門のサイクロプスって1匹じゃなくて村があるのですね」
モニカ「サイクロプスを知ってるの?」
エリカ「ええ、知っています。でも会ったことは一度もないです」
シシ「サイクロプスの村以外にも集落はあるの?」
モニカ「そうね、集落と呼べるのはエルフの村ぐらいかな。でもね最近……」
エリカ「最近……?」



第18章「島の女」 第6話

モニカ「最近この島に外部から変なやつがやってきて何やら騒々しくなって来たの」
エリカ「変なやつって、もしかしたら私たちのことですか?」
モニカ「違う違う。ペペロンチーネとかいう男が傭兵を引き連れて、この島を調べているみたいなの」
チルチル「えっ!? ペペロンチーネって確かジャノバにポスターを貼ってユマ姫を探していたやつで、ジュリアーノが言うにはすごくエロくて悪いやつらしいよ!」
シシ「ふ~ん、そのパスタみたいな名前の男はすでにこの島に来ているということだね? これは気をつけなくては」
モニカ「へ~、あなたたちって詳しいんだね」
エリカ「訳あって色々と情報を集めているんです」
モニカ「そうなんだ。でも訳は聞かないようにするよ」

 キューが会話に加わってきた。

キュー「1つだけ教えて?」
モニカ「何が知りたいの?」
キュー「にゅう、ペルセ山に登頂するには、サイクロプスがいる第1関門を通らないといけないらしいね」
モニカ「そうよ。サイクロプスを倒すか、通行証の『ペルセのエンブレム』を見せるかしなければ通れないの」
キュー「仮にそのどちらかで第1関門を通ったとして、2番目にはどんな関門が待っているの?」
モニカ「私は行ったことはないけど、村の長老の話では『底無し沼』があるらしいの。一度その沼に足を踏み入れたら最後、沼から絶対に抜け出せない……という恐ろしい沼なの」
キュー「じゃあ、誰もその沼を渡れないじゃないの?」
モニカ「そういうことになるね」
シシ「ということは、ペルセ山に登った者は今まで全くいないということになるね?」
モニカ「誰もいないと思う。あっ、ちょっと待って。昔、沼を渡った者が1人いたと聞いたことがあるの。でもどのようにして渡ったのかしら……」
キュー「へ~、不思議だね。水の上を歩くなんてできないしね」
モニカ「あなたたち、本気で行くつもりなの?」
エリカ「もちろん本気ですよ」
モニカ「それなら気をつけて行ってね」
シシ「ありがとう」

 話が一段落した頃、モニカがキューの衣装を見つめながら話しかけた。

モニカ「もしかしたらあなたはバルキリー?」
キュー「そうだよ。よく分かったね。私の国ではバルキリーではなくワルキューレというんだけどね。それが何か?」
モニカ「あたしたちの村にはバルキリーの伝説が残っているの」
キュー「へ~、どんなお話?」
モニカ「大昔、あたしたちの村が他民族に攻められて窮地に陥っていたとき、突然バルキリーが現われて村を救ってくれたの」
キュー「にゃっ、そうなんだ。そんな話を聞くと心が温かくなるなあ」
モニカ「同じ女族同士助け合おうとしたのかもしれないね」
アリサ「にゃんにゃん、猫耳の女子が救ったという伝説はないのおおおお?」
モニカ「それは聞いたことがないね」
アリサ(ショボン……)

 女性たちの会話が弾んでいる頃、ペペがある一定方向にじっと視線を凝らしていた。
 見入るその姿はまるで凍てついてしまった人形のようであった。
 視線の先には樹々の隙間から時折見える男女のなまめかしい光景があった。
 シャムがイヴにチンヒールをかけている場面を目撃してしまったのだ。
 ペペは魔法学校の優等生であったが、いまだかつて恋愛経験がなく、女性との肉体経験を持ったことも皆無であった。
 当然他人のそのような場面を見たこともなく、その光景はあまりにも刺激的なものであった。

