ファンタジー官能小説『セクスカリバー』

Shyrock 作



<第14章「自由への架け橋」目次>

第14章「自由への架け橋」 第1話
第14章「自由への架け橋」 第2話
第14章「自由への架け橋」 第3話
第14章「自由への架け橋」 第4話
第14章「自由への架け橋」 第5話
第14章「自由への架け橋」 第6話
第14章「自由への架け橋」 第7話
第14章「自由への架け橋」 第8話
第14章「自由への架け橋」 第9話
第14章「自由への架け橋」 第10話
第14章「自由への架け橋」 第11話




<メンバーの現在の体力>

シャム 勇者 HP 380/380 MP 0/0
イヴ 神官 HP 300/300 MP 300/300
アリサ 猫耳 HP 330/330 MP 0/0
モエモエ 魔導師 HP 250/250 MP 330/330
エリカ ウンディーネ女王 HP 250/250 MP 350/350
シシ・フリューゲル 女海賊 HP 360/360 MP 0/0
チルチル 街少女 HP 180/180 MP 0/0
シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 410/410 MP 0/0
スンダーラ ゴブリン族長 HP 340/340 MP 110/110

⚔⚔⚔

第14章「自由への架け橋」 第1話

決行時の役割分担……

シャルル……護送船の荷役主任
イヴ、エリカ、シシ……メイド
アリサ、モエモエ、チルチル……女奴隷(半裸)
シャム、ズンダーラ……奴隷監視役兵士
レジスタンス軍、海賊……厨房で待機

シャム「レジスタンス軍と海賊のみんなはこの厨房で待機しててくれ」
レジスタンス軍A「俺たちもパープルシェイド打倒に参加させてくれ。市民を苦しめた憎き敵をこの手で倒したいんだ」
海賊B「俺も連れて行ってくれ! 悪党は絶対に許さない!」
シャム「あんたたちの情熱は嬉しいけど、ここは少人数の方が目立たないのでおいらたちに任せておいてくれ。でももし苦戦した場合はぜひ援護してほしいんだ」
レジスタンス軍A「分かった、そういう作戦なら君たちに任せるよ。健闘を祈ってる!」
海賊B「そういうことなら仕方がないな。シャムに従うよ。だけど合図をしてくれたら俺たちもすぐに駆けつけるからな」
シャム「ありがとう。おいらたちがパープルシェイドと戦っている最中、異変を嗅ぎつけて敵兵がやってくっると思うんだ。そいつらをやっつけて欲しいんだ」
レジスタンス軍A「おやすいご用だ。任せておいてくれ!」
シャム「ただし! できるだけ敵兵を殺さないようにな。彼らもパープルシェイドに騙されてる被害者だからな」
海賊B「了解した!」

 レジスタンス軍の兵士たちに混じって、1人だけ護送船の水夫の衣装を着た敵兵らしき男が立っている。
 それは水夫用の衣装に身に固め、淡いブルーの瞳をした涼しげな目元が印象的な青年であった。

元護送船水夫のジュリアーノ「つい昨日まで護送船の水夫をしていたジュリアーノです。敵である僕の命を助けてくれてありがとうございます。ジャノバ国が魔物たちに乗っ取られていることを護送船内で知り、すごく驚いています。事実を知った限りはもうジャノバ兵として働くわけにはいきません。そんな僕ですが役目があれば何なりとお申し付けください」
海賊D「おいおい、新入りのおまえに役目がすぐ回ってくるわけないだろう。冗談も休み休み言えよ」
レジスタンス軍C「昨日まで敵だったあんたをどうして信用しろと言うんだ?」
海賊E「俺もそう思うぞ!」

 ジュリアーノに周囲から冷ややかな発言が浴びせられる中、シャムの口からジュリアーノを擁護する言葉が飛び出した。

シャム「いや、おいらはジュリアーノを信じるぞ。ジャノバ国への裏切りを臆することなくここまで着いてきたのが何よりの証拠だ。ジュリアーノ、おまえには重要な役目が待っている」
ジュリアーノ「ありがとうございます! どんなお役目ですか?」
シャム「今は言えない。パープルシェイド将軍を倒したら言う」
ジュリアーノ「分かりました。今は砦の大将をやっつけることに全力を傾けましょう」

 シャムがジュリアーノたちと語り合っている頃、ほかの仲間たちは作戦どおり変装に専念していた。
 メイド組は……

エリカ「まあ、イヴさん、メイド服を着ると一段と女らしくなっておきれいですわ」
イヴ「そういうエリカさんだってよくお似合いだわ」
エリカ「そうですか? メイドに見えますか? 良かったです」
イヴ「シシさんはいつもの凛々しい海賊の出で立ちとは打って変わってとても女っぽいわ」
シシ「なはは、ちょっと恥ずかしいけどね。でも、敵を欺けるのなら何でもいいや」

 一方、女奴隷(半裸)組は……

チルチル「wひゃあ~。どうして私がこんなエッチな格好をしなきゃいけないの?♫」
モエモエ「チルチルちゃん、とても15才には見えないね。意外と胸も大きいし♪」
アリサ「にゃんにゃん~。3人の中ではモエモエちゃんが一番オッパイが大きいにゃんんんん」

 女奴隷に変装していた3人の女性たちは互いの艶やかな姿を見つめ合い、乳房に関して論じ合っている。
 上半身裸のうえに、演技ではあるが両手首を縛られている光景は実に妖艶なものであった。
 男たちの熱い眼差しは当然ながら名花6輪に注がれることとなった。

 変装したシャムたちはパープルシェイド将軍がいる部屋へと向かった。
 隊列は、先頭にシャルルを配し、その背後に内部の情報に詳しいメイド役のシシがつづく。
 シシの後を同じくメイド役のイヴとエリカがつづいた。
 メイドたちの任務はパープルシェイド将軍の朝食の運搬だ。
 シシは小声でシャルルにささやきかけ、イヴとエリカが料理を乗せたワゴンを押している。

 メイドたちの後を奴隷監視役のシャムが進み、アリサ、モエモエ、チルチルと3人の女奴隷を引き連れている。
 そしてしんがりをもう1人の奴隷監視役ズンダーラが進む。
 シャムが握っている縄は確かにアリサたち3人の女奴隷役の手に繋がっており、一見拘束されているように見えるが実はすべて細工が施されていた。
 縄が手首に3周ぐるりと巻かれてはいるが縄尻がアリサたち自身の手のひらの中にあるためいつでも脱出が可能なのだ。
 
 巧みに変装を施したシャムたちがついにパープルシェイド将軍のいる部屋の扉の前に到着した。

 シシが扉を開けると部屋の中から、ふんわりと芳香植物の香りが漂ってきた。
 おそらくローズマリーの香りだろう。

シシ(なんと、香料を楽しむとは驚きだわ……)

 表向きは無骨な軍人とばかり思っていたパープルシェイド将軍に意外な一面を見た気がした。
 シシの真正面には導師服を身にまとった紫色の長い髪の男が座っている。



第14章「自由への架け橋」 第2話

パープルシェイド「新入りの女奴隷ですか。どんな娘たちですか? すぐに通しなさい」
シシ「将軍、朝食のほうはいかがされますか?」
パープル「女奴隷の品定めが先です。食事はサイドテーブルに準備しておいてください」
シシ「かしこまりました」

 シシは手を叩きほかのメイドに合図を送る。
 すると2人のメイドイヴとエリカがワゴンに乗せた料理を運びこみサイドテーブルに並べ始めた。

シシ「シャルルどの、こちらに女奴隷を通してください。将軍がお食事より先に見たいとのことなので」

 シシが扉の外で待機しているシャルルに声をかけた。

シャルル「はい、ただ今」

 扉を開けて入って来たのはジャノバ国の紋章が入った作業着姿の荷役主任役のシャルルであった。
 パープルシェイド将軍の前に立ち挨拶をするシャルル。

パープルシェイド「ご苦労です。あれ? サンジェルマン大臣はおられないのですか?」
シャルル「はい、かなり海が荒れていたため船酔いをされ、現在別室で休んでおられます」
パープルシェイド「船酔いですか? 船の移動に慣れておられるサンジェルマン大臣にしては珍しいですね。では見舞いに行かなくてはいけませんね。どこで休んでおられるのですか?」
シャルル「いえいえ、お見舞いは及びません。休まれてかなり回復されたご様子で、もうすぐこちらにお見えになると思います」
パープルシェイド「そうですか。それなら結構です。では女奴隷を通してください」
シャルル「はい、承知いたしました」

