ファンタジー官能小説『セクスカリバー』 Shyrock 作 |
<シャムたちの現在の体力&魔力データ>
シャム 勇者 HP 220/220 MP 0/0
イヴ 神官 HP 160/160 MP 130/170
モエモエ 魔導師 HP 140/140 MP 20/190
キュー ワルキューレ HP210/210 MP 30/30
⚔⚔⚔
夕陽が西に沈む頃、シャムたちはミレーユ村に到着した。
キューが仲間に加わったことでグループの攻撃力が上昇し、その後現れた魔物たちも容易に撃破することができた。
ミレーユ村は小さな村だが幸い宿屋と道具屋があった。
道具屋で薬草を買い求めることはできたが、困ったことに魔法の元となる法力草が品切れになっている。
「あら、やだぁ、法力草がないとMPが回復しないわ。一晩眠れば回復するんだけど、戦闘用に補充しておかないとヒール魔法が使えないからね」
「私も困るよ。私の場合、魔法が使えなければ雑魚さえも倒せないもの」
モエモエは道具屋の主人に尋ねてみた。
「ねえ、どうして法力草がないの? 私、法力草がないと困るんだけど」
「すみませんね。それが奇妙なんですよ。いつもだったら1日1回は行商人が持ってくるのですがね~。ここ1週間ほど顔を見せないんですよ。どうしたんだろうなあ……」
「それは変ね。途中で事故でもあったのかしら? そんな事情なら仕方がないね。モエモエちゃん、行こうよ。できるだけ魔力を使わないようにするしかないね」
「うん、そうだね。でも、ちょっと不安だなあ」
イヴとモエモエが困り顔で会話しているところに、キューが割って入った。
「二人とも魔法が使えないと困るよね。戦士系の私が前列でがんばるから心配しないで。二人は後方支援してくれたらいいからね」
「頼もしいね~! キューちゃんは~」
「頼りにしてるわ! キューちゃん!」
⚔⚔⚔
その夜、シャムはなかなか寝付けなかった。
城を旅立ってから出会った女性たちの『奇妙な符合』が気になって仕方がなかったのだ。
「う~ん、よく分からないなあ……。クリトリスって本当は何色なんだろう? 城にいたミーナやマドンナやローザやターニャはみんなピンク色だった。ところが神官のイヴと、途中で出会ったアリサとキューは宝石みたいにピカピカ光ってた。どうして違うんだろう? もしかしたら光ってるのが最近の流行とか……? そんなわけないか……」
シャムが疑問に感じるのも無理はなかった。
ロマンティーノ城を出てから、彼が出会った女性たちのクリトリスは一様に美しく光り輝いていたのだから。
「神官イヴ、猫耳アリサ、ワルキューレキュー……みんなピカピカ光っていたなあ……おおっと想像するとヤバいことになりそう」
宿屋が部屋数に余裕がないため、シャムたち四人は男女相部屋で休んでいた。
そんな中、なかなか寝付けないモエモエがしきりに寝返りを打っている。
昼間のシャムとキューの生々しい光景が瞼に焼き付き、気持ちが昂ぶって眠れないのだ。
実はモエモエには男性経験がまだない。
男性経験のない女性にとって、たとえそれが治療行為ではあっても、『男女の交わり』を目にすることはあまりにも刺激が強すぎた。
脳裏から消し去ろうとするが、瞼に焼き付いた残像は簡単には放れてくれない。
目が冴えてしまったモエモエは扉を開けて廊下に出た。
火照る頬を撫でながら廊下をゆっくりと歩く。
廊下の正面にあるテラスに出てみた。
外は意外と気温が低い。
凛とした冷気がモエモエを包みこむ。
「あ~あ、なんだかなぁ……。な~んかムラムラして眠れないよ……困ったなあ……」
モエモエは手摺りに肘を付いて、ぼんやりと夜空を眺めた。
星たちがキラキラと輝いている。
「侍女にこっそり聞いたことはあるけど、男と女ってあんなにすごいことをするとは知らなかったなあ……」
◇◇◇
「あれ? モエモエはどこへ行ったのかな? トイレか?」
光るクリトリスの件で思いを巡らせていたシャムもまたなかなか寝付けなくて、なにげにモエモエの落ち着かない様子を気に掛けていた。
モエモエが部屋の扉を開けて出て行ったのを見て、まもなくシャムもベッドを下りた。
廊下に出たシャムは左右を見回してみる。
まもなくテラスにモエモエの姿を発見した。
空を見上げて何か物思いに耽っているようだ。
「なんだ、テラスにいたのか。どうしたんだろう?」
シャムは廊下を静かに進み、モエモエの背後に近づいた。
モエモエはまだシャムの存在に気づいていないようだ。
シャムは両手でモエモエの目を塞いだ。
不意を突かれて驚いたモエモエは思わず大声をあげてしまった。
「きやっ! だれ!?」
「ふふふ、おいらだよ~ん」
「もう、びっくりするじゃないの。驚かさないでよ」
「ごめん、ごめん。ねえ、こんなところで何をしてるんだ?」
「なかなか眠れなくて……」
「そうか。さてはエッチな夢でも見て興奮したな?」
「そんなんじゃないよ~! もうシャムなんか、だ~い嫌い!」
「こりゃ参ったな~。冗談だよ、じょ~だん」
「プンプン! え~とね……実はね、法力草が残り少ないもので明日不安だなあ~って、ちょっと考えごとをしていたの」