シャム「うっ、イヴ、すごくいいぞ~」
イヴ「あぁん、久しぶりのチンヒール、すごく気持ちいいよ~」

 ごくりと唾液を飲みこむペペ。
 そんなペペの姿を見つけたアリサが彼の背後に忍び足で接近していた。
 エリカたち女性陣は、アリサが何をしでかさないか気が気ではなく、ハラハラしながら彼女の行動を見守っている。
 さすがにアリサは猫耳族とあって足音を立てることなく、ペペの真後ろに回り込んでいる。
 そして両手でペペの両眼を覆ってしまった。
 突然目を塞がれ驚きで心臓が止まりそうになったのはペペだった。

アリサ「にゃん」
ペペ「うわっ~!」
アリサ「チンヒール見てたのおおおお?」
ペペ「もう~~~っ! 驚かさないでくださいよ!」
アリサ「ごめんごめん!」

 ペペの怒りは収まらない。

ペペ「このイタズラ猫が~!」
アリサ「きゃああああ~~~!」

 ペペに追いかけられてアリサは逃げ惑う。
 ただし本気で逃げているわけではない。
 もし真剣に追いかけっこをしたら、足の速さで魔導師のペペが猫耳アリサに敵うわけがないだろう。
 アリサの足の速さは仲間で随一なのだから。
 そんなことなど知らないペペは懸命に追いかけている。

 騒々しいアリサとペペに気がとられたのは、チンヒールを終えたばかりのシャムとイヴであった。
 着衣を直しながら小言を言った。

シャム「お~い、おまえたち、うるさいぞ~!」
イヴ「アリサちゃんはペペくんと追いかけっこを楽しんでいるみたいね」

ペペ「待て~! 逃げるな~!」
アリサ「そんなに怒らないでよ~、ちょっと驚かしただけなんだからああああ」

 まもなくシャムたちはモニカと別れ、魔女ネイロが住む洞窟へと向かうことにした。
 
 立ち去り際、シャムたちは毒消し草5本と500Gを見つけた!



第18章「島の女」 第7話

 はたして魔女ネイロはどんな人物であろうか。
 無事会えたなら新たな情報を得ることができるのだろうか。
 期待と不安が交錯する複雑な気持ちでシャムたちは鬱蒼とした森林地帯を進みいく。
 海辺のを迂回する方が道は穏やかだがかなり遠回りになる。
 少々険しくとも最短で行く経路を選んだ。
 丘を越えまもなく傾斜のきつい上り坂に差し掛かった。
 島の北側にあるという魔女の洞窟はどこにあるのだろうか。
 持参していたペルセ島の白地図に、モニカが印してくれたポイントを頼りにただ進むだけだ。

 深い森の中にある岩山を登っていく。
 聞こえてくるのは鳥の囀りと木の葉のざわめきだけだ。
 道らしき道が消え獣道を歩く。
 シャムたちに不安が襲う。

シャム「う~ん……この道で合ってるのかなあ……」
シシ「ほとんど人が行き来しないので獣道になってしまってるんだね……こっちの方角でいいと思うよ」

 少し進むと、切り立った岩肌が見え隠れしてきた。
 シャムたちは小高い場所に立って周辺を見回した。
 だが洞窟らしきものはまだ見つからない。
 表示看板でも出ていれば助かるが、まさか魔女が看板を掲げたりはしないだろう。

チルチル「あっ! あれはなんだろう?♫」

 突然チルチルが声を発した。

シャム「どこ?」
キュー「にゃっ、どれどれ?」

 チルチルが指す方向にじっと目を凝らすシャムたち。
 すると岩壁に高さ2メートルくらいの洞窟がぽっかりと口を開けているではないか。
 洞窟の右側には恐ろしく背の高い巨樹がそそり立っている。
 巨樹の根は土から現れて血管のように遠くまでうねりひろがっている。
 シャムたちは巨樹のあまりの大きさに呆然と見入っている。