 パープルシェイド将軍が首を縦に振る。
 無表情ではあるが、どこか耽美さに満ちている。

シャルル「女奴隷を入れろ」
シャム「了解です」

 荷役主任を演じるシャルルの指示により、兵士に扮したシャムとズンダーラが3人の女奴隷を伴い入室した。
 最初にアリサが入り、つづいてモエモエが入り、最後にチルチルが入った。
 女奴隷はすべて下着姿で両手を後手に縛られている。
 パープルシェイド将軍は3人の女奴隷を見つめ、薄い唇の片方を上げ冷ややかな笑みを作った。

パープルシェイド「すばらしい。いずれ劣らぬ美女揃いです。男奴隷に与えるにはもったいないですね。朝食代わりにちょっと賞味してみましょうか。では女奴隷以外の女性の皆さんは退出してください」

 女奴隷の3人を高く称賛した後、メイドたちに人払いを命じたパープルシェイド。
 いったい何を企んでいるのだろうか。
 しずしずと部屋を出ていくメイドたち。
 残された女奴隷役3人の表情に不安が浮かんでいる。
 兵士役のシャルル、シャム、ズンダーラの3人にも緊張が滲む。

パープルシェイド「女奴隷たちよ、目を閉じてください」
アリサ「にゃんにゃん! 何をする気なのおおおお!?」
モエモエ「私、恐い……」
チルチル「……」

 3人は観念したのか、肩をすくめながら静かに目を閉じる。

パープルシェイド「はい、それで良いでしょう。念のために言っておきますが薄目を開けないようにしてください。もし守らないと……ふふふ……。あ、それから、シャルルさんでしたか……あなたとほかの男性の皆さんも、これから見る光景を決して他人に話してはなりません。もし口外すればあなたたちに不幸が訪れます。分かりましたね?」
シャム、シャルル、ズンダーラ「はい、分かりました……」
パープルシェイド「では……」

 パープルシェイドは不敵に笑いながら、自身の腹部を撫で始めた。
 ブラックシェイドが触手を出した例の場所と同じだ。
 やはりパープルシェイドもブラックシェイドと同類の魔物なのか。
 またもやあの淫猥な触手が無数に現れ、女奴隷たちに絡みつき蜜液を貪るのだろうか。
 パープルシェイドの行動を事前に予見できるのだから、アリサ、モエモエ、チルチルの俊敏さをもってすれば逃げることもできるだろう。
 ところが彼女たちは決して逃げなかった。
 敵の囮になる覚悟を決めているようだ。

『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』という古い格言がある。
「自分の命を犠牲にする覚悟があってこそ、危機的状況を脱することができる」という意味である。
 この場面だと、パープルシェイドに一旦は攻めさせて、油断が生じたところを一気に攻撃に転じようと言うのである。
 もちろんこの方法はシャムたちが前夜の打合せで決めたことであった。

 パープルシェイドが自身の腹部を撫で終えた頃、腹部の唇のようなものが開いて、複数の紫色の触手がスルスルとアリサたちに迫った。

「ふっふっふ、どんな味でしょうね? 美味なら私の愛奴にしてやってもいいですよ。私の愛奴になれば他の女奴隷よりも断然待遇が良いのです。ふっふっふ、目はそのまま閉じておいてください。そして何が起きようとも決して目を開けてはなりません。いいですね?」
「……」

 迫りくる触手からアリサたちは逃げ出したい気持ちでいっぱいだったが、じっと耐えようとしていた。
 シャムは気が気でなかった。彼女たちをまるで『人身御供』のようにしてしまったことを後悔した。
 たとえ作戦とはいっても、片時でも彼女たちを犠牲にすることに胸が痛んだ。
 シャルル、イヴ、エリカ、シシ、ズンダーラも同様であった。
 今すぐ剣を抜くわけにはいかなかったが、心の中ではすでにパープルシェイドに剣を向けていた。



第14章「自由への架け橋」 第3話

 囮となって敵を油断させる、敵に隙が生じ弱点が生まれたところを一気に攻める……それが難敵パープルシェイドを倒すための今回の秘策だ。
 そのためにはアリサたち女奴隷役の3人はギリギリまで我慢しなければならない。
 どこまで耐えられるかが勝負の分かれ目となる。

 パープルシェイドの身体から這い出した触手が音もなく忍び寄る。
 アリサたちの足元に、直径5センチほどの太さの、紫色ヌメヌメとした触手が這い寄ってきた。
 足首に絡みつく。
 そのまま、足を這いずるように上へ這い上がり装束の中へ。

 アリサたちの表情にわずかな動揺が走る。
 湿った感触が、ふくらはぎに、太ももに、上ってくる。
 直立したままの足に、絡まる白い触手。

(気持ち悪いよおおおお……)
(ううう……我慢しなければ……)
(wえっ……いやだよ~)

 触手が侵入してきてもアリサたちは動く訳にはいかない。
 服の中を、上に向かって這い上がってくる。
 足首、ふくらはぎ、太腿、段々と上へと移動する感触に、羞恥と嫌悪、そして動揺が呼び起こされる。
 汚らわしいものが、自分の服の中を這いずってくる。
 頬に赤みが差すアリサたち。だけど動けない。
 振り払うことも出来ない。ただ不安げに、感触を無視しようと努めるだけだった。
 ねっとりとした質感が、太腿まで登ってきた。液体が滴るのが気持ち悪い。

(……!)

 さらに上へ。
 アリサたちの股間は、下着1枚で包まれている。
 布地は薄い。
 その布地を、股間へと押し付けるように触れてくる触手。
 直径5センチほどある紫色の触手が、唐突に、アリサたちの秘所をこすり上げた。
 一瞬、アリサたちの身体が揺れる。僅かに。
 だが、触手はまるでその反応を予想しているかのように、連続した刺激を下着越しに送りこんできた。

「……あっ」

 アリサたちの身体ははっきりと、自身の変化を感じ取っていた。
 身体が紅潮していく。
 そして、身体の奥に、豊かな泉がたゆたい始める。

 アリサたちは懸命に声を我慢していたが、すでに限界点に到達していた。

アリサ「にゃああああ! なに? このヌルヌルとした嫌な感触うううう!」
モエモエ「ひぇっ! すごく気持ちが悪いよ~!」
チルチル「wえっ! もう触らないで~!」

 パープルシェイドは3人の表情の変化を楽しむように、淫靡な笑みを浮かべて舌なめずりをしている。

パープル「お嬢さんたち。お兄さんがもっと良い気持ちにしてあげるので大人しくしてるいるのですよ。いいですね、くっくっくっ」
シャム「あのぉ、お言葉ですが、『お兄さん』じゃなくて『将軍さん』じゃないのですか?」
パープル「くっくっくっ、忘れていました。私は可愛いお嬢さんにエッチなことをする時は自分が将軍であることをつい忘れてしまう癖がありましてね」
シャム「全くしょうがない将軍さんですね。もっとしっかりしてくださいよ」
パープル「すみません、今後は気をつけ……。なんと失礼なっ! どうして私が兵卒のあなたに謝らなければならないのですか!」
シャム「そうですよね。えへへへ~、すみませんでした~」
パープル「あなたたちは女奴隷がいたぶられる様子を黙って見ていればいいのです! 見られるだけでも幸せと思ってほしいですね。美しいお嬢さんたちの喘ぐ姿を見てあそこがギンギンになるかも知れませんがね、くっくっくっ。その場合はそこで1人寂しくシコシコしてください。くっくっくっ」

シャム「はい、分かりました。 ではお言葉に甘えてご命令どおり、ここでシコシコさせていただきます」

アリサ(にゃんにゃん! シャムったら私たちをこのままにして1人でオナっちゃう気なの!? 信じられないいいいい!)
チルチル(wわぁ~、シャム、早く助けてよ~)
モエモエ(シャムは敵に油断させようとしているみたい……ここは不快な気分がつづくけど我慢するしかなさそうね)

 3人の中で、最も冷静に洞察していたのはモエモエであった。
 それでも不快感を払拭できるわけではない。
 ヒルが身体を這い回るような不快感に包まれた。

 触手は太腿に巻きつきながら上へ上へと這い上がっていく。

アリサ「にゃんにゃんにゃんにゃああああ~!」

 最初にショーツの隙間に潜り込んだのはアリサを襲う触手であった。
 外見からもはっきりと分かるくらいクロッチ部分が大きく膨らんでいる。
 すでに女芯の狭間に食い込んでいるのだろうか。
 挿入を繰り返すような淫靡な蠢きを見せている。