「そうだったのか、どこかにあればいいんだけどな。ところでそんな薄着じゃ風邪引くぞ。かなり冷えて来たし」
シャムは自分が着ていたレザーのベストをモエモエの肩に掛けてやった。
「ありがとう。やさしいのね、シャムって」
「いやぁ、そんなことは」
「ねえ……」
「なに?」
「キスして」
「え? どうして?」
「とにかくして……」
「うん、でも……」
「シャムは私のことが嫌いなの?」
「いいや、好きだよ」
「じゃあ、して……」
「うん」
シャムはモエモエの肩を抱き寄せ唇を近づけた。
桃のような甘い香りが漂い、男の本能をゆっくりと覚醒させていく。
初めて経験するキスに、モエモエの頬はほんのりと桜色に染まっている。
流れていた時間がほんの一瞬止まってしまったように思えた。
シャムはモエモエの耳元でそっとささやく。
「なあモエモエ? さっきMPが少なくて不安だと言ってたな? おいらが増やしてやるよ」
「えっ……でも……」
「どうしたんだ? 恥ずかしいのか?」
「うん……あのね……」
「なに?」
「あのぉ……私、実はまだ男性経験がないの……」
モエモエはそう告げたあと、恥ずかしくなって両手で顔を覆ってしまった。
「ほえ~~~! ってことはモエモエの狭い割れ目に、まだネズミちゃんが入ったことがないんだな?」
「ネズミちゃんだなんて……いやん、そんな恥ずかしいことを言わないで! でもそういうこといなるかな……」
シャムはモエモエがまだ処女であると知って、大いに感激し今にも跳び上がりたい心境であった。
いつの時代も処女を好む男子というのは存在するものである。
シャムは生唾をゴクンと呑みこむと、真面目そうな表情をつくろってモエモエに語りかけた。
「モエモエ、これからは敵も次第に強くなってきて厳しい戦いになるだろう。回復用のチンヒールを必要とするときが必ずやって来るはずだから、今のうちに練習しておいた方がいいと思うんだけど」
「うん、そうだね」
(しめしめ、我ながら上手く説得できそうだぞ!)
「シャム、なにか顔がにやけていない?」
「そ、そんなことはない。きっと気のせいだ」
魂胆がばれそうになってきたので、早めに行動を起こそうと考え、シャムはモエモエを強く抱きしめた。
量感のある二つの胸の隆起がシャムを刺激する。
早くも気持ちが昂ぶり始めたシャムは、突然豊かな乳房をむんずとつかんだ。
「あぁっ……いやっ……恥ずかしい……」
「プニュプニュして気持ちがいいね」
「やぁ~ん……」
まるでお椀のような形のよい乳房を撫でていたシャムの手がスルリとドレスの中に入ってきた。
モエモエは後ずさりしようとしたが、背後はテラスの手すりしかなく一歩も下がれない。
「あ~ん、やだぁ……」
「いいじゃない、おいらに任せて」
モエモエは観念したのか目を閉じるとすべてをシャムにゆだねた。
しかし緊張感からか、細い肩先がまるで小鳥の羽根のようにプルプルと震えている。
モエモエの初々しさに男の本能は一段と高まっていく。
乳房を存分に撫でた指はおもむろに下降し始め導師服の下に潜り込んだ。
「あぁ、いやぁ……」
よく引き締まった太腿を撫でながら、ゆっくりと指が上昇する。
やわらかな木綿地の感触を感じとる。
布の上からではあったが敏感な箇所をそろりと撫でた。
「あぁん、そこはダメぇ……」
「ふふふ、ここ、感じるのか? じゃあこうすればどんな気分だ?」
指が凹んだ部分に食い込みながらブルブルとうごめいている。
「はぁはぁはぁ、そんなこと……いやぁ……あぁ、あぁ、恥ずかしい……」
モエモエの息遣いが早くも荒くなっている。
足元にかがみ込んだシャムはモエモエのショーツをスルリとずらした。
「あ~っ……ダメェ……いやぁ……見ないでぇ……」
「暗くてよく見えないんだけど。顔を近づけたら少しは見えるかな?」
月が煌々と照ってはいるが、それでもかなり近づかないと何も見えない。
シャムは空かさず秘部に顔を近づけた。
至近距離からじっくりと覗き込んだ後、縦に入った一本筋に指を這わせた。
「ひやあ~~~! やだあ、あぁん! そんなところいじっちゃダメェ~~~!」
「もうすぐこの狭い所に、ネズミちゃんが出入りするから、ちょっと慣らしておこうな~」
「ネズミちゃんが入るの? 恐いなぁ……」
「だいじょうぶ。おいらに任しておいて」
シャムはそう言いながらひたすら亀裂を擦り続けた。
(クニュクニュしていい感触だな~。女の子のココってどうしてこんなに触り心地がいいんだろうな~)
まもなくモエモエの敏感な箇所に舌先がペチョリとくっついた。
亀裂の左岸右岸をゆっくりと舐めまわし、そろりと溝に舌先を沈める。
モエモエは頬を真っ赤に染めて、華奢な肩を小刻みに震わせている。
もうすぐシャムにネズミちゃんを出し入れされる。
その不安と高揚感は抑えようがなかった。
舌先はコリコリと硬くなった木の実を包み込んだ。
「あぁん……そこはぁ……」
モエモエは腰をよじって逃れようとするが、あらかじめシャムががっちりと太腿を押さえているので動けない。
チュパチュパチュパチュパ!