イヴ「すごく大きな木だねえ。うん? 何あれ……?」

 巨樹をよく見ると人間の背丈ほどの高さに、緑色の光輝いているボタンを見つけた。

チルチル「わあ、きれい~♫ 何だろう~?」

 チルチルが巨樹のそばに行きボタンに触れようとしたが、シシがそれを制した。

シシ「チルチルちゃん、触らないで!」
チルチル「えっ……!? うん、分かった♫」

 シシの声に驚いたチルチルは慌てて手を引っ込める。

シシ「罠かもしれないから、気をつけようね」
チルチル「は~い、シシおねえさま~♫」
シシ「おねえさまなんて呼ばれたことがないから、くすぐったいよ。アハハハ」
ペペ「シシさんのいうとおり触れないほうが安全だと思いますよ」
シャム「ボタンを押したら魔界にズルズル!っと引きずりこまれるかも知れないぞ~。そして悪魔が出てきて食われるかも~」
チルチル「きゃあ~~~! シャム、そんな恐いことを言わないでピョン!」
シシ「ボタンのことは後から調べるとして、そろそろ洞窟に入ってみない?」
イヴ「そうね。早く魔女さんの顔が見たいね」
アリサ「どんな人かなああああ?」
キュー「にゃっ、興味津々だわ~」

 シャムを先頭に洞窟の中へと入っていく。
 灯りは洞窟の壁に設置されている松明だけなのでかなり薄暗い。
 天井や壁にはかなり苔が生していて、ところどころに蜘蛛の巣が張っている。
 本当に奥に魔女が住んでいるのだろうか。
 天井はそこそこの高さがあるが、横幅がかなり狭い。
 そのため隊列は一列で進まざるを得ない。
 通常ならば剣技に勝るシャムが先頭で進むところだが、暗い場所だと猫目のアリサが適している。
 アリサを先頭に、シャム、シシ、イヴ、エリカ、ペペ、チルチルと続き、しんがりはキューが務めた。
 もしも後方から攻撃を受けても、防御力の高いキューが守っていれば安心できる。
 おそらく魔物は出ないだろうが念には念を入れておきたい。

 暗くて湿った空気が不気味さを漂わせてはいるが、幸いにも敵の気配がまったく感じられなかった。
 もしかしたら強力な魔法のバリアを張り巡らし魔物たちから身を守っているのかもしれない。
 洞窟は曲りくねり、わずかだが登り勾配になっていた。

 まもなく煌々と照らす灯りが洞窟の先から漏れて来た。
 魔女の棲家はもうすぐなのかもしれない。
 シャムたちに緊張が走った。

 やがて一行が集合できるほどの広場が現われた。
 正面には年季の入った木の扉があり、扉の左右には松明が灯っている。
 扉の中央には古びたドアノッカーがある。
 ドアノッカーを使って待つことしばし。
 静寂の洞窟内にノック音がこだまする。

ネイロ「誰じゃ」
シャム「おいらは旅人のシャムという者だ。色々教えて欲しくてここにやって来た。入ってもいいか?」
ネイロ「ジャムか? パンにはバターのほうが良いのう」
シャム「ジャムじゃなくて、おいらは、シ・ャ・ム!」
ネイロ「ん……? ほう、シャムか? わしは最近耳が遠くてのう」
シャム「中に入って良いか?」
ネイロ「いいとも。遠慮はいらぬぞ」
シャム「別に遠慮はしてないんだけど」
ネイロ「あぁ、そうか。何か不愛想な男じゃのう。まあ、良いわ、とにかく中に入れ」

 シャムは扉を開けようとした。
 ところが……



第18章「島の女」 第8話

シャム「ありゃ?」
キュー「にゃ、どうしたの?」
シャム「ない……」
キュー「ない……って? いや~ん、シャムのエッチ~。そりゃあ私は女だからアレはないに決まってるじゃないの~」
シャム「はぁ?」
キュー「ん……? 違った?」
シャム「あのぉ、『ない』と言ったのは、扉の取っ手のことなんだけど……」
キュー「ははは……そういうことか……それならそうと早く言ってよ~。私はてっきりアレのことかと思ったよ。ねえ、エリカさんもそう思ったよね~?」
エリカ「いいえ、全然思わなかったです」

 エリカから否定されて取り付く島がなくなったキューは笑ってごまかすしかなかった。

イヴ「それにしても扉は押しても開かないし、取っ手のない扉ってどうして開けたらいいの? あの~、魔女さ~ん。扉はどうして開けたらいいのでしょうか~?」
ネイロ「おお、開けてやるのを忘れておった。ちょっと待っておれ」
イヴ「あのぉ、こちらから開けられないのですか?」
ネイロ「無理じゃ」
イヴ「……?」

