終 電

藤 奈々子



夜のプラットホーム
電車の扉が開き
たくさんの人々が降りていく

足早に家路を急ぐOL
疲れきった表情のサラリーマン
酔って千鳥足の幸せ男

でも
あなたの姿はなかった

電車が行ってしまうと 静寂が訪れる
春とは言っても夜更けは肌寒い
人々の姿はもう見えない


電車がまたホームに入って来た
あなたが 笑顔で現れる姿
思い描いては
また消えた

すでに何本の電車を見送ったのだろうか
判らなくなってきた

私が帰ったあとに
あなたは降りてくる
そんな気がして
その場から離れられなかった


冷たい風が吹きぬける
空には星が見えない
しばらく暗黒の空を見上げていた

駅のホームが悲しく思えた
震えが止まらなくなった
次できっと来る

でも終電までもうわずか
……


ごめんなさい
もし これからあなたが現れても
私は家に帰ります

ひとりつぶやき電車に乗った
明日は雨かも知れない



























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