 ヌッチョヌッチョヌッチョ……

 アリサは閉じていた目を大きく見開くと、触手に恐れをなし身を逸らそうとした。
 だが太腿に巻きついた触手の力はあまりにも強力過ぎて、足を半歩動くのが限界だった。

アリサ「うぐっ、にゃああああ~! 気持ち悪いよおおおお!」

 モエモエとチルチルに巻きついた触手も引き続いて侵入を開始する。

チルチル「wわ~~~~~! パ、パンツの中にっ! やだよ~~~っ!」
モエモエ「きゃあ~~~~~! きしょいよ~~~!割れ目に、割れ目に食い込んでくるよ~~~!」

シャム「えへへへ、将軍さん、なかなか見応えのあるすばらしい光景ですな~。触手になりたいもので~」
パープルシェイド「かわいいお嬢さんが犯される場面を見るのもいいものでしょう? いつでもシコシコしてこのお嬢さんたち白い液体をぶっかけてやってください。くっくっくっ」
シャム「おおお、本当に勃起して来ました! ではお言葉に甘えて!」

 その時、荷役主任役のシャルルがさりげなくシャムの肩を突ついた。

シャルル「あのう、シャムさん……そろそろ、号令を掛けてもらわないといけないのですが」
ズンダーラ「シャルル殿のおっしゃるとおりですよ、シャム殿」
シャム「あっ、しまった! 忘れてた!」
シャルル「そんな大事なことを忘れるな~~~!」
シャム「よし、今だ!! 一斉に攻撃開始っ!!」
パープルシェイド「な、なにっ!?」



第14章「自由への架け橋」 第4話

 シャムの号令を合図に室外に待機していたイヴ、エリカ、シシの3人が飛び込んだ。
 最初に呪文を唱えたのはエリカだった。

エリカ「新しく覚えた水魔法『ウォーターフロント』を味わってみて! ディオ・デレ・アクア・ダミダ・ラ・フォルザ~~~!!」
シャム「ぷっ、どこかの公共事業みたいな名前じゃん」
イヴ「もうシャムったら! 冗談を言ってる場合じゃないわ!」
シャム「あ、そうだったな」
モエモエ「うううっ、触手がグチョグチョして気持ちが悪いけど、私もがんばるもん! レムネレムネ、エマシテネ~! スリープ魔法ゆりかごの歌~♪」

 エリカが覚えたての呪文を唱えると、すさまじい水流が窓から入り込みパープルシェイドに襲いかかる。
 さらにモエモエの唱えた呪文によりスリープ波の波動が巻き起こった。

パープルシェイド「むっ! あなた方は何者ですか!? そんな子供だましの魔法など私には通用しません! 暗黒魔法マジックバリア~~~!!」
エリカ「えっ……?」
モエモエ「効かないの!?」

 パープルシェイドが暗黒魔法マジックバリアを唱えると透明の魔法障壁が空間に作り出され、エリカとモエモエが放った魔法が思わぬ方向に跳ね返される。
 水流がズンダーラを襲い、ゆりかごの歌がチルチルを包み込んだのだ。

ズンダーラ「うわぁ~~~!!」
チルチル「wえ? あ~あ……何か眠くなって来たなあ。触手にエッチなことをされているのに眠くなるなんて……あぁ、もうダメら~……むにゃむにゃ」

モエモエ「どうして!? 私の放ったスリープ魔法でチルチルちゃんが眠りかけている!」
エリカ「族長! 大丈夫ですか!? 敵に放った水魔法がなぜ族長に命中したのかしら……?」
イヴ「エリカさん! モエモエちゃん! パープルシェイドはマジックバリアを使ったのよ! 魔法をかけると跳ね返って仲間を攻撃するから気をつけて!」
モエモエ「まさかそんなことが!」
エリカ「じゃあ魔法は使えないじゃないですか!?」
イヴ「チルチルちゃん、起きて! 眠ってはダメよ! 族長、しっかりして! 取り合えず2人にヒールをかけてみるわ。でもスリープ魔法で眠った者に効果があるのかしら?」
シャム「跳ね返りの魔法? そんな魔法を使うなんてちょっとズルくない?」
パープルシェイド「魔法にズルイもズルくないもありませんよ。未熟な自分を恥じなさい」
シャム「何をえらそうに! アリサ、モエモエ、チルチルにエロいことをしている触手はおいらがぶった切ってやるから覚悟しろ!」
パープルシェイド「ほほう、あなたに私の触手が切れますかね? ところであなたたちは何者ですか?」
シャム「知らないのか? おいらたちは魔物の掃除屋さ」
パープルシェイド「魔物の掃除屋ですって? 私を倒すのは諦めた方が身のためですよ。私を倒す前にあなた方が塵芥と化すでしょう」
シャム「おいらたちをゴミにするってか? 上等じゃん、やってくれよ。その前に1つだけ教えておいてやろう。ここに来る前に船上でサンジェルマン大臣かブラックシェイドか知らないが、触手の魔物をあの世に送ってやったが、あんたもやつの親戚みたいなものだろう?」
パープルシェイド「なんですって? わが盟友であるブラックシェイドを倒したというのですか? そうですか、ではここは弔い合戦になりそうですね」
シャム「受けてやろうじゃないか。ところでさ、パープルシェイド将軍。戦いのときぐらい女の子たちのパンツの中を触手でゴニョゴニョするのやめにしない?」

 戦闘直前になっても3人の女性のショーツの中に触手を入れたまま動かしつづけているパープルシェイドに対して、痺れを切らしたシャムが苦言を呈した。

パープルシェイド「それは無理な注文ですね。私がダメージを受けても女性の美味な蜜を吸うことで私の体力は回復するのですよ」
シャルル「それじゃあ、俺が蜜吸いを中断させてやるぜ!」

 シャルルが革命の剣をかざしパープルシェイドめがけて突き入れた。
 次の瞬間、1本の触手が目にも止まらぬ速さでしなりシャルルの胴体に鞭打った。

シャルル「うわっ!」

 もんどりうって倒れるシャルル。

エリカ「シャルルさん、だいじょうぶですかか!?」

 シャルルの元に駆け寄り抱き起すエリカ。

シャム「このエロ魔物め! この子たちの大切な場所はおいらしか触れないんだよ~! とりゃあ~!」

 シャムはシャルルを襲った触手を最初に一刀両断すると、いきおい、アリサ、モエモエ、チルチルをさいなむ触手を次々に切り落としていく。
 まるでタコ足の輪切りのように切り刻まれていく触手。

パープルシェイド「ぎゃ~~~!!……さきほど魔物の掃除屋と言っていましたが、あなたはもしや魔界で噂の勇者ですか……?」
シャム「魔界でそんなに有名なの? そりゃ光栄だな~! おまえを倒したらもっと有名になれるかな? じゃあおまえもやられちまえ!」
パープルシェイド「それは無理ですね! そんなに甘くはありませんよ!」
シャム「ちょっとタイム」
パープルシェイド「なに? タイムですって?」
シャム「おい、女奴隷役のアリサ、もう大丈夫だぞ! モエモエ、もう触手は切り捨てたぞ! チルチル……ありゃ? よく眠ってる みんな、このエロ魔物をやっつけてしまえ~!」
アリサ「にゃんにゃん! やっと自由になれたよ! 私の漆黒の爪、受けてみるうううう!?」
モエモエ「シャム、ありがとう! 私の杖攻撃もちょっとしたものなのよ~♪」
パープルシェイド「げっ! タイムって言っておいてそんなのズルい~!」

 四方八方から直接攻撃を受けたパープルシェイドはたまらず叫び声をあげる。
 だが各段上の体力を持っているため、緑色の血しぶきをあげながらもなかなか倒れない。

パープルシェイド「これくらいで私がくたばるとでも思っているのですか……?甘いですよ、くっくっくっ……」

 パープルシェイドが不敵な笑みを浮かべると、頭上から2本の角が伸び、背中からコウモリのような羽根が2本生えた。
 そしてぶるぶると身体を震わせながら身体が巨大化していき、みるみるうちに2メートルを超える怪人に変身していた。



第14章「自由への架け橋」 第5話

 こちらはパープルシェイド将軍の部屋へとつづく長い回廊。
 砦内への侵入を聞きつけてやってきた警護兵を迎撃したのはレジスタンス軍と海賊の連合軍であった。
 士気の高い連合軍のつわものたちは警護兵たちを寄せ付けることなくものの見事に粉砕してしまった。
 その中でも目を見張るような活躍を見せたのが元護送船水夫のジュリアーノであった。
 レジスタンス軍や海賊よりも前に出て、向かってくる警護兵をバッタバッタとなぎ倒す。その強さは舌を巻くほどであった。

レジスタンス軍アンドレ「ジュリアーノ、すごい腕前じゃないか!」
海賊バルナバ「驚いたぜ! あんたつえ~な~!」
ジュリアーノ「いえいえ、たまたまですよ。ところで倒した中にリーダーらしき紋章をつけた男がいて、腰に何やら妙な鍵をぶら下げていたいたのですが」

