二年坂 産寧坂 官能坂


木々くれないに染まる晩秋の夜
目前に現われし 幽玄の庭
静寂という名の調べが
あなたを夢想にいざなう
手のひらにあなたの手
ほっこりと包み込む

二年坂の扇子屋も
産寧坂の香具屋も
板戸を閉ざしてる
石段をくだる足音が夜のしじまに消えていく
昼間の喧騒が嘘のよう

ふと立ち止まり
あなたを抱き寄せて
くちづけを交せば
ほのかに甘い香り

高台寺近くで空車のタクシーが一台
初老の運転手が客待ちをしている
二人が近づくとドアが開いた
風情とは不似合いなLPガスの匂い

「どちらまで……」
「河原町五条まで……」

タクシーはゆっくりと二速発進する
闇夜に包まれ水を打ったように
静まりかえった町屋を抜けると
官能坂はもうそこに













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