 鈍い音を立てながら扉がゆっくりと開く。
 扉は開いたが、扉を開けてくれた人の姿が見当たらない。
 シャムたちは奇妙な現象をいぶかしげに感じながらそっと入っていく。
 部屋の中はローソクの灯りだけがゆらゆらと灯るだで薄暗い。
 正面に古びた机があり、1人の老婆が猫脚椅子に座っている。

ネイロ「何も怖れることはないぞ。わしは妖怪でも魔物でもない」
シャム「ゴホン、怖れてなんかいないぞ」
ネイロ「扉が勝手に開いたので驚いたじゃろう? 扉はわしの念力で開いたのじゃ」
イヴ「なんと……念力で開いたと!?」
ネイロ「不思議か? わしにとっては日常のことじゃ」
アリサ「魔女ってすごいんだねええええ!」
ネイロ「なれなれしい猫耳じゃのぅ」
シャム「あんたがネイロか?」
ネイロ「無礼者め、おまえは猫耳よりもさらになれなれしいの! 人に名前を尋ねるときはみずから名乗るものじゃ」
シャム「そうだったな、すまない。おいらはシャムでここにいるのはおいらの仲間たちだ」
ネイロ「わしがネイロじゃ」

 近づいてよく見てみると、ネイロはとても奇異な風貌をしている。
 鼻は極端な鷲鼻で、奥目だが眼光鋭く人を射すくめるような迫力がある。
 黒いとんがり帽子をかぶり、黒いローブに身を包んでいる。
 机の上には何やら怪しげな水晶玉が置いてある。

ネイロ「で、何を教えて欲しいのじゃ?」
シャム「ユマという名前の姫を探しているんだが、何か知らないか?」
ネイロ「おお、おお! ユマ姫か?」
シャム「知ってるのか!?」
ネイロ「いや、知らぬ」

 シャムは思い切りズッコケてしまった。

シャム「なんだ。知ってるのかと思ったよ」
ネイロ「ユマ姫とやらは知らぬが、どこにいるかは分かる」
シャム「なんだって!? 会ったこともないユマ姫の居場所が分かるというのか?」
ネイロ「そうじゃ」
シャム「では教えてくれ!」
ネイロ「いいじゃろう。じゃがタダでは教えてやらぬぞ」
シャム「ではいくら払えば教えてくれるんだ?」
ネイロ「金はいらん。わしは見てのとおり、俗世間から遠く離れてこの洞窟で暮らしておる。金を貰っても役には立たぬわ」
シャム「では何がいるのだ?」
ネイロ「リンゴが食べたい」
シャム「はにゃ……? リンゴ? ああ、そう言えば……」

 シャムとネイロの会話にチルチルが加わってきた。

チルチル「リンゴならあるでピョン♫」
ネイロ「おっ? 持っておるのか?」
チルチル「うん、確か布袋の中にあったと思う♫」

 チルチルが布袋の中を覗いてリンゴを探している。

チルチル「あった~!」
ネイロ「おおっ、持っておったか~」

 ところがチルチルがネイロに手渡そうとしたリンゴは、かなり日が経っていたためすでに腐っていた。

ネイロ「ん? そのリンゴは腐っておるではないか」
チルチル「本当だ、腐っているみたい……」
ネイロ「腐ったリンゴで情報を聞こうなどとは図々しにも程があるわ!」
キュー「まあまあまあ、おばあさん、怒らない怒らない~」

 眉間に皺を寄せて激怒するネイロをキューがなだめにかかる。

ネイロ「ん? 気安くわしをおばあさんと呼ぶな」
キュー「そんなこと言っても、おじいさんには見えないし……」
ネイロ「バカモノ! わしがおじいさんに見えるか? 名前を呼べというのじゃ。わしにはネイロという名前がある」
キュー「にゃ、そういうことか。ごめんなさい、ネイロさん」
ネイロ「それでよい」
キュー「ではリンゴを見つけてくるから待っててくれる?」
ネイロ「ん? わざわざリンゴを探しに行くのか? それはありがたいのう。わしは何よりもリンゴが大好物なのじゃ」
シャム「ほんじゃ、ちょっこら探してくるからなあ」
ネイロ「そうかそうか、楽しみじゃのう」
アリサ「だけど、この島のどこにリンゴの木があるのおおおお?」
エリカ「アリサちゃんのいうとおりですね。この島をやみくもに探しても見つかるかどうかは分かりません。ネイロさん、リンゴの木が生えている場所を教えてくれませんか?」
ネイロ「いいとも、教えてあげよう。じゃがおまえたちには無理かも知れぬぞ……」
シャム「無理ってどういうことだよ。リンゴの木があるならどこへでも行くぞ」
ネイロ「ふぁっふぁっふぁっ、なかなか頼もしい若者じゃのぅ」
イヴ「どうして無理だと決めつけるのですか?」
ネイロ「リンゴの木はペルセ山の頂上にしかないからじゃよ」