 ジュリアーノは仲間に鍵を見せた。
 鍵には木製のタグが付いており『将軍用書庫』と書かれていた。

アンドレ「どれどれ、書庫の鍵か。ふうむ、大して用がなさそうだな」
ジュリアーノ「僕が預かっておいても構いませんか?」
バルナバ「構わんが書庫で何を調べる気だ?」
ジュリアーノ「もしかしたら役に立つ物が見つかるかも知れないのでちょっと調べてみます」
アンドレ「なるほど、何かあるかも知れないな。将軍用書庫は確かここを出て右側にあったと思うぞ」
ジュリアーノ「ありがとうございます。アンドレさんとバルナバさん、よかったらいっしょに来てもらえませんか」

 将軍用書斎はすぐ横にあった。
 扉には『将軍以外立ち入り禁止』という札がかかっている。

アンドレ「立ち入り禁止とあるのは将軍にとって見られたくない物があるのかも知れないな。とりあえず入ってみよう」
ジュリアーノ「鍵は合うかな?」

 カチャリと鍵が回る音がして扉をそっと開くジュリアーノ。
 書庫の壁という壁が本と書類で文字通り埋め尽くされていた。
 そんな中隅にぽつりとテーブルが置かれていて机上はきれいに片付いていた。
 机の引き出しは3段あるが1番下だけ鍵がかかっている。

バリナバ「ここだけ鍵がかかってるぞ」
ジュリアーノ「何か怪しいな。扉の鍵では鍵が合わないので壊してしまおう」
アンドレ「俺に任せろ。剣より槍の柄の方が丈夫だ」

 アンドレは握っていた槍の柄の部分で鍵穴を叩き潰し、強引に引き出しを開けた。

バリナバ「なんだ、こりゃ?」

 引き出しの中から1通の奇妙な封書が現れた。表装が漆黒なのだ。
 漆黒の封筒というのは珍しい。
 宛先のパープルシェイド将軍というのは何の変哲もないのだが、差出人の名前『MEDUSAOR』を見て一同は愕然とした。
 魔界の女王メドゥサオールからパープルシェイド将軍宛ての手紙にどんなことが書かれているのだろうか。

ジュリアーノ「封を開けますよ」

 アンドレとバリナバはごくりと固唾を呑んで開封を見守った。
 中から出てきたのは封筒と同じ黒い紙であり、白いインクで短文が書かれている。

アンドレ「えっ!? なんだ、こりゃ?」

『勇者が現れたようなのでくれぐれも気をつけよ。貴様の強さは認めるが敵を侮るなかれ。右のツノは貴様の唯一のウィークポイントだ。しっかりと防御せよ』

ジュリアーノ「これを早くシャムさんたちに教えてあげないと!」
バリナバ「手遅れになるとまずいぞ!」
アンドレ「急ごう!」
⚔⚔⚔

シシ「うわ~~~!」
パープルシェイド「海賊風情が私を倒せるとでも思っているのですか?」

 真っ向からパープルシェイドに勝負を挑んだシシだったが、触手が鞭のようにしなりものの見事に跳ね返されてしまった。

シシ「くそっ、いくら切っても触手が次から次へと生えてくる。どうすればいいんだ」
イヴ「これを繰り返していても体力が奪われるだけだわ」
シャルル「やつの弱点が見つかればよいのだが……今度は首を狙って切りつけてみるぞ」
ズンダーラ「やみくもに打って出ても逆にやられるだけです。気を付けてください」
モエモエ「そうはいってもこのままだと全滅してしまうわ……」
エリカ「とにかく体力の減っている人にヒール魔法をかけるしかありませんね。ヒール!」
イヴ「でも魔力にだって限界があるわ。補充する余裕もないし困ったわ」

パープルシェイド「誰も攻撃してこないのですか? もうあきらめたのですか? 案外意気地なしですね。では今度は私が魔法を披露して差し上げましょう。雷魔法パープルサンダ~~~!!」

 パープルシェイドが呪文を唱えると窓の外で雷鳴がとどろき、稲光が走った。

シャム「いて~~~っ!!」
シャルル「うわ~~~っ!!」
シシ「きゃあ~~~っ!!」

 シャム、シャルル、シシ、ズンダーラの4人が雷の衝撃で転倒してしまった。
 幸いに、アリサ、イヴ、モエモエ、エリカ、チルチルの5人は大した被害がなかった。

パープルシェイド「くっくっくっ、ここが屋内でよかったですね。もし屋外なら皆さんはすでに死んでましたよ。それと被害があった人たちと被害がなかった人たちにある一定の法則があることに気づきましたか?」
シャム「うううっ……雷で倒れたのは金属の武器を持っていた者だけ。ダメージがなかったのは持っていなかった者だけ、ということか」
パープルシェイド「さすがですね、勇者さんは理解が早いです」

 雷に打たれたシャムたちの怪我がかなり酷く立ち上がれないようだ。
 イヴとエリカが大わらわでヒール魔法をかけているが、なかなか追いつかない。
 治療に間に合わない者はみずから薬草を頬張って凌いでいる状態だ。
 シャムたちに危機が迫っている。



第14章「自由への架け橋」 第6話

 シャムたちソード系戦士が落雷によるダメージを負い、イヴとエリカはヒール魔法をかけることに奔走している。
 モエモエは炎の魔法で応戦するがさほど効果が出ない。
 アリサが爪で攻撃しても触手で何度も跳ね返されている。
 チルチルは薬草を配給する役目で大忙しだ。

 一方でパープルシェイドが放つ『雷魔法パープルサンダー』は強烈だが、一回使用すると相当なMPを消費し、次に使用するまでの間MPが貯まるまで充電時間を要した。
 ときおり触手を振り回す等の直接攻撃はあったが、致命的なダメージには至らなかった。
 しかし女蜜を吸いMPが一定量回復すればパープルサンダーが放たれることは必至で危機に瀕していることに変わりはなかった。

 そのとき回廊を駆け抜け、突如扉を蹴破り飛び込んできたのはジュリアーノたちであった。

ジュリアーノ「皆さん! パープルシェイドの弱点が分かりましたよ! 右のツノを狙ってください!」
シャム「おおっ、ジュリアーノ! 右のツノを狙えばいいのか!?」
シャルル「でかしたぞ、新入り!」
パープルシェイド「あなたは誰ですか? そんなニセ情報をどこで仕入れてきたのですか? 私に弱点などありませんよ」

 弱点を指摘されたパープルシェイドは口では否定したものの、動揺の色を隠しきれなかった。

シャム「まあ試せば分かることだ、覚悟~~~!」

 シャムは頭上目掛けてソードを突き込んだが、パープルシェイドに軽くかわされソードは空を切る。
 つづいて切りかかったのはシャルルであった。しかし触手が鞭のようにうなりをあげソードを払いのけた。
 
ズンダーラ「ゴブリン族の名誉にかけてもあなたを倒して見せます!えい~~~!」
パープルシェイド「ふん、ゴブリンごときに私を倒せるものか! これでも食らいなさい」

 杖で脚を払われもんどりうって倒れるズンダーラ。
 弱点を知っても、その弱点に命中しなければまったく意味をなさない。

シシ「今度こそあんたの息の根を止めてやるわ」
パープルシェイド「まだ懲りずに来ますか。いい加減あきらめたらどうですかね?」

 またもやすごい速さで触手がしなりシシを弾き飛ばした。

シシ「うう……くそっ……」
ジュリアーノ「今度は僕が相手だ。覚悟しろ、化け物め!」
パープルシェイド「口の悪い人ですね。私は魔物ではありますが化け物と言われる筋合いはありませんね」
ジュリアーノ「どっちもよく似たものだ!え~~~い!」
アリサ「にゃんにゃん~~~!」

 ジュリアーノが突きを入れると同時に、パープルシェイドの頭上に跳躍したのがアリサであった。
 パープルシェイドは正面のジュリアーノに気を取られ、彼のソードを払いのけるのが精いっぱいだった。
 アリサはパープルシェイドの肩に蝶のように舞い降りると、右のツノに力を込めて思い切りかぶりついた。

アリサ「にゃごおおおお~~~!!」

 急所のツノにかぶりつかれたからたまらない。
 ツノから緑色の血が溢れる。

パープルシェイド「ぎゃあああああああああ~~~~~!!」

 パープルシェイドの力が緩み隙が生まれる。
 そこを逃さない理由がない。
 傷を負ったシャムだが、ジャンプ一番跳び上がりざま右のツノを真っ二つに叩き切った。

パープルシェイド「げええええええええええ~~~~~!!」

 それでも追撃の手は緩めない。
 ジュリアーノが宙を舞うとソードは見事にパープルシェイドの首に突き刺さった。

パープルシェイド「ぎぃいいああああああ~~~~~~!!!!!」

 パープルシェイドは空気を震わせるような断末魔を残して斃れた。

 シャムたちは『神秘のヴェール』を手に入れた! モエモエが『神秘のヴェール』を装備した! 防御力が10アップした!
 シャムたちは『魔力の指輪』を手に入れた! エリカが『魔力の指輪』を装備した! 魔力が10アップした!
 シャムたちは『幸運のキャンディ』を10個手に入れた! その場にいる全員が『幸運のキャンディ』を食べた! その場にいる全員の運が5アップした!
 シャムたちは『バステト神の石』を手に入れた! アリサが『バステト神の石』を装備した! 強さと速さが10アップした!

