桜貝のしずく







打ち寄せるさざなみ
かもめたちのささやき
朝日に照らされて
君は美しい光を放つ

傷つきやすい薄い殻
その白いベールを解こうとする魚たち
君はおびえ 岩肌にその身を寄せる

ひとりの漁師が君を見つけ
そっと両手にいだく
そのいとおしきたたずまいに
漁師は思わず唇を寄せた

君は初めて恋を知りそめ
ぽっと桜色に輝いた

漁師は薄いベールを開き
内部の果肉をまさぐった
君は高貴な香りを放ち
じゅくっと芳醇な露を溢れさせた

漁師は再び唇を寄せ
そのしずくをすすり上げると
君はぷるると白い果肉を震わせた

漁師は気高き味覚に酔いしれ
一滴もこぼさずいつまでも吸い続けた
君は吸われることに愛を覚え
深い至福に浸った

君は静かなる桜貝 汚れなき海の華
























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