第18章「島の女」 第9話

シャム「それは奇遇だな~。おいらたちは今からペルセ山山頂に行くので、採ってきてやるよ」
ネイロ「なんと! おまえたち、気が触れたのではないか?」
シャム「正気だけど」
ネイロ「山頂に行くためには3つの関門を通らなければならん。最初の関門にはサイクロプスと言う恐ろしく手強い怪物が守っておるのじゃ。おまえたちが束になっても勝てぬと思うぞ」
シャム「おいらたちを甘く見てもらっては困るなあ。サイクロプスをやっつけることなんて朝飯前さ」
ネイロ「えらく自信を持っておるのう。おまえたちに1つ良いことを教えてやろう」
シャム「ん? 何を教えてくれるんだ?」
ネイロ「サイクロプスと戦わなくても通れる方法があるんじゃ。ただそれには『ペルセのエンブレム』と言う通行証が必要なのじゃ。通行証を怪物に見せると大人しく通してくれるからじゃよ。じゃが通行証を持たないおまえたちが通るためには、ヤツと戦わねばならぬ。おまえたちの腕前は知らぬが恐らく壮絶な戦いになるじゃろう。仮に勝てたとしても幾多の犠牲者が出るかもしれぬ。リンゴ1個のために命を掛けるべきかどうか……。命を粗末にするでないぞ」

 そう言いながら、ネイロはシャムたちに視線を送った。
 その目はシャムたちに「登頂はあきらめろ」と訴えているように思えた。

エリカ「『ペルセのエンブレム』は私が持ってます」
ネイロ「まさか!? 『ペルセのエンブレム』はウンディーネ城に保管されているはずじゃが」
エリカ「私がそのウンディーネの女王、エリカなのです」
ネイロ「ひょえ~~~! まさかウンディーネの女王様自らここに現れるとは、びっくりして腰が抜けそうじゃわい! これは何やら訳がありそうじゃな?」
エリカ「はい、どうしても『鏡の盾』を手に入れなければならなくなり、この島にまいりました」

 エリカはそこまで語ると口をつぐんでしまった。
 なぜなら魔女ネイロの正体がまだ明らかではない現時点で、軽々しくメドゥサオールの名前を出すのは控えるべきだと考えたのだ。
 しかしながら『鏡の盾』という一言だけで、のみこみの早いネイロはエリカたちの意図を直ぐに汲み取ってしまった。

ネイロ「ほほう、『鏡の盾』のう。あの盾の防御力は巷にある普通の盾とほとんど変わらないのに、どうしてそんなに血眼になって探しておるのじゃ? さては……」
エリカ「……」
ネイロ「ふぁっふぁっふぁ~、言わずとも良いわ。あの忌まわしき妖怪メデューサの娘を倒そうと思っとるな? 図星じゃろう?」
シャム「まいったな~。ネイロばあさんにそこまで言われると隠せないなあ。その通りだ。やつを倒す」

 ネイロはニッコリと笑った。

ネイロ「そうか、道理で……。つまりおまえと仲間たちが噂のメシアと言うことじゃな?」
シャム「えっ? 『イタ飯屋に居たメシヤ』ってか?」
ネイロ「愚か者!人が真面目に言っておるのにつまらんギャグを言うでない!」
シャム「すみません」