「ああんっ……!」
ジュパジュパジュパジュパ!
「ひやぁ……!」
シャムの猛烈な舌技のせいで、モエモエの花弁は濡れるというよりも、水浸し状態になっていた。
その煽りでシャムの唇周辺までが『返り露』を浴びてテカテカと光っていた。
「モエモエ、ここすごく美味しいぞ~。まるでミックスフルーツのような味がする~」
「やぁん……そんな恥ずかしいことを言わないで」
「おや?」
「はぁはぁはぁ……どうしたの?」
ほの暗い月明りの下ではあったが、シャムはモエモエのクリトリスが光り輝いているのを見つけた。
「モエモエのここって生まれた時からずっと光っていたの?」
シャムは指先でクリトリスを撫でながらモエモエに尋ねてみた。
「あん……どうして? 他の女の子も光ってるんじゃなくって?」
「うん、普通は光ってなくてピンク色の真珠みたいな子が多いんだ。不思議なことにモエモエや、イヴ、キュー、アリサと僕が旅立ちしていから出会った女の子はみんな光っているんだ」
「ええっ、そうなの!? 不思議ねぇ……」
「うん……どうして光ってる子と光っていない子がいるのか、みんなに聞いたけどよく分からないんだ」
「ってことは、イヴさん、キューちゃん、アリサちゃんのアソコを、シャムは見たってことね?」
「あっ? いや、あの、その……。そんなことより今は気持ちがよくなることに集中しよう! さあ、モエモエ、ここに片足を乗せてみて」
シャムはテラスに置かれていた高さ50センチぐらいの木箱に片脚を乗せるようモエモエに指示をした。
「え? ここに足を置くの?」
意図が分からないモエモエであったが、素直にシャムの言葉に従った。
シャムはそっとモエモエを抱きしめ耳元でささやいた。
「モエモエ、それじゃ今からネズミちゃんを入れるからな。少し痛いかも知れないけど我慢しろよ」
「うん……」
不安そうな表情でうなずくモエモエ。
シャムはモエモエの腰をしっかりと抱きかかえると、夜空を向いて反り返った肉柱を秘裂にあてがった。
「じゃあネズミちゃんを入れるぞ」
「……」
モエモエの表情に緊張が走る。
身体が小刻みに震えている。
グッ……
「あっ……」
亀頭がほんのわずか隠れた程度であったが、早くもモエモエの顔が歪む。
「いくぞ、モエモエ」
「う、うん……」
ゆっくりと花弁を貫いていく。
「くうっ……い、痛い……痛いよぉ……」
「ううっ、狭い。処女のマ〇コってかなりきついな」
モエモエの処女は肉柱の侵入を無意識の抵抗によって拒んだ。
モエモエの両腰をがっちりとかかえたシャムが、自らの腰を押し出して肉柱を秘裂に押し込もうとするその都度、亀頭が半分も入らないうちからモエモエは苦しげにうめいた。
「うぅぅっ……」
モエモエがうめくと、シャムは腰の力を抜く。
少し待ってから、また力を加えると、モエモエがまたうめく。
「痛いか……」
「うん、でも、これを超えないと、戦闘後チンヒールをしてもらえないから」
モエモエは健気にもシャムに開通を懇願する。
シャムは決して無理をしない。だけどモエモエの処女の抵抗が決して嫌ではなかった。
むしろ処女の抵抗は、それを貫いた際とその後の快感の度合いを、シャムに期待させた。
それは、破瓜を試みてから、おおよそ五分ばかりの時間が経過した頃だった。
モエモエが、
「あああ~~~っ!!」
と叫んだ。
同時に長く侵入を拒んでいたモエモエの抵抗が、メリメリメリッと音を立てたその後、幻のように消え失せた。
その直後、新しい抵抗が、肉柱の先に現れた。
それは処女の抵抗とは異なる、柔らかく心地よい肉の抵抗であった。
ちょうどそのとき、わずかな赤い液体がモエモエの太腿をツーと伝った。
シャムは構わずグイと奥に押しこむ。
「うぐっ……シャム、い、痛い……」
シャムの胸に頬を寄せて痛みに耐えるモエモエ。
「痛みいのは最初のうちだけだ。すぐに気持ちが良くなるからな」
「うん……」
初めて肉柱を受け容れた肉壁が、今開通を果たし懸命に絞めつける。
可憐な花がゆっくりと開花していく。
シャムはゆっくりと腰を動かし、モエモエを突き上げる。
「ううっ、い…痛い……でもだいじょうぶ……」
ゆっくりと抽送を繰り返す。
出し入れをするたびに、モエモエが大きく呼吸する。
ピッチが次第に速くなって行き、モエモエの息遣いも同時に荒くなっていく。
「はぁはぁはぁ……あぁん……はぁはぁはぁ……あぁ…いやぁ……」
若干18歳とはいっても、シャムの城内における女性経験は相当なものであった。
多くの女性たちに鍛えられて、いつしか女性を歓ばせるための多彩なテクニックを身に着けていた。
ピストンひとつをとっても、『左右に動かし技』『先端だけピストン技』『浅く深くを繰り返し技』『浅い部分で時間をかける技』『スピードに強弱をつける技』『回転技』『女性の快楽スポットをしっかり擦る技』等はすでに会得していた。
初めは痛みしかなかったモエモエだが次第に変化を見せていた。
シャムの肉柱が往復するたびに、身体の中で湧きあがって来る熱いものがある。
生まれて初めて経験する不思議な感覚、それは“悦楽の予兆”であった。
シャムの律動と同時に豊満な乳房が揺れた。
声が一段と大きくなった。
肉柱が深く沈んでいく。
「あああっ~……ネズミちゃんが暴れてるぅ!」
突然頭の中が真っ白になり、無我夢中であえぐモエモエ。
初体験で絶頂に達したことも気づかないままに。
奥深くに白い液体を注ぎ込まれ、モエモエの体力と魔力が回復した。
モエモエは、MP/MAXが190から200に増えた!