 法力草を頬張りMPを補充したイヴとエリカは繰り返し負傷者にヒール魔法をかける。

イヴ「ふう、疲れた。やっと全員にかけ終わったよ。1人1人にヒールをかけるのはきついね」
エリカ「神聖魔法ヒールオールの魔導書を早く見つけられたらいいですね」
イヴ「ヒールオールの魔法を覚えたら戦闘時も楽だものね」

シャム「みんなよくがんばったな~! おつかれさま~!」
シャルル「きつい戦いだったけどジュリアーノが弱点を見つけてくれたおかげでみんな命拾いしたぞ。あんたには感謝するよ」
シャム「ジュリアーノ、ありがとう! それにしても弱点をよく見つけたな~」
ジュリアーノ「いいえ、とんでもありません。僕1人で見つけたんじゃないんです。ここにいるアンドレとバルナバが応援してくれたお陰なんですよ」
アンドレ「いやあ、大したことは」
バルナバ「えへへ、そんなこと言われたら照れくさいですよ」
イヴ「どうしてパープルの弱点が分かったの?」

 ジュリアーノは倒した敵が偶然将軍用書庫の鍵を持っていたことから、調べているうちに弱点を見つけたという経緯をかいつまんで話した。

ズンダーラ「それにしても右のツノが弱点だったなんて全く気が付きませんでした」
モエモエ「弱点を見つけたジュリアーノもすごいけど、大ジャンプしてツノにかぶりついたアリサちゃんもすごかったね♪」
シャム「まったくだ! アリサのジャンプ力はすごかったな~! パンツ丸見えだったけど」
アリサ「プンニャンプンニャン! もうシャムったら、こんな大変なときにどこを見てるのおおおお!」
シャム「うわ~! ごめんごめん!」



第14章「自由への架け橋」 第7話

シシ「手強い敵だったけど、弱点を見つければ意外と簡単なのね」
エリカ「敵の弱点を見つけるために情報を集めることは大切なことですね」
イヴ「みんなダメージが結構大きかったけどヒール治療はだいたい終わったかな? あら、チルチルちゃんがまだ眠ったままだわ、起こさなくては」
モエモエ「今回は男性陣のダメージが大きかったみたい」
エリカ「男性の場合、前陣で戦う人が多いからどうしてもダメージを受けやすいようですね。シャルルさん、族長、だいじょうぶですか? もう1回ヒールをかけておきましょうか?」
シャルル「し……心配するな。これくらいでくたばるも俺じゃない……ううっ……」
ズンダーラ「いててて、本当に酷い目に遭わしおって。ううう、まだ腰が……」
イヴ「あなたたち男性もシャムにチンヒールをかけてもらうと治るかも知れないわね」
シャム「おえっ!」
シシ「シャム、どうして嘔吐しそうになってるの?」
エリカ「男性にチンヒールなどと言われて気分が悪くなったんじゃないですか? 人一倍女好きの人ですから」
シャム「遠慮しとく。っていうか物理的にするのが無理だよ」
モエモエ「無理なことはないわ。男性だって1つだけ穴があるじゃない♪」
シャム「おえっ! おえおえおえ~~~っ! あり得ない! 考えたこともない! 絶対に無理~~~! げげげ……」
イヴ「もう汚いわね」
シシ「イヴさん、エリカさん、男性陣にもう1回ヒールをかけてあげて」
イヴ「じゃあ行くわね~。神聖魔法ヒ~ル!」
エリカ「ウンディネス、ウンディネス、ポテンザ・アクア~~~!」

 イヴとエリカがヒール魔法を数度唱え、仲間の体力が完全に回復した。

イヴ「あら? 私のMPがもう空だわ」
エリカ「ってことは今回のチンヒールの患者さんはイヴさんに決まりですね」
イヴ「まあ、私なの? いや~ん、うふ~ん」
アリサ「法力草がかなり残っているよおおおお」
イヴ「アリサちゃん今何か言った? 全然聞こえないんだけど」

 アリサがイヴの耳元で大声で叫んだ。

アリサ「法力草がたくさんあるよおおおお!!」
イヴ「きゃっ! 耳が痛い! そんな大きな声で言わなくても聞こえてるのに」
シャルル「わっはっはっはっは~!」
チルチル「wん? アリサちゃんはシャムが他の子にチンヒール打つのが嫌なのかな?♫」
モエモエ「チルチルちゃん、結構鋭いね♪」
アリサ「そ、そんなことないもん! チンヒールは女の子みんなに平等だもんんんん!」
イヴ「焦ってるところがちょっと怪しいけど、ツッコむのはもうやめようか。でもこの冒険ではアリサちゃんが今言ったことが正しいと思うの。シャムがみんなに平等だからうまくやっていける。そう思うの」
シシ「部隊を率いる司令官は常に隊員に平等でなければならない、そういうことね」
シャルル「さすが船長! いいことを言うな~」
シシ「あは、茶化さないでよ」

 談笑をしていられるのもほんの束の間、シャムが今後の計画について語り始めた。

ジュリアーノ「シャムさん、教えてください。パープルシェイドを倒した後、僕に重要な役目があると言ってましたが、どんなお役目ですか?」
シャム「うん、パープルシェイドを倒したけど、問題はここからなんだ。この砦にはまだ大勢の兵士がいる。その中を無傷で抜け出すのは簡単ではない」
ジュリアーノ「はい、推定では300人はいると思います。倒しながら脱出するのはかなり厳しい戦いが予想されます」
シャム「違うんだ。おいらは倒そうなんて思っていない。と言うのもこの砦の中で真の悪人は今倒したパープルシェイドぐらいのもの。他の兵士たちは騙されているだけだから。そんな兵士たちの命を奪いたくないんだ」
ジュリアーノ「さすがシャムさん!」
シャム「いや~、それほどでもないんだけどね~」
イヴ「調子に乗るな!」
ジュリアーノ「僕だって元々仲間だった人たちとできるだけ剣を交えたくはないですよ」
シャム「そうだよな。そこでだ」
ジュリアーノ「はい」

 ジュリアーノは真剣なまなざしでシャムの言葉を聞き入っている。

シャム「この砦の一番高い所に登って演説してくれないか」
ジュリアーノ「えっ? 演説ですか? この僕が……?」
シャム「演説と言っても生徒会長のような演説ではないんだよな~」
イヴ「今の時代に生徒会長なんてあるか! バカ、バカバカ!」
シャム「うるさいな~、横からバカバカいうなよ~。あまりバカバカいうとチンヒールしてやらないぞ」
イヴ「まあ、私としたことが……。ジュリアーノさんの演説、私も聞いてみたいですわ。おほほ」

ジュリアーノ「シャムさん、分かりました! つまり、倒したパープルシェイド将軍が実は魔物だったこと。それとパープルシェイド将軍やその仲間の魔物たちがこの国を乗っ取り地上における魔物の根城にしようとしていること、を話せばいいのですね?」
シャム「はい、正解! 正解者のジュリアーノさんには横でバカバカと言ってるイヴ神官の生脱ぎパンティを差し上げます~!」
イヴ「なんでやねん! なんで私がジュリアーノさんにパンツプレゼントしなきゃいけないの! アホッ、ボケッ! ブリブリブリ~」
シャム「ダメなの? それじゃあアリサがこのイケメンのお兄さんにパンティをプレゼントしてあげて?」
アリサ「にゃんにゃんにゃん~。私のパンツをジュリアーノさんにあげるのおおおお? きゃっ! 恥ずかしいなああああ。でもシャムの頼みならあげてもいいよおおおお」
モエモエ「あら……アリサちゃん、本当に脱ぎ始めてる……あのちょっと、アリサちゃん、脱がなくてもいいのに」
ジュリアーノ「アリサさん、本当に脱がなくていいですよ。もしアリサさんを好きになればきっと僕の手で脱がせてみせますから。だから脱がなくていいです」
モエモエ「ポ~ッ♪ カッコいい~。エロ一筋のシャムと大違い♪」

