ファンタジー官能小説『セクスカリバー』 Shyrock 作 |
<シャムたちの現在の体力&魔力データ>
<メンバーの現在の体力>
シャム 勇者 HP 300/300 MP 0/0
イヴ 神官 HP 240/240 MP 240/240
モエモエ 魔導師 HP 190/190 MP 270/270
エリカ ウンディーネ女王 HP210/210 MP 280/280
ヒトミ 踊り子 HP 270/270 MP 0/0
スンダーラ ゴブリン族長 HP260/260 MP 80/80
チルチル 街少女 HP 130/130 MP 0/0
⚔⚔⚔
窓から入る夕陽がシャムたちの横顔を赤く染めた。
窓際の大きな円卓に腰を掛けた彼らにようやく憩いのひとときが訪れた。
各々が好みのドリンクで喉を潤しながら、故郷のことやよもやま話を語り合う。
ちょうどその時、横のテーブルで談笑する常連客らしき男たちの会話が耳に飛び込んできた。
それは間もなくペルセ島に渡ろうとしているシャムたちにとってとても興味深い話であった。
男たちの風貌は、一人が瘦せ型で顎に黒ヒゲを蓄えており、もう一人がでっぷりと太ってビール腹をしている。ここでは黒ヒゲの男とビール腹の男ということにしておこう。
黒ヒゲの男「昨夜、また海賊フリューゲルが官船を襲ったらしいな」
ビール腹の男「おお、やってくれるじゃねえか。ざま~みろってんだ!」
黒ヒゲの男「し~っ、声が大きいぞ。この街には時々兵士が巡回しているからな。もし聞かれたらかなりヤバイぞ」
ビール腹の男「そうだな、気をつけなくては。それにしても海賊フリューゲルは本当に強いなあ」
黒ヒゲの男「おそらく海洋では無敵だよ」
ビール腹の男「ところでジャノバ国王はいったい何を企んでいるのだろうな? 向かいのペルセ島に頻繁に船が往来させているが」
黒ヒゲの男「う~ん、噂によると罪人を島に連れて行って過酷な労働をさせているって話も聞くが本当かどうか」
ビール腹の男「わずかパン1個を盗んだだけで牢屋に放り込み島送りされるなどと怖ろしい話も聞くが……もしそれが本当だったら酷い話だな」
黒ヒゲの男「俺たちも気をつけなくては」
ビール腹の男「そうだな、気をつけよう」
ふつう海賊は怖れられるもの。
ところが彼らによるとまったく逆で、官船が襲われたことを喜んでいるではないか。
いったいどういうことなのか。
それにえらくジャノバの国王が嫌われているようだ。
ジャノバ国にはどのような秘密が潜んでいるのだろうか。
シャムは思い切って男たちにたずねてみた。
シャム「今の話をちょっと教えてくれないか?」
黒ヒゲの男「うん? なんだ?」
シャム「その話を詳しく聞かせて欲しいんだけど」
ビール腹の男「なに? もしかしたら俺たちの話を盗み聞きしてたのか?」
エリカ「すみません。聞くつもりはなかったのですが、つい耳に入ってしまって、すごく気になったのです」
黒ヒゲの男「な、なんと! すげえ色っぽい女じゃねえか! で、何を聞きたいんだ?」
エリカが声をかけたとたんに男の態度が一変した。
ビール腹の男「おい、相棒。相変わらず美人には甘いなあ、がははははは~!」
黒ヒゲの男「馬鹿野郎、人のことを言えた義理か? おめえだって美人が好きじゃねえか」
ビール腹の男「へへへ、違いねえや。ところで何だい? この国に傭兵か何かに雇ってもらおうと思っているのか?」
エリカ「いいえ、そうではないんですが、私たちは島に渡らなければならない事情がありまして」
黒ヒゲの男「う~ん、何か深い訳がありそうだなあ。まあ、訳は聞かねえことにしてやるよ」
エリカ「ありがとうございます。それでその海賊のことを教えて欲しいのですが」
ビール腹の男「うん、いいよ。やつらは海賊フリューゲルというんだ。海賊といっても一般の貨物船や旅客船は絶対に襲わないんだ。簡単に言えば義賊ってところだね。ヤツラが標的にしているのはジャノバ国の官船だけなんだ。船長は正義感にあふれた若い女ですげえ剣の使い手らしい。まあ、オレの知ってるのはそんなところかな」
黒ヒゲの男「その女船長はすっげえ美人だって噂だぜ。オレは一度も見たことはねえんだけどな」
エリカ「よく分かりました。ありがとうございます」
モエモエ「あ、ちょっと待って! もう一つだけ教えてください♪ さきほどジャノバ国王が何か企んでるって言っていたけど、どういうことなのですか?」
ビール腹の男「え? う~ん、噂なんだけどな……」
黒ヒゲの男「おい、相棒! 余計なことを喋るんじゃねえ! もし兵士に聞かれでもしたらただでは済まんぞ! 黙ってろ」
ビール腹の男「可愛いお嬢さん、そう言うことなんだ。捕まりたくないのでこのくらいで勘弁してくれねえか」
モエモエ「よく分かりました。ありがとう~♪」
突然イヴが店員に声をかけると、さきほどの少女店員がやってきた。
イヴ「ねえ、店員さん、このお客さんたちのお勘定は私たちが払うから、追加注文を聞いてあげて」
ヒトミ「ええ~!? イヴさん、やたら気前がいいね」
ビール腹の男「えっ? 奢ってくれるのか? 悪いなあ、じゃあお言葉に甘えて」
黒ヒゲの男「すまないな~、神官コスプレのおねえさん!」
イヴ「リアル神官だっつうの」
黒ヒゲの男「ほう、そうなんだ。本物の神官さんか? えへへ、これは失敬」
ビール腹の男「それにしてもすげえ美人ぞろいだな~! なあ、相棒? そこの坊やが本当に羨ましいぜ~」
黒ヒゲの男「いやあ、全くだ~」
シャム「坊やっておいらのこと? ムムムッ、ムカッ! これでもおいらはもう18だぞ~~~!」
イヴ「まあまあ、シャム。ここは怒っちゃダメ。ね?」
イヴがシャムにウィンクで目配せをした。
ビール腹の男「せっかく奢ってくれているのに、悪いことを言っちまったなあ。すまねえ、謝るよ」
シャム「いやいや~、全然気にしてないよ~(本当はすごく気にしている)」
シャムたちが男たちと雑談をしていると、突然エリカが人差し指を口の前で立てる仕草をした。
エリカ「んっ!? お話し中ごめんなさい……ちょっとの間、静かにしてくれませんか?」
シャム「……?」
ビール腹の男「なんだ?」
エリカは耳を傾けて音を聴き取ろうとしている。
ウンディーネ族の耳は人間よりも5倍よく聴こえるといわれている。
エリカ「あっ! 助けを呼ぶ声が聞こえます! 女性の声です! そう遠くではありません!」
シャム「おいらには聞こえないけどなあ……」
『きゃあ~~~! いやあああああ! なにするのおおお! 私、盗んでないよおおおおお!』
シャム「あっ! おいらにも聴こえたぞ! 直ぐに行ってみよう!」
チルチル「ん? まだティラミスケーキを食べている最中なんだけどもう行くの?♫」
イヴ「チルチルちゃんはそのまま食べていたらいいわ!」
チルチル「wえっ、そんなあ。置いてけぼりは嫌だよ。私も行くピョン!♫」
シャム「ヒトミ! ここでチルチルと留守番を頼むよ! 荷物もあるし」
ヒトミ「うん、いいよ。戦闘になったら私も行くから!」
チルチル「私も行きた~い♫」
シャム「だめだめ、チルチルはヒトミと留守番してるんだ」
チルチル「つまんないの♫」
シャムたちは武器を携えてあわただしく店を飛び出した。
⚔⚔⚔
ここは港町ジャノバの海岸通り。大通りよりも西にあり倉庫が多く人気は大通りよりも少ない。
街を巡回する3人のジャノバ兵が、うら若い女性に詰め寄ってなにやら厳しい口調で尋問している。
うら若い女性の頭部にはネコ耳がついておりおそらく半猫族だろう。
彼らの周囲には次第に野次馬が増えていき興味深げに見守っている。
兵士A「おい、娘! 嘘をつくな! おまえがパンを盗んでいるところを見たという者がいるんだぞ! おとなしく盗んだものを出せ!」
ネコ耳娘「にゃああああ~! 私、盗んでなんかいないよ~、お店でちゃんとお金を出して買ったのにいいいい!」
兵士B「どうしてもしらを切るなら城で取調べをしてやる! さあ来い!」
ネコ耳娘「やだああああ~! 盗んでないのにいいいい~!」
バリバリバリ~~~!