HPとMPがすべて回復した!
「モエモエ、すごく気持ちが良かった!」
シャムはモエモエの頬にキスをするとポツリとつぶやいた。
「初めは痛かったけどだんだん気持ちがよくなってきて、最後は何が何だか分からなくなってしまって。あぁ、ついに経験してしまった~。これがセックスというものなのね……」
モエモエは頬をほんのり染めてはにかんだ。
「もしかして初体験でイッたのでは?」
「イったのかな? よく分からないよ。イクってあんな感じなのかな?」
「さあ? それはおいらには分からないよ」
「それもそうだね。シャムは男だものね」
「わっ! MPのマックスが10アップしてる~。それにHPもMPも満タンになってる~!ありがとう、シャム!」
「よかったな!」
「チンヒールってすごい効き目なんだあ~! なんか病みつきになりそう」
「えへへ、病みつきになるのはいいことだ」
「でも治療が目的だものね。他の子も治療しなくてはいけないものね」
「そう真面目に考えなくてもいいよ。やりたい時にやればいいのさ」
「いやいや、パーティーを組んでいる限りそうはいかないよ」
かくして、モエモエが18年間大切に守ってきた処女花は、旅先で出会った1人の勇者の手により、元へ、勇者の肉柱により見事散ったのであった。
「皆様、おはようございます! 昨晩はよく眠れましたか? 気をつけて行ってらっしゃいませ~」
宿屋の主人に見送られてシャムたちは宿屋を後にした。
今日は天気がよさそうだ。
昼頃には聖者ムッヒが住むトスカの森に到着できるだろう。
イヴがちょっと眠そうな顔のモエモエに話しかけた。
「ねえ、モエモエちゃん、真夜中どこに行ってたの? ベッドにいなかったみたいだけど?」
「えっ? え~と……あのぉ……なかなか眠れなくてテラスで星を眺めていたの」
「そうだったんだ。シャムもいなかったからてっきりどこかでエッチなことをしてるのかと思ってた」
「そんなことしてないもん!」
「あら~、ご、ごめんなさい。怒らないでね」
そこへキューが話に加わった。
「モエモエちゃん、MPが足らないって言ってたから、てっきりシャムにチンヒールを掛けてもらってるのかと思っていたの。違ったんだね」
「もう、キューちゃんまでそんな変なことを言うんだから」
「ごめんごめん。でも私やイヴさんも怪我をしたら掛けてもらうんだから遠慮しなくていいのよ。チンヒールはあくまで治療行為なんだから」
「うん、そうだね。ちょっと痛いけど……」
「えっ!?」
「モエモエちゃんはまだチンヒールを掛けてもらっていないはずなのに、どうして痛いって分かるの?」
「いや、たぶん……そうじゃないかな……っと思って」
イヴがきっぱりと言う。
「痛くなんかないわ。気持ちいいものよ。そうだよね? キューちゃん」
「にゅ~、私も掛けてもらった時は生死の間をさまよっていたけど、すごく気持ちがよかったのは微かに記憶しているよ」
「ってことはモエモエちゃんはやっぱり……」
「ふむ、イヴさんの予想どおりじゃないかな?」
イヴとキューは顔を見合わせながらお互いにうなずいた。
「モエモエちゃん。私たちの中で嘘はダメだよ~」
「そうだよ。隠し事はいけないと思う」
モエモエはジワッと額に汗が滲むのを感じた。
ちょうどその時、前方を行くシャムが3人に声を掛けてきた。
「お~い! ようやくトスカの森が見えてきたぞ~! ついに聖者ムッヒ様と会えるぞ~!」
「えっ? どこ?」
イヴがキョロキョロと見回している。
モエモエが樹々の密生している方向を指し示した。
「あの木がいっぱい茂っているところかな?」
キューが跳びあがって喜んだ。
「やった~! 聖者ムッヒさまに会える~。嬉しいな~」
⚔⚔⚔
シャムたちは聖者ムッヒに会うためトスカの森の奥深くへと足を踏み入れた。
奥へ奥へと進んでいくと、川のせせらぎが聞こえてきた。
音をたどってさらに奥へと進む。
まもなくゆるやかに水が流れる小川が現れた。
「おおっ、水だぞ! 喉が渇いた。水を飲もう!」
水をすくおうとするシャムをキューが制した。
「ちょっと待って。でも毒が混じっているかも知れないよ」
「だいじょうぶよ」
イヴがにっこり微笑む。
「魚が泳いでいるから大丈夫。毒が混じっていたら魚なんていないわ」
「うん、そうだね。飲もう!」
真っ先にモエモエが膝を曲げて水を飲んだ。
「美味しい!」
続いて3人も冷たい水で喉を潤す。
凛とした風が4人の頬を撫でる。
聖者が住むというだけあって、森はどこか厳かな雰囲気が漂っている。
キューがイヴに尋ねた。
「イヴさん? 聖者ムッヒってどんな人だと思う? きっとすごく賢い人なんだろうなあ。だって聖者って神さまと人間の中間にいる人なんでしょう?」
「そうね。どんな人かしらね? すごく立派な人だと思うよ。外見は真っ白な髭のおじいさんかも知れないわね?」
「聖者になるぐらいだからそんなに若くないかな? ちょっと残念かもね」
「にゅ~、そうだね。賢者とか仙人ってお年寄りが多いものね」
モエモエが話に加わった。