 モエモエの一言にシャムが大きくずっこけた。



第14章「自由への架け橋」 第8話

ジュリアーノ「それでは早速、砦の中の一番高い所に行きましょう」
シシ「砦の中の一番高い所ってどこなの?」
ジュリアーノ「一番高い所は監視塔です。外部から敵が侵入しないか見張るためのものです。でも、監視塔の頂上へ辿りつくまでにたぶん敵に気づかれると思います」
シャルル「それはおいらたちが防ぐから心配するな」
シシ「でもできるだけ無駄な衝突は避けたいわ。もう一度馬車に乗り込むと言うのはどう? 馬車で監視塔の真下まで行けたら成功よ。あとは私たちがジュリアーノを守る」
ズンダーラ「さすが海賊のボスだけあって実に良い作戦ですね。私は賛成します」
シャルル「俺も賛成だ」
エリカ「今できることを考えた場合、最善策だと思います」
シャム「よし、シシの提案でいくぞ!」
一同「おお~~~っ!」

イヴ「ところでシャム、忙しいときに言いにくいんだけど、チンヒールは無理かなあ? MPが空っぽなの。残っている法力草は戦闘時用に置いておきたいの」
シャム「そうだったな。でも今忙しいから青キノコで間に合わせておいてよ」
イヴ「そうだね、今無理だよね。私の隠れる場所もないし……じゃあ皆さん、ちょっと向こうを向いててね」

 シャムたちは一斉にイヴと逆の扉がある方向を向いた。
 時折、チラリと後ろを振り返る者もいたが、イヴとしては意に介さなかった。MPの補充は仲間たちの生死に関わる重要なことなのだから。
 少し遅れて、モエモエとエリカも青キノコによるMP補充を開始した。
 まもなく3人の美女たちの悩ましい声がシャム等男たちの耳に届いた。
 男たちは振り返りたい気持ちを必死に抑えながら、美女たちのキノコの挿入場面を頭に描いた。

イヴ「あぁん、あぁん、すごいわ……MPが、MPが回復していく~……ああっ、あっは~……」
エリカ「うっ、ううっ、うあ……いやん……魔力が……みなぎってきます……あぁん……」
モエモエ「あ~ん、あ~ん、キノコ効くよ~……気持ちいい、あぁ、どうしよう♪」

 3人の美女たちのヨガリ声が終わりを告げる頃、彼女たちのMPは数本の青キノコによって完全に回復した。

レジスタンス軍アンドレ「女のイキ声は何回聞いてもいいな~。元気をもらったよ」
海賊バリナバ「俺なんか元気になりすぎて困り果ててるところ。がっはっはっは~」

エリカ「あ、そういえばチルチルちゃんの声が聞こえてきませんが、どうしているのでしょうか?」
モエモエ「まだそこでスヤスヤ眠っているよ♪」

 スリープ魔法の効果か、チルチルはまだスヤスヤと眠っていた。
 瞼を閉じた表情は安らかでさえあり、深い夢の世界をさ迷っているようだ。

シシ「ありゃ、まだ眠っているよ。チルチル、起きろよ~」
チルチル「ムニャムニャムニャ……」
シャルル「よし、オレに任せて!」
シシ「シャルルヒールでもかけるのかい?」
シャルル「俺にそんな特技はない」
シシ「どうして起こす気なの……?」

 シャルルはチルチルの耳元で喚き立てた。

シャルル「チルチル~! ウサギのぬいぐるみが空を飛んでいるよ~!」
チルチル「wわっ! どこどこ!? ウサギのぬいぐるみはどこ??♫」
シャルル「ば~か、そんなの飛ぶ訳ないだろう?」
チルチル「シャルルのうそつき~! もう大嫌いだピョン! ブリブリ~!♫」
シャルル「うわっ、マジで怒ってる! 恐い~! イヴさん助けて~!」
イヴ「なるほど、シャルルはいい方法を思いついたね」
エリカ「スリープを解く鍵が見つかったようですね」
モエモエ「ふむふむ、耳元でその人の好きなモノをつぶやけばいいのね♪」
アリサ「にゃんにゃん~じゃあ簡単だねええええ。私が眠ったら『シャム、シャム』って大声で言ってねええええ」
イヴ、エリカ、モエモエ「そんなの知らん」
アリサ「にゃっ? 私、もしかして拙いことを言ったかなああああ?」

ズンダーラ「皆さん、ぐずぐずしていてはダメです。チルチルさんも起きたようだしそろそろ行きましょう」
シャム「よし! じゃあ、皆、荷馬車に乗るぞ! そしてジュリアーノを無事に監視塔まで送り届けるんだ!」
一同「おう!」

 外に出てみるとすっかり太陽が空に昇っていた。
 シャムたちはあたかも荷下ろしの仕事が完了したかのように装って、来たときと同じ顔ぶれで荷馬車に乗り込む。
 ゴトゴトゴト……一行は息をひそめて砦の出入り口近くにある監視塔へと突き進む。
 人通りも増え、談笑する兵士たちや兵士たちの監視のもと奴隷たちも行き交っている。
 誰一人として御者を務めるシャルルたちを怪しむものはいなかった。

 ところが、途中、1人の兵士がシャルルとエリカに声をかけてきた。

兵士「護送船の者か? 早朝から運搬ご苦労だな~。そんなに急いで帰らなくても休憩所に寄っていけばいいのに」

 シャルルがエリカに耳打ちをした。

シャルル「エリカ、ここは俺に任せろ」
エリカ「はい」



第14章「自由への架け橋」 第9話

シャルル「酒でも飲んでゆっくりして行きたいのだが、次の荷物が急ぐらしく、早く帰って来いって言われているんだよ」
兵士「そうか、それじゃ仕方ないな。まあ、気をつけて帰んな」
シャルル「ありがとうよ。それじゃまたな」

 兵士はシャルルと二言三言交わすと荷馬車から離れて行った。

シャルル「ふう、上手くごまかせたようだ」
エリカ「なかなかの名演技でしたよ、うふふ」

 3台の荷馬車が速度を速めて監視塔へと向かって行く。
 真っ直ぐに帰る告げていた荷馬車が、出口とは異なる方向に向かっていることに気付いた先程の兵士が訝しく思った。

兵士「あれ? あの荷馬車の御者は寄り道をしないで帰ると言っていたのに、出口とは違う監視塔がある方に向かっているじゃねえか。妙だなあ……?」

 しかしさほど気に掛ける様子もなくそのまま立ち去って行った。

⚔⚔⚔

 ほどなく監視塔の間近に3台の荷馬車が止まった。
 周囲を行き交っているのは数人の兵士と砦の使用人だけ。
 到着したばかりの荷馬車を気に留める者も特にいない。

 シャルルとエリカが御者席を下りるのを合図に、ジャノバ兵の制服に着替えたシャム、ジュリアーノ、イヴが荷台から下りた。
 残りの者は荷台に潜みいつでも飛び出せるよう待機する。
 荷馬車から下りる人数が多いと何かと目立ち敵に見破られる惧れがあるのだ。

 監視塔の梯子を一段一段しっかりと登っていくシャム。
 その後をジュリアーノのイヴがつづく。

 砦とその周辺を監視し守りを固めるために造られた監視塔。
 昼夜を問わず哨兵が交代制で見張りを担当している。
 現在、頂上の見張り台には2人いる。
 少なくともその2人は倒さなければならないだろう。
 見張り台はもうすぐだ。
 見張り台にたどり着いたシャムが哨兵に声をかけた。

シャム「おつかれさま。じゃあ交代しようか」
哨兵A「おっ、交代時間か、待ってたよ。早朝からの見張りは疲れるからな~。ああ、やっと休憩できるよ」

 突然、哨兵のみぞおちにシャムの拳による一撃がさく裂した。

哨兵A「ぐほっ……」

 鈍い呻きを残して哨兵が倒れた。
 それに気づいたもう1人の哨兵が声を慌てふためいたが、声を出すよりも速くジュリアーノの拳が哨兵ののこめかみを捉えた。

哨兵B「かはっ……」

 気絶した2人の哨兵を縄で縛り上げ猿轡を噛ませれば準備万端だ。
 見張り台には手摺りがあるため立哨中だと地上からは胸から上しか見えない。
 つまり縛られて床に伏した哨兵は地上からは見えなくなる。
 すぐにシャムとイヴが立哨を行なっている風に装い見張り台の上をゆっくりと歩く。