腕をつかまれたネコ耳娘が突如鋭い爪で兵士の顔面を引っ掻いた。
兵士B「ぎゃあ~~~~~!」
爪を立てられた兵士は叫び声を上げもんどりうって倒れてしまった。
兵士C「生意気なネコ耳め! おれたちジャノバ兵に歯向かう気か~! もう許さないぞ! さあ、来るんだ!」
ネコ耳娘「にゃああああん! やだよおおおお~! 盗んでないのに~~~!」
兵士A「城で素っ裸にひん剥いて調べてやるっ! さあ来い!」
ネコ耳娘「助けてにゃああああああああ~!」
2人の兵士はネコ耳娘の両脇を腕でガッチリ挟み込むと、引き摺るように連れ去っていった。
兵士とネコ耳娘の騒動を立ち止まって見物していた人々は口々にささやき合った。
通行人A「可哀相になあ。パンを1個盗んだくらいで連れて行くなんて酷いやつらだよ」
通行人B「いや、あの子は盗んでないと思うよ。やつらは女奴隷が必要なもんで街にやってきた女性にむりやり罪を着せて連行しようとしているんだ。だって街に暮らす女性にそんなことをしたら街中が大騒ぎになるからな」
通行人A[うん、おそらくそれが真実だろうけど、滅多なことは言わない方がいいと思うよ。やつらはどこで聞いているか分からないからなあ」
通行人B「全くそのとおりだ。気をつけなくては」
そこへシャムたちがやって来た。
シャム「しまった。一足遅かったか」
エリカ「叫んでいた女性はここにはもういないみたいですね」
騒動の後まだ立ち止まっている人たちにイヴがたずねてみた。
イヴ「すみませんが、今ここで何が起きていたのですか?」
街の女A「実はね、少し前にネコ耳の女の子がパンを盗んだとかで、兵士に連れて行かれてしまったのよ。可哀相に……。まったくここの国王は何を考えてるんだか」
イヴ「ネコ耳の? で、どんな子だったですか?」
街の女A「そうね。背は162、3センチぐらいで、澄んだ瞳のとてもかわいい子だったわ」
イヴ「えっ……そうですか……。シャム、もしかしたらアリサちゃんかも……」
シャム「うん、はっきりしたことはまだ言えないけど、アリサかも知れないな」
イヴ「もしそうだとしたら大変だわ。早く助けなくては」
エリカ「でもジャノバ国を相手にわずかな手勢で攻めるのは無謀ですよね」
シャム「うん、それはちょっと無茶だな」
シャムが立ち止まっている人々にたずねた。
シャム「すみません、ちょっと教えてくれませんか? この国では罪人はどのように扱われているのですか?」
街の女A「さあ、それは……」
街の男B「あんまり大きな声では言えないけどね、この国で罪を犯したら、軽い罪でもほとんどの罪人が島送りされるんだ。島ではかなりの重労働が待っていると聞くよ。だけどここだけの話ってことにしておいてくれよ」
シャム「ありがとう。おじさん、おばさん」
ジャノバ国では軽い罪でも島送りにされるという。かなり酷い圧政を行なっているようだ。
それにしてもネコ耳娘のことが気にかかる。
シャム「ペルセ島に渡ろうと思っていたけど、さっきのネコ耳娘のことが気になるな」
モエモエ「アリサちゃんなのかなあ? すごく心配だね」
イヴ「アリサちゃんかどうかはっきりしないけど、助けに行かなくては」
モエモエ「うん、私もそう思う♪」
シャム「じゃあ、さっきのカフェバーに戻って作戦を練るとしよう」
エリカ「仲間のネコの子を助けましょう」
モエモエ「ネコの子じゃないよ。ネコ耳の子だよ♪」
エリカ「ごめんなさい。ネコ耳の子でしたね」
パン1個を盗んだ容疑で捕らわれてしまったネコ耳娘は、四方が壁に囲まれた狭い部屋で忌まわしい枷で四肢を拘束され、兵士たちから厳しい尋問を受けていた。
衣服は剝ぎ取られ、身体に残された布は濃紺のショーツ1枚だけというあられもない姿を晒していた。
兵士A「早く白状しろ、このネコ耳め! パンを盗んだのだろう?」
兵士C「正直に白状したら刑を軽くしてやるぞ。さあ吐くのだ!」
ネコ耳娘「パンは買ったんだよおおお! パン屋さんに聞いたら分かるよおおお!」
兵士A「パン屋に聞いたらネコ耳娘など来なかったと言ってたぞ。嘘をつくと罪が重くなるぞ、いいのか?」
ネコ耳娘「盗んでないのに盗んだなんて言えないよおおお!」
兵士C「どうしても白を切るつもりだな? 同僚の兵士を引っ掻いて傷を負わせるし、絶対に許さないぞ~!」
兵士はネコ耳娘を押し倒し、下半身を覆うたった一枚の布切れに手を伸ばした。
ネコ耳娘「にゃあああ~~~! やめてよ~~~!」
兵士A「さあ、ネコ耳ちゃん、可愛がってやるからさ~、おとなしくパンツも脱ぐんだよ~。おい、相棒! ボ~ッと見てねえでお前も手伝わねえか!」
兵士C[兄貴、すまない! それじゃ俺はネコ耳をしっかりと押さえておくから早く脱がしちまいな~」
ネコ耳娘「なんで私がこんなことをされないといけないのよおおお~!」
ネコ耳娘は太股に力を入れて最後の一枚を守ろうと必死に抵抗する。
一人の兵士がネコ耳娘の髪の毛をわしづかみにして引き上げると、ネコ耳娘はバランスを崩しそこへ二人の兵士が一気に襲いかかった。
ネコ耳娘「にゃああああ~~~!」
兵士とかなりの体格差がありネコ耳娘はなすすべがない。
