水に書かれた手紙


すべてのできごとが
水に書かれた手紙なら
星はナイフのように見えないはずだ

愛する終り 小さなわけがあり
そのわけを囲むわけがあり
そのわけを隠すわけがあり
終りには積もりだして見えなくなる
見えなくなった道の上に想い出があり
やがて古びた戸棚となり
忘れられたチーズのかけらとなる

すべてのできごとが 水に書かれた手紙なら
星はナイフのように見えないはずだ
愛するはじめ
わたしは泳ぎ あの人は泳ぎ
手をさしのべた
愛するはじめ
行末のない風景のなか

わたしはほしい 弓矢の狂暴な目
わたしはほしい 消えないしみの軽蔑
わたしはほしい 切り離された樹根の休息

人々の背中と わたしの悲しみのあいだは
薔薇とヒース

愛するはじめ
むずかしいものは何もない
近づこうとする息吹と
とらえようとする息吹とが
あらゆるものの上を覆い尽くす
先へ その先へ 先へと進み広がる
すべての歩み すべての望みが
先へ その先へ 先へと進みあふれる

すべてのできごとが
水に書かれた手紙なら
星はナイフのように見えないはずだ

人々の溜息と わたしの悲しみのあいだには
薔薇とヒース

愛する終り
あまりにもわけが多すぎる
愛する終り
あまりにもわけが多すぎる


















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