 アリサとキューがひそひそと囁き合う。

キュー「『召し上がれとメシアが礼』はいかが?」
アリサ「じゃあ、私も一発。『オウメ市で追うメシア』ってありかなああああ?」

ネイロ「シャムよ。わしは見てのとおり老いぼれじゃ」
シャム「うん、どう見てもそうだな~」
ネイロ「ふんっ、そんな時はのう、『決してそうは見えません』とか『いえいえ、まだまだお若いです』とか、お世辞の1つくらいは言うもんじゃ。全く気の利かん男じゃのう」
シャム「だっておばあちゃんはおばあちゃんだもん」
ネイロ「ふぁっふぁっふぁ~、何と、悲しいほどバカ正直な男じゃのう。そこがおまえの良いところなのかも知れんのう」
シャム「褒められてるのか」
ネイロ「その方が人間裏表がなくて安心じゃがのう。で、先ほどの話の続きじゃが、わしはもうこの歳なので大した力にはなってやれぬが、困ったことがあればいつでもここに来るがよい。何か知恵を貸してやれるかも知れぬからのう」
シャム「それはありがたいんだけど、ここは島の奥地で便利が悪い。しょっちゅう来るのは無理だな」
ネイロ「ふぁっふぁっふぁ~、『旅の樹木』を使えばよいではないか」
イヴ「『旅の樹木』ってもしかして、他の場所にワープできる木のこと?」
ネイロ「そうじゃ。一度行ったことがある場所なら、いつでも木から木へワープすることができる。便利じゃぞ?」
イヴ「もしかして洞窟の横にある大木のこと?」
ネイロ「そうじゃ」
アリサ「にゃんにゃん~! いいこと聞いたよおおおお!」
ネイロ「ただし、昼間限定なので注意するようにな」
チルチル「ふ~ん、夜はダメなんだあ♫」
ネイロ「もし強い敵に遭遇して瀕死の重傷を負っても『旅の樹木』に逃げ込めば助かるのじゃ。それに『旅の樹木』の中にいれば怪我が回復するのじゃよ。便利じゃろ? じゃがのう、残念じゃが『旅の樹木』は昼間しか開かないのじゃ。つまり夜間戦いになって苦戦しても朝まで耐えるしか道はないのじゃ」
シシ「なるほどね。ということは強敵と戦うときは昼間を選び、『旅の樹木』の近くにおびき寄せて戦うのが安全というわけね。でもそんなにうまくいくかしら」



第18章「島の女」 第10話

ネイロ「この島には洞窟横の大木だけにしかないが、『旅の樹木』は世界各地に点在するのじゃ。おまえたちが今まで気づかなかっただけじゃ」
キュー「港町ジャノバにもあるの?」
ネイロ「もちろんあるぞ。ジャノバであれば、港の丘に一際大きなユーカリが3本並んでおるがその真ん中がそうじゃ」
キュー「にゅう、そういえば確か大きなユーカリがあったわ」
シャム「知ってるのか?」
キュー「うん、子供の頃港の丘でよくかくれんぼをしたもの」
シャム「お医者さんごっこじゃないのか?」
キュー「にゃっ、シャムといっしょにしないでよ~」

 ネイロの話によると、『旅の樹木』はネイロの洞窟横とジャノバ以外に、トスカの森や北のオデッセイ大陸にも数多く存在するらしい。

シシ「ネイロおばあさん、ところで1つ目の関門を通っても、2つ目に底なし沼が待ち受けているというのは本当なの?」
ネイロ「本当じゃ」
シシ「橋はないの?」
ネイロ「ふぁっふぁっふぁっ、橋があるくらいなら関門とは呼ばぬわ」
チルチル「ネイロおばあちゃん、じゃあ沼をどのようにして渡ればいいの?」
ネイロ「それを教えて欲しければリンゴを持ってこい」
エリカ「でもそれって矛盾しているではありませんか? リンゴの木はペルセ山頂にしかなくて、それを取りに行くために底なし沼を越えなければならないのに、その方法を教えてくださらないなんて……」
ネイロ「薄情なようじゃが、何人であっても、わしに質問をするときはリンゴを持ってくるのがここの掟なのじゃ」
エリカ「そんなぁ……だけど先程『旅の樹木』のことを教えてくださったじゃないですか」
ネイロ「あれはおまけじゃ」
シャム「それならついでに、おまけで底なし沼の渡り方も教えてよ」
ネイロ「人を頼りにするな。その甘さがおまえたちの弱点じゃ」
シャム「今日初めて会ったばかりなのに、どうしておいらたちの弱点が分かるんだ?」
ネイロ「わしは千里眼を持っておるからのう、おまえたちの行動はすべて見えておる」
シャム「なんと……(チンヒールしている最中も見られているということか? ゾ~ッ……)」