「私は若過ぎず、かと言って年寄りすぎず、ちょっとしぶ~い感じの人がいいな~」
「まあ、モエモエちゃんって意外だわ」
「キュー的には筋肉隆々のつよい人がいいかなあ」
会話にシャムが参入してきた。
「さっきから聞いていたら、おまえたちは何をうだうだと話しているんだ? ムッヒ様が若いとか年寄りとか。今からえら~い方に会いに行くんだぞ。好みの男性像を語ってるんじゃね~よ。バ~カ」
「わっ! シャムがやきもちを妬いてる~!」
「ほんとだ、勇者なのにみっともない~」
「にゅ~、シャムって意外と小さいかも」
「違うよ~。やきもちなんか妬いてないよ!」
「あは、シャムのむきになった顔可愛いね。お城では見せたことがない素顔~」
「そうなの? じゃあしっかりと見ておかなくては」
「にゅ~、私は結構好みの顔だけどなあ」
「もう、おまえたち! 大人をからかうものじゃないよ! プンプン!」
「あれれ? シャムはまだ18じゃなかった?」
「そうだよ。歳は私たちと変わらないじゃない」
「にゅ~、私も同感」
「もういやだ! 早く聖者さまのところに行くことにしよう!」
シャムは3人を置き去りにしてまっしぐらに駆けていった。
「あっ、シャム! ちょっと待って~! か弱い女の子3人を放置はないよ~!」
「にゅ~、私たちが連れ去られたらどうするのよ~!」
「おまえたちを連れ去る奴なんているものか~!」
「もう! シャムったら! プンプン!」
3人がシャムを追いかける形で4人は森の中を駆けていく。
シャムたちは瞬く間にムッヒが住む小さな祠に到着してしまった。
「ふうふうふう……やっとムッヒ様の住んでる祠に着いたぞ。すぐにおいらに追いつくとは、おまえたち結構足が速いなあ」
「はぁはぁはぁ、よくいうよ、私たちを置き去りにしておいて」
「もう、ひどい男」
「見損なったよ~」
「わりぃわりぃ~」
「ところで、ここがムッヒさまの住んでいる祠なの?」
「にゅ~、早速入ってみる?」
「うん、行こう」
シャムたちが祠に入ると中央に扉があり、扉の左右には武装した二人の女性番人が立っていた。
女性番人は鎧帷子に身を包み槍を携えており、何と背中に白い羽根が生えている。
女性番人の1人がシャムたちに声をかけてきた。
「何かご用ですか?」
「聖者ムッヒ様に会いたい」
「失礼ですがどちら様ですか?」
「おいらはシャムだ。女神チル様からここに来るように言われた」
「おおっ、あなたが勇者シャム様様ですか! お待ちしておりました! 聖者ムッヒ様がお待ちです。どうぞお入りください」
「あんたたちは門番か? 二人ともすげぇ美人だけど」
「私たちはアークエンジェルです。つまり天使の戦士です。天界からの命を受けて聖者ムッヒ様をお守りしております」
「美人だなんて……でも嬉しいですわ(ポッ……)」
左側のアークエンジェルが照れてみせた。
「ムッヒ様の用事が終ったら、あとからお茶でもどうだ?」
イヴがシャムの袖を引っ張った。
「シャムったら。こんな所でナンパするのはやめてよ~」
「にゅ~、天使を口説いて仲間にでもする気なの?」
「シャムのことだからいやらしいことしか考えてないと思うよ」
「好き勝手言ってろ。おいらは先に行くぞ」
「もう、みんなでいっしょに行こうよ」
通路を真っ直ぐに進むと聖者ムッヒの居所があるらしい。
通路は薄暗くところどころにある壁の松明でやっと足元が見えるほどだ。
まもなく正面に古びた扉が見えてきた。
シャムたちが扉の前に立つと、内部から落ち着いた男性の声が聞こえてきた。
「シャムとその仲間たちか? 中に入るがよい」
「ん? 聖者ムッヒ様か? 入ってみよう」
⚔⚔⚔
ギギギという木が軋む音を立てて扉が開かれた。
「勇者シャムとその仲間たちよ、よくぞまいった。魔物たちとの戦い、ご苦労である。私からも礼を言いたい」
「なんの、なんの! あんなザコ魔物なんて朝飯前だよ~!」
「もう、シャムったら。聖者さまにそんな口の聞き方は失礼じゃないの」
「にゅう~! 聖者ムッヒさまって若いしカッコいいね~♪」
「もうキューちゃん、声が大きいよ」
聖者ムッヒは高笑いをした。
「わっはっはっは~! 面白い者たちだな~。まあ、気楽にやってくれ。堅苦しいのは私も嫌いだ」
「わ~、聖者様って話せるわね~」
「女神チルさまから聞いておるが、メドゥーサの倒し方を知りたいのだな?」
「うん、そうだよ」
「あの魔物はとても手強い。心して掛からねばならない」
「うん!」「はい!」「にゅ~!」「承知しました!」
「みんな、元気がよいな。その意気込みが大切だ」
聖者ムッヒはよどみなく語り始めた。
シャムたちは神妙な表情で耳を傾けている。
「メドゥーサは元々人間の娘で絶世の美女であった。しかし、女神アテナ様より美しいと周りに自慢をしたことからアテナ様の怒りを買い、魔物にされてしまった。髪は全て蛇、身体は鱗状という世にも醜い姿に変わり果てた。そのおぞましい姿を人々から忌み嫌われ、現世で住むことのできなくなったメドゥーサは魔界へと移り住んだ。