臀部が見えるまでショーツが引きずり下ろされたとき、突然部屋の扉がバタンと開いて、堂々とした体格のどこか無機質な雰囲気の漂う男が入ってきた。
ネコ耳娘に襲いかかろうとしていた兵士たちは慌てて襟を正し、かしこまって低姿勢をとった。
無機質な雰囲気の男は冷ややかな眼光で兵士たちを睨みつけた。
無機質男「なんだ? 騒々しいではないか。その娘は何者だ?」
兵士A「これはこれはサンジェルマン大臣閣下。みっともない所をお見せして申し訳ありません! 今、この娘を泥棒の容疑で取調べをしておりました! 決して変なことはしておりません!」
大臣閣下と呼ばれている男は名前をサンジェルマンというらしい。
サンジェルマン「ふふふ、本当か? ならば何故下着を引き下げようとしていた?」
兵士A「あのう……それはですね……あのぉそのぉ……」
サンジェルマン「まあよいだろう。で、何を盗んだのだ?」
兵士A「はい、パンでございます」
サンジェルマン「もっと詳しく述べよ」
兵士たちはサンジェルマン大臣に、先ほどからの経緯をつぶさに報告した。
ネコ耳娘がパンを盗むところを目撃した証人がいるなどと嘘を交えながら。
サンジェルマン大臣は報告を聞きながら、ときおりネコ耳娘に淫靡な視線を注いでいる。
サンジェルマン「ふむふむ、なるほど、経緯はよく分かった。ネコ耳娘、名は何というのだ?」
ネコ耳娘「アリサ……」
サンジェルマン「アリサか……良い名だ」
アリサ「誉めてくれても何も出ないもんね」
サンジェルマン「ふふふ、それはどうかな?」
アリサ「……?」
サンジェルマン「縄を解いてやれ」
兵士「えっ?よろしいのですか?」
サンジェルマン「構わん。縄で縛らずともここから逃げるのは不可能だ」
兵士がアリサの縄を解くと、サンジェルマンが兵士たちに人払いを命じた。
サンジェルマン「ご苦労であった。もう下がって良いぞ」
兵士A「え? まだ取り調べ途中ですがよろしいのですか?」
サンジェルマン「構わない。私がやるから、おまえたちは下がれ」
兵士A「ですが……」
サンジェルマン「命令が聞けないのか?」
兵士A「いいえ、とんでもございません。……直ぐに下がります。では失礼します!」
兵士C「大臣閣下、失礼します!」
兵士たちはサンジェルマンに敬礼をすると、そそくさと立ち去ってしまった。
部屋を出た後、兵士たちはささやき合う。
兵士C「くそ~! せっかく可愛いネコ耳娘を裸にひん剥いて、さあこれからって時につまらないな~」
兵士A「全くだ。それにしても可愛い子だったなあ~」
兵士C「ところで、相棒。近頃大臣閣下の様子が変だとは思わないか?」
兵士C「おまえもそう思うか? 実はオレも最近そう感じるんだよ」
兵士A「何か氷のように冷たい感じがするんだ。まるで人間の感情がないみたいな……」
兵士C「しっ! 声が大きいぞ! もし大臣閣下の耳にでも入ったら軍法会議だぜ」
兵士A「それは恐ろしい! それはそうと、ネコ耳娘に引っ掻かれた仲間の具合を見に行ってやろうぜ」
兵士C「おお、そうしよう」
⚔⚔⚔
サンジェルマン「どうしてパンを盗んだ?」
アリサ「私、本当に盗んでないよおおおお!」
サンジェルマン「ふん、そうかな? 正直に言えば島送りは許してやろう。ただし1週間、城にとどまって兵士たちの夜の世話をしてもらうがな」
アリサ「えっ!? 兵士たちの夜の世話……? つまり知らない人たちと1週間エッチをしろってこと? やだよ! そんなこと絶対に無理いいいい!」
サンジェルマン「どうも聞き分けのない娘のようだな。少し痛い目に遭わないと分からないか……」
言葉が終わらないうちに、サンジェルマンの軍服のボタンが弾け飛び、肌がみるみるうちに緑色に変わり、触手のような物体が肩の辺りから生えてきた。
アリサ「えっ……? きゃぁああああ~~~!」
触手の太さは直径5センチあり先端が男根のような形状をしている。
触手は1本にとどまらず身体のあちらこちらからもどんどん増殖していく。
最初に生えた1本がアリサ目掛けてシュルシュルと伸びてきたが、持ち前のジャンプ力で間一髪かわすことができた。
アリサ「なにっ……? あんたは人間じゃないの!?」
サンジェルマン「ふふふ、なかなかやるじゃないか。では、これならどうかな?」
アリサ「んっ!?」
増殖した触手が二方向に分かれ、アリサの左右から急襲した。
右側の足首に触手が絡みつき、不意を突かれたアリサは思わず転倒してしまった。
アリサ「きゃっ!」
触手は右足首にとどまらず、左足首にも巻きつく。
アリサ「きゃああああ~~~! 何よこれ~~~!」
触手は両足首にグルグルと巻き付きアリサの動きを封じてしまった。
アリサは屈みこみ爪を立て噛みつき必死に抵抗する。
次の瞬間、叫び声が轟いた。
サンジェルマン「ギャ~~~!」
鋭い牙で噛み切られた1本の触手が、緑色の血しぶきを飛ばしながら床にドサリと落ちた。
サンジェルマン「くそっ! 私に傷をつけおって! 生意気なネコ耳が! もう許さんぞ!」
アリサ「よく言うよ! 先に手を出したのはあんたの方じゃないかああああ!」
サンジェルマン「減らず口を叩きおって。これでも食らえ!」
シュルシュルシュル~~~!