シャム「ジュリアーノ、準備は整ったぞ。始めてくれ」
ジュリアーノ「分かりました。それじゃ始めます」

 ジュリアーノは砦内の人々が集まっている広場に向かって大声で話し始めた。

ジュリアーノ「砦にいる皆さん~!! 少しだけで僕の話に耳を貸してください!!」

 広場には労働の前の集会に集められている奴隷や兵士のほかに、砦内で働いている男女も混じっている。
 人々は、演説を始めたジュリアーノの声に驚き、早くも場内にどよめきが起こっている。

ジュリアーノ「僕は護送船の水夫でジュリアーノと申します。皆さんに大切なお話があるので、突然ですが、この場所から喋らせてもらいます」

砦兵士A「なんだ、なんだ?」
砦兵士B「どんな話だ?」

ジュリアーノ「皆さん! 実は今、私たちが住んでいるこの地上に魔界から侵略の手が伸びようとしているのです。信じられないかもしれませんが、その手始めとしてこのジャノバ国に矛先が向けられたのです!」

砦兵士C「わっはっは~、魔界だって? 侵略だって? 頭がおかしいんじゃないのか?」
砦兵士D「どうせ作り話だろうけど、面白そうだからもう少し話を聞いてやろうか」

ジュリアーノ「残念ですがこれは作り話ではありません。魔界からは司令官クラスの魔物が3人送り込まれて来ました。名前はレッドシェイド、ブラックシェイド、そして、パープルシェイドです。彼らはこの国の中枢の役職を乗っ取りました。先ずパープルシェイドですが、彼はこの砦の司令官を殺害し司令官に成りすましていました。しかし先程、こちらにいるシャムさんたちの協力で彼を倒しました」

砦兵士A「な、なんだと!?」

ジュリアーノ「それからブラックシェイドはサンジェルマン大臣を殺害し、彼の肉体を乗っ取り大臣になりすましていました。しかし彼も同様に先日僕たちが護送船内で倒しました」

砦兵士B「本当かっ!?」

ジュリアーノ「はい、すべてが真実です。もう1人はレッドシェイドです。あろうことか彼はジャノバ国王を殺害したのち国王に変装し君臨しています! そして彼は国民の自由を奪い、国民を苦しめる政治、すなわち悪政を行なっています! だからいつまで経っても私たちの暮らしは楽にならず、自由が訪れません!」

砦兵士C「そういえばここ数年生活も苦しくなったし、何かと制約が増えたし、悪くなっていくばかりだな……」
砦の役人「そんな恐ろしいことが起こっていたのか……」

ジュリアーノ「つまりレッドシェイドたちの目的は魔界から多くの魔物を呼び寄せ、地上に蔓延らせて侵略を繰り返しこの世界を自分たちの支配下に治めることにあるのです! その手始めとしてこの島が選ばれたわけです。鉱石の採掘というのは表向きのことで、実は魔界に通じるトンネルを造ろうと言うのが彼らの真の狙いなのです!」

砦兵士D「魔界へのトンネルだって!? 俺たちはそんな恐ろしいことに手を貸していたということか」

ジュリアーノ「魔界へのトンネルを掘削するには多くの労働力が必要です。そのために恐怖政治を行ない、パン1個窃盗などの軽い罪であっても重罪にし、この島に奴隷として送り込む。男奴隷は採掘作業に従事させ、不満が出ないように適度に『甘い飴』を与えた。『甘い飴』とは女性たちとの快楽。女性たちは男の慰み物として島に送られ変態的な処遇を受けた。特別に美しい女性は将軍やあなたたち兵士の慰み物にされ、その他の女性は男奴隷の玩具にされた。それがこの島の実態なのです!」

奴隷A「確かに労働はきつかったが、いい女を抱けるのはありがてえからな」
奴隷B「なろほど、そういうからくりがあったのか」
奴隷C「そうだったのか……女性たちには気の毒なことをしたな……」



第14章「自由への架け橋」 第10話

ジュリアーノ「私たちの国に平和を取り戻すために、今私たちが行うべきことは地上と魔界の通路となるトンネル工事をすぐに中止することなのです!」

砦兵士D「あんたの言うことはだいたい分かったけど、倒したパープルシェイド将軍が魔物だったという証拠はあるのか?」

ジュリアーノ「はい、あります。将軍の部屋に行きその亡骸を見ればきっと分かってもらえるでしょう。普段は軍服を着た将軍の姿をしていますが、亡骸は醜い魔物の姿に戻っています」

砦兵士E「分かったよ。今から俺が確かめて来てやるよ」

 2人の兵士が将軍のいる部屋へと向かっていった。

ジュリアーノ「にわかに信じ難いと思いますが、これは紛れもない事実なのです」

砦兵士C「俺は信じますよ。最近、住民への対応が極端に厳しくなったことは間違いないし、俺も何か変だなあと思っていました」
砦兵士D「奴隷制はやっぱり良くないと思うよ。悪いことをした奴は罰さなければならないけど、かといって奴隷はダメだと思うよ」

ジュリアーノ「そのことに気づいてくれてすごく嬉しいです」

砦兵士C「で、この後どうするのですか?」

ジュリアーノ「はい、それは勇者シャムさんから説明があります」
民衆「勇者だって!?」

 場内が騒然とする。
 勇者は混沌とした時代に現れるもの、と語り継がれているため驚くのは当然だろう。

 シャムがジュリアーノの耳元で小言をささやいた。

シャム「ジュリアーノの演説がめちゃ上手かったから、おいら、しゃべりにくいぞ」
ジュリアーノ「だいじょうぶです。シャムさんのお話には説得力があります。思ったとおりに話してください」
シャム「そうか? じゃあ、始めるぞ」
ジュリアーノ「はい」

シャム「ここにいる皆さん~! おいらは魔物退治をしている旅人のシャムといいます。おいらから皆さんにちょいとばかりお願いがあります! ここに囚われている奴隷をすぐに解放してあげてください! それと病人や怪我人をすぐに手当てしてあげてほしいのです!」

副司令官「私の責任でもって病人や怪我人をすぐに治療することを約束しましょう。ですが奴隷の一件は、パープルシェイド将軍が魔物だと証明できなければ解放はできません。それでいいですね?」
シャム「はい、仕方がありません」
副司令官「ところで勇者どの、この砦の一件が無事解決できたら、あなたたちはその後どのような計画をお持ちですか?」
シャム「ここにいる奴隷を無事解放できたら、その後ジャノバ国王に成りすましているレッドシェイドを倒すため港町ジャノバに行くつもりです」

砦兵士C「それじゃ俺たちも共に戦いたいのでいっしょに連れて行ってください!」
シャム「お気持ちは嬉しいですが、大軍で城攻めすると敵味方双方とも多くの犠牲が生まれます。倒すべきは偽国王レッドシェイドただ1人です。無駄な血を流すのはできるだけ避けたいと思っています」
砦兵士C「さすが勇者ですね! 混沌とした時代に現れる救世主ですね!」
砦兵士D「ところでどんな方法で国王に化けた魔物をやっつけるの?」

シャム「さてここで、皆さんにクイズです~! 『ニセ国王倒し方クイズ』~ 正解者の方にはここにいるイヴさんが使用中のパンティをプレ……」
イヴ「シャム~、今の台詞、もう1回言ってもらおうか~……」
ジュリアーノ「ゴホン、シャムさん、さすがにそれは拙いのではないかと……」

 イヴは鬼の形相でシャムを睨みつけ、ジュリアーノは呆れ果てている。

シャム「あはは、冗談だよ、冗談!」

砦の兵士C「シャムさんって本当に勇者なのですか……?」
砦の兵士D「ちょっと疑わしいかも……」

 シャムが寒いジョークを飛ばしてド滑りしている頃、パープルシェイド将軍の正体を確認してきた2人の兵士が息を切らせて戻って来た。
 顔が青ざめかなり動揺している様が見てとれる。

砦兵士E「間違いない! その人たちが言ってることは本当だ! パープルシェイド将軍の部屋を見てきたが、気味の悪い魔物が将軍の制服を着て息絶えていた……」
砦兵士F「ブルブルブル……あれは人間なんかじゃないぞ……思い出すだけでも恐ろしい……」