そしてついには魔界で強力な魔力を手にした。魔力の中でも最も恐ろしいのが、相手を石に変えてしまう石化魔法であった。石にされた者は永久に石と化してしまう。しかし無敵と思われたメドゥーサもついには、伝説の英雄ペルセウスに滅ぼされる結果となってしまった」
「ん? じゃあメドゥーサはもういないのか?」
「いや、メドゥーサは滅びたがその娘メドゥサオールがいる」
「娘がいるのか?」
「ペルセウスがメドゥーサの首をはねた際に、その血が海にしたたりペーガソスとともに産まれた。つまりペーガソスとは双子ということになる。ペーガソスは天に上り、ゼウスのもとで雷鳴と雷光を運ぶという名誉ある役割を与えられた。一方、メドゥサオールは魔界に堕ち母親の地位を受け継いだ」
「魔界に!?」
「メドゥサオールの能力は母親譲りで石化魔法も使えるようだ」
「う……かなり強そう……」
「そう、かなり手強いぞ。例えそなたたちが力を合わせても、現在の力では奴を倒すのは至難の技だろう」
「え? じゃあ魔物狩はもうやめようかな? 腹具合もよくないし……」
シャムの顔色がすぐれない。
そのとき横にいたイヴがシャムの耳をつまみ叱咤した。
「何を弱気になってるのよ~。そんなことで勇者が務まると思ってるの!?」
「にゅ~、だいじょうぶよ、きっと何とかなるよ~」
「みんなで力を合わせて魔物たちを倒そうよ」
シャムがもじもじしている。
様子を眺めていたムッヒが高笑いをした。
「ははははは~! 勇者よりも女子軍団の方が頼もしいではないか」
「ふん! 今のは冗談だもんね~。メドゥサオールなんて恐くないもんね~」
「はっはっは~! その意気、その意気。確かに手強い相手だが、方法はある」
「え? どんな方法で?」
「確かにメドゥサオールの石化魔法は強力だ。誰であろうとも彼女と目を合わせるだけで一巻の終わりだ。だがかつてメドゥーサの石化魔法を防いだ者がおる。それはペルセウスだ。彼は『鏡の盾』を使って身を防いだ」
「へえ、やるじゃん。鏡の盾はどこにあるの?」
「現在『鏡の盾』はペルセ山山頂のペルセ洞窟に収められているという。だがペルセ山はとても険しく難所続きの山なので登るだけでも大変だぞ」
「ペルセ山がどんなにすごい山だとしても必ず『鏡の盾』を取って来るよ。そしてメドゥサオールを倒してみせる」
「ははははは~、急に頼もしくなったな。シャムと仲間たちよ、期待しておるぞ」
「うん、任せてくれ」
「はい、がんばります!」
「にゅ~、力を合わせてやっつけてみせます!」
「私もがんばります♪」
「それからメドゥサオールにはセルペンテという強い部下がいるので注意をするように」
「石化魔法を使うのか?」
「いや、セルペンテはめっぽう強い剣士だが、魔法は使えない」
「じゃあ、何とか倒せるのでは?」
「甘いな。やつと戦って勝利した者はいまだいない。ほぼ無敵といえるだろう」
「それじゃやっつけるのは無理じゃん」
シャムが肩を落とす。
「いや、諦めるのはまだ早い。セルペンテは魔物ではあるがかなりのイケメンで相当なプレイボーイときている。やつの甘い言葉に誘われて毒牙にかかった女性は数多くいるという。やつと愛し合い射精された女性は最高の快感を味わう……」
イヴたちの顔が一瞬ほころぶ。
「最高の快感ってどんな感じなのかな……?」
「にゅ~、ちょっと興味あるかな?」
「私にはまだまだ大人すぎる話だよ♪」
次の瞬間ムッヒの表情が険しくなった。
「最高の快感を味わうまではよいが、女性はそのあと眠ったように死んでいく……やつの精液には猛毒が含まれておるのだ」
セルペンテの恐るべき特異性に唖然とするイヴたち。
「やっぱり私は遠慮するわ……」
「にゃっ、セルペンテとは遭遇したくないな」
「私は大人すぎる話なので♪」
「ははははは~、最後は死ぬと聞いて驚いたか?」
「でもそれだったらやっぱりセルペンテを倒せないじゃないですか?」
「いやいや、話を最後まで聞け」
「何か手段があるわけですね……♪」
「やつのペニスは挿入したあと、あろうことか蛇に変化するという」
ペニスが蛇に変化すると聞いたキューが突然青ざめた。
「にゃっ、ペニスが蛇に変化するなんて信じられない! 恐すぎる!」
「信じがたいが、命からがら逃げ帰った女性がそのように証言しているので紛れもない事実であろう。しかし、このペニスが蛇になる瞬間がやつを倒す絶好の機会となる」
モエモエの興味深げに聞き入っている。
ムッヒが静かな口調で語った。
「ペニスが蛇に変わる瞬間、やつの戦闘能力は大幅に低下する。その時を狙ってやつの喉に短刀を突きつける。倒すにはそれしか方法がないだろう」
モエモエが眉をひそめた。
「そ、そんな……じゃあ、女性の誰かが一度はセルペンテと性交しないといけないじゃないですか♪」
「まあ、そういうことになるかな……」
「にゃっ、そんなぁ……」
「私は無理……♪」
その時、意外にもイヴが異なる意見を述べた。
「この世で最高の快感だなんてちょっと興味あるかも」
「ちょっとちょっと、いくら気持ちよくてもオチンチンが蛇だよ」