今度は3本の触手がアリサを目掛けて伸びてきた。
アリサ「きゃああああ~~~! やめてよおおおお~~~!」
うち2本が胴体に巻きつき、もう1本は乳房に巻きつきグイグイと絞めあげた。
アリサ「うぐぐっ! 苦しい……」
胴体に巻き付いたうちの1本が、方向を下腹部へと転じた。
まるで蛇のように臍の周辺を這い回りながら、紺色のショーツの中に潜り込んでしまった。
アリサ「ぎゃああああ~~~! そこはダメだってええええ~~~!」
サンジェルマン「ふふふ、生意気なネコ耳め。思い知るがよい。おまえはこの私を大臣だと思っておったのか?」
アリサ「ええっ! 違うの!?」
サンジェルマン「ふふふ、サンジェルマン大臣はもう死んでいる」
アリサ「何だって!? じゃあ、あんたは誰なの!?」
サンジェルマン「私は魔界からやってきた『ブラックシェイド』だ。人間どもは私のことを淫獣と呼んでいるようだが、実にうまい名前をつけてくれたものよ。ふっふっふっふ」
アリサ「インジュウ? 何、それ??」
ブラックシェイド「は? 淫獣を知らんのか?」
アリサ「にゃんにゃん~ 全然知らないものねええええ」
ブラックシェイド「何かバカにされたような気分……」
アリサ「ところで、本物のサンジェルマン大臣は殺した後どこに葬ったの?」
ブラックシェイド「ふふふふ、知りたいか? やつの身体はこの私だ」
アリサ「え!? なんかややこしいけど、つまりサンジェルマン大臣の身体に乗り移ったってこと?」
ブラックシェイド「まあ、そういうことだ」
アリサ「な、何と言うことを……」
見ているうちにアリサの顔がだんだん青ざめていった。
ブラックシェイド「サンジェルマン大臣に成りすまし、この国を支配するのだ」
アリサ「でも上には国王がいるじゃないの」
ブラックシェイド「ふふふふ、国王もすでに死んでいる」
アリサ「な、なんだって!? 国王も殺してその身体に誰かが乗り移ったというわけ?」
ブラックシェイド「そのとおり。国王に乗り移ったのは『レッドシェイド』という私の仲間だ。ふふふふ」
アリサ「ひどい! それはあんまりだよおおおお!」
ブラックシェイド「私としたことがちょっとおしゃべりが過ぎたようだな。とは言っても、どうせおまえは明日島送りになる身だ。ペルセ島で死ぬまで働いてもらう。この大陸には二度と戻れないから、今から覚悟を決めておけ」
アリサ「ペルセ島? 島送り? 一生戻れない? ええええ~~~!? そんなの嫌だよおおおお! 私、村に帰るもん!」
ブラックシェイド「残念だがそれは諦めるのだな。さて、おしゃべりはこの辺にして、そろそろネコ耳を味わうとしようか」
アリサ「えっ……!?」
アリサにまとわりつく触手たちは一斉に行動を開始した。
ヌメヌメとした不気味な感触が舐めるようにアリサに肉体を這い回る。
アリサ「ひぃいいいい~~~!」
持ち前の俊敏さで避けようとするが、胴体に絡みついた触手がアリサの自由を奪いとる。
ショーツに忍び込んだ触手が再び動きはじめ、肉豆に白い液体を吹きかけている。
「なに?……このネバネバした白い液体は? 気持ち悪い……」
「人間からは精液に見えるかも知れないがこれは精液ではなく潤滑油なのだ。触手が太くてもこの潤滑油があるから挿入が容易になる。なかなか紳士的だろう?」
「どこが紳士なの」
「けっ、可愛くないネコ耳め。目に物を見せてくれるわ」
「いやっ!入れないでええええ!」
ヌチョヌチョという水音とアリサの悲痛な声が部屋の中にこだまする。
触手が吐き出す粘液によってショーツはグッショリと濡れ、触手の卑猥なうごめきが手に取るように分かってしまう。
アリサ「きゃああああ~~~! やめてええええ! ひゃああああ! 気持ち悪いよおおおお~~~!」
ブラックシェイド[ぐっふっふ、その小さな布が邪魔だな。取ってしまおう」
アリサが着用していた紺色のショーツは、いとも簡単に引きちぎられてしまった。
噴き出していた白い液体はいつのまにか止まり、触手の先端はついに花弁をかき分け今まさにアリサの中に侵入しようとしていた。
アリサ「そんな太いの無理いいいい~~~! やめてええええ~~~!」
ブラックシェイド「ほほう、これはなかなか良い締まりではないか。私の触手をたっぷりと味わうがよいぞ!」
クチュ! グチュ! ニチュ!
アリサ「はっ、んっ……んあぁっ……くんっ……だめええええ……」
ブラックシェイド「これはいいっ!」
アリサ「あっ……あ、あっあっあっ……! んっふうっ!」
こんな醜い触手に感じてなるものか、と気を逸らそうとするアリサだが、ぞくぞくするほどの快感が迫りくる。
「あ……あ、いやああああ~~~~~っ!」
大量の触手が絡みつく。
腕と足を捕らえた触手は、アリサを四つんばいに固定する。
一本の細い触手がシュルルルと音を立ててアリサに近づいてくる。
向かった先は秘裂の直下にあるクリトリス。
先に挿入を果たした触手と並んで、クリトリスに吸いつく。
股間に挿入とは別の感触がアリサを苛む。
アリサ「はあうっ……そこダメぇ……吸わないでええええ」
チュル……ニチュ……チュバッ……
「ひゃうっ……あうっ……んああああっ~~~!」
ブラックシェイド「ぐっふっふっ、吸われるとそんなにいいのか? では要望に応えてもっと強く吸ってやろう」
アリサ「ん、や、やんっ……要望してないって……ああ……っ!」
ブラックシェイド「膣とクリトリスのダブル攻撃だ~!」
(そこ……だめ………っ! こんな感覚……知らない……っ!)
