第7話「馬上の女騎士」
もえもえは右手で手元のシーツをギュっと掴むと、左手を顔に添え恥じらう。
ビクッと背中を反らせるもえもえ。
俊介は間髪入れず、怒張した肉柱を秘裂にあてがった。
いつのまにかコンドームが装着されている。
俊介は女性から頼まれるまでもなくすすんで避妊具を着ける男なのだ。
AVで見掛けるような『生入れ・直前外出し』のような男本位で危なっかしいセックスはあまり好まないのだ。
そんな彼のフェアな態度にも、もえもえは大きな信頼を寄せていた。
「あっ……」
もえもえの口から歓喜の声が漏れる。
怒張したものがもえもえの濡れた秘裂に分け入った。
俊介は焦ることなくゆっくりと正常位で抽入、抽出を繰り返す。
もえもえは正常位を好む。
互いに向かい合って見つめ合えるから。
恥ずかしさはあるが、ときめきが半端じゃないから。
まもなく俊介は中腰の姿勢を崩してもえもえに覆いかぶさった。
突然キスがしたくなったのだろう。
息ができないくらい強く抱きしめ熱く唇を重ね合う。
だけど性交中のキスは長時間つづかない。
呼吸が苦しくなるからだ。
もえもえの唇から離れた唇はいとまなく首筋を襲う。
「あぁ……」
俊介の背中にまわした細い腕に力がこもる。
完全密着しているため派手な動きができない俊介は小刻みに腰を動かせる。
女体に食い込んだ肉柱はまるでメトロノームのように正確なリズムを刻む。
俊介は一旦動きを止め、体位を移行しようと試みた。
同じ体勢で延々とセックスを行なえば、いくら筋肉質な男性であっても疲れを感じるもの。
ずっと同じ体位では、腹筋やスクワットを長時間行なっているのと同じ状態になるからだ。
体位変換の数秒であっても、体勢を立て直す間筋肉を休めることができる。
一呼吸入れたら、また新たな力がみなぎってくる。
俊介は結合を解かないようにして、丁寧にもえもえを抱き上げた。
対面座位の体勢で抱き合う二人。
もえもえのほっそりとした両脚が、胡座座りの俊介に絡みつく。
俊介はもえもえの両尻を支えて、自身の方向にぐいぐいとたぐりよせる。
ズニュッ……
挿入角度が変わり膣内の擦れる箇所が変化する。
「ああっ……しゅ、俊介……」
「もえもえ……」
俊介のパワーに委ねるだけではなく、もえもえは自身の腰を前方に擦りつける。
怒張した肉柱を咥えこみ、肉厚の陰唇はさらに広がりを見せる。
ズリュンズリュンズリュン……
「あああ……」
座位で数分律動したあと、ほどなく騎乗位へと変換し、もえもえは麗しき馬上の女騎士となった。
セックス時における揺れるシルエットは実に妖艶なものだが、当事者である俊介からはそれを見上げて堪能する余裕などなかった。
天井を向いてそそり立つ突起物を軸にして、愛しい女が腰を振っている。
そのような思考を巡らすだけで下半身が爆発しそうになっていた。
「うっ……もえもえ……ちょっと待って」
「え……?」
俊介は切羽詰まった声でつぶやいた。
「もう限界かも……フィニッシュは正常位で……」
「うん、いいよ」
正常位に戻った俊介の律動は力強く速かった。
力感あふれる抽送を繰りかえす。
ズンズンズンズンズン……
「あぁん、そんなに突いたら壊れちゃうよぅ~、あああ~……」
「じゃあ、やめとこうか?」
「やめちゃダメぇ~……」
「どっちなの? 困った子だなあ……ははは」
「あは……あんあん……」
ズンズンズンズンズン!
もえもえの両脚はエビのように上げて身体を丸めている。
深く挿入可能な屈曲位の体勢だ。
最初のうちは両脚を大きく開いた『開脚海老』で攻め、さらには両脚を揃えての『閉脚海老』がフィニッシュの体勢となった。
見た目には開脚の方が淫靡だが、実際は閉脚の方が膣がよく締まり男女ともに感度がアップする。
二人はしたたる汗を気にも留めず、激しく蠢動を繰り返し、ついには頂きに向かって駆け上がった。
「あああ~! 俊介! ああっ、ああっ、ああっ、イクっ! あああ~イクイク~~~……っ!」
「うう……もえもえっ!……ううっ……!」
「あああああ~~~~~~っ!」
もえもえは絶頂に達し、俊介もまた激しい痙攣とともに挿入したまま果ててしまった。
二人は抱き合ったままピクリとも動かない。
もえもえの中の入った俊介のものは、まだ硬さを保っている。
俊介が微かに腰を動かしたとき、もえもえの唇から甘い吐息がこぼれた。
チュッ……
前戯がコース料理の前のアベリティフなら、後戯のキスは料理のあとのデザートのようなもの。
もえもえは大きな目を見開き俊介にささやいた。
「俊介……大好き……」
「僕ももえもえが大好きだよ……」
もえもえは俊介の肩を頬を寄せてもう一度キスをせがんだ。
チュッ……
逢阪ミナミの外れにあるデナイナーズホテルでの熱い一夜。
もえもえは回想していた。
思い出すとまた身体が疼く。
さっき一人遊びをしたばかりなのに。