キューがイヴを諫める。
ずっと沈黙していたシャムが高らかに宣言した。
「心配ゴム用……ではなくて心配ご無用。きっとおいらが倒してみせるから、女の子たちはセルペンテに近づかないようにな」
「まあ、シャム、珍しく優しいこというじゃないの」
「にゅ~、もしかしたらシャムが嫉妬してるのかも」
「ふん、おまえらに嫉妬するものか」
「へ~、そうなんだ。じゃあ、私たちがどうなってもいいのね?」
「いや、そんなことはないけど。とにかくいくらイケメンが現れてもふらふら着いていくなってこと」
」
「私と歳が変わらないのに、しっかりしたことを言うね♪」
モエモエがそうつぶやくと ムッヒが微笑みを浮かべ語りかけた。
「もしシャムの剣の腕前がとびきり上達しやつを上回れば、もしかしたら倒せるかも知れない。しかしそれは容易ではないぞ。やはり女性が囮になってやつに接近し倒すのが早道だろう。方法はみんなで知恵を出し合って決めればよい。分かったな」
「うん、よく分かったよ。ありがとう、ムッヒ様」
イヴがムッヒに礼を述べた。
「ムッヒ様、色々と教えてくれてありがとうございました! それじゃ早速、ペルセ山に登って『鏡の盾』を取って来ます~!」
「それはいいが、ペルセ山は神の山なので登山口に番人がいて容易には通れないだろう。ただし『ペルセのエンブレム』を見せれば簡単に通ることができるのだが……」
モエモエが尋ねた。
「『ペルセのエンブレム』ってどこにあるのですか?♪」
「ウンディーネが持っておる」
「ウンディーネ……?♪」
シャムにとっては初めて耳にする名前だが、キューには覚えがあるらしい。
「にゃ? ウンディーネといえば、四大精霊のうち、水を司る聖霊のことですよね? 会ったことはないのですが、その姿はほぼ人間の姿をしているとか。何でも人間と妖精の中間的存在で、すごく美しいんだって」
「そのとおりだ。よく知っておるな。水という元素は特に人間に身近なため、ウンディーネが人間と恋をして結ばれる話は、他の精霊に比べてとても多いのだ」
その時イヴがウンディーネについて語り始めた。
「そう言えば以前母からウンディーネの伝説を聞いたことがあるわ。ウンディーネが人間の男と結婚した後、夫は自分の妻であるウンディーネを水の上や水辺で絶対に罵ってはいけないと言われてるの。もしこれを破ると、ウンディーネは永遠に水の中に戻らなければならないんだって。でも会えなくなったからと言って、男性が別の女性と結婚することも許されないんだって。再婚しようとすると、ウンディーネ自身が現れて、夫の命を奪いに来るんだって……」
ウンディーネの伝説を聞いたモエモエ、イヴ、キューの女性たちが彼女の深い情念に驚嘆している。
「すごい情熱的だね!」
「恐いぐらいだけど、同性として分かる気がするわ♪」
「にゅ~、すごい話だね~。ねえ、シャム、次はウンディーネが住む場所で決まりだね」
しかしシャムはどうも気が進まないようだ。
「夫の命を奪いに来るって……なんかやばそうな女だなあ。おいらは気が進まないなあ……」
イヴが目を吊り上げて怒りを露わにしている。
「そんな弱気でどうするの。さあ行くよ、シャム!」
「チェッ、仕方ないなあ、じゃあ行くとするか」
「そう来なくては!」
シャムがムッヒに尋ねた。
「ところでムッヒ様、ウンディーネってどこにいるの? 水のあるところということは……もしかしたら海かな?」
「海に棲んでいるのはマーメイドだ。ウンディーネは『クレスピンの泉』に住んでおる」
「クレスピンの泉? じゃあ早速行こう~!」
「ちょっと待て。今行くのはまずい」
「にゃ? どうしてですか?」
「現在クレスピンの泉では戦いが起こっておる」
「さては魔物たちだな? 魔物たちが美しいウンディーネに襲いかかり、あんなことやこんなことをしているとか」
「それは違う。ウンディーネと敵対しているのはゴブリンたちだ」
「にゅ? ゴブリン? ゴブリンと言えば妖精の一種ではないですか?」
「キューのいうとおりゴブリンは妖精の一種だ。元々ゴブリンたちが住んでいた森が火事に遭い3日3晩燃え続けたという。ゴブリンたちはやむを得ず森を出て新しい住処を探した。流浪の末、訪れたのが美しい水のあるクレスピンの泉だった。まあ、そこで大人しく暮らしておればトラブルは起こらなかったのだろうが、悪戯好きのゴブリンたちはウンディーネにエッチなことをしてしまった。それを知ったウンディーネの女王は激怒して、ゴブリンに対して犯人を差し出すよう要求した。ところが、ゴブリンたちは犯人を匿ってしまった。潔癖な性分のウンディーネの怒りは収まらず、とうとう争いにまで発展してしまった」
「なるほど。じゃあ、おいらが争いを収めてきてやるよ」
「これは頼もしい。やってくれるか?」
「うん、任してくれ」
「では頼んだぞ」
「じゃあムッヒ様、あばよ! またな~!」
「さらばだ」
「にゃ~、さようなら~」
「では失礼します」
「さようなら♪」
シャムたちは『聖者の剣』をゲットした!シャムが『聖者の剣』を装備した!