「ひぁああああ~! あっ、んぃいっ!? そん……な、奥、だめ、ぁっ……!」
抽送と吸引、2本の触手がそれぞれ異なる動きでアリサを攻撃する。
アリサ「あんたなんかに……負け……ない……あ、でも……そ、そんなの……ダメだよおおおお」
キッとブラックシェイドを睨みつけたアリサだったが、細い触手にクリトリスを吸いつかれてからというもの、身体をのけぞらすばかり。
触手たちに散々貪られしゃぶられたクリトリスは勃起し、燃えるような快感に襲われた。
膣からは触手が吐き出した潤滑油と、大量の愛液が入り混じって泡立ちながらボトボトと零れ落ちる。
アリサ「あああああ~~~っ……はっ、ああぁっ……んあ……もう……らめええええ……」
さらに触手はアリサの子宮口付近まで深く侵入し、重い抽送を繰り返す。
たまらない刺激に息も絶え絶えなアリサは身体の中の熱が弾けそうな感覚に襲われた。
アリサ「いやああああ……あぁあぁっ……くる……きちゃ、うぅ………っ」
膣内は激しく痙攣しギュッと触手を締めつける。
アリサはつま先をピンッと伸ばしながら弓なりにのけぞる。
そしてついにはあまりの快感に耐えきれずブシュッ、と尿道から潮を放出してしまった。
アリサ「え……!? あああああああああ~~~~~~~~~~っ!!」
目を固く瞑ったアリサの身体が大きく痙攣した。
アリサ「ひゃぁああああ~~~! イク……イッちゃうよおおおお~! いやぁああああ~~~~~~!」
ブラックシェイド「イけ! イけ! イッてしまえ~! 溢れた蜜と潮は私がきれいに飲み干してやるぞ!」
アリサ「ふわあああああ~~~イクうううう~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
ガクガクと全身を痙攣させてアリサは焦点の合わない虚ろな目で天井を見ている。
「ついにイキおったか。膣内の蜜と潮は全部吸い取ってやるからな。ぐふふふふ」
ブラックシェイドは満足そうに笑みを浮かべた。
突き刺さった触手はそのまま抜かれることなく蜜と潮が入り混じったジュースを音を立てて吸っている。
「なかなか美味だぞ。ぐふふふふふ」
「はぁ……」
ようやく大きな絶頂の波が引いたアリサだがぐったりと脱力し、瞳の輝きはもはや失われていた。
「ネコ耳娘よ、お前の蜜と潮はなかなか上質だったぞ。これで当分食料を摂らなくても生きていけそうだ。明日、お前は島に渡る。島に行けば今度は飢えた人間の男どもがおまえを可愛がってくれるはずだ。まあ、船が島に到着するまでは私が可愛がってやるから安心しろ。今夜はゆっくりと休むが良い。ふっふっふっ」
⚔⚔⚔
その頃、ヒトミは疾風の如く街を駆け抜け、シャムたちが待つ宿へと帰っていた。
シャム「ヒトミ、お疲れ~! どうだった? 情報はつかめたか?」
ヒトミ「大変だよ! やっぱり捕まってる子はアリサちゃんで、何でも明日の朝に、島行きの船で護送されてしまうんだって。警戒が厳重すぎて城の中の方には入れなかったけど、城内の兵士を買収して情報をつかめたよ」
イヴ「ヒトミちゃん、おつかれさま。やっぱりありさちゃんだったんだ。早く助けてあげなければ」
エリカ「でもそう簡単にはいかないと思いますよ。彼らは何か悪事を企んでいるようだから、すごく神経質になってると思うんです」
モエモエ「でも島に送られるともっと助けにくくんるんじゃない? 私たち全員で攻めれば何とかなるのでは?」
ヒトミ「モエモエちゃん、それはちょっと無謀だよ。兵士の人数は半端じゃないもの。たとえ私たちが全員で攻めても無駄死にするだけだよ」
シャム「ううむ、であれば狙いは護送船だな」
モエモエ「ええ!? 護送船を狙うってどういうこと?」
シャム「うん、城に囚われているアリサを助けるのは今の状況だとかなり厳しい。かと言って船が島に着いてしまってからではさらに難しくなる。であれば、その途中を襲うしかない。つまり護送中を襲うか、今夜船にこっそりと潜り込むか、どちらかだ」
モエモエ「今夜、潜り込んで、出帆してから隙を見てアリサちゃんを助け出すって言うのはどう?」
ヒトミ「それは無理だと思う。実はこっそりと護送船も調べて来たんだけど、ネコの子一匹入れないほど厳重な警戒だったよ」
スンダーラ「やはり海上で護送船を襲うしかないようですな。城よりはかなり手薄だと思うし、漁船なら相手も油断すると思うので十分チャンスはあると思います」
エリカ「ただいくら手薄とはいっても、最近海賊が出没しているようなので、警戒しているとみておいてよいと思うんです」
イヴ「そうね。少々難しくても絶対にアリサちゃんを助けなければ!」
チルチル「チルチルもがんばるピョン! アリサちゃんを助けに行くのだ~♫」
モエモエ「チルチルちゃん、すごい気合! じゃあ、明日決行で決まりだね♪」
シャム「うん、決まりだ! じゃあ、おいらは今から漁師のところで船を借りてくるよ」
エリカ「シャムさん、待ってください。その役目なら男性のあなたより、私たち女性の方が向いていると思います。ぜひ私に行かせてください」
シャム「うん、分かった。じゃあエリカに頼もう。もう一人誰か連れて行けば?」
チルチル「私が行くぅ♫」
エリカ「え? チルチルちゃん? ダメダメ、チルチルちゃんは宿屋でお留守番しててくださいね。モエモエさん、付き合ってくれますか?」
モエモエ「うん、いいよ♪」
チルチル「wえ~ん、つまんないの……」
エリカ「ごめんね、チルチルちゃん。あ、そうそう、シャムさん、一つお願いがあるのですが」
シャム「なに?」
エリカ「チルチルちゃんに防具を買ってあげてくれませんか? 今後私たちと帯同するとなると、少しでも補強しておいたよいと思うんです」
シャム「うん、分かった。頑丈な鎧を買ってやるよ」
イヴ「もうシャムったら。小柄な女の子に重い鎧なんて無茶よ。もっと軽いものじゃないと」
スンダーラ「さしずめ革の鎧が軽くてよいのではないでしょうか」
イヴ「私もそれがよいと思う。チルチルちゃん、私が選んであげるからね」
チルチル「wわ~い、どんなの買ってくれるのかな~♫」
エリカとモエモエが漁師の住む漁村に向かうと、まもなくシャム、イヴ、チルチル、ヒトミ、スンダーラの5人も夕方訪れたレストランバー近くにある防具屋に向かった。
⚔⚔⚔
暮れなずむ頃、『ロドルフォ防具店』と描かれた1枚の看板がシャムたちの目に飛び込んできた。
イヴ「小ざっぱりした店ね。さあ入りましょう」
店の扉を開けて中に入ると、意外に店内は広く商品の豊富さに驚かされた。