砦兵士C「最近、以前の将軍とかなり雰囲気が違うと思っていましたが、まさか偽者だとは……」
砦兵士D「あの偽者野郎め! 俺たちを騙しやがって!」

副司令官「偽国王打倒は勇者どのやお仲間の皆さんにお願いするとして、何か我々に協力できることはありませんか?」
シャム「では1つだけお願いがあります。できるだけ多くの人が港町ジャノバに行って、国王が偽者だという噂を広めて欲しいのです」
副司令官「なるほど、『流言』という計略ですね」
砦兵士D「『流言』ってなんだ?」
副司令官「敵の街に国王の悪い噂を流して、その街の民忠、その街にいる兵士の忠誠度や相手国王の名声を下げる計略のことなんだ」
砦兵士C「へえ~、すごい計略なんですね、ジャノバにいる親戚や友人に早速やってみます!」
シャム「今回の場合だったら、国王が魔物だと噂するだけでいいです。早ければ3日ほどで噂は広がります」
砦兵士D「面白そうだな。俺も試してみようかな」
シャム「噂が広がり、城内の兵士たちが分かってくれたら、おいらたちが偽国王に攻撃を仕掛けても援護する兵士はかなり減るはずです。つまり、大軍で攻めなくてよい理由がここにあるわけです」
副司令官「なるほど、よく考えましたね。偽国王とわずかな的であれば倒すのはそう難しくないということですね」
シャム「いいえ、レッドシェイドはそんなに簡単な敵ではないと思います。でもおいらには頼もしい仲間がいるので、おいらたちのメンバーだけで何とかなると思っています」
副司令官「大いに期待しています! それから、パープルシェイド将軍が魔物だと証明されましたので、お約束どおり本日をもって奴隷を解放します!」
砦兵士C「では早速、奴隷解放の準備に取り掛かります」
副司令官「うん、頼むぞ!」
奴隷一同「わ~~~い! 俺たちはもう自由だ~~~!」
砦兵士一同「ジャノバに平和を! ジャノバに自由を!」
砦兵士D「俺はすぐにでも偽国王の噂を広めに行くよ~!」

 最初は、不信に満ちた視線を浴び、怒号と嘲笑の飛び交う中での厳しい説得であったが、ついにシャムやジュリアーノたちの努力は報われた。
 今、奴隷や兵士たちの自由と平和の叫びを耳にして、ようやくシャムたちの表情に笑みが浮かんだ。

シャム「ジュリアーノ、よくがんばったな~。おまえのおかげでうまく行ったぞ~」
ジュリアーノ「いいえ、シャムさんがうまくフォローしてくれたから上手くいったんですよ。ありがとうシャムさん~!」



第14章「自由への架け橋」 第11話

 シャムとジュリアーノがお互いに讃え合っている様子を見て、シシがうっとりと目を細めている。

シシ「男同士の友情もいいものだね」
シャム「シシか? みんな、いつの間にか見張り台に上がってきてるけど、こんなに大勢乗って壊れないか?」
シシ「自慢じゃないけど私はスリムだから大丈夫さ。それより、ジュリアーノはこの後、どうするの?」
ジュリアーノ「皆さんさえよければ、僕もいっしょに戦いたいです。僕も仲間にしてくれませんか?」」
シャム「もちろん歓迎だするぞ~! よろしくな~」
ジュリアーノ「ありがとうございます! 僕の方こそよろしくお願いします!」

 ジュリアーノが仲間に加わった。

 全員のレベルが上がった!!
 見張り台で『みずいろの粉』を手に入れた!
 見張り台で『ガルーダの羽根』を5枚、手に入れた!

イヴ「この『みずいろの粉』って何に使うのかしら?」
エリカ「水色のことなら私に任せてください」
イヴ「え? どうして?」
エリカ「水色は私の大好きな色なんです。だから水色にまつわることなら私に聞いてください」
チルチル「wわ~! すごい! だからエリカさんは世間から『水色の女王』って呼ばれているのね?♫」
エリカ「そう呼ぶ人もいますね」
イヴ「ところで『みずいろの粉』ってどんな効果があるの?」
エリカ「はい、お答えします。『みずいろの粉』は強烈な催眠剤なのです。振り掛けると敵を一定時間眠らせることができます。でも少量しかないので大事に使わなければなりません。やみくもに使うのではなく強い敵と遭遇して苦戦したときに使用すると戦いを優位に進めることができるでしょう」
モエモエ「私のスリープ魔法と同じ効果があるのかな?♪」
エリカ「ほとんど同じです。魔法を使わない人が持っていると便利だと思います」
チルチル「じゃあ、私が持とうかな?♫」
イヴ「それはいい考えね」

 チルチルが『みずいろの粉』を装備した! 

シャルル「この『ガルーダの羽根』って何だろう?」
シシ「初めて聞くよ」
ズンダーラ「ガルーダは確かインド神話に出てくる神鳥だったと思いますが」
イヴ「以前神官の研修会で聞いたことあるんだけど、何だったか覚えてないよ」
シャム「研修中にエロいことばかり妄想してちゃんと勉強してなかったんだろう?」
イヴ「まあ、シャムったらひどい! ちゃんと勉強していたよ。帰宅してから妄想したことはあるけど……」
モエモエ「やっぱりしてたんかい♪」
イヴ「あっ、思い出した! たしか祈りながら空中に放り投げると希望する場所にワープできる優れものだったと思う」
シャム「そういえばロマンチーノ国にいた頃、侍女がそんな便利なものがあると言ってたなあ」
エリカ「シャムさんのことだから侍女との寝物語で聞いたのでしょうね」
シャム「どうして知ってるの?」
エリカ「やっぱり」
アリサ「一度行った場所に戻れるってすごく便利だねええええ。急いでいる場合は特にいいいい」

 シャムがニヤニヤしながら何やら想像に耽っている。

シャム「それじゃ早速、女の子だけ連れてバリキンソン邸にあった大浴場に行こうかな~?」
エリカ「何と不謹慎なことを」
モエモエ「ひぇ~、シャムの思考はエロしかないの~?♪」
イヴ「あんな馬ずら男の屋敷なんか二度と行きたくないよ」
アリサ「にゃあにゃあ~。バリキンソン屋敷って何なのおおおお? 興味あるうううう」
エリカ「すごくエッチな馬ずらの叔父さんがいた屋敷なんですよ」
アリサ「アリサ行ってみたいなああああ」
イヴ「行かなくていいっつ~に!」

シシ「何はともあれ便利なものが手に入ったね。それじゃそろそろジャノバに戻ろうか?」
イヴ「今回はジュリアーノの演説のお陰で戦いが起きず怪我人が出なかったからチンヒールはいらないね。残念だったわね、シャム」
シャム「? それは残念。じゃあ、イヴ、おまけに1発かけてやろうか?」
イヴ「昼日中から一体何を考えてるのかな~? こんな見張り台の上で」

 その時1羽の伝書鳩が飛んで来て、ズンダーラの肩に止まった。

ズンダーラ「なんでしょうかね? 私に手紙とは?」

 ズンダーラは伝書鳩の脚から巻紙を抜きとり読んだ。

ズンダーラ「シャムさん、こんな大事な時期にとても言い難いのですが、村に帰らなければならなくなりました」
シャム「どうしたの?」
ズンダーラ「実は近々ゴブリン族の選挙があるんです」
シャム「選挙?」
ズンダーラ「はい、我々の村では5年に一度族長を決める選挙があるのです。今回は退こうと思っていたのですが強い推薦がありまして。そんな事情ですので、いったん仲間から外れることを許してもらえませんか?」
シャム「許すも許さないもないよ。村にとって族長は欠かせない存在だ。帰って村のためにがんばってくれ。族長が仲間から外れるのは残念だけど、残った仲間でやっていく。機会があったらまた力を貸してくれ」
ズンダーラ「ありがとうございます。そのお言葉とても嬉しいです。では私は取り急ぎ次の定期船で帰路に着きます。皆さん、どうかお元気で。そして平和のためにがんばってください。陰ながら応援させていただきます。では……」
エリカ「族長、時間がある時で構いませんので、隣のウンディーネ城のミネルバ将軍に私が元気であることを伝えておいてくれませんか」
ズンダーラ「分かりました。帰りに城に寄りお伝えしておきましょう」
一同「族長さようなら! お元気で~!」
ズンダーラ「皆さん、さようなら、またいつかお会いしましょう~!」

 かくして、ペルセ島の奴隷を無事解放し、魔物の進入路ともいうべきトンネル工事の中止を果たしたシャムたちは、明朝出発に向けてペルセ港で船出の準備を始めた。
 次に目指すのは偽国王レッドシェイドが待ち構えている難関ジャノバ城である。
 今日のうちに波止場の道具屋で武器、薬草、法力草等を買い揃えておくことになった。
 シャムたちの眼前には蒼海が広がっている。
 島一面を覆う水面を渡り、吹きつける潮風は心地よく、波間に揺れて照り返す陽光は煌めきを見せ、シャムたちをやさしく包み込む。



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