シャムたちは『サンダーの魔法書』をゲットした。モエモエが『サンダーの魔導書』を装備した!モエモエは雷の魔法が使えるようになった!
シャム達は薬草を10本ゲットした!
「あれ?」
帰ろうとしていたシャムが突然振り返りムッヒの背後の壁を凝視した。
「何だ? 忘れ物か?」
「いいえ、ムッヒ様、ムッヒ様の後方に描かれたすごくきれいな女の子は誰なんだ?」
聖者ムッヒの背後の壁面に、まるで名画から抜け出したような絶世の美女が描かれていた。
目も眩むほど麗しく、見事な脚線美を誇り、慈愛に満ちた微笑みを湛えている。
ただし厳密にいえば一見絵画のように見えるが絵画ではなさそうだ。
ムッヒはポツリとつぶやいた。
「この女性か? この女性は天界でアテナ様と並び賞されるほどの美貌を持つ天女のコーヨ・ラムギス様だ。とても美しい方だろう?」
「あれ? ムッヒ様が照れているぞ。もしかして恋人とか?」
「何をいうか! 無礼者~~~!」
「ひゃあ~~~! そんなムキになって怒らなくても」
「ははははは、私としたことが大人げないな。だが決して恋人などではない。もっと崇高な存在……う~ん、私にとっては『心の神』といえるかも知れない」
「心の神? う~ん、さっぱり分からん……」
シャムとムッヒの会話を聞いていたイヴたちも興味深げに会話に加わってきた。
「それにしてもすごくきれいな人ですね~」
「見目麗しき超絶美女とはこのこのとかもしれませんね」
「にゅ~、きれいな人を見ていると同じ女性でもうっとりしてくる~」
「いやいや、そなたたちも大変美しいぞ。勇者シャムは3人の美女を引き連れて幸せ者だぞ」
「おいらが幸せ者だって?そうかな~」
イヴが顔を顰める。
「そういう時は素直にお礼を言うものよ~」
「まあ、よい。おそらく照れくさいのであろう」
「へへへ、ムッヒ様には隠し事はできないな~。ところでムッヒ様、その絵のようで絵でないもの、一体何なの?」
「おお、よくぞ聞いてくれた。これは絵に見えるだろうが……」
「いや、見えないよ」
「え? そうなの?(ガクン)」
シャムの予想外の反応にムッヒが思わずずっこけた。
「シャム~、ムッヒ様が『絵に見れるだろうが』と言ったら、『そうですね』と返事をしなければ、ムッヒ様が後を喋りにくいじゃないの?」
「うん、そうだな。ごめん、ムッヒ様」
「神官イヴよ、よくぞ補ってくれた。この勇者とはいささか喋りにくいかもしれんな~。ははははは~」
「はっはっはっはっは~!」
「同じように真似して笑うな」
「ごめん」
絵のようで絵ではないものを見ながら、モエモエが口を開いた。
「絵よりももっと本物に近いような気がするのですが♪」
「そのとおり! 魔導師モエモエよ、よくぞ気づいた! これは絵ではなく、ある機械で真実を写したものなのだ。私はその機械を『写真』となずけておる」
「にゅ~! もしかしたら聖者さまが発明したのですか!?」
「そうだ」
「にゃっ、すごい!」
「やる~♪」
「いや、ところが多くの神々や人間たちはまったく信じようとしないんだ。これは魔法で描いた絵だろうといってな」
「なるほど。でもいつかみんな分かってくれますよ~♪」
「そうだとよいが、みんなが理解するまであと1000年はかかるかも知れないな」
「聖者さまって本当にすごいんだ~。1000年先に認められるものを既に作ってしまっている」
「将来はもっともっと文明が発達するであろう。そなた達や私すら想像できないほどにな」
「へえ~」
「ほう~」
「そうなんだ♪」
「にゅ~」
聖者ムッヒの言葉はシャムたちの心に深く突き刺さった。
「ムッヒ様、それじゃ、おいらたち行くよ~! 色々とありがとう~!」
「達者でな」
「ムッヒ様、また困ったことがあったら教えてもらいに来ますね」
「にゃっ! 投げキッス~」
「さようなら~♪」
「あ、そうだ! 天女コーヨ・ラムギス様と結婚するときはおいらたちも呼んでね~!」
シャムが最後に言い放った言葉に、聖者ムッヒは黙って笑顔で応えるだけであった。