男性店員「いらっしゃい」
あいさつが飛んできた。
ちらりとそちらを見ると、白髪混じりの髭を蓄えた男性店員がニコニコと笑顔を向けている。
男性店員「何をお探しで?」
イヴ「この子の防具が欲しいの」
イヴの横でチルチルがにっこりと微笑んでいる。
まだ幼さが残り、見るからに非力そうなチルチルの姿を見た男性店員は驚きを隠しきれない様子だ。
男性店員「あのぅ、大変失礼ですがお嬢様が戦われるのですか?」
チルチル「wん、そうだよ♫」
男性店員「お嬢様は、戦士系、魔法系のどちらでしょうか?」
イヴ「どちらでもないの。ごくふつうの女の子です」
男性店員「そ、そうですか。ふつうの女の子ですか……」
イヴ「実は私たちはある目的で旅をしているの。この子は戦闘員ではないんだけど、敵と遭遇した場合を考えてできるだけ防御力を高めておきたいの」
男性店員「なるほど」
スンダーラ「シャムさん、私としては、チルチルちゃんはまだ非力なので、重い装備をつけると動きが鈍ってむしろ危険だと思うのです。動きを重視して『革の盾』か『革のよろい』のどちらか一つだけを装備するのがよいと思うのですが」
シャム「族長の意見に賛成だ。おいらは『革のよろい』が一番適してると思う。盾だと敵の攻撃を受け止めようとどうしても敵の剣の真正面に行ってしまう。だけど鋭い剣だと『革の盾』では防ぎきれない。つまりは逃げるが勝ちってことさ!」
イヴ「これで決まりね」
男性店員「皆さん、お詳しいですね。さぞやお強いのでしょうね」
チルチル「いや~、それほどでもないけどね~♫」
ヒトミ「あんたが言うな」
チルチル「えへへ♫」
男性店員「ではサイズを合わせをしますので試着室にどうぞ」
シャム「そうそう、族長、盾を買えば?」
スンダーラ「えっ? よろしいので?」
シャム「遠慮するなよ。ゴールドも結構貯まったんだし、しっかりと装備しなければ」
スンダーラ「ではお言葉に甘えて『鉄の盾』を買わせていただきます」
イヴ「族長って遠慮深いのね。それはそうと前から気になっていたんだけど、シャムってどうして鎧のつけないの?」
シャム「おいら、重いのが嫌いなんだな~、肩が凝るし」
ヒトミ「好き嫌いを言ってる場合じゃないよ。これから先、敵だって強くなってくるんだし。イヴさん、ここは無理でもシャムにつけさせようよ」
イヴ「うん、そうだね。シャム、鎧をつけなさい!」
ヒトミ「シャム、自分のためだよ、鎧をつけなさい!」
チルチル「シャム、鎧をつけようよ♫」
シャム「ううん、でも肩が凝るしなあ」
イヴ「もう駄々っ子だね。じゃあ時々私たちが交代で肩を揉んであげるから鎧をつけて」
シャム「肩だけ?」
イヴ「贅沢をいうな!」
ヒトミ「甘え過ぎ!」
チルチル「めっ、シャイったら~♫」
シャム「ああ、こわいこわい。分かったよ」
イヴ「じゃあできるだけ肩が凝らない『銅のよろい』ということでいいね?」
シャム「うん、いいよ」
イヴ「店員さん、合計でいくらですか?」
男性店員「ありがとうございます。え~……」
財布を出して店の会計を済ませるイヴ。
チルチルが『革のよろい』を手に入れた!
スンダーラが『鉄の盾』を手に入れた!
シャムが『銅のよろい』を手に入れた!
⚔⚔⚔
チルチル「おなかが空いた~♫」
イヴ「うん、おなかが空いたね。でもエリカさんとモエモエちゃんが今漁港に行ってるし、アリサちゃんのことが気がかりなので、戻ってから宿屋の食堂で何か食べようよ」
チルチル「うん、そうする♫」
シャム「道具屋にも寄るか?」
ヒトミ「薬草と法力草を少し買い足しておく?」
スンダーラ「それが賢明ですな」
シャムたちが薬草等を補充し道具屋を出ると、港はすっかり夜のとばりが下りていた。
荷役たちが荷物を下ろし賑わっていた波止場も今は人影が見えない。
沖を行きかう船も少なく、多くの船が港で停泊している。
シャムたちは宿屋へと戻っていった。
チルチル「エリカさんとモエモエちゃん、まだ帰ってこないね」
イヴ「もうすぐ帰ってくると思うわ。チルチルちゃん、おなかが空いたのでしょう? 先に食べる?」
チルチル「ううん、待つよ♫」
シャム「エリカとモエモエが帰ってくるまで何かして遊ぼうか?」
チルチル「wわ~い♪ 遊ぼう遊ぼう~! それで何して遊ぶの?」
シャム「うん、そうだな。お医者さんゴッコでもしようか?」
チルチル「それなあに? よく分からないけど何か面白そうだピョン♫」
シャム「チルチルはしたことがないんだ? じゃあおいらが教えてやるよ。隣の部屋に行こうか」
イヴ「シャム! チルチルちゃん! 行かなくていいの! 今それどころじゃないでしょ? チルチルちゃん、私がチェスを教えてあげるよ」
チルチル「チェス? うん、教えて~♫」
イヴはチルチルと向かい合ってチェスのピースを並べ始めた。
シャム「イヴは余計なことをいうんだから」
ヒトミがニヤニヤ笑っている。
ヒトミ「シャム、残念だったね。もう少しでチルチルちゃんにチンヒールを掛けてあげられたのにね」
シャム「ヒトミまでそんなことを言うのか。チンヒールは戦闘で怪我をした女性に掛けるものだぞ。そんなことこれっぽちも考えてないもの」
ヒトミ「それもそうだね。チルチルちゃんは全然怪我がないものね」
シャム「全然毛が無い? ツルツルってことか? もしかしてヒトミはチルチルちゃんの裸を風呂で見たのか?」
ヒトミ「ば~か。その『けが』じゃないよ。っていうか15才だったらもう生えていると思うよ。ねえ、チルチルちゃん?」
イヴとチェスを楽しんでいたチルチルだったが、ヒトミの問いかけに反応した。
チルチル「もう、ヒトミちゃんったらエッチ! そんな恥ずかしいこと教えないもん!」
ヒトミ「うわ~マジ怒ってる! ごめん、ごめん」
イヴ「むきになるところがまだ無邪気で可愛いわね。私も少し前にはこんな時代があったのねえ」
イヴが懐かしむようにしみじみと思い出していると、
ヒトミ「少し前? かなり前……ではないかと」
イヴ「ヒトミちゃん! もう一度言ってみて」
ヒトミ「ぎゃあ~~~! 冗談、冗談! ごめんなさい!」
女性たちの会話を聞いていたスンダーラはポツリとつぶやいた。
スンダーラ「15才か……我々ゴブリンの女性であればまだツルツルですが?」
ヒトミ「そんなこと、誰も聞いてないんだけど」
それから30分ほど時間が経過した頃、ようやくエリカとモエモエが戻ってきた。
エリカ、モエモエ「ただいま~」
シャム「おつかれ~。交渉はうまくいったか?」
エリカ「はい、成功しましたよ」