 ネイロは微笑を浮かべながら水晶を覗きこんでいる。

ネイロ「人は自分で道を切り拓かなくてはならぬときがある。自分で道を切り拓くことで人は成長していく。おまえたちには希望と勇気そして知恵がある。自分の力を信じて前に進むのじゃ」

 シャムたちはネイロの詞を神妙な表情で聞いている。

ネイロ「分かったようじゃな」
シャム「ネイロばあちゃ~ん、お願いだから教えてよ~」

 ネイロは頭をかかえた。

ネイロ「まったくもう……困ったメシアじゃのう。じゃが甘えてもダメじゃ」
シャム「本当にダメ?」
ネイロ「ダメダメ、ダ~~~メ~~~!」

 何を思ったかイヴが唐突に自身の祖母のことを語り始めた。

イヴ「ネイロおばあちゃんを見ていると、今は亡き私のおばあちゃんを思い出すの」
ネイロ「そんなに似ておるのか?」
イヴ「まるで生き写しのようなの」
ネイロ「この世界には自分とそっくりな人間が3人いると言われておるからのう」
イヴ「へ~、そうなんだ。おばあちゃんの話をするとつい思い出してしまって、涙が……」

 何とイヴは瞼からポロポロと涙を流しているではないか。

シャム(すげえ演技……イヴって意外と役者だな~……)

ネイロ「おまえと話をしていると、まるで孫と話しているように思えてくる……困ったことがあればいつでも相談に乗ってやるからまた来るんだぞ」

 おそらくネイロはイヴと話をしていると、つい孫を彷彿とさせてイヴに大甘になってしまうのだろう。

イヴ「ネイロおばあちゃん……今リンゴはないけど、ちょっとだけ教えて欲しいな」
ネイロ「いいとも、なんじゃ?」

シャム(おお、ネイロばあさん、うまく乗ってきたじゃないか)

イヴ「底なし沼のあとに待ち構えている第3の関門ってどんな所なの?」
ネイロ「洞窟があるだけじゃ」
イヴ「洞窟を抜ければ山頂に辿り着くのね?」
ネイロ「そういうことになるのう」
ペペ「でも洞窟には強い魔物が棲んでいて僕たちの行く手を阻んだりするのではありませんか?」
ネイロ「ペルセ山は神の山なので魔物はいないのじゃ。第1の関門を守るサイクロプスにしても見掛けは魔物のように見えるが、彼らは善良な巨人なのじゃ」
シャム「第1の関門と第2の関門を越えたら、残るのは洞窟だけか。それなら楽勝じゃないか」
ネイロ「そこが甘いと言っておるのじゃ。洞窟は洞窟でもただの洞窟とはわけが違うわい」
アリサ「にゃんにゃん~、どんな洞窟なのおおおお?」
ネイロ「『迷いの洞窟』と呼ばれておる」
アリサ「『迷いの洞窟』? ということは通路が迷路のようになってるの?」
ネイロ「そのとおりじゃ。もしかしたら三日三晩歩き続けても出口が見つからぬかも知れぬ」
チルチル「ぞ~……そんなの嫌だよ。出られないと飢え死にしてしまうでピョン」
ネイロ「心配するでない、必ず出口はある。それを自分たちで見つけるのじゃ」
シャム「よし! 必ずその出口から脱出して、山頂まで辿り着き、『鏡の盾』とリンゴを持って帰るぞ~! ネイロばあさん、楽しみに待ってろよ~!」
ネイロ「おお、頼もしい言葉じゃ。期待しとるぞ」



第18章「島の女」 第11話

シャム「みんな、そろそろ行こうか? ネイロばあさん、腐ったリンゴしか持ってこなかったのに、色々と教えてくれてありがとう!」
ネイロ「今度来るときは腐っていないリンゴを頼むぞ。おお、そうじゃ、最後に一言。『迷いの洞窟』を何日で脱出できるか分からぬから、食料と薬草、それとキノコ類はサイクロプスの村でしっかりと買っておくようにな。良いな?」
エリカ「はい、分かりました。ご忠告をしっかりと守ります。色々とご親切にありがとうございました」
ネイロ「そうじゃ、おまえたちに『魔法の法衣』をやろう。これを着ると魔法によるダメージを20%軽減できる優れた代物じゃ。誰が着るかはおまえたちで決めろ」
シャム「ありがとう! ネイロばあさん!」

 エリカが『魔法の法衣』を手に入れた! エリカは『魔法の法衣』を装備した!