シャム「性交? それは良かった~!」
モエモエ「それって変換ミスのような気がするんだけど♪」
シャム「ええ~? おいらは成功って言ったよ。モエモエの聞き間違いじゃないか? 最近チンヒールを掛けてないからもしかして欲求不満とか?」
モエモエ「もう、シャムったら酷い! いじわる~!」
イヴ「エリカさん、モエモエちゃん、おつかれさま。じゃあ成果を聞かせてもらおうかな?」
エリカ「想像以上に厳しくて最初の3軒の漁師からは『そんな危険な仕事は無理』といって断られました。ところが4軒目に訪問したシャルルという人が『ぜひ協力したい』って言ってくれました」
スンダーラ「そのシャルルという人は信用できそうですか?」
モエモエ「大丈夫だと思う。シャルルさんはジャノバ国王の政治にかなり憤りを感じているらしく、何でももう直ぐ仲間を集めてゲリラ部隊を結成するらしいの。そんな事情もあって、今回はぜひとも応援させて欲しいと意欲的だった♪」
エリカ「それにシャルルさんってすごくカッコいい人なんです。そうですね、歳は28、9くらいといったところでしょうか」
イヴ「きゃあ、カッコいいの~? ぜひ見てみたいな~」
ヒトミ「例えるならばどんな人なの?」
エリカ「そうですね、若い頃のブラッド・ピットといった感じでしょうか」
ヒトミ「はにゃ? 今の時代にそんな人いるの?」
イヴ「いない……」
モエモエ「もっと未来に現れる……」
ヒトミ「ヒトミ的には千年先と予言する」
エリカ「何ですか、あなたたちは! 似てるものは似てるんです!」
スンダーラ「シャムさん、女性の皆さんの話題がいささか脱線しているように思えてならないのですが……?」
シャム「族長もそう思うか? おいらもそう思う……(憮然)」
その後も女性たちの『男談義』に花が咲き、延々と語り続けていたため、辟易したシャムとスンダーラは会話の輪から抜け出し剣を磨き始めた。
シャム「こりゃだめだ。族長、剣の手入れでもするか?」
スンダーラ「それがよろしいようで。『女三人寄ればかしましい』と言いますが、四人寄ったら何と言うのでしょうか?」
チルチル「おねえさまたち、おなかが空いたの♫」
横からチルチルがささやいても他の女性たちは気が付かない。
チルチル「あのう……おなかが空いたのですが♫」
それでも小鳥がさえずるように会話が弾んでいる。
ついにぶち切れたチルチルが……
チルチル「チルチルおなかが空いた~~~~~~~~!!!!!」
イヴ、エリカ、モエモエ、ヒトミ「あっ、チルチルちゃん、ごめんね……」
ようやくチルチルに気づき、みんな揃って食事を摂る頃はすでに午後9時を廻っていた。
<メンバーの現在の体力>
シャム 勇者 HP 300/300 MP 0/0
イヴ 神官 HP 240/240 MP 240/240
モエモエ 魔導師 HP 190/190 MP 270/270
エリカ ウンディーネ女王 HP210/210 MP 280/280
ヒトミ 踊り子 HP 270/270 MP 0/0
スンダーラ ゴブリン族長 HP260/260 MP 80/80
チルチル 街少女 HP 130/130 MP 0/0
シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP340/340 MP0/0
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シャムたちが装備を整え宿屋を出た頃、まだ夜が明けておらず星も天空で輝いている。
夜のうちにすっかり冷えた空気で外は寒く、シャムたちは肩をすくめた。
シャム「うわ、結構寒いなあ」
モエモエ「陽が昇ったらすぐに暖かくなるよ♪」
一行は漁師シャルルの待つ港へと向かった。
船はすでに波止場に停泊していた。まだ少し怠い身体で一行はゆっくりと階段を上り甲板に出る。
甲板に上がったシャムたち船長であるシャルルが柔和な表情で出迎えてくれた。
さすがに海の男ということもあり日々漁で鍛えられた筋肉は半端なく、威風堂々とした立ち振る舞いも好印象を与えた。
シャム「おいらがリーダーのシャムだ。よろしくな」
シャルル「あんたが噂の勇者シャムか? 海のことなら俺に任してくれ。船はちっぽけだけど乗組員は腕っぷしが強いよ。必ず護送船に食らいついてやるから楽しみな」
シャム「これは頼もしいな~! シャルルってすごくでっかいけど背はどのくらいあるんだ?」
シャルル「195センチだ」
シャム「ひぇ~、おいらは175センチだから20センチも差がある」
シャルル「男の強さは身長じゃないと思うぞ」
シャム「そうだな。ところでさっき『噂の勇者』って言ってたけど、おいらがそんなに噂になっているのか?」
シャルル「街の者はあんたのことを『救世主』って噂をしている。魔界から現れた魔物たちを退治するために大天使ミカエル様からお告げを受けた救世主だってね」
シャム「えへへへ~、それほどでもないけどさ~。まあ、おいらの手にかかれば魔物なんてちょちょいのちょいだけどな」
エリカ「ちょっと調子に乗りすぎですよ」
シャム「船に乗ったんだし、調子にも乗らないとな」
シャルル「はっはっは~! リーダーって面白い男だな~。気に入った! リーダー、皆をちょっと紹介してもらおうか?」
シャム「リーダーって柄じゃないのでシャムと呼んでくれ。え~と、今、おいらを叱ったのがエリカ。水魔法と治療魔法が得意なんだ」
エリカ「叱っただなんて……ふだんはもっとお淑やかなんですよ。シャルルさん、昨夜は失礼しました。改めてご挨拶します。私がエリカです。どうぞお力添えを……」
シャルル「俺の方こそ昨夜はどうもです。エリカさんって美人だしすごく神秘的な人だな~」
エリカ「いや~ん、シャルルさんったら~。美人で神秘的だなんて、そんなに褒められたら、私、困りますわあ」
みるみるうちにエリカの頬が紅く染まり、顔を両手で隠した。
いつもあまり感情を表に出さないエリカにしては、大変珍しい仕草であると周囲の者は驚くばかりであった。
シャム「で、その隣にいるのが魔導師モエモエで、火の魔法が得意なんだ」
モエモエ「昨日はありがとうございました♪ 昨日自己紹介したけど、ちゃんともう一度させてくださいね。魔導師のモエモエです。よろしく頼むにゃん♪」
シャルル「大きな愛くるしい瞳は一度見たら忘れられないよ。あんたも半猫族の娘なのか?」
モエモエ「私は人間の娘なんですけどぉ…… 語尾にニャンをつけるのは口癖なんです♪」
シャム「で、白い衣装の彼女が神官イヴで剣術と白魔法を得意としているんだ」
イヴ「どうぞよろしく。イヴといいます。よろしくお見知りおきを。治療は任せてね」
シャルル「切れ長な瞳の知的美女って感じだな。ふむふむ、こちらこそよろしく」
シャム「その隣が踊り子ヒトミ。踊りと素手での格闘技を得意としているんだ」
ヒトミ「速さには自信があります。よろしくね~」
シャルル「うん、明るくて元気な可愛い子だな~。よろしく」
シャム「で、その隣の小さな子がチルチル。特技は……あ、特になかったか」
チルチル「wえ!? シャム~! そんな紹介やだよ~! 笛が得意なんだけど、ダメ?」
シャム「それって戦うための特技とは言えないからなあ」
シャルル「いやいや、楽器も立派な武器さ。オレたちは海の男。海では何日も波の音しか聴かないことがあるから、笛の音色はきっといい薬になると思うんだ。だから楽器だって立派な武器だと思うぜ」
チルチル「きゃあ~~~! 嬉しい! シャルルさんが誉めてくれた~! じゃあチルチル、沢山笛を吹くね~♫」
シャルル「うん、期待しているよ。おっと、もう時間だ! 出帆の準備が整ったようだし、そろそろ行こうか~」
シャム「シャルル、それじゃよろしくな!」
スンダーラ「おいおい、シャムさん! 待ってくださいよ! まだ私を紹介してくれてないじゃないですか~!」
シャム「あっ、悪い悪い! 忘れてた~! 彼はゴブリンの族長でスンダーラっ言うんだ。剣と地の魔法が使える」
シャルル「ゴブリンって初めて会うが、よろしくな」
スンダーラ「よく顔は恐いと言われますが、人間とも仲が良いし本当は良い奴なんですよ」
イヴ「それを自分で言うか……」
シャム「シャルル、それじゃ行こうか~!」
シャルル「よし、みんな~出帆するぞ! ジャノバ国の悪党どもに一泡吹かせてやるぞ!」
甲板でシャムとシャルルが硬い握手を交すと同時に、船は帆を上げ悠々と港を離れていく。
まさに順風満帆の出航日和であった。
シャルル「護送船はこの船より速いから追いかけても無駄。だから先回りして待ち伏せをする作戦だ。やつらの航路は分かっているから大丈夫」
シャム「ふむ、漁船ならやつらも油断するからな。近づいて一気に攻め込もうというわけだな?」
シャルル「そのとおり。俺の仲間はわずか12人と少ないが、みんな腕は確かだ。頼りになるぞ~」
シャム「おいらの仲間だって主力は女の子だけど、戦闘になれば男顔負けの働きをするぞ」
シャルル「それは楽しみだ。お手並み拝見と行こうか。ははははは~」
⚔⚔⚔
ジャノバ国護送船は予定の時刻に港を出航し北東へと進路をとっていた。行先はもちろんペルセ島である。
船底には5人のうら若い娘が鎖に繋がれている。
否、正確にいうなら人間の娘が4人と半猫族の娘が1人である。
アリサ「あ~あ、私たち島に連れて行かれた後どんな仕事をさせられるんだろう……島で働く男たちの食事係とか洗濯係かなああああ」
ポニーテールの娘「あんた知らないの? 島の男たちの慰みものにされるのよ」
アリサ「慰みものってもしかして知らない男たちといかがわしいことをするってこと? やだ~っ!そんなのやんやんやん~~~」
ポニーテールの娘「やんやんやんって言ったってもう逃げられやしないよ。ここは海の上なんだから。殺されるよりマシと思うしかないわ……」
アリサ「そんなぁ……」
⚔⚔⚔
ちょうどその頃、シャムたちの漁船よりもいち早く待ち伏せし護送船の通過を待つ一団がいた。
それはこのペルセ海峡を行交う官船が最も怖れている海賊フリューゲルであった。
甲板ではまるで名画から抜け出したような絶世の美女が、望遠鏡で遠方を望みながら周囲の男たちに手早く指示を送っていた。
女船長「魔界淫獣四天王の1人ブラックシェイドめ、ついに魔界から現れたか! ジャノバ国のサンジェルマン大臣にまんまと成りすましたつもりだろうけど、あたしの目はごまかせないよ! 弟のホワイトシェイド同様あの世に送ってくれるわ!」
副官カノープス「まさに父上アンドリュー・フリューゲル船長の弔い合戦ですな。やつを倒せば父上もきっと天国でお喜びになられることでしょう」
女船長「でもブラックシェイドの強さはホワイトシェイドの比じゃないよ。気持ちを引締めて掛からないとこっちがやられてしまう」
副官カノープス「確かに強いですが、我らが全軍を挙げて戦えば必ず倒せるものと信じています。臆することなどありません」
女船長「カノープスは相変らず頼もしいね。頼りにしているよ」
副官カノープス「万事お任せください! それはそうと、これだけ官船ばかりを襲っていると、ジャノバの民はわれらがジャノバ国を敵に回して戦争を仕掛けていると思っているのではないでしょうか。本当はジャノバ国が敵ではなく魔界のやつらを倒すことが目的なのに」
女船長「そんなことはないわ。ジャノバの民も現在の国の無茶なやり方には疑問を抱いているはずよ。その証拠に勇敢な住民たちがついに反乱軍を結成したというじゃない。元々ジャノバ国王は評判が良いとは言えなかったけど、それでも現在の恐怖政治よりはましだったからね」
副官カノープス「現在のジャノバ国は、軽い罪でも島送りにされて強制労働の憂き目にあうというんだから全く酷いですよ」
女船長「ほんと酷い話だね。あっ! おしゃべりしている暇はなさそうね! 護送船がかなり接近したわ。さあ、旗を掲げなさい!」
副官カノープス「旗を掲げよ!」
副官カノープスの号令で海賊旗がマストに掲げられた。
黒地にドクロを染め抜いた旗が青い空になびく。
女船長「よし、弓矢隊! 打ち方始め~~~っ!!」
女船長の号令を受けた弓矢隊は背負った弓を手に取ると護送船に向けて一斉に矢を放った。
空一面、放射状に広がるように放たれた矢が弧を描いて飛んでいく。
「ぎゃあ~~~!!」
「げげっ! 海賊フリューゲルが現れやがったぞ!」
護送船の甲板では突然弓矢攻撃を受けた兵士たちが逃げ惑う。
「逃げるな! こちらも弓矢を射って抗戦せよ~~~!」
護送船からも大量の矢が放たれる。
「ぐわ~~~!!」
互いの弓矢が飛び交う中、ついに二隻の帆船が急接近した。
サンジェルマン大臣(ブラックシェイド)「おのれ、海賊め! 我々ジャノバ国に逆らうつもりか!? 全員血祭りにあげてくれるわっ!」
女船長「血祭りにあげられるのはおまえたちの方だよ! ふふ、ニセの大臣さん~」
サンジェルマン大臣(ブラックシェイド)「何だと! おおっ、もしやおまえはあのときの……!?」