ネイロ「では気をつけてな」
イヴ「ネイロばあさんも元気でね~」
チルチル「リンゴ、待っててピョン♪」
キュー「にゅう、また色々と教えてね~」
シシ「じゃあ、さようなら~、ネイロおばあさん」
ペペ「色々とお世話になりました」
アリサ「にゃんにゃん~、ばいばい~~~!」
エリカ「魔法の法衣をありがとうございました! 期待に応えられるようがんばります!」
シャム「またな~、ネイロばあさん~!」

 シャムたちは魔女ネイロに別れを告げ棲家を後にした。
 松明に火を灯し再び暗い洞窟を進むシャムたち。
 行きがけとは異なり彼らの表情に緊張の表情は見られなかった。

シシ「ちょっと風変わりなばあさんだったねえ」
イヴ「そうね、でも孫を見守る祖母のような温かさを感じたわ」
キュー「イヴさん、涙を流す演技は迫力があったよ」
イヴ「演技じゃないわ。本当に亡くなった私のおばあちゃんに似ていたんだもの」
キュー「そうだったんだ……てっきり演技だと思っていたわ。私、ネイロおばあちゃんのような人って好きだなあ」
イヴ「本当の優しさって、厳しさを乗り越えた強さの中にあるのかもしれないね」

 洞窟を出るとあいにく雨であった。
 洞窟の隣にはネイロが教えてくれた『旅の樹木』が亭々とそびえている。

シャルル「早く『旅の樹木』を使ってみたいな~!」
シシ「船に乗らないで移動できるって便利だね」
イヴ「でも今はこの島で2つの大切な目的があるから、それが無事に済んでからね」
シャム「ユマ姫を救出し、鏡の盾を手に入れたら、『旅の樹木』を使って大陸に戻ってみるか!?」
アリサ「考えただけで胸がドキドキするねええええ」
ペペ「その日がやってくるのはもうすぐですね、きっと」
シャルル「結構降ってるなあ。大きなハスの葉があればいいんだけど」
エリカ「そんなに都合よくハスの葉なんてありませんよ」

 後の行程を考えた場合、食料や薬草を補充できる場所はサイクロプスの村が最終地点となる。
 サイクロプスの村までは2時間かかる。
 雨中の行軍は体力を消耗するので、小降りになるまで木陰で雨宿りをすることにした。

チルチル「サイクロプスってツノが1本あって一つ目だよね? おっかないでピョン♫」
エリカ「見た目は恐いかもしれませんが、ネイロおばあさんも言っていたように性格のよい巨人たちですよ」
シシ「サイクロプスってすごく大きいのよね?」
アリサ「オチン〇ンが大きいのおおおお?」
シシ「そうじゃなくて、身体だよ、3メートルはあるらしいの」
アリサ「身体が大きいのか。あはははは~」
シシ「でも3メートルもあったら、きっとアレも大きいと思うよ」
シャルル「おまえたち、昼間からエロい話が弾むな~」
エリカ「雨が小降りになってきましたよ。サイクロプスの村ってどんなお店があるのでしょうね」
ペペ「一通りは揃っているようですよ。法力草も沢山買っておかなければいけませんね」
キュー「山頂までの途中に薬草畑やキノコ畑があればいいんだけどね」
イヴ「世の中はそんなに甘くないわ。サイクロプスの村でしっかりと補充しておかなくては」

 まもなく雨も止み、たっぷりと休息をとったシャムたちはサイクロプスの村へと向かった。
 途中、スライムやスケルトン等のザコ敵は出現したが、誰一人として傷を負うこともなく行軍をつづけることができた。
 経験値稼ぎには有効な敵ではあったが、時間の浪費が少々辛かった。

 シャムたちがサイクロプスの村に到着する頃には西の空が茜色に染まっていた。

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アマゾネス・モニカ


魔女ネイロ